12 / 17
第12話 ハンドラーの正体
しおりを挟む
「このリストに名前のある誰かの持ち物でしょうか?」
「いえ、ラウル様。ここには名前のない人物です。確実にハンドラーの物でしょう」
「ハンドラーとはなんですか?」
「通常、スパイは自分以外のスパイの存在を知らされません。万が一、スパイであることがバレたとき、ほかの仲間のことを喋ったりしないようにするためです。秘密を守る訓練はされますが、知らなければ喋りようがありませんからね。
そこで必要になるのはスパイたちをコントロールする人物です。それが支配者です。ハンドラーはスパイを統括し、本国からの指示をスパイに伝えるのです」
ラウルがおずおずと手を挙げた。
「ミアさん。その、あなたはどこでそのような知識を身に着けたのでしょうか?本当はただの侍女ではありませんよね?」
「言うな、ラウル。その質問は俺は何度も飲み込んでいる。今はミアのその知識が必要なんだ」
中隊長は続きをと私に促す。
「おそらくリンダは偶然このリストを手に入れてしまった。もしかしたら返せといわれて、見返りを要求したのかもしれません。リンダ殺害の実行役はリストにあった料理人でしょう。後宮の厨房にいたのですから、グレース様の食事の毒見役がリンダであることも知っていました」
「この方法なら、誰もが狙いは第一側妃だと思い込むだろう。本当の目的を悟られることはない」
「ええ」
しかし、とラウルが首をひねる。
「ハンドラーはおそらく、政治の中枢にいるか、身分の高い人物ですよね。後宮の侍女とどう接点があるのでしょうか?」
「直接入手できないのなら、誰かから預かったのかもしれないな。毒見役の交友関係が分かればいいのだが」
ふと侍女ネットワークで聞いたことを思い出した。
「そういえば、彼女には恋人がいたそうです。たしか、名前はトーマス・ハーフナーといいました。外に買い物に出かけたときに偶然知り合って恋仲になったそうなので、てっきり市場で働く青年かと思い込んでいましたが」
ラウルが記憶をたどっている。
「たしか、ネヴィル副議長の秘書がそんな名前でした」
政治家関連のファイルをめくって確認する。
「間違いありません」
上司の物を秘書が手に入れ、自分の恋人に預かってもらった。ストーリーとしてはおかしくない。
また、議会の副議長というポジションもハンドラーには適している。
「よし、その秘書を連れてきてくれ」
「承知しました!」
ラウルが飛び出していった。
しかし、すぐに息を切らせて戻ってきた。
「大変です、秘書は1か月前から出仕していないそうです」
1ヵ月前といえばリンダが毒殺されたころだ。
「心配した同僚が自宅を訪ねたところ、旅行に行くという書置きがあったそうですが、衣類や旅行鞄などは残っていたため不思議に思っていたそうです。まさか、侍女のように殺されたのでしょうか?」
「いえ、ラウル様。ここには名前のない人物です。確実にハンドラーの物でしょう」
「ハンドラーとはなんですか?」
「通常、スパイは自分以外のスパイの存在を知らされません。万が一、スパイであることがバレたとき、ほかの仲間のことを喋ったりしないようにするためです。秘密を守る訓練はされますが、知らなければ喋りようがありませんからね。
そこで必要になるのはスパイたちをコントロールする人物です。それが支配者です。ハンドラーはスパイを統括し、本国からの指示をスパイに伝えるのです」
ラウルがおずおずと手を挙げた。
「ミアさん。その、あなたはどこでそのような知識を身に着けたのでしょうか?本当はただの侍女ではありませんよね?」
「言うな、ラウル。その質問は俺は何度も飲み込んでいる。今はミアのその知識が必要なんだ」
中隊長は続きをと私に促す。
「おそらくリンダは偶然このリストを手に入れてしまった。もしかしたら返せといわれて、見返りを要求したのかもしれません。リンダ殺害の実行役はリストにあった料理人でしょう。後宮の厨房にいたのですから、グレース様の食事の毒見役がリンダであることも知っていました」
「この方法なら、誰もが狙いは第一側妃だと思い込むだろう。本当の目的を悟られることはない」
「ええ」
しかし、とラウルが首をひねる。
「ハンドラーはおそらく、政治の中枢にいるか、身分の高い人物ですよね。後宮の侍女とどう接点があるのでしょうか?」
「直接入手できないのなら、誰かから預かったのかもしれないな。毒見役の交友関係が分かればいいのだが」
ふと侍女ネットワークで聞いたことを思い出した。
「そういえば、彼女には恋人がいたそうです。たしか、名前はトーマス・ハーフナーといいました。外に買い物に出かけたときに偶然知り合って恋仲になったそうなので、てっきり市場で働く青年かと思い込んでいましたが」
ラウルが記憶をたどっている。
「たしか、ネヴィル副議長の秘書がそんな名前でした」
政治家関連のファイルをめくって確認する。
「間違いありません」
上司の物を秘書が手に入れ、自分の恋人に預かってもらった。ストーリーとしてはおかしくない。
また、議会の副議長というポジションもハンドラーには適している。
「よし、その秘書を連れてきてくれ」
「承知しました!」
ラウルが飛び出していった。
しかし、すぐに息を切らせて戻ってきた。
「大変です、秘書は1か月前から出仕していないそうです」
1ヵ月前といえばリンダが毒殺されたころだ。
「心配した同僚が自宅を訪ねたところ、旅行に行くという書置きがあったそうですが、衣類や旅行鞄などは残っていたため不思議に思っていたそうです。まさか、侍女のように殺されたのでしょうか?」
2
あなたにおすすめの小説
侯爵夫人のハズですが、完全に無視されています
猫枕
恋愛
伯爵令嬢のシンディーは学園を卒業と同時にキャッシュ侯爵家に嫁がされた。
しかし婚姻から4年、旦那様に会ったのは一度きり、大きなお屋敷の端っこにある離れに住むように言われ、勝手な外出も禁じられている。
本宅にはシンディーの偽物が奥様と呼ばれて暮らしているらしい。
盛大な結婚式が行われたというがシンディーは出席していないし、今年3才になる息子がいるというが、もちろん産んだ覚えもない。
大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!
古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。
その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。
『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』
昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。
領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。
一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――
前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ
咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。
そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに――
ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。
※小説家になろうさまでも掲載しています。
「愛される価値がない」と言われ続けた伯爵令嬢、無口な騎士団長に拾われて初めて「おかえり」を知る
歩人
ファンタジー
伯爵令嬢フリーダは、婚約者の子爵に「お前は愛される価値がない」と
公の場で婚約を破棄された。家族にも「お前が至らないから」と責められ、
居場所を失った彼女は、雨の中を一人で歩いていた。
声をかけたのは、"鉄面皮"と呼ばれる騎士団長グスタフだった。
「屋根がある。来い」——たった一言で、彼女を騎士団の官舎に迎え入れた。
無口で不器用な男は、毎朝スープを温め、毎晩「おかえり」と言い、
フリーダが泣くと黙って隣に座った。それだけだった。
それだけで、フリーダの凍りついた心が溶けていった。
半年後、落ちぶれた元婚約者が「やり直そう」と現れたとき、
フリーダは初めて自分の言葉で言えた。
「私にはもう、帰る場所がありますので」
夫と愛し合った翌朝、一方的に離縁されました【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
美しい公爵夫人マルグリートは、冷徹な夫ディートリヒと共に、王国の裏で密かに任務をこなす“悪女”。
だがある日、突然夫から離婚を言い渡される。しかもその裏には、平民の愛人の存在が──。
失意の中、王命で新たな婚約者・エルンストと結ばれることに。
どうやら今回の離婚再婚は、王家の陰謀があるよう。
「悪女に、遠慮はいらない」
そう決意した彼女は、華やかな舞踏会で王に真っ向から言い放つ。
「わたくし、人の家庭を壊しておきながら悪びれない方に、下げる頭は持っていませんの。
王族であられる前に、人におなりくださいませ。……失礼」
愛も、誇りも奪われたなら──
今度はこの手で、すべてを取り戻すだけ。
裏切りに燃える、痛快リベンジ・ロマンス!
⚠️本作は AI の生成した文章を一部に使っています。タイトル変えました。コメディーです。主人公は悪女です。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
「『お前に書く手紙などない』と言った婚約者へ、私は7年間手紙を書き続けた——ただし、届け先は別の人でした」
歩人
ファンタジー
辺境伯令嬢リゼットは、婚約者に7年間手紙を書き続けた。返事は一度もなかった。
「お前に書く手紙などない。顔も覚えていない」——婚約破棄。しかしリゼットは
泣かなかった。手紙の本当の届け先は、最初から別にあったから。前世の情報分析
能力で辺境の異変を読み解き、暗号として織り込んだ7年分の手紙。それを受け取り
続けていたのは第一王子。リゼットは誰にも知られず、王国を守っていた。
婚約破棄の翌朝、王子からの手紙が届く。「7年間、ありがとう。迎えに行く」
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる