ステータス反転の呪いを受けた俺、最強へと至る。~パーティーのお荷物による逆転冒険者生活~

あざね

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第1章

プロローグ ステータス反転の呪い

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「くそっ、見たことのない魔物だな!」
「まるで歯が立たない!?」

 仲間たちがみな、一体の魔物に苦戦していた。
 そいつは今までの冒険者生活の中でも、一度も見たことのない不思議な生物。ひょろひょろとした外見に似合わず、素早くみんなの攻撃を回避していた。
 パーティーは俺を除いて、みんなBランクの冒険者だ。
 並の魔物であれば対応できるだけの経験値を積んでいる。

「くそ――おい、キーン! 回復魔法を頼む!!」

 だから、俺のようなEランク冒険者にこんな頼みをするなんて、今までなかった。俺は言われた通りに、回復魔法を使用する。

「……相変わらず、へなちょこな魔法使いやがって。本当だったらお前なんかよりも数段上の治癒師を仲間にしたいところなんだがな!」
「くっ、すまない……」

 パーティーリーダーの悪態に、俺は思わず謝ってしまった。
 分かっている。俺がここにいるのは、一つの幸運に恵まれたからだった。
 たまたまその場に居合わせたから。たまたま、既定の人数に達していないパーティーと遭遇したから。そして、偶然にも求められていたのが治癒師だったから。

 俺はどこのパーティーにも拾ってもらえない、最弱の治癒師だった。
 使える回復魔法も、擦り傷を治すのが限界。ギルドでは爪弾きにされて、色々なパーティーをたらい回しにされて、今日は偶然にもここへ流れ着いた。

「――――!? なんだ、この魔法は!!」

 そんな自らの身の上を思い返していると、仲間の一人が声を震わせる。
 見れば、得体の知れない魔物が――なにか、見たことのない魔法を使用しようとしていた。黒褐色の魔方陣が、俺たちの足元に展開される。
 一目散に全員が、その場を退避した。
 だが、ノロマな俺はそこに取り残されてしまう。

「あ……!」

 その瞬間に、世界が闇に包まれた。
 いいや、正確に言えば。身体を漆黒の闇が包み込んだのだ。
 その時になって、肌で感じて、俺はそれが魔法ではないことに感付いた。

「これは『呪い』……?」

 そう。それは、魔法とは似て非なるもの。
 魔族と呼ばれる強力な魔物の一部が使用するという、固有のものだった。それは世界に一つしかなく、その魔族が死ねば失われてしまう力。
 しかし何だろうか。
 いま俺の中に流れ込んできているのは、呪いとは程遠い感覚だった。

「おい、キーン!? 大丈夫なのか!!」

 リーダーが声を荒らげ、そう俺の名を呼ぶ。
 だけどそれも、どこか遠い世界の出来事のように思われて。
 俺は呪いから解放された自身の身体を見て、思わず息を呑むのだった。

「ステータスが上昇、してる……!?」

 それは、自身の能力を示す数値が異常なまでの域に達していたから。
 ステータスは自分でしか確認できない。だから、他の仲間には何が起きているのか分からないのだろう。でも、俺には分かった。
 今まで地を這っていた筋力値、敏捷値――ありとあらゆる数値が『反転』していた。それは今まで聞いたことのない、あり得ない数値に。

 平均が20だとして。
 今までが1だとするなら、それが100に。

「こんな、ことって……」

 俺は拳を握り締めて、震えた。
 こんなことって、あり得るのだろうか、と。

「おい、逃げろ! キーン!!」
「え……」

 その時。
 俺に呪いを放った魔族が、襲いかかってきた。
 他のメンバーは皆一様に目を逸らす。おそらくは俺の死を覚悟したのだろう。でも、それは訪れない未来だった。何故なら――。


「あ、えっと――それ!」


 一撃だった。
 断末魔を放つ暇さえなく、魔族は消滅した。
 俺の杖による攻撃。それを受けて、なんとも呆気なく。

「嘘じゃ、ないんだ……」

 周囲が唖然とこちらを見る中。
 俺はそう呟いた。


 今まで誰にも必要とされなかった冒険者生活。
 それがこの日を境に、大きな変化を遂げようとしていた。

 
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