ステータス反転の呪いを受けた俺、最強へと至る。~パーティーのお荷物による逆転冒険者生活~

あざね

文字の大きさ
2 / 2
第1章

1.目標と、新しい仲間。

しおりを挟む





 その日限りのパーティーとのクエストを終えて、俺は帰路についていた。
 道中で考えるのは、やはりあの魔族から受けた呪いのこと。おそらくはステータスを反転させる、というものだと思われた。本来なら強い冒険者が弱体化され、魔族の餌食になる、というのが既定路線だったのだろう。

「でも、俺は違ったのか。弱いから、逆に強くなった」

 そのことから、俺が導き出した結論はそれだった。
 俺は世界有数の弱小冒険者。だから反転の呪いを喰らったことで、ステータスは弱体化ではなく、大幅に強化された。
 それこそ、世界有数の強豪冒険者、として。

 幸運だったのは、あの魔族の呪いが今でも継続していること。
 おそらくは永続するタイプのものだったのだ。

「でも、こんな力を手に入れても……これから、どうすれば?」

 そこまで考えて、俺は現実に立ち返る。
 そうだった。俺は冒険者として、なにを為せばいいのか。
 目標が不確定だった。それでも、当面の目標らしきものはあった。それは――。

「とりあえず、ずっと憧れてきた冒険者としての生活を目指そう。誰かから必要とされて、仲間を守れる、そんな冒険者に!」

 俺は胸ポケットから、冒険者カードを取り出す。
 そこに書かれていたのは冒険者の誓い。その中でも俺の胸の中に強く刻まれているのは、冒険者たるもの全ての人から尊敬される者であれ、の一文。

 今までは、それ以前の問題だった。
 尊敬される以前に、みんなの足を引っ張ってばかりで、なにもできなかった。

「よし、それじゃ――」

 明日から、頑張ろう!
 そう心に誓って、俺は家へと向かって駆け出した。


◆◇◆


 ――翌日。
 俺はいつものように、冒険者ギルドへと顔をだした。
 そして、新しいクエストを受けようと思って、掲示板の方へと向かった時。いつもとは違う光景が広がっていることに気付いた。

「……ん。なにか、揉め事か?」

 人だかりが出来ていた。
 その中心では、なにやら男の声と少女の声がする。
 耳を澄ませばどうやら、仲間割れをしている様子だった。

「アンタの余計な攻撃で、アタシの出番がなくなったでしょうが!」
「うるせぇ! てめぇはスタンドプレイすぎるんだよ!」
「アンタたちがノロマだからでしょう!?」
「んだと、やんのかミレイナ!!」

 聞こえてきたのはそんなやり取り。
 どうやら、パーティーの中での連携について揉めているらしい。しかし、ミレイナという名前は、どこかで聞いたような覚えがあるのだが……。
 そう考えていると、相手の男がこう言い放った。

「ミレイナ、お前は今この時をもって追放だ!」――と。

 それに、周囲の野次馬たちはどよめいた。
 そこに至って俺は思い出す。ミレイナという名の少女のことを。
 ミレイナ・イングリッド――この街アーシアの中で、最も腕が立つと言われていた少女冒険者だ。その剣の腕は王都の騎士団からスカウトされるほど。
 とにもかくにも、今までの俺とは住む世界の違う人物だった。

「はん、こっちから出ていってやるわよ! こんなパーティー!!」

 そんな彼女はいま、この時をもってパーティーを追放されたのだ。
 そして、この場を立ち去ろうとする。人だかりは綺麗に分かれて、俺とミレイナは一直線に向き合う形となった。そこでようやく俺はミレイナの容姿を確認する。

「え、思ったより……?」

 そこにいたのは、自分と大差ない年齢の女の子。
 外見から考えるに、年齢は十七から八、といったところだろうか。赤い髪を腰まで伸ばし、身に着けている鎧は急所だけを守る軽装なもの。
 顔立ちは整っており、しかしながら鋭い蒼の眼差しには気圧されてしまう。
 彼女は俺を認めるとスッと目を細めた。

「アンタ、そこどいてくれる?」

 そして、まるでゴミを見るような目でそう言った。
 俺は少しだけムッとして、その場に立ち続ける。そんな時だった。

「なんだ、誰かと思えば役立たず治癒師のキーンじゃねぇか」

 奥から、そんな声が聞こえてきたのは。
 それを聞いて、俺とミレイナは目を向けた。声の主は先ほどまでミレイナと言い合っていた中年の冒険者だ。彼は俺と少女を交互に見て、ニヤリと笑った。

「ほほう、こりゃ面白い。最強と最弱が揃うとはな」

 そんなことを口にする冒険者。
 なにが言いたいのだろうか。俺は首を傾げた。
 すると、彼の口からは思わぬ言葉が飛び出すのだった。

「ミレイナ、お前――そのキーンとパーティーを組めば良いんじゃねぇか?」
「はぁ……!?」
「え!?」

 声を揃える俺とミレイナ。
 それに対して、冒険者はニヤリと笑って言う。

「スタンドプレイがしたい最強と、誰かの助けが必要な最弱。お似合いじゃねぇか! なぁ、キーンにとってもミレイナにとっても、悪くない話だと思うが?」

 それは、新しいパーティーメンバーを募集している俺には嬉しい話だった。最弱認定には慣れているので、そこについては触れない方向で。
 しかし、ミレイナの方はどうなのだろうか。
 俺はちらりと少女の顔を見る。すると、彼女はニッと笑って――。

「いいじゃない、面白いわ! キーン……、だっけ。それでいい?」

 そう言った。
 そして、真っすぐに手を差し出してくる。
 あとは俺がこの手を取るかどうか、それで決まるようだった。

「…………」

 だとすれば、答えは決まっていた。
 俺は一つ頷いてから、ミレイナの手を取りこう答える。



「俺なんかでよければ。よろしく、ミレイナ」


 
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

無能認定され王宮から追放された俺、実は竜の言葉が話せたのでSSS級最凶竜種に懐かれ、気がついたら【竜人王】になってました。

霞杏檎
ファンタジー
田舎の村から上京して王宮兵士となって1年半…… まだまだ新人だったレイクは自身がスキルもろくに発動できない『無能力者』だと周りから虐げられる日々を送っていた。 そんなある日、『スキルが発動しない無能はこの王宮から出て行け』と自身が働いていたイブニクル王国の王宮から解雇・追放されてしまった。 そして挙げ句の果てには、道中の森でゴブリンに襲われる程の不遇様。 だが、レイクの不運はまだ続く……なんと世界を破壊する力を持つ最強の竜種"破滅古竜"と出会ってしまったのである!! しかし、絶体絶命の状況下で不意に出た言葉がレイクの運命を大きく変えた。 ーーそれは《竜族語》 レイクが竜族語を話せると知った破滅古竜はレイクと友達になりたいと諭され、友達の印としてレイクに自身の持つ魔力とスキルを与える代わりにレイクの心臓を奪ってしまう。 こうしてレイクは"ヴィルヘリア"と名乗り美少女の姿へと変えた破滅古竜の眷属となったが、与えられた膨大なスキルの量に力を使いこなせずにいた。 それを見たヴィルヘリアは格好がつかないと自身が師匠代わりとなり、旅をしながらレイクを鍛え上げること決める。 一方で、破滅古竜の悪知恵に引っかかったイブニクル王国では国存続の危機が迫り始めていた…… これは"無能"と虐げられた主人公レイクと最強竜種ヴィルヘリアの師弟コンビによる竜種を統べ、レイクが『竜人王』になるまでを描いた物語である。 ※30話程で完結します。

パーティーから追放され、ギルドから追放され、国からも追放された俺は、追放者ギルドをつくってスローライフを送ることにしました。

さくら
ファンタジー
 勇者パーティーから「お前は役立たずだ」と追放され、冒険者ギルドからも追い出され、最後には国からすら追放されてしまった俺――カイル。  居場所を失った俺が選んだのは、「追放された者だけのギルド」を作ることだった。  仲間に加わったのは、料理しか取り柄のない少女、炎魔法が暴発する魔導士、臆病な戦士、そして落ちこぼれの薬師たち。  周囲から「無駄者」と呼ばれてきた者ばかり。だが、一人一人に光る才能があった。  追放者だけの寄せ集めが、いつの間にか巨大な力を生み出し――勇者や王国をも超える存在となっていく。  自由な農作業、にぎやかな炊き出し、仲間との笑い合い。  “無駄”と呼ばれた俺たちが築くのは、誰も追放されない新しい国と、本物のスローライフだった。  追放者たちが送る、逆転スローライフファンタジー、ここに開幕!

魔力ゼロで出来損ないと追放された俺、前世の物理学知識を魔法代わりに使ったら、天才ドワーフや魔王に懐かれて最強になっていた

黒崎隼人
ファンタジー
「お前は我が家の恥だ」――。 名門貴族の三男アレンは、魔力を持たずに生まれたというだけで家族に虐げられ、18歳の誕生日にすべてを奪われ追放された。 絶望の中、彼が死の淵で思い出したのは、物理学者として生きた前世の記憶。そして覚醒したのは、魔法とは全く異なる、世界の理そのものを操る力――【概念置換(コンセプト・シフト)】。 運動エネルギーの法則【E = 1/2mv²】で、小石は音速の弾丸と化す。 熱力学第二法則で、敵軍は絶対零度の世界に沈む。 そして、相対性理論【E = mc²】は、神をも打ち砕く一撃となる。 これは、魔力ゼロの少年が、科学という名の「本当の魔法」で理不尽な運命を覆し、心優しき仲間たちと共に、偽りの正義に支配された世界の真実を解き明かす物語。 「君の信じる常識は、本当に正しいのか?」 知的好奇心が、あなたの胸を熱くする。新時代のサイエンス・ファンタジーが、今、幕を開ける。

無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。

さくら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。 だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。 行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。 ――だが、誰も知らなかった。 ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。 襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。 「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。 俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。 無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!? のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~

志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」 この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。 父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。 ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。 今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。 その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

処理中です...