前世Fランスライムの俺はSSSランク魔王に転生して分裂、合体、変身使えました

あざね

文字の大きさ
1 / 15
アル村編

プロローグ どうして俺が

しおりを挟む



『ひいぃぃっ!? 逃げろ、逃げろォ!! ――殺される!?』
『くそっ! どうして、いつもこうなるんだ!!』


 ――悲鳴。
 女や子供は逃げ惑い、男たちは応戦する。
 しかし、それすら叶わない。力なき俺たちの【種族】はただ蹂躙されるのみ。燃え盛る森の中から逃げ出そうと、必死になって走る――もとい、ともかく移動するだけだ。逃げて逃げて、ただただ逃げて、そうしていつかはアイツらの【経験値】になるのではないか、という恐怖に怯えている。

 ――轟音。
 今までの平和な暮らしには似つかわしくないモノ。
 あぁ、そうだ。前だってそうだった。アイツらはどこに隠れていようとも俺たちを見つけ出して、その命を刈り取る。今回だってそうだ。俺たちはただ平和な暮らしがしたかっただけなのに、少し害があるから、ほんの少し邪魔だから、そんな理由で命を奪われるのだ。

 だけど、今回だって逃げ切ってみせる。
 そう、思っていたのだけど――

『ちょっと待ってくれよ! なんで俺だけ置いてかれなきゃならないんだよ!?』
『誰かが犠牲にならねばならん! 貴様は我らの中でも最も力が弱い! 仮についてきたとしても、足手まといにしかならん!』

 ――なんという、ことか。
 俺の村の族長はそう言って、俺のことを切り捨てようとした。

 いいや、族長だけではない。それ以外の、仲間だと思っていた奴らだって、それを肯定するような視線をこちらに投げつけてきていた。それこそ『今まで足を引っ張ってきた分、最後くらい役に立て』と言わんばかりに。彼らは俺と目が合うとそれを逸らしたが、なおのこと、思っていることは伝わってきた。

 たしかに、だ。
 たしかに俺は、この【種族】の中でさえ弱い。

 【魔力】が足りないせいで、【能力スキル】だってまともに使うことが出来ない。何をやっても中途半端だったし、みんなに迷惑をかけてきたとも思ってる。――だけども、こんな最期ってあんまりだろう?

 信じていた。
 それでも好きだった仲間に見捨てられて、死んでいくなんて……。

『おい! いい加減にしろよ! 行くなら、早く足止めに行ってくれ!』

 そう思って震えている俺に、仲間だと思っていた誰かが叫んだ。
 すると咳を切ったように『早く行け!』の大合唱。子連れの親も、友達だと思っていた奴らも、みんなが『お前は役立たずだ』、『邪魔だから消えろ』という烙印を押し付けてきた。それはなんて残酷で、なんと無慈悲なことだろう。
 だけども、せめて――

『それが、俺に出来ることなら……』

 ――せめて最期にくらい、誰かの役に立てるなら。
 そう、思ってしまった。こんな仕打ちを受けながらも、俺はどこかで仲間の役に立ちたいと、そう願ってしまった。俺の命がみんなの役に立てるなら、どんなにいいことだろうか、と。

 だから、俺は仲間――だった奴らに背を向けた。
 これは決別の時。俺にとって一世一代の大勝負へと赴く、その瞬間だった。

『来るぞ! 逃げろーっ!』

 そして、その時誰かがそう叫んだ。
 すると悲鳴を上げながら、背後の気配が散っていく。
 取り残されるのは、俺だけだった。どうやらみんな、無事に逃げられたようだった。それは良かったと、そう思う反面、どこか物悲しくも感じられる。それと同時に、怒りさえ湧いてきた。

 そう。俺を取り巻くすべての環境に――

「――何だよ。残ってんの一匹だけじゃねぇか」
「これでは、ろくな【経験値】にならない……」

 すると、その時――終わりがやってきた。
 アイツら――たちだ。

「しかし、塵も積もれば山となる――とも言いますぞ?」
「そうだよ! 千里の道も、一歩から――だよっ!」

 勇者たち一行は、総勢四名。
 口々に何かを言いながら、俺のことを取り囲んだ。
 俺はぐるりと、そいつらの顔を見ていく。これから俺が戦う相手の顔を。そして、これから俺のことを――

「そんじゃ、一応倒しておきますか。ほんの足しにくらいはなるだろうし」

 ――殺す、相手の顔だ。
 リーダー格――すなわち勇者であろう男が、高々と剣を振りかぶる。
 俺はそれから目を逸らさずに、自身の内にある魔力を総動員して抵抗した。

 【分裂】――しかし、【魔力】が足りない。【失敗】した!

 だが、それもかなわず――勇者の一撃が俺を捉える!

『うあっ……!?』

 痛みなんて、なかった。
 それくらい一瞬の出来事だった。
 俺の一世一代の戦いは、あっけなく、幕を閉じるのであった。

「――うわ。【経験値】1しか入ってねぇ! 本当に、塵だよ塵!」
「ザコ、だった……」

 そう言って騒ぐ、勇者たちの声が聞こえる。
 意味は分からない。俺には【人間】の言葉なんてよく理解できない。
 それでも、馬鹿にされているのは分かった。俺のことなんて、その辺の石ころと変わらないと思っていることも。何の障害とも思っていなかった、ということも……。

『くそぉ……っ!』

 最後に、そんな声が出た。
 いくらなんでも、こんな終わり方あんまりじゃないか、と。
 そんな風に、己の運命を呪った。そして、出来ることならばと願う。

 もし――もう一度。
 せめてもう一度だけ、生を受けることが出来たなら。
 もう、こんな目に遭わないほどの力を。それこそ、勇者にも負けない力を、と。

 そして、そう願ったところで――

『――――――』



 俺は【この種族スライム】としての生涯を、静かに終えた――


◆◇◆


 ――そうして。
 どれくらいの、時間を眠っていただろうか。
 数秒か、数分か、はたまた数年か――

「ん……っ?」

 ――眠りから覚めた時。
 目の前にあったのは、予想だにしない景色だった。

 大きく広がった空間――城の中、であろうか。レンガ造りの壁に、朱い絨毯の敷かれた床。奥には大きな、【人間】でも数人が同時に通れそうなほど、大きな扉。天井には、豪華絢爛なシャンデリア。それでも外からの光が差し込まず、やや薄暗いのは、この城の主の趣向かもしれなかった。

 そして、何よりも違和感があったのは――

「手……? 足も?」

 ――四肢が、あることだった。
 手足がある。自由に動かすことが出来る。
 今までに感じたことのない感覚に、一瞬戸惑うが、どうにか立ち上がった。そして、自分の座っていたモノを見た時に、俺は驚きこう言葉を漏らす。

「玉、座……?」

 そう。それは――王が腰かけるであろう、荘厳な玉座であった。

「な、何だっていうんだ……!?」

 意味が分からない。
 俺の頭の中は、酷く混乱して、考えが何もまとまらなくなっていた。
 だけど、それだけでは終わらなかった。そんな俺に、声をかける者があったから。俺の思考はそこで一度、寸断された。

「お目覚めになられましたか――?」

 俺は声のした方を振り返る。
 中性的な声を発したその者は、漆黒のフードを被っていた。背丈は『今の』俺よりは低い。ふわりとした存在感はどこか希薄で、吹けば今にも消えてしまいそうな、そんな雰囲気だった。俺はあまりの出来事の連続に、返答することは出来ない。

 しかし、その者の言葉は――俺にある答えをもたらした。
 そう。それは――


「【魔王】――――スライ様」



 ――俺の運命を変える、大事件。



 最弱の【スライム】だった生涯の終わり。
 そして、【魔王】としての生涯の始まりを告げるモノだった――。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

帝国の王子は無能だからと追放されたので僕はチートスキル【建築】で勝手に最強の国を作る!

雪奈 水無月
ファンタジー
帝国の第二王子として生まれたノルは15才を迎えた時、この世界では必ず『ギフト授与式』を教会で受けなくてはいけない。 ギフトは神からの祝福で様々な能力を与えてくれる。 観衆や皇帝の父、母、兄が見守る中… ノルは祝福を受けるのだが…手にしたのはハズレと言われているギフト…【建築】だった。 それを見た皇帝は激怒してノルを国外追放処分してしまう。 帝国から南西の最果ての森林地帯をノルは仲間と共に開拓していく… さぁ〜て今日も一日、街作りの始まりだ!!

英雄将軍の隠し子は、軍学校で『普通』に暮らしたい。~でも前世の戦術知識がチートすぎて、気付けば帝国の影の支配者になっていました~

ヒミヤデリュージョン
ファンタジー
帝国辺境でただ静かに生き延びたいだけの少年・ヴァン。 彼に正義感はない。あるのは、母が遺したノートに記された、物理法則を応用した「高圧魔力」の理論と、徹底した費用対効果至上主義だけだ。 敵国三千の精鋭が灰燼城に迫る絶望的状況。ヴァンは剣を振るわず、心理戦と補給線攪乱だけで、たった三日で敵軍を撤退させる。 この効率的すぎる勝利は帝国の中枢に届き、彼は最高峰の帝国軍事学院への招待状を手に入れる。 「英雄になりたいわけじゃない。ただ、母の死の真相と父の秘密を知るため、生き残らなきゃならないだけだ」 無口最強の仮面メイド・シンカク、命を取引に差し出した狼耳少女・アイリ。彼は常にコスパの高い道を選び、母の遺したノートの謎、そして生まれて一度も会ったことのない父・帝国大元帥のいる帝都の闇へと踏み込んでいく。 正義も英雄も、損をするなら意味がない。合理主義が英雄譚を侵食していく、反英雄ミリタリー学園ファンタジー。

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

3点スキルと食事転生。食いしん坊の幸福無双。〜メシ作るために、貰ったスキル、完全に戦闘狂向き〜

幸運寺大大吉丸◎ 書籍発売中
ファンタジー
伯爵家の当主と側室の子であるリアムは転生者である。 転生した時に、目立たないから大丈夫と貰ったスキルが、転生して直後、ひょんなことから1番知られてはいけない人にバレてしまう。 - 週間最高ランキング:総合297位 - ゲス要素があります。 - この話はフィクションです。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~

北条新九郎
ファンタジー
 三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。  父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。  ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。  彼の職業は………………ただの門番である。  そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。  週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。

処理中です...