1 / 45
1
しおりを挟む自分が望まれた子ではないことは、使用人達の会話から理解できていた。
それに加えて、親と呼ばれる人達や、兄妹と呼ばれる人達とも顔を合わせた覚えもない。
私リリム・モーリスは、公爵家当主であり、優秀な外交官である父グラン・モーリスと、常に父に付いて一緒に仕事をこなす母メイリー・モーリスの、5番目の子としてこの世に生を受けた。
ただ、2人にとって私の存在は、思い出したくもない事そのものだとか。
3歳にして達観してしまっていた私にとって、直ぐにでも家を出ていきたい気持ちはあったものの、いかんせん其処は3歳児。どう頑張ってもこのままでは野垂れ死ぬのがわかってしまう。
そこで私は考えた。
知識と力を付けたら良いんじゃないか、と。
しかし此処は、本宅ではなく私を隔離する為の別宅。
それでも、噂好きの使用人が話すには、家庭教師という人が居るらしい。
兄達には付いているのだとか。
と言うわけで、この別宅を管理している執事さんに頼んでみた。
「まだ習うには早いのでは?」と言われたが、普段から小難しい本を大量に
読んでいるのを知っているせいか、手配してくれた。
普通は親がするものだって?
大丈夫、私の存在目に入れたくないというか、消したいらしいから。
で、付けられたのは、マナー講師、家庭教師、剣術などを教えてくれる騎士団上がりの人。
全員この執事さんの知り合いなんだって。
執事のバーナードさんは、元々騎士団の中でも頭脳、力量共に優れた人だったらしい。
先代、お祖父様の縁で、公爵家に雇われたんだけど、本宅の古株とは折り合いが悪かった。で、私の世話にまわされたんだとか。
「辞めてもよかったのですが、ちょっとした意地がありまして。」と、笑顔で説明してくれた。
この時は、これから先バーナードさんに1番お世話になるとは思わなかった。
2番目と言うか、生まれた時からお世話になっているのは、乳母のナタリーさんなんだけれども。
※※※※※※
執事バーナード視点
私執事のバーナードと申します。
先代モーリス公爵様に引き抜かれ、騎士団員から執事に転職いたしました。
私としては素性が公になるのが好ましくなかったので、有難い申し出でしたので引き受けることに致しました。
まあ公爵様はわかっておいでのようでしたが。
書類仕事や公爵家の事など、覚える事は多々ありましたが何ら問題なく1ヶ月という異例の速さで修得致しました。
まあ、そこで気に入らないと思う方も出てくるわけでして、その者達をアゴで使うのが私の細やかな楽しみとなっておりました。
しばらく経ったある日、先代様が公爵位を御子息に譲られる際、私は先代様に付いて領地の方に向かう事になりました。
領地経営は主に先代様がされておられ、私はそのお手伝いをさせていただいておりましたが、王都の使用人の方々は頭が緩いらしく、当主不在をいい事にやりたい放題。
で、見かねた先代様が私を王都の屋敷に配属し、現当主様の御子息御令嬢の教育及び使用人の教育を任されることとなりました。
4人の御子様方は性格、気性も違うので家庭教師選びに苦労しましたが、将来王宮で要職に就けるくらいには成長なさいました。
勿論御令嬢にも同じ教育を受けていただきましたよ?
馬鹿では困りますからね?
唯一違う点があるとすれば、御子息には剣術を、御令嬢には護身術をお教えした位でしょうか。
そうそう私の妻ですが居ますよ?
ちゃんと。
リリム様の乳母のナタリーが私の妻になります。
私と同じ元騎士団員で、下位貴族の御令嬢でしたので公爵様に引き抜かれる際ちょっと強引に手に入れました。
子供もおりますね。幼少期は此方で育てましたが、10を過ぎた頃に特殊訓練を受けさせるのに此方では無理がありましたので私の実家の方に送りましたが。
流石に妻には泣かれましたね。ですので2人目は女子を産んでもらいました。
そうすれば向こうに渡さずに済みますからね。少々我が家は厄介なのです。
ですが、現公爵夫妻には感謝しておりますよ?いえ本当に。
この時期にリリム様を産んでいただいて。そして、子育ての権限を全て私に託していただいて。
これでリリム様を心置き無く彼の方へ差し出すことが出来ますから。
※※※※※※
リリム祖父前公爵視点
やれやれ、我が子ながら嘆かわしい。外交で向かった先で薬を盛られてしまうなど緊張感が足りんのではないか。
それに生まれて来た子を自分の子では無いなどと言いよった。愚かにも程がある。
4番目の孫は今8歳だったか。上の3人に関してはもう教育は終わっているとバーナードが言っておったな。
今は王都の教育機関に行かせているから、使用人共から変な知識は植え付けられんだろう。寮にも入れておるしな。
あれらの休みの日には、息子夫婦にも帰ってくるよう伝えてある。「そんな時くらい子供と接する様に」と。
そんな時にできた子だ。疎むのは分かるが、どう見てもモーリス家の血筋ではないか。何をそんなに邪険に扱うのかわからんな。それとも、夫婦仲が破綻しておったのか。
もう時期4番目の孫も教育機関に通うために寮に入る。その間の邸の事はバーナードに任せようと思っていたが、生まれ落ちた子を任せる方が良さそうだな。
あれは明らかに帝国皇族に連なる者。その者がこちらの言う事を聞くと言うことはそれなりに利がある為と踏んでいる。
リリムが生まれて分かった。あれはリリムを欲している。ならばあれにリリムの養育を任すのが無難であろう。
わざわざリリムの出産に合わせて妻を妊娠させ出産させたのだから。
これが吉と出るか凶と出るか、まあ息子夫婦が与えん愛情はわしが与えるとしよう。
上4人はわしに懐いてくれんかったからな、バーナードにはよく言って聞かせよう。
1
あなたにおすすめの小説
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる