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しおりを挟むお食事処ではいい情報は仕入れられなかった。
どちらかと言えば、盗賊の話ばかりが主で他は酒と女性の話ばかり。聞いてても意味の分からない言葉が多かった。
そう決して言葉がわからないんじゃない意味が理解できないだけ。
お腹いっぱいで宿に行く。必要分以外のお金はギルドに預けてあるので問題ない。
部屋でどうしようか考えていたら後ろに気配を感じ、振り向く間もなく首に手刀を落とされ私は意識を失った。
失敗した
ん・・・、目を覚ますと豪華なベッドの上だった。服も夜着になっており身体も綺麗に洗われていた。
確かにあの宿では身体を清めようとは思わなかったし(襲われるから)、道中も帝国までは綺麗に出来たけど(国境越えた途端ひっきりなしに襲われた)臭いが酷かったのかな?女の子としてはあり得ない状態と判断されてしまったのか。
広いベッドから降りると部屋も広かった。
何処かの貴族の家なのだろうか、家具や照明、壁の装飾品に至るまで落ち着いた雰囲気にまとめたれていたが、値段は相当な物だろう。
お祖父様の家にあった物と同じ意匠の家具があるから。確かかなり有名な工房だと聞いた。数年待ちが当たり前だとも。
部屋を見渡し自分の荷物を探すが見当たらない。人の気配はしない。勝手に人様の家の物に触るわけにもいかず立ち尽くす。
取り敢えず椅子に座って考えようと足を向ければ空気が揺らいだ。
警戒するも気配を全く感じない。冷や汗が流れドアにむかって歩き出そうとしたら、肩にポンと手を置かれた。
振り向くと同時に距離を取る。どうせ武器は無いし、力も向こうが上。下手に刺激しない方がいいのだろうけど・・・、正直恐い。今まで感じた事が無いから余計かもしれない。
そんな私の心を読んだのか、黒の執事服に身を包んだ盲目とも取れる彼は穏やかに微笑んだ。
「驚かせてしまいましたね。私この邸で執事をさせていただいております。
名はございません。使用人が数人おりますが、リリム様を傷付ける愚か者はおりませんので安心してください。
バーナードから此方に来られると連絡を受けておりましたので、お部屋の方を用意しておいたのですが、普通の宿に泊まりに行かれましたので少し焦ってしまい強引なお迎えとなり申し訳ございませんでした」
思わず見惚れる程綺麗な姿勢で謝罪する執事さん。
それよりも、バーナードさんて色んな国に知り合いがいるのかしら?それともレイが間に入っている?
昨日宿の部屋に来た人も気になる。何から聞いたら繋がりやすいのかな?
「えっと、」
「昨夜リリム様のお迎えに上がったのは私です。レイや主人からくれぐれも大切におもてなしする様にと言われております。
ご存知とは思いますが、私も影の1人になります。リリム様がヴィ様と呼ばれている方が主人となり、命を捧げているお方になります。
相手の心を読むのは影には必要不可欠な能力となり、仕事面でも役立てていますのでご容赦ください。
特に私は目が見えませんので感覚がより優れているのだと教えられております。」
「あ、はい、大丈夫です。
あの、昨日来られた時と今日部屋に入られた時気配を消していたのは何故ですか?」
「私の場合は少し特殊でして、“そこに居る”と相手が思えば気配を感じることができるそうなのですが、姿を確認していただかないとわからない様に身に付いてしまっています。
ですので、空気の流れだけで私を認識いただくのは初めてで、面白くなり少し試してしまいました。申し訳ございません」
再度頭を下げられた。
影には凄い人がいるんだなって、リヴァル様って、そんな人たちに指示できるんだからもっと凄い人なんだ。
住む世界が違うのだと初めて実感した。
迎えに来ると言ってくれたけど、難しい事なんじゃないかと今更ながらに思ってしまった。レイも、バーナードさんも何も言わなかったけど。彼等なりの優しさだったのだろうか。
思わず考え込んでしまったら、ブレスレットから光が漏れ出し全身を包んでくれる。
温かくてリヴァル様に包まれているみたいで涙が出た。
「主人様は今身動きが取れない状況にありますので、代わりに我々影が見守らせてもらいます。
ですが危険な事だけはなさらないように約束してください。リリム様に何かあれば主人様はこの国を地図から消し去ります。
近年やっと穏やかになられましたので、心乱す事のない様に影一同よろしくお願いします」
・・・・・え?リヴァル様ってそんなに恐ろしい人なの?何時も微笑んでる姿しか見た事ないけど・・・。
お願いしますね。と迫力のある笑顔で再度言われ、何度も頷いた。
その後、今は翌日の昼過ぎだと教えて貰い、屋敷の位置やお店の場所など教えてもらった。
静養都市についても資料をまとめておりますので後でお渡しします、と言われ取り敢えず昼食を頂いた。
香辛料で有名なだけあって、昨日の晩御飯も美味しかったけど、この邸の料理人の作る物も凄く美味しかった。
新しい服が用意されており、女とは分からない様に工夫もされていた。
静養都市で舞子として働くにあたって、着る服を買おうと思っていたら、それも既に何着か用意されていた。
じゃあ・・・後は・・・ギルドで情報集めるだけかな?
数日滞在させてもらい、準備を整え静養都市に向かう。
今度は冒険者としてではなく、観光者としていく方が怪しまれなくて良いのだとか。荷物も綺麗に纏めて貰えたので嵩張らずありがたい。
泊まる所は自分で探すと伝え、宿泊のお礼を述べると、影の者が数人付くと思いますがお気になさらず。と言われて、えっ?っとなった。
最後は鶴の一声、主人様の命令です。
過保護な方を持ってしまったと思う反面、心配されているのが嬉しかったのは内緒である。
※※※※※
ルーデン執事視点
バーナードからリリムという少女がルーデンに向かっていると連絡が来た時、何故此方が面倒を見なければいけないのかわからなかった。
レイからも同じような連絡をもらった。手厚く迎える様にと。
あの2人が言うのだから重要人物なのだろう。だが、不審な事も多かった為、本格的な用意はしていなかった。
数日後、盗賊達が狩られているという話が街で広がり始めた。物資や、金品さらには命でさえ奪われる事が多いルーデンで盗賊達を狩るなど、主人様と同じ戦闘狂でもいるのかと使いを出してみれば、リリムという冒険者だと言うではないか。
もう数日で王都に入ると連絡を貰い、部屋の準備をする。
連絡用の水晶が光、久しぶりに主人様の顔を拝む。影を取り仕切っているのは彼なのだから。
「今回は少しお願いがあって連絡しました」
前置きもなく本題に入る。水晶越しの感覚でもわかる。怒っている。
「どの様な御用件でもお受けいたします」
彼がその気になればこの状態でも私を殺せるだろう。嫌な汗が背中を流れた。
「そうですか?では、もうすぐ王都に着くリリムという冒険者のために休める部屋と食事、身体を清める侍女を付けて下さい。
あの子は僕の大事な子です。無碍に扱う事は許しません。バーナードとレイから連絡はありませんでしたか?
あの2人なら先に連絡を入れていたと思うのですが」
瞬間死を覚悟し質問に応える。此方がどの様な状態であるか彼は理解している。
「申し訳ありません、お部屋は用意しているのですが、場所を変えさせていただきます。リリム様が到着される迄に必要な物は全て揃えます。
他に入りような物があればお教えください」
「クスクスクス、そんなに怖がらないで。大丈夫君の実力は分かっているから簡単には切り捨てないよ?
そうだね、用意して欲しいのは、静養都市で使用する舞子としての衣裳かな。露出の少ないのを数点用意して。
あと、今着ている服もボロボロになっているだろうから替もお願い。
で、あの子の事だから宿に泊まると思うんだ。無理にでも目の届く安全な所(そちらの邸)に連れてきて身体も清めてゆっくり休ませてあげて。
僕からのお願いは以上だよ。
くれぐれも変な気は起こさないようにお願いするね?報告待っているよ」
言い終わると通信が切れる。お咎めがなかっただけ良かった。
直ぐにでも言われたものの準備に取り掛かる。
彼が気にかける方リリム。お会いするのが楽しみになりました。
彼が1人にこれ程執着したのは初めてだから。
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