デビルサマナー

John Smith/ジョン スミス

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十六話

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 魔法陣の中から現れた黒鉄と白銀は、共に臨戦態勢を取る。そして湊はさっきの悪魔を倒すように命じる……つもりだった。
しかし標的の悪魔は黒鉄と白銀が魔方陣から出る前に霧散してしまったのだ。消える前にはるか前方で悪魔召喚の際の青白い光が発せられ、翼のある人型の悪魔が召喚された。
 その翼のある悪魔が倒したのだ。
 つまりそこには悪魔を召喚し使役できる人間、悪魔使いがいるということになる。
 
「行こう!」
 
 黒鉄を従えた湊が走り出すと、それを追ってイオも走り出した。すると翡翠色の機体が確認でき、その隣には露出度の高い衣装に白い布を纏ったポニーテールの女性がいた。
 端末を握っているところを見ると、彼女が翡翠を使役する悪魔使いであろう。
 
「その服……あんた、国連軍の人なん?」
 
先にポニーテールの女性が湊に声をかけてきた。
 
「はい。美鶴湊です。予備兵科の訓練兵ですが、この事態ですから」
 
そう答えた。
すると彼女は大袈裟に言う。
 
「訓練兵!? そんなに人手不足なんか国連軍は。けど、使役している悪魔は上級のものを使役しとるんやねぇ」
「ところであなたのお名前は?」
「ウチ、二階堂ヒナコっていうねん」
「二階堂さんはどうやって悪魔を手に入れたんですか?」

 湊がそう訊くと、彼女は笑顔で答えた。
 
「なんかやばくなった時に、来い! って叫んだら召喚されたわ。あ、ウチのことはヒナコでええねん。年齢は19くらいや。アンタは?」
 
湊は彼女の体つきと度胸から20代半ばだと思っていたのだったが現実は違っていた。
 
「あんたらは中学生くらいやろ?」
「いえ、僕は10歳で、こっちも幼馴染のイオです」
「イオです。よろしくお願いします」
 
 そこでイオもヒナコと挨拶をした。ヒナコは非常に人懐っこくて社交的だ。明るい。おかげで湊たちはすぐにうち解けた。
 
「ミヤビちゃん、ウチを国連軍の基地に連れてってくれへん?」
 
突然ヒナコが言い出した。
 
「湊くんほどやないけど、ウチもそれなりに戦力になると思うんや」
「ええ、翡翠を使役しているサマナーなら国連軍でも歓迎してくれると思います。15時に本局へ行くことになっていますから、一緒にいらっしゃいますか?」
「もちろんや。でもまだ約束の時間には早いな。せっかく大阪へ来てくれたんやさかい、いろいろ案内するわ」
「でしたらお願いがあります。実はわたしたち、人を探しているんです」

 湊は自分達が国連軍の重要人物を探していることを告げた。
 
「ようわかったで。ほな、行こか」
 
ヒナコに案内されて、湊はフミの捜索を再開した。


 
 
「さて、会議を始めよう」
 
総司令の一声で会議が始まった。
出席者は局長である総司令の他は大阪本局の局長代理、名古屋支局長、大阪本局で現場の統括をしている戦闘隊長と、そして技術班の局員。
 彼は責任者であるフミが不在のために駆り出されたのだった。また移動手段のない福岡支局長と札幌支局長はモニターによる参加となっている。

「まずは各支局の状況、そして〈悪魔召喚〉悪用者と対処と民間人協力者の対応についてである。各支局がある都市はかなりの打撃を受けて壊滅状態であり、〈悪魔召喚〉悪用者の影響もあってかかなり混沌とした状況である」
「さらに〈悪魔召喚〉によって悪魔を召喚する者はいても、その殆どは呼び出した悪魔と契約できずに死亡し、悪魔は野良悪魔となって人々を襲っている」
「気になるのは名古屋の報告で、こちらは悪用者というよりは暴徒であるということだ。医療品や食料品を国連軍が独占していることが気に食わないと言って、ひとりの青年が暴徒をまとめているという情報が入っている。
そしてフミは依然として見つかってない」

 重苦しい雰囲気が流れる。
 光明の見えない、その時だった。けたたましく非常警戒のサイレンが鳴った。
会議に出席していた幹部局員たちは慌てるが、総司令だけは落ち着いている。こうなることを予測していたようで、冷静な口調で言った。
 
「何事だ?」
 
 彼の問いに司令室の女性局員が答える。
 
「何者かによってサイバー攻撃を受けています! 外部からの結界システムへのハッキングです!」
「急いでサーバーのある地点を確認しろ」
 
 総司令の指示で局員たちは個々に動き始めた。
 彼も立ち上がると会議室を出て司令室へと向かった。
 
(国連軍の回線には考えうるあらゆるプロテクト技術の他に魔術による防御が施されている。こんなことができるのは行方不明のフミのみ。洗脳か裏切りか」
 
 司令室では防御プログラムをフル稼働させ、さらに侵入経路ネットワークの逆探知をしてハッカーの居場所を探索していた。しかし状況は悪化の一途を辿っている。
第1層を突破され、魔術式による暗号も解読されていく。さらに第2層もと第3層も突破されてしまった。
数分後、総司令が司令室に到着するやいなや、男性局員が探査結果を報告した。
 
「サーバー特定、浪速区・フェスティバルゲート跡地内部です!  直ちに現場に向かいます!」
 
 数名の戦闘班の局員が現場に向かおうとするが、それを総司令が制止する。
 
「待て。付近にいるものがいないか調べろ」
「反応あります! 美鶴湊予備兵科前衛と新田イオ、あとは民間人協力者の二階堂ヒミコです!」
「そいつらを向かわせろ。こちらのリソースは防御に回す。連絡を繋げ指示を出す」
「了解」



『こちら作戦司令本部より美鶴湊へ』
「はい」
『国連軍基地がサイバー攻撃を受けている。そのサーバーが浪速区にあるフェスティバルゲート跡地内部だと判明した。直ちにハッカーの身柄を確保しろ。恐らくハッカーは行方不明者のフミ博士だと思われる』
「了解です、では急いで現場へ向かいます」
 
 通信を切ると、湊はヒナコに訊いた。
 
「浪速区のフェスティバルゲート跡地ってどこですか?」
「それやったら通天閣の300メートルくらい南、天王寺公園の近くや。せやけど何があったん?」
「国連軍基地がサイバー攻撃を受けているそうです。そのサーバーがフェスティバルゲートにあるらしく、わたしが対処することになりました」
「そやったら急がんとあかんな」

一刻を争う事態だが、ここからフェスティバルゲート跡地まで直線距離でも3キロメートル以上あり、瓦礫の中を歩いて行くとなるとどれだけ時間がかかるかわからない。
 
「黒鉄の重力制御なら、いけるか?」

 湊はまだ訓練兵だ。悪夢どころか重力を操るなんてテクニックを習っていない。
 
「私の空間制御なら瞬間移動できるんじゃ」
「あまりにも危険すぎる。僕がやる」
 
そう言って、黒鉄を膝を折り曲げて、両手に包むようにして全員を持つ。
 
 
「しっかり掴まっていてください! 振り落とされたら終わりです!」
 
そう叫ぶと、黒鉄は重力を操り瓦礫の山を軽々と飛び越えて行ったのだった。

「はは、ぶっつけ本番でもうまくいくものだな」
「集中! 集中!」
「大丈夫、集中してる」
「これで落っこちたらみんな死んでまうなぁ」
「余計なことを言わないでください!」
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