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国連軍作戦司令本部。
「現在の状況は?」
「第6層を突破されました!」
「こちらからの攻撃プログラムは?」
「依然効果ありません! すべて無効化されています!」
「チッ…仕方がない。NN2を使え」
NN2とはフミが開発していたウィルスプログラムの名称だ。未完成のため彼女がいないまま使用するのは危険だが、背に腹は代えられぬということなのだろう。
「NN2、起動します!」
局員の操作でNN2が起動する。
(これは単なる時間稼ぎに過ぎない。後は君の手腕にかかっている。頼んだぞ)
モニター画面の向こう側にいる湊に総司令は心の中で呼びかけたのだった。
湊が駆けつけた時にはすでに啓太の悪魔と天使が闘っていた。イオたちとは合流できていないようだ。
「啓太さん!」
「湊!? なんや! 何しに来た!? 待ち合わせはビッグマンって言うたやろ」
湊の登場に啓太は驚いている。
「俺も加勢します」
「大きなお世話や!」
「そんなこと言っている場合じゃないのはわかるでしょう! 国連軍がハッキングを受けているんです! 早く止めないと!」
「え……?」
国連軍がピンチだと聞き、啓太は勢いを失くす。
「とにかくその天使達をやっつけてしまいますよ!」
「あ、ああ…」
啓太の操るロードナイトと天使はほぼ同レベルだ。ならば黒鉄の参入でこちらが圧倒的に有利となる。
(ひとりでフミさんを捕まえるより、ここで天使を始末して彼とふたりで取り押さえた方が良いに決まっている。またさっきみたいにこいつに邪魔されたら面倒だからな)
湊はそう判断した。
「同時に仕掛けます、いいですね?」
「あ? 何、俺に命令しとんねん?」
「命令じゃありません。仲間に同意を求めているだけですよ。すみません、おねがいします」
湊が頭を下げると、啓太は頷いた。自分より小さな子供が本気でやっているのに意地を張るのは馬鹿らしくなったのだろう。
気を引き締め直した。そしてまだまだ現れる天使へと、重力砲撃を叩きこんでいく。ミドル級の数はもう少ない。前面に展開する天使のほとんどが、スモール級か、ミドル級だけになっている。
「間合いを保てよ! 冷静にな!」
「誰にものいっとんねん!!」
湊は啓太に忠告しながら、自分の戦い方を守る。冷静に、相手の攻撃が届かない位置から、重力砲を叩き込む。だが、それでは魔力の消耗が激しくなる。
湊は想定されていた以上に作戦時間が伸びている、と判断し―――啓太もそれに頷いた。
直後、長刀を意識する。
「っ、ここだ!」
前面ではない、ミドル級の背後から近づき、長刀を一閃。ミドル級の首を切り飛ばし、即座に飛び上がって後退する。
「それでいいです! 正面からも、いけると思ったら躊躇するなよ! あと、短刀はまだお前には早いからな!」
「だから何で上から目線やねん!?」
訓練でさんざん教えられた長刀の扱い方。それを遵守しつつ、湊は次々に目の前の天使を屠っていく。ミディアム級に飛びつく間も与えず、悪魔を絶えず動かしながら陽動と、先鋒としての斬り込み役をこなしていく。絶え間なく動き続ける天使の中、ベストポジションを選択、確保しつつ相手を切り崩していく。
啓太の合図で湊は黒鉄をリーダー格の天使にけしかけた。
「行け、黒鉄!」
黒鉄の重力を纏った拳を受けたリーダー格の天使は、そのまま姿を消した。
「チッ、逃げよったか」
苦々しく舌うちする啓太に湊は呼びかける。
「この上に国連軍のシステムをハッキングしているハッカーがいるんです。捕まえるのを手伝ってください」
湊たちはフミのいる部屋へ引き返すと、大型コンピューターの陰に隠れた。
「あ、その前にコンピューターをぶっ壊しましょう。これがトラブルの元凶ですから」
「それは俺がやったる」
啓太はロードナイトに命じて近くにあったコンピューターを叩き壊した。その頃、国連軍大阪本局司令室に詰める局員たちの間には悲壮感が漂い始めていた。
「第9層突破されました! 最終防衛ライン、アザトースに達します!」
「侵攻率のカウントダウン、入ります!」
局員の切羽詰まった声にさすがの司令官の顔にも焦りの色が浮かんでいる。
「侵攻率92…93%」
カウントする局員の声に、他の局員たちは互いに自分の不安や不満を吐露し始めた。
「このままでは完全に侵攻されてしまうわ…」
「霊的防御がないまま侵略者が現れてみろ、無防備で太刀打ちなんかできるのか?」
その時だった。侵攻率のカウントをしていた局員が震える声で告げた。
「侵攻率95…と、止まりました!」
一瞬の沈黙の後、「Fire Wall Damage 95.14%」と表示されたままストップしているモニター画面に全局員の視線が向けられた。
「おおっ!」
「やったぞ!」
互いに肩を抱き合って喜ぶ局員たち。
しかし総司令だけは違っていた。
(奴がこの程度で退くはずがない)
険しい顔でモニターを凝視しながら、ひとり呟いた。
「次はどう出る、天使ども」
◆
コンピューターを破壊したところ、フミの手も止まった。
「終いや。そいつを取り押さえろ」
啓太がロードナイトに命じる。
無抵抗…というより糸の切れた操り人形のようなフミはいとも簡単に拘束できた。
「これで任務完了ですね」
湊はそう呟くと、吹き抜けになっているホールの1階を見下ろした。
そこには雑魚天使を一掃したイオたちの姿が見える。
「そっちは大丈夫ですか~!?」
声をかけると、イオが大きく手を振って応えた。その直後だった。湊の背後に禍々しいオーラを放つ何かが出現した。
その声に威圧感に振り向くと、そこにはリーダー格の天使がいた。
宙空に浮かんでおり、湊を見下ろしている。
逃げたと思っていたのは湊の勘違いだった。彼が油断するのを待ち、その隙を狙っていたのだ。
「あかん! 逃げろ、湊!」
湊は横から飛び出して来た啓太によって力いっぱい弾き飛ばされた。
リーダー格の天使が光の槍生み出し、啓太をロードナイトごと突き刺した。そしてそのまま八つ裂きにして、血と肉片が周囲に散らばる。
「う、おおおおおお!!」
驚きから回復した湊が、怒りの雄叫びをあげながら黒鉄を駆動させる。魔力が噴出して、巨大な重力の破壊の嵐が巻き起こる。
「潰れてしまえええええええ!!」
上と下から天使を押し潰して粉々に打ち砕いた。しかし、天使は最後の力でフミの持つPCにコードを入力する。すると一気に進行度が進んでいった。
侵食率100%。
国連軍の持つ霊的防御結界が破壊された。
「現在の状況は?」
「第6層を突破されました!」
「こちらからの攻撃プログラムは?」
「依然効果ありません! すべて無効化されています!」
「チッ…仕方がない。NN2を使え」
NN2とはフミが開発していたウィルスプログラムの名称だ。未完成のため彼女がいないまま使用するのは危険だが、背に腹は代えられぬということなのだろう。
「NN2、起動します!」
局員の操作でNN2が起動する。
(これは単なる時間稼ぎに過ぎない。後は君の手腕にかかっている。頼んだぞ)
モニター画面の向こう側にいる湊に総司令は心の中で呼びかけたのだった。
湊が駆けつけた時にはすでに啓太の悪魔と天使が闘っていた。イオたちとは合流できていないようだ。
「啓太さん!」
「湊!? なんや! 何しに来た!? 待ち合わせはビッグマンって言うたやろ」
湊の登場に啓太は驚いている。
「俺も加勢します」
「大きなお世話や!」
「そんなこと言っている場合じゃないのはわかるでしょう! 国連軍がハッキングを受けているんです! 早く止めないと!」
「え……?」
国連軍がピンチだと聞き、啓太は勢いを失くす。
「とにかくその天使達をやっつけてしまいますよ!」
「あ、ああ…」
啓太の操るロードナイトと天使はほぼ同レベルだ。ならば黒鉄の参入でこちらが圧倒的に有利となる。
(ひとりでフミさんを捕まえるより、ここで天使を始末して彼とふたりで取り押さえた方が良いに決まっている。またさっきみたいにこいつに邪魔されたら面倒だからな)
湊はそう判断した。
「同時に仕掛けます、いいですね?」
「あ? 何、俺に命令しとんねん?」
「命令じゃありません。仲間に同意を求めているだけですよ。すみません、おねがいします」
湊が頭を下げると、啓太は頷いた。自分より小さな子供が本気でやっているのに意地を張るのは馬鹿らしくなったのだろう。
気を引き締め直した。そしてまだまだ現れる天使へと、重力砲撃を叩きこんでいく。ミドル級の数はもう少ない。前面に展開する天使のほとんどが、スモール級か、ミドル級だけになっている。
「間合いを保てよ! 冷静にな!」
「誰にものいっとんねん!!」
湊は啓太に忠告しながら、自分の戦い方を守る。冷静に、相手の攻撃が届かない位置から、重力砲を叩き込む。だが、それでは魔力の消耗が激しくなる。
湊は想定されていた以上に作戦時間が伸びている、と判断し―――啓太もそれに頷いた。
直後、長刀を意識する。
「っ、ここだ!」
前面ではない、ミドル級の背後から近づき、長刀を一閃。ミドル級の首を切り飛ばし、即座に飛び上がって後退する。
「それでいいです! 正面からも、いけると思ったら躊躇するなよ! あと、短刀はまだお前には早いからな!」
「だから何で上から目線やねん!?」
訓練でさんざん教えられた長刀の扱い方。それを遵守しつつ、湊は次々に目の前の天使を屠っていく。ミディアム級に飛びつく間も与えず、悪魔を絶えず動かしながら陽動と、先鋒としての斬り込み役をこなしていく。絶え間なく動き続ける天使の中、ベストポジションを選択、確保しつつ相手を切り崩していく。
啓太の合図で湊は黒鉄をリーダー格の天使にけしかけた。
「行け、黒鉄!」
黒鉄の重力を纏った拳を受けたリーダー格の天使は、そのまま姿を消した。
「チッ、逃げよったか」
苦々しく舌うちする啓太に湊は呼びかける。
「この上に国連軍のシステムをハッキングしているハッカーがいるんです。捕まえるのを手伝ってください」
湊たちはフミのいる部屋へ引き返すと、大型コンピューターの陰に隠れた。
「あ、その前にコンピューターをぶっ壊しましょう。これがトラブルの元凶ですから」
「それは俺がやったる」
啓太はロードナイトに命じて近くにあったコンピューターを叩き壊した。その頃、国連軍大阪本局司令室に詰める局員たちの間には悲壮感が漂い始めていた。
「第9層突破されました! 最終防衛ライン、アザトースに達します!」
「侵攻率のカウントダウン、入ります!」
局員の切羽詰まった声にさすがの司令官の顔にも焦りの色が浮かんでいる。
「侵攻率92…93%」
カウントする局員の声に、他の局員たちは互いに自分の不安や不満を吐露し始めた。
「このままでは完全に侵攻されてしまうわ…」
「霊的防御がないまま侵略者が現れてみろ、無防備で太刀打ちなんかできるのか?」
その時だった。侵攻率のカウントをしていた局員が震える声で告げた。
「侵攻率95…と、止まりました!」
一瞬の沈黙の後、「Fire Wall Damage 95.14%」と表示されたままストップしているモニター画面に全局員の視線が向けられた。
「おおっ!」
「やったぞ!」
互いに肩を抱き合って喜ぶ局員たち。
しかし総司令だけは違っていた。
(奴がこの程度で退くはずがない)
険しい顔でモニターを凝視しながら、ひとり呟いた。
「次はどう出る、天使ども」
◆
コンピューターを破壊したところ、フミの手も止まった。
「終いや。そいつを取り押さえろ」
啓太がロードナイトに命じる。
無抵抗…というより糸の切れた操り人形のようなフミはいとも簡単に拘束できた。
「これで任務完了ですね」
湊はそう呟くと、吹き抜けになっているホールの1階を見下ろした。
そこには雑魚天使を一掃したイオたちの姿が見える。
「そっちは大丈夫ですか~!?」
声をかけると、イオが大きく手を振って応えた。その直後だった。湊の背後に禍々しいオーラを放つ何かが出現した。
その声に威圧感に振り向くと、そこにはリーダー格の天使がいた。
宙空に浮かんでおり、湊を見下ろしている。
逃げたと思っていたのは湊の勘違いだった。彼が油断するのを待ち、その隙を狙っていたのだ。
「あかん! 逃げろ、湊!」
湊は横から飛び出して来た啓太によって力いっぱい弾き飛ばされた。
リーダー格の天使が光の槍生み出し、啓太をロードナイトごと突き刺した。そしてそのまま八つ裂きにして、血と肉片が周囲に散らばる。
「う、おおおおおお!!」
驚きから回復した湊が、怒りの雄叫びをあげながら黒鉄を駆動させる。魔力が噴出して、巨大な重力の破壊の嵐が巻き起こる。
「潰れてしまえええええええ!!」
上と下から天使を押し潰して粉々に打ち砕いた。しかし、天使は最後の力でフミの持つPCにコードを入力する。すると一気に進行度が進んでいった。
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