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「システムダウン……通天閣の防御結界が、消滅しました」
モニターを見つめていた軍人が震える声で目の前の事実を告げる。それは大阪の霊的防御機能がゼロとなったことを意味し、軍人たちの顔は青ざめ、言葉を失った。そして十数秒の沈黙の後、ひとりの女性局員が叫んだ。
「大阪に大天使が出現しました!」
メインモニターに映し出された大天使を見た湊は呟いた。
「このタイミングで出現するとは、やはり作為的な」
大阪湾に出現した青い翼のような第2の大天使はまっすぐに通天閣を目指していた。
◆
フミを保護したが、啓太は死亡した。真っ赤な鮮血で染まったその体で、湊は地面に拳を叩きつける。守られた。守ってくれた。
その悔しさを噛み締めながら立ち上がる。
通信を本部に繋ぐ。
「フミ博士を無事に保護しました。意識はありませんが、見える範囲に怪我はないと思われます」
『良くやった。しかしそれで終わりではない。大天使が現れた』
「何だと!?」
『次の指示を与える。本局の局員を迎えにやった。詳細は彼らから聞きたまえ』
「了解しました」
湊は総司令からの連絡を皆に伝え、その直後に彼女たちを迎えに来た国連軍の車に乗る。しかし湊だけひとりで別の車に乗せられた。
総司令指示であるが、その意図は彼にすらわからない。大阪の霊的防御機能がゼロとなった隙を狙っての第二の大天使の襲来。
人類を妨害をするために天使がフミを利用したのは明確となったわけだが、それは今さらどうでも良いことだ。
第二大天使は大阪湾上空に出現し、真っ直ぐに通天閣を目指していた。
(神の目から見たら人間なんて愚かでくだらない生き物だろうけど、だからといって勝手に滅ぼそうとするなんて許せない。全ての生命は生まれた時点で他の種族を滅ぼしてでも生きるべきなんだ。生きるのは権利や義務じゃ計れない。くそったれの天使どもめ!)
湊は車窓の景色に目をやりながら、改めて自分のなすべきことを強く心に誓ったのだった。
『戦車隊、壊滅』
「第二大天使、新大阪より南に向かって進行中」
司令室の局員たちが現在の状況を淡々と告げていく様子を車内のモニター越しで見つめていた湊は愕然とした。
十三大橋には自衛隊の戦車がずらりと並んで迎撃態勢をとっていたが大天使にはその強力な砲は効かず、逆に大天使が撒き散らす光の槍のようなものによってあっという間に全滅してしまったのだ。
これで大天使には通常の攻撃ではまったく効果がないことがはっきり証明されたわけだ。
そして大天使に対して唯一対抗しうる力が悪魔使いたちの召喚する悪魔だけだ。
「国連軍総力をあげて敵を殲滅する。……始めろ」
湊の命令によって作戦が開始された。どうやら政府の一部の人間は国連軍の力を信じずに自分たちの戦力、つまり自衛隊によって大天使を倒すことができると高を括っていたようだ。
おかげで犠牲者は増えてしまった。
湊は“無能な連中”について怒りを覚える。
「霊的防御を失ったため、敵は万全の状態で出現した。戦力は想定していたものの恐らく10倍以上…。大天使の目的は大阪の結界・通天閣。これを失えば大阪が物理的に消えることとなる。サマナーの小隊を大天使進行ルートに配置。大阪本局の全戦力をもって迎撃する」
車内モニターの映像が大天使の姿から大阪の地図に変わる。そしてその上には「新大阪防衛ライン」「梅田防衛ライン」「大阪市庁舎防衛ライン」「瓦町防衛ライン」「中央通り防衛ライン」「難波防衛ライン」「最終防衛ライン」と通天閣に向かって来るメラクを7段階に分けて迎撃するという作戦が表示された。
すでに新大阪防衛ラインの位置には「通信途絶」と表示されているから、あと6つの防衛ラインで大天使を迎え撃つことになる。
民間人協力者も国連軍と共に大天使と戦うことになり、湊は最終防衛ラインに配置されることとなった。
◆
湊と同行していた民間人の悪魔使いたちを、総司令は大天使迎撃のための防衛ラインに配置した。
ヒナコは瓦町、そしてミヤビのいる最終防衛ラインはなんばパークス屋上で、ここが決戦の地となる。
一方、戦闘能力が低すぎるということでイオは本局内で待機となっている。
これは総司令が判断した各悪魔使いの能力と“役割”によるもの。新大阪防衛ラインを突破され、まもなく梅田防衛ラインでの迎撃が開始される状況で有能な悪魔使いを後ろに置いて温存するには理由がある。
梅田や大阪市庁舎に配置した国連軍のデビルサマナーたちと戦わせて大天使の能力を得ようという算段なのだ。
総司令とって自分の部下は捨て駒のひとつでしかなく、国連軍のデビルサマナー部隊も自分の存在意義をわきまえている。だからこそ混乱は起きず、ただ淡々と目の前の敵に対して戦いを挑んでいた。
「う、梅田防衛ライン、全滅…」
モニターには「梅田防衛ライン生存率0%」、そして参戦していた国連軍の名と「DEAD」の文字が表示されている。
それは司令室のモニターだけでなく、各防衛ラインの責任者の持つタブレット端末にも転送されていた。
次の防衛ラインの大阪市庁舎で待機する局員たちに緊張が走った。
状況は圧倒的に不利だが総司令にはまだ余裕があった。彼には勝算があったのだ。
しかし次の大天使の攻撃を目の当たりにし、さすがの彼も焦りの色が見え始めた。なにしろ大天使が放った光のビームはビルの間を抜けて、通天閣を掠めたのだから。
その破壊力はけた外れに大きく、防御壁を張っていた地下祭壇の呪者に犠牲者が出るほど激しいものだったのだ。
掠めただけでも多大な被害が出たこの攻撃が通天閣に直撃すれば大阪の街は一瞬で消え去ることだろう。さらに状況は悪化し、大阪市庁舎防衛ラインも沈黙した。
「湊、前へ行ってもらう。君の使う黒鉄のパワーは強い。予備とはいえ兵士だ。死ぬ覚悟はあるな」
「依然、変わりなく」
「結構」
モニターを見つめていた軍人が震える声で目の前の事実を告げる。それは大阪の霊的防御機能がゼロとなったことを意味し、軍人たちの顔は青ざめ、言葉を失った。そして十数秒の沈黙の後、ひとりの女性局員が叫んだ。
「大阪に大天使が出現しました!」
メインモニターに映し出された大天使を見た湊は呟いた。
「このタイミングで出現するとは、やはり作為的な」
大阪湾に出現した青い翼のような第2の大天使はまっすぐに通天閣を目指していた。
◆
フミを保護したが、啓太は死亡した。真っ赤な鮮血で染まったその体で、湊は地面に拳を叩きつける。守られた。守ってくれた。
その悔しさを噛み締めながら立ち上がる。
通信を本部に繋ぐ。
「フミ博士を無事に保護しました。意識はありませんが、見える範囲に怪我はないと思われます」
『良くやった。しかしそれで終わりではない。大天使が現れた』
「何だと!?」
『次の指示を与える。本局の局員を迎えにやった。詳細は彼らから聞きたまえ』
「了解しました」
湊は総司令からの連絡を皆に伝え、その直後に彼女たちを迎えに来た国連軍の車に乗る。しかし湊だけひとりで別の車に乗せられた。
総司令指示であるが、その意図は彼にすらわからない。大阪の霊的防御機能がゼロとなった隙を狙っての第二の大天使の襲来。
人類を妨害をするために天使がフミを利用したのは明確となったわけだが、それは今さらどうでも良いことだ。
第二大天使は大阪湾上空に出現し、真っ直ぐに通天閣を目指していた。
(神の目から見たら人間なんて愚かでくだらない生き物だろうけど、だからといって勝手に滅ぼそうとするなんて許せない。全ての生命は生まれた時点で他の種族を滅ぼしてでも生きるべきなんだ。生きるのは権利や義務じゃ計れない。くそったれの天使どもめ!)
湊は車窓の景色に目をやりながら、改めて自分のなすべきことを強く心に誓ったのだった。
『戦車隊、壊滅』
「第二大天使、新大阪より南に向かって進行中」
司令室の局員たちが現在の状況を淡々と告げていく様子を車内のモニター越しで見つめていた湊は愕然とした。
十三大橋には自衛隊の戦車がずらりと並んで迎撃態勢をとっていたが大天使にはその強力な砲は効かず、逆に大天使が撒き散らす光の槍のようなものによってあっという間に全滅してしまったのだ。
これで大天使には通常の攻撃ではまったく効果がないことがはっきり証明されたわけだ。
そして大天使に対して唯一対抗しうる力が悪魔使いたちの召喚する悪魔だけだ。
「国連軍総力をあげて敵を殲滅する。……始めろ」
湊の命令によって作戦が開始された。どうやら政府の一部の人間は国連軍の力を信じずに自分たちの戦力、つまり自衛隊によって大天使を倒すことができると高を括っていたようだ。
おかげで犠牲者は増えてしまった。
湊は“無能な連中”について怒りを覚える。
「霊的防御を失ったため、敵は万全の状態で出現した。戦力は想定していたものの恐らく10倍以上…。大天使の目的は大阪の結界・通天閣。これを失えば大阪が物理的に消えることとなる。サマナーの小隊を大天使進行ルートに配置。大阪本局の全戦力をもって迎撃する」
車内モニターの映像が大天使の姿から大阪の地図に変わる。そしてその上には「新大阪防衛ライン」「梅田防衛ライン」「大阪市庁舎防衛ライン」「瓦町防衛ライン」「中央通り防衛ライン」「難波防衛ライン」「最終防衛ライン」と通天閣に向かって来るメラクを7段階に分けて迎撃するという作戦が表示された。
すでに新大阪防衛ラインの位置には「通信途絶」と表示されているから、あと6つの防衛ラインで大天使を迎え撃つことになる。
民間人協力者も国連軍と共に大天使と戦うことになり、湊は最終防衛ラインに配置されることとなった。
◆
湊と同行していた民間人の悪魔使いたちを、総司令は大天使迎撃のための防衛ラインに配置した。
ヒナコは瓦町、そしてミヤビのいる最終防衛ラインはなんばパークス屋上で、ここが決戦の地となる。
一方、戦闘能力が低すぎるということでイオは本局内で待機となっている。
これは総司令が判断した各悪魔使いの能力と“役割”によるもの。新大阪防衛ラインを突破され、まもなく梅田防衛ラインでの迎撃が開始される状況で有能な悪魔使いを後ろに置いて温存するには理由がある。
梅田や大阪市庁舎に配置した国連軍のデビルサマナーたちと戦わせて大天使の能力を得ようという算段なのだ。
総司令とって自分の部下は捨て駒のひとつでしかなく、国連軍のデビルサマナー部隊も自分の存在意義をわきまえている。だからこそ混乱は起きず、ただ淡々と目の前の敵に対して戦いを挑んでいた。
「う、梅田防衛ライン、全滅…」
モニターには「梅田防衛ライン生存率0%」、そして参戦していた国連軍の名と「DEAD」の文字が表示されている。
それは司令室のモニターだけでなく、各防衛ラインの責任者の持つタブレット端末にも転送されていた。
次の防衛ラインの大阪市庁舎で待機する局員たちに緊張が走った。
状況は圧倒的に不利だが総司令にはまだ余裕があった。彼には勝算があったのだ。
しかし次の大天使の攻撃を目の当たりにし、さすがの彼も焦りの色が見え始めた。なにしろ大天使が放った光のビームはビルの間を抜けて、通天閣を掠めたのだから。
その破壊力はけた外れに大きく、防御壁を張っていた地下祭壇の呪者に犠牲者が出るほど激しいものだったのだ。
掠めただけでも多大な被害が出たこの攻撃が通天閣に直撃すれば大阪の街は一瞬で消え去ることだろう。さらに状況は悪化し、大阪市庁舎防衛ラインも沈黙した。
「湊、前へ行ってもらう。君の使う黒鉄のパワーは強い。予備とはいえ兵士だ。死ぬ覚悟はあるな」
「依然、変わりなく」
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