デビルサマナー

John Smith/ジョン スミス

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 湊が瓦町防衛ラインに近づくと、そこでは国連軍の召喚した悪魔が第二大天使に攻撃していた。しかし第二大天使から発射される光の槍によって次々に消滅させられる。
 上空から見る限り、ヒナコと軍人たちにはまだ犠牲者は出ていないようだった。湊が彼女たちのいる場所へ降下しようとした次の瞬間、第二大天使が彼女たちに向けて光の槍を発射した。
 
「打ち砕け!!」
 
 湊は黒鉄に迎撃するよう命じた。するとミサイルは上空で爆破し、ヒナコたちへの直撃は免れた。
 
「大丈夫ですか!?」
 
 湊が地上へ降り立つやいなや、先程の爆風で吹き飛ばされたヒナコに駆け寄った。
 
「湊!? あんた、しんがりやないの!?」
「みなさんを見殺しにはできません! ここで迎え撃つように指示を受けました!」
「ここを最終防衛ラインにする気なんやろうか」
「俺が第二大天使の進撃を食い止めます。黒鉄!!」
 
 黒鉄は第二大天使本体に重力砲撃を放つが、ミサイルと違ってまったく効果はなかった。そして第二大天使はミサイルを発射を発射した。
 その数は数十を数え、再度召喚された悪魔たちを吹き飛ばす。そしてミサイルのいくつかは悪魔たちの防御壁を越えて湊たちの方に飛んで来た。
 
「あかん、湊ちゃん!」
 
そう叫んだヒナコは湊の上に覆いかぶさった。
湊を守ろうとした黒鉄によってミサイルは破壊されたが、間近であったために爆風とミサイルの破片が彼ちを襲う。
爆風によって巻き上げられた砂塵で何も見えないが、湊には自分の上に覆いかぶさって血を流しているヒナコの苦しそうな顔だけが見えた。
 
「ヒナコさん!」
 
ミヤビは起き上がると彼女のぐったりとした身体を抱きしめた。
 
「しっかりして、ヒナコさん!」
 
声をかけると、彼女はうっすらと目を開けた。
 
「湊……こそ…大丈夫…なん…?」
 
今にも消えそうな声で湊の安否を気にするヒナコ。
 
「俺はヒナコさんのおかげで無傷です。すぐに人を呼びますのでしっかりしてください。…誰か来てください! 誰か、早く!」
 
 ミヤビの声に反応する者はいなかった。
 砂煙が落ち着いて周囲の様子が見えるようになり、彼女は愕然とした。そこには十数名の局員たちがいたはずなのだが今は誰もいない。いや、そうではなかった。彼らは爆風によって吹き飛ばされ、十数メートル離れた場所で倒れていたのだ。
 
「また、守られた!? 俺だけが」
『ああ、その通りだ』
 
 突如として響いた声。その人物は美鶴湊の姿だった。偽物。コピー。幻覚。様々な可能性が頭をよぎる。
 
『大丈夫みたいだな。常人よりはるかに高い霊力を持つおかげでお前だけは無事だったみたいだ』
 
 偽物の湊は通天閣の方を見ながら言う。
 
『あの子は今、戦おうとしている』
「あの子……?」
『イオだ。お前の代わりに最終防衛ラインに配置されたようだな』
「まさか……」
 
 湊の脳裏に怖がりながらも立つイオの顔が浮かんだ。
 
「ダメだ。彼女じゃ勝てるはずがない」
『だが、それは君の努力不足の結果だ』
「え?」
『お前がここの防衛線を守れなかったから、総司令は彼女を最終防衛ラインに投入した。もしかしたらお前が役に経たないと予測して、総司令は彼女を待機させておいたのかもしれない。なにしろフェスティバルゲートでも君は庇われて救われているのだから』
「さっきから人の傷口にづけづけと! 何者だお前は」
『これは警告だ。湊。お前の選択は友人たちを危険な目に合わせている。現にこの人間も君を庇って負傷した。それでもお前は司令部や国連軍の判断を正しいと信じて行動するのか』
 
 湊は心臓をぎゅっと掴まれた気がした。
 
(自分がいなければヒナコさんはこんな大怪我を負わずにいたかもしれない。だけど、もしいなければ皆殺しにされていたかもしれない。もしも、なんて無意味な想像はない。しかし)

 湊の胸は張り裂けそうだった。

ミヤビが迷っていた頃、イオは最終防衛ラインに到着していた。詳しい説明もなく総司令に指示されただけなので、彼女は戸惑っている。
おまけに最終防衛ラインにいるはずの湊がいないのだから不安にもなる。
 
「あの湊くんは?」
 
端末の向こうにいる総司令に訊くイオ。
 
『彼は別の場所にいる。お前は戦闘に集中しろ。……通天閣を守れ』
 
「はい!」
 
イオは逃げ出したい気持ちを奮い立たせて視界に入って来た第二大天使を睨みつける。
 
(怖い……けど、わたしがやらなきゃ。湊くんばかりに危険なことをさせちゃダメだよね。……それに地下鉄の事故の時に助けられて、まだお礼もしていないんだもの)
 
彼女の両側に国連軍の兵士たちが一列に並ぶ。
 
「戦闘開始!」
 
国連軍の悪魔使いたちは一斉に悪魔を呼び出した。翡翠だ。氷による攻撃を得意とする。しかしレベルの低い翡翠の悪魔では数があっても第二大天使を倒すことは不可能だ。
 本人たちはそれを重々承知しているが、それでも戦わなければならない。それが自分たちの役目である以上、やらなければならないのだ。
 そんな悲壮感漂う国連軍の間で、イオは覚悟を決めた。
 
(総司令がわたしを使うってことは、わたしにそれだけの力があるってこと。頑張らなきゃ!)
 
イオは携帯を構えて叫んだ。
 
「来て! 白銀!!」

 その声に呼応して、低い重低音を響かせながら白銀の悪魔が出現する。彼女の声と共に出現したのは白銀。
その姿を見た局員たちは驚きの声を上げた。
 
「白銀だと!?」
「我々の使役している悪魔の倍以上のレベルだぞ!」
 
 白銀は強い悪魔だ。長期にわたる訓練によって召喚が可能となった悪魔よりはるかにレベルの高い悪魔を民間人が呼び出したのだから驚くのは当然だ。
 彼女が悪魔を使役できるだけの霊力と強い意思を持つ証拠でもある。

「行って! 白銀!」

 イオが命じると、白銀はビルの谷間をジャンプしながら第二大天使に迫って行く。
 第二大天使からは光の槍が発射されるが、それを華麗にかわし、己も刀を引き抜き亜空切断でメラク本体を攻撃した。
 
「白銀を援護しろ! ここで落とすぞ!」
 
 翡翠の軍勢は、氷の槍を放つ。
 白銀の亜空切断と翡翠による氷の槍の同時攻撃はかなりの効果があったようだ。
 第二大天使は“脱皮”し、進撃の足を止めた。しかし、必殺技を放つ為に巨大なエネルギーを集めていく。
 通天閣はすぐ側で、ここからなら直撃は免れないだろう。
 その間にも白銀と翡翠の攻撃は続くが、決定的なダメージを与えることはできずにいた。
 このままでは第二大天使は最後の力を振り絞って必殺技を撃つことだろう。
 国連軍の兵士たちの顔に焦りと恐怖の色が浮かんだ。
 
「いや、いや、いや! 死にたくない!」
 
悲鳴を上げて目を瞑ってしまうイオ。しかし第ニ大天使の攻撃はなく、地上から聞き覚えのある凛とした力強い声が響いた。
 
「黒鉄!! ぶち抜け!! グラビティカノン!!」

 声の主は湊だ。
 黒鉄の拳から漆黒の奔流が放たれ、弱体化した第二大天使の胴体を貫いた。コアを破壊されたの身体はギギギ、と不快な音を発して霧散していった。

『第二大天使、沈黙。反応が消失していきます』
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