スレンダー系サキュバス奴隷の主様

John Smith/ジョン スミス

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2話

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 万物の願いをかなえる「聖杯」を奪い合う争い。
 聖杯を求める七人のマスターと、彼らと契約した七騎の魔族がその覇権を競う。他の六組が排除された結果、最後に残った一組にのみ、聖杯を手にし、願いを叶える権利が与えられる。
 勝利のためには、デビルマスターか、その悪魔を倒す。 もしくはデビルマスターの令呪を無効化し、強制的にデビルマスターとしての資格を失わせることが必要となる。 なお、魔族を失ったデビルマスターとデビルマスターを失った魔族が契約を交わし、再び参戦する事も可能。

「そして参加するためには教会と契約して、魔族のソウルジェムを作る必要がある。僕の願いを訊いてくれるなら、その対価として、何だって君の望みを叶えてあげる。どんな奇跡だって起こしてみせる。前払いでね。今回は甘粕正彦がリルカフェのソウルジェムを作ってしまったから後払いになってしまうけれどね」
「えっ?」
 
 キュゥべえは力強く言葉を紡ぐ。心の内に打ち響かせるように。心の隙間に染み入るような声音で豪語する。
 
「だから、リルカフェ――」
 
 そしてキュゥべえは言った、リルカフェへの願いを口にした。

「――魔法少女として頑張ってよ! 応援してるよ!」
「魔法……少女?」
 
 リルカフェはキュゥべえの言葉を反芻する。その言葉の意味を理解するのに数秒。

「…………魔法少女って、あのアニメとかで活躍するあの魔法少女のことですよね? 選りにも選って私が魔法少女って」
 
 ついつい魔法少女に扮したリルカフェ自らの姿――可愛らしくメルヘンチックに装飾されたコスチュームに身を包んで、魔法のステッキ片手に駆け回る姿を想像してしまう。
 
 世の魔法少女のイメージ(参考までにマンハッタンカフェ想像した魔法少女のイメージはプリキュア風のものだ)をマンハッタンカフェに当て嵌めると――似合わない……というか、無理にも程がある。むしろ悪の幹部役だろう。
 
「いや、無いです」

 と言った。けど、続けて。

「因みに、目的はなんですか」
「この世界には普通の人間には知覚できていないだけで、惨禍を撒き散らす悪しき者が存在しているんだ。僕らはそれを『魔女』と呼んでいるんだけど――魔女は人間の心に巣食い、ありとあらゆる負の感情を増大させる。そうなった人間の末路は悲惨だよ………………君には魔女をやっつける手助けをしてもらいたい。魔女と戦いこの世界を平和に導くのが、僕と契約した魔法少女に課される使命というわけさ。聖杯戦争はついでだね」
「俺に取ってはそちらが本命だがな」

 甘粕が注釈を加える。

「そちら、とは?」
「安寧という名の檻に囚われて、意識を腐らせていく人間たちよ。俺はおまえたちを失いたくない。命が放つ輝きを未来永劫、尊び、慈しんで、愛していたいのだ!  守り抜きたいと切に願う。劣化していく人の魂、捨て置くことなど断じてできん。だから――俺は魔王として君臨したい!」

 出発点からすでに優位にある強者ではない。最弱から最強に至ったことこそが素晴らしいと。
 強さの下に産まれた強者が強く生きられる。極論するなら、それは当然のことだ。
 出発点が違う。言うなればそれは予定調和。当たり前のルーチンワークで驚くようなことはなにもない。
 勝利を約束された者が勝利する。それは彼等にとって呼吸と同じで、何かを成し遂げた実感なんて欠片もないのだ。
 だから真に価値があるのは、強者の勝利ではなく弱者の奮起。
 弱さの下に生まれた者が不屈の意志で絶対の強者を下す。それは得難い結果で、だからなによりも価値がある。
 それはすなわち、あらゆる人間が強さを持てることの証明であるのだから。

「人類に試練を。その内にある輝きを取り戻すために、彼等が立ち向かうべき災禍を与える。
 無論そこに差別はない。全人類に等しく普遍的に、男も女も年寄りも若者も、それ以外の者たちも戦いの舞台へと上がってもらう。
 おまえたちの輝きで、天上の光へ届く階段を築いてくれ。その先へ待ち受ける希望と共に、祝福の喇叭ラッパを吹き鳴らそう。きっと理想の世界が降りてくる。それこそが我が楽園ぱらいぞ――この甘粕正彦が胸に抱く真実の願いである!」
 
 明快に、豪胆に、熱く雄々しくたぎりながら、甘粕正彦は己の胸にある願いの全てを口にした。
 
 リルカフェは思わず眩暈を起こす。なにもかもが規格外すぎて付いていけない。
 世界の停滞を憂う気持ちも、人類に対する思いも、どれもこれも本物で、かつ常軌を逸している。
 そしてよく分かる。この男は本気だ。本気でそんな願いを抱いて、人類を災厄の渦に叩き落とそうとしている。
 それは憎しみからではない。むしろ人を信じ、愛しているからこそ試練いたみを与えるのだと豪語しているのだ。

「だから立ち上がり、俺の手を握れ。自分で立ち上がるのだ。戦いの舞台へ。命をかけた舞台へ」
「…………何故、私を魔法少女に?」
「リルカフェには、その素質があるからさ。誰でもいいってわけじゃない。これだけの潜在能力を秘めた子は、そうは居ない。だから僕としては、是が非でも君と契約を結びたいな」
「わかりました。魔法少女になる見返りとして、何でも望みを叶えてくれる、どんな奇跡だって起こしてみせる、その言葉に嘘偽りはないんですか?」
 
 念を押すように、リルカフェ。
 
「もちろんさ。約束するよ」
 
 二つ返事で首肯するキュゥべえ。
 
「ええと…………そう――」
 
 口元に手を添え、考え込む仕草を取リルカフェではあるが、その瞳に逡巡の色はない。
 
「――例えばの話、願いの数を増やすなんてことは可能ですか?」
 
 なんとも低俗な、ある意味では誰しもが考える『願い事』の真理とも禁忌タブーともいえる要求を口にするリルカフェだった。
 
「それは無理だよ。単独の願いだからこそ奇跡は遂げられる。それは揺るぎのない絶対条件。願いを叶えてあげられるのは、あくまでも一つ。これだけは遵守しなくちゃならない不文律だ」
 
 やれやれと教会は顔を振り、付け加えて「はぁ……似たような事を言ったのは君で5人目だよ」とため息まじりのぼやきを漏らす。
 よくあるベターな、お約束的な要求だったらしい。
 
「そうですか」
 
 リルカフェも駄目もとで訊いてみただけといった感じで、気に留めもせず言葉を続ける。
 
「じゃあ、あなたが抱えている問題の根源――魔女と戦う使命? その願いを私の願いで解決してみせる、なんてのはどうですか? 私があなたの願いを叶えてあげる。その魔女だとかいう存在を根絶やして欲しい。それで万事解決になるんじゃないですか?」
 
 本末転倒な、矛盾を孕んだリルカフェの願い。当然の事ながら――
 
「…………そうか……そうだね。僕の言い方がマズかったみたいだ――訂正させてもらうよ。僕に出来る限りの事なら、なんだって願いを叶えてみせる。大抵の願いなら叶えてあげられるのは本当だよ。これまで僕と契約した子たちの『願い』は、例外なく全て『成就』しているからね」
 
 自身の力を誇示するというよりは、客観的事実をありのままに伝えているといった印象を受けるキュゥべえの物言い。
 
「例えば――そうだね。リルカフェの“本来あるべき健康な肉体”にするなんてことなんていうのは、造作も……あったね。これは少し対価としては大きすぎる。まぁ純粋な戦闘力とかその辺なら大丈夫だよ」
「じゃあ、それで」
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