異能持ち転生者達が強すぎますわ!〜中世ヨーロッパファンタジー世界の現地民を助けて〜

John Smith/ジョン スミス

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一体、今の王都はどんだけ人外魔境になっているのだろうか? 世界の凶悪犯罪組織が集合した湾岸都市『ロアナプラ』並にヤバいんじゃないのか……?
 
「『善悪相殺』の戒律をもって転生者狩りをする『武帝』、クトゥルフ系の魔術結社『這い寄る混沌』、学園都市の能力者をかき集める『超能力者一党』だ」
 
 一瞬だけ、冷凍マグロの無表情に感情が浮かんだが、物凄く嫌な表情をしていた。
 此方だって、理解が追い付かなくて頭痛がする思いだ。温くなったコーヒーに口をつける。……想像以上に不味かった。
 
「『武帝』は『装甲悪鬼村正』出身の転生者が立ち上げた復讐者の復讐者による復讐者の為の組織だ。主な構成員は転生者によって身内を殺された現地人であり、『真打』の劔冑を復讐の刃として日夜転生者狩りをする危険分子だ」
 
 思わず、開いた口が塞がらない。確かにこんなに転生者が居て暴れているなら、非転生者に被害が及び、復讐の念を燃やす者が居ても不思議ではない。
 それをよりによって『装甲悪鬼村正』の世界出身の転生者が力押しし、劔冑を与えて復讐の手助けをするなんて正気の沙汰じゃない。
 それに量産型の数打ではなく、一生涯に一領の『真打』の劔冑だと? 一領打つ度に一人死ぬあれを? それを一人悪を殺せば善も一人殺さなければならない『善悪相殺』の戒律を持って? 冗談と狂気のオンパレードだ、畜生。
 
「当然だが、その粛清と復讐の対象に君達十人の名前が新たに刻まれたのは言うまでもあるまいな。奴等は転生者であれば誰でも良いし、誰であろうが許さない」
「……マジかよ。地獄じゃん、もう」
「そんな地獄でも、住めば都だ」
 
 全身脱力し、頭を抱えたくなる。冷凍マグロの渾身の冗談すら耳に入らない。彼等の打つ『真打』の性能が原作並ならば、並大抵の転生者じゃ生き延びれないだろう。
 かくいう自分も空を飛ばれては――いや、打つ手は結構ある方か。復讐鬼なんて、絶対に相手にしたくないけど。
 
「……話を続けるぞ。『這い寄る混沌』はその名前通り、邪神『ナイアルラトホテップ』を狂信するクトゥルフ系の魔術結社だ。邪神降臨の為ならば何でもするトチ狂ったテロ組織だ。噂では組織の『機械仕掛けの神』持ちだそうだ」
 
 え? 何その最大級過剰戦力!? 剣と魔法の世界にガンダムが乱入するほど無粋な組み合わせじゃないだろうか?
 
「まぁあの世界の魔導師がヤバすぎるのは言うまでもないな。――『マトロニクス系の転生者にマトモな奴はいない』とは誰が言ったか知らぬが、格言だな」
 
 OK、とりあえず一旦、これに関しては思考を放棄しよう。自身の精神的な衛生の為に。
 この世界に正義の味方を駆るに相応しい人物が居る事を祈るばかりである。
 
「『超能力者一党』は『とある異能の学園バトル』系統の能力者をかき集めている連中で、詳しい目的は未だ解っていない新興勢力だな」
「能力者をか。超能力者(レベル5)相当のは居るのか?」
「さぁな。もし存在するとすれば、それなりの脅威ではある」
 
 『とある魔術の禁書目録』では舞台となる『学園都市』にて生徒の能力開発が行われており、その能力の強度(レベル)によって無能力者(レベル0)、低能力者(レベル1)、異能力者(レベル2)、強能力者(レベル3)、大能力者(レベル4)、超能力者(レベル5)の六段階に分類される。
 大能力者の時点で軍隊において戦術価値を得られる力と評価され、原作で七人しか存在しない超能力者にもなると一人で軍隊と対等に戦える程の決戦戦力と評価される。
 その超能力者をして、それなりの脅威で済ませるとは、この海鳴市の実力者の化け物っぷりが何となくであるが察せてしまう。
 
(今の処、規模が解らないが、危険度が高いと判断しているのか)
 
 その新興組織を四つと同列に扱う理由を個人的に推測し、大体納得が行く。
 
「矢継ぎ早に説明したが、五つの勢力の説明は大体終わったな。この時点で何か質問はあるか?」
「想像以上にヤバい奴等ばっかりなのは理解出来たが――アンタらの立ち位置を知りたい」
 
 冷凍マグロはオレンジジュースを飲み干し、一息つく。いつの間にか、葡萄と枝豆は食べ切られていた。
 
「俺達『リンクス』は能力使いを集め、他の勢力に協力する事で様々な利益を得ている。時には味方し、時には敵対する――言うなれば裏専門の便利屋だ。お世辞にも正義の味方とは名乗れないがな」
 
 この五つの大勢力で軋めく海鳴市の絶妙なパワーバランスを調整する緩衝材、といった処か。
 
「長々と話したが、判断材料はある程度与えた。君の答えを聞こうか。我が組に入るのならば組織の庇護下に置いてある程度の身の安全は保障出来る。一匹狼を貫きたいのならば、それも良いだろう」
 
 ……最終的な目的は勧誘か。確かに悪くない話である。
 正直、此処で聞いた情報を前提に判断するならば、即決しても良い程だ。この人外魔境の街を一人の力で生き延びられる自信など何処から沸いてこようか。
 ただ、問題なのは今与えられた情報の真偽を問い質す方法が自分には無いという事だ。流石に全て鵜呑みにするほど冷凍マグロを信頼出来ない。
 
「……少し、考えさせて貰っても良いか?」
「ああ、無理に今すぐ結論を出せとは言わない。ただ、時間は待ってくれないがな。――何か起こったらすぐに連絡しろ。もしかしたら骨を拾う事ぐらいは出来るかもしれん」
 死亡前提かよ、と突っ込む間も無く、彼は胸ポケットから一枚の名刺をテーブルに置く。
 流石にそれを触る真似は出来ない。これに能力で何らかの仕掛けが施されていないという保障は何処にも無い。
 この名刺に接触しただけで能力発動条件が整う、という事だけは絶対に避けたい。電話番号とアドレスを携帯に手早く登録する。
 
(……此方のその様子を確認するまでもなく、立ち上がって背を向けたか。注意しすぎか? 仕掛けは無かったのでは――いや、警戒に越した事は無いか)
 
 ほんの些細な行動が致命傷になりかねないのは前世でこれでもかと思い知った事だ。相手は未知のスタンド使い、幾ら注意しても足りないだろう。
 
「ああ、あと夜は絶対出歩くなよ。吸血鬼の残党に『虚』に怪奇に妖怪、最近は『まどか☆マギカ』の『魔女』まで徘徊してやがるしな」
「……もう何でもありだな。という事はインキュベーターと『まどか☆マギカ』式の魔法少女がいるのか?」
 
 思わず脳裏に「ボクと契約して魔法少女になってよ!」という世迷言が再生される。

「さぁ、現在は確認されていないな」
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