女の子がデカい武器振り回すのは好きですか?

John Smith/ジョン スミス

文字の大きさ
18 / 35

17

しおりを挟む
 デストロイヤーが襲来した。それに対応するのは遠征帰りの二代目アールヴヘイムだ。
 天葉が真昼に近寄って、頬をつつく。

「いやー、まさか真昼がレギオンを作るなんてね」
「シノアちゃんと梅ちゃんか頑張ってくれたんだよ」
「真昼ハーレムだね」
「ちょっと天葉ちゃん」
「ごめんごめん。これで真昼も楽しく生きれるようになれると良いね」
「楽しく?」
「だって真昼、笑わないじゃん」
「そう、かな?」
「そうだよ、自分で気づいてないところが重症だなぁ、っとじゃあサクッとデストロイヤー倒しちゃいますか。マギスフィア戦術見せれば良いんだよね?」
「うん、お願い」

 デストロイヤーが海から現れて上陸する。大きさはでかい。ギガント級だ。リーダーの天葉はすぐに指示を出す。

「マギスフィア戦術行くよ!」

 マギスフィア戦術は強力な魔力弾をレギオンメンバー内でパス回しをして育てて撃ち込む戦術だ。
 マギスフィアのパスが行われて、ヒュージに向けて撃ち込まれる。たが謎のバリアによって防がれてしまった。

「はぁ!?」
「魔力リフレクター? それにしては違うような」
「このぉぉ!!」

 天葉はマギスフィアを強引に叩き、バリアを突破させてヒュージに直撃させる。分厚い装甲に穴が開くが倒れるには至らない。
 マギスフィア戦術は戦術機を著しく損傷させる。これ以上の戦闘は不可能と判断した天葉は苦々しく言う。

「アールヴヘイム、撤退します」
「一ノ瀬隊が引き継ぎます! 撤退急いで!」
「とんだ初陣だな」
「アールヴヘイムが仕留め損ねた相手に勝てるんでしょうか?」
「勝てる」
「基本通りに! 射撃陣形! 射撃準備! 射撃開始!! まずは装甲を剥がす!! 相手の攻撃には乱数回避」
「了解!」

 一ノ瀬隊はデストロイヤーに向けて一斉に射撃を開始した。分厚い弾幕がヒュージの外殻を削り取っていく。デストロイヤーもただでは負けないと、熱線や触手攻撃をするが全て避けられて当たらない。
 後退しつつの全力射撃によってデストロイヤーは悲鳴をあげる。

「胡蝶ちゃん、私、梅で近接攻撃を開始する! 場所は中央! 射撃チームは誤射に注意をして援護を!」
「わかったゾ」
「了解」

 射撃よりも近接攻撃の方が攻撃力が高い。外殻が剥がれているのを見て殺しにかかっていくのだ。
 真昼達三人のコンビネーション攻撃によってヒュージの体はバラバラに切断される。

 デストロイヤーの体が変形する。粘着性のあるスライムが飛び出して体を繋ぎ合わせて再生を開始する。それは巨大なイカのような見た目から人形になる。
 青く煌く巨人がそこにいた。その胸には一本の戦術機が突き刺さっている。
 真昼の記憶がフラッシュバックする。あれは、あの戦術機は、最後まで時雨が持っていた戦術機だ。
 マギクリスタルのルーン文字をそれを事実だと示している。

「落ち着け、落ち着け、落ち着け」

 殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。殺してやる。

「ラプラス、発」

 その時、口を塞がれた。背後見ると梅が口を塞いでいた。

「真昼、少し落ち着け」
「でも、あれは!」
「またラプラスでレアスキルの強制発動すればシノアのアサルトバーサークも暴走するゾ。それは真昼の望むところじゃないだろう」

 アサルトバーサークの暴走と聞いて、シノアはバツが悪そうにする。

「すみません」
「いや、真昼が激情家なのが悪いんだゾ。今の真昼は一人じゃない。仲間がいる。落ち着いて冷静に対処すれば勝てる相手だ」
「そ、そうだよね。冷静に」

 その時だった。

「真昼、攻撃をやめて」
「この声は……」

 聞き覚えのある声だ。
 懐かしい。
 愛しい声だ。

「時雨、お姉様……?」
「そうだ、ボクだ。ラプラスを持つ君にしかこの声は聞こえない。みんなに攻撃を止めるように指示をするんだ」
「なんで、時雨お姉様の声がデストロイヤーから」

 真昼の異常な様子に梅達も気付く。

「どうした真昼!? 止まるな!」
「デストロイヤーから時雨お姉様の声が」
「なに!?」
「あの時雨様の戦術機が関係あるんですの?」
「わからない。だが真昼の様子がおかしいんダ! シノア! 一度真昼を下げさせろ!」
「わかりました!」

 シノアは真昼を抱っこして、後方へ飛び退く。その間にもデストロイヤーの攻撃は続き、衛士達は応戦する。射撃音が響き渡り、破壊音が聞こえる。その中で継続的に聞こえるのだ。
 夕立時雨の声が。

「真昼、真昼、聞こえているかい? ボクはあの時デストロイヤーに食べられた。その時にラプラスの効果なのか分からないが、デストロイヤーを乗っ取る事に成功したんだ」
「デストロイヤーを乗っ取る……?」
「GE.HE.NA.の研究にもデストロイヤーの操作はある。デストロイヤーの姫という幼い頃にデストロイヤー細胞を埋め込まれた者はデストロイヤーに味方と見做され攻撃されない。そういったデストロイヤーを支配する技術は既にあるんだ」
「確かにその研究は見たことがあります」

 被験者は東京の天羽香奈ともう一人いた筈だ。またGE.HE.NA.の科学技術は既にデストロイヤーを支配下に置く事に成功している。完全ではないが、ある程度は使役できる筈だ。
 この時雨の説明にも不可解な点はあるが矛盾はない。

「理由はわからない。だが現実として、そうなんだ。ボクは夕立時雨としての意識を持っている。だから話し合おう。今はラプラスを持つ君としか話せないが、頑張れば他の人とだって」
『嘘だよ、それは信じてはいけない。ボクの声を使って真昼を懐柔しようとしているだけだ。ボクは既に死んでいる。これはデストロイヤーの罠だ』

 夕立時雨の声が対立する。いつも真昼を励まし、応援して、笑っていた幻覚の夕立時雨と、デストロイヤーの体を得た夕立時雨。
 どちらも本人のものとしか思えない。
 真昼が蹲っていると、シノアが優しく声をかける。

「真昼様、今、貴方はどうなっているんですか?」
「幻覚の時雨お姉様と、デストロイヤーを乗っ取ったっていう時雨お姉様の声がしている」
「二つの夕立時雨様の声が聞こえているんですね」
「うん」

 真昼の病状に幻覚というものがあった。恐らくそれによる脳内での会話が行われているのだろうとシノアは推測する。
 シノアは優しく真昼を抱きしめて背中をトントンと叩きながら言う。

「たぶん、今どっちが正しいかは判断できない問題なんだと思います。どちらも真昼様だけに聞こえるものですから。だから、正しさは捨てちゃいましょう。真昼様はどっちを信じたいですか?」
「え?」
「いつも聞こえる幻覚と、デストロイヤーの声。どちらを信じたいですか?」
「どっちって言われても、選べないよ。本当にデストロイヤーの方は本当に時雨様かもしれないんだし。だけど倒さないとみんなが死ぬかもしれない。選べないよ」
「今から、とても失礼なことをします」
「え?」

 シノアは真昼の頬を叩いた。

「甘ったれるな。貴方はラプラスで心折れた人を立ち上がらせて戦わせてきたんです! その貴方が折れてどうするんですか!? 無理矢理にでも立ち上がらせた貴方は、立ったなければならないんです!! 結局、どちらを選んでも後悔します! なら、少しでも最善だと思う方を選んでください。私達は真昼様のレギオンです。それに従います。貴方のレギオン、リーダーは貴方なんです。私達は真昼様の手助けをします。及ばない点を補填します。しかしやりたいことは真昼様が決めてください」

 シノアは真昼を甘やかさなかった。誰もが真昼を甘やかした。ラプラスを使って戦っているから精神的に辛いだろうと、誰も真昼の人道的な問題を責めなかった。あの梅さえも。
 真昼は折れてはいけない。迷ってはいけない。間違ってはいけない。
 それが人を支配して者の義務であり、責任なのだ。

「そんなの、そんなのってないよ! 私が今どんな気持ちでいるか知らない癖に! 私が今までどれほど時雨お姉様様に焦がれていたか、知らない癖に。時雨お姉様を失ってから誰かの為にならなくちゃって戦い続けて! 心折れた人達を無理矢理立ち直らせて! GE.HE.NA.の非道な実験にも手を貸して! 少しでも多くの人を救いたいって! 私や時雨お姉様のようなデストロイヤーに脅かされる人を少しでも減らそうってどれだけ頑張ってきたと思っているの!?」

 真昼は戦術機を乱雑に地面に殴りつけた。

「私が一体どんな思いでッッ! ご飯の味もしなくて、休んでいる時は常に誰かが私を責める声が聞こえて、何をしても、どうしても、苦しくて辛くてどうしようもなくて! 初めてなんだ、初めて救われるかもしれないんだ。時雨お姉様が戻ってくるかもしれない。私の愛したお姉様が! そんな簡単に決断なんて出来ないよ!!」

 真昼はシノアに掴みかかっていた。

「真昼様のお気持ちはわかりません。その苦悩や辛さはわかりません。でも私達は真昼様と共に歩むと決めた仲間になると決めたのです。時雨様はもう死にました。死んだ人間は蘇りません。なら、やる事は一つでしょう。時雨様に擬態するデストロイヤーを倒す。そうでしょう?」
「でも! 生き返るかもしれない! 生きているかもしれない! デストロイヤーの中で!」
「可能性の話をするならあり得る話でしょう。ですが、今の時雨様はデストロイヤーです。倒すべき敵です。時雨様は死んだんです。過去だけに囚われないでください。過去が貴方を縛るなら、私たちが手を引きます。今を見てください」
「また会える、かもしれないのに」

 大きく地響きがした。戦いは激しくなっている。時間はない。

「真昼様、信じたいのは、幻覚の時雨様ですか? それともデストロイヤーの時雨様ですか?」
「信じたいのは……」

 幻覚の時雨お姉様はいつも励まして、応援して、助けてくれようとした。真昼を案じて、助けようとしてくれた。記憶にあるままの時雨お姉様の姿だった。
 デストロイヤーのお姉様は助けを求めていた。デストロイヤーの体になって、辛い事、困惑した事、色々あっただろう。それで真昼に助けを求めにきたと考えれば助けたい。だけどそれが本当に時雨お姉様だという確証がない。デストロイヤーの擬態かもしれない。油断をしたところを大規模攻撃してくるかもしれない。

「どっちも助けたい。どっちも信じたい」
「衛士の敵は、時雨様を殺したのは何ですか?」

 幻覚とデストロイヤーの言葉。
 どらちも不確かで曖昧なものだ。
 だが、明確な事がある。
 少なくともあのデストロイヤーは川、夕立時雨を殺しているのだ。

「殺すならデストロイヤーを殺すよ」
「梨璃様」
「時雨お姉様はデストロイヤーにバラバラに引き裂かれて食われた。あれで奇跡が起こるとは思えない。だから」

 戦術機を握る手に力がこもる。

「私が時雨お姉様を殺す」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

最弱スキル《リサイクル》で世界を覆す ~クラス追放された俺は仲間と共に成り上がる~

KABU.
ファンタジー
平凡な高校生・篠原蓮は、クラスメイトと共に突如異世界へ召喚される。 女神から与えられた使命は「魔王討伐」。 しかし、蓮に与えられたスキルは――《リサイクル》。 戦闘にも回復にも使えない「ゴミスキル」と嘲笑され、勇者候補であるクラスメイトから追放されてしまう。 だが《リサイクル》には、誰も知らない世界の理を覆す秘密が隠されていた……。 獣人、エルフ、精霊など異種族の仲間を集め、蓮は虐げられた者たちと共に逆襲を開始する。

『専属メイド全員が重すぎる愛で迫ってくる!~大学生の僕、11人?の美女に24時間甘やかされ尽くす生活~』

まさき
青春
僕は、ちょっと普通じゃない日常を送ることになった――それは、専属メイドが全員僕のことを溺愛してくれる暮らしだ。 朝は髪を整えてくれるリナ、朝食で笑顔を見せてくれるミユ、どの瞬間も全力で僕を甘やかす。掃除、料理、悩み相談まで、僕のためだけに動くメイドたち。 「ご主人様の笑顔が見たいんです」 その一言で、僕の毎日はちょっとドキドキ、ちょっと幸せ。 全員が僕を独占したいと競い合う日常の中、僕はどうやってこの溺愛地獄(?)を生き抜けばいいのか――!? 甘々、至れり尽くせりの日常ラブコメ、開幕。

『【朗報】ボッチの僕、実は世界一の財閥の御曹司だった。〜18年の庶民修行を終えた瞬間、美少女11人が「専属秘書」として溺愛してくる件〜』

まさき
青春
「あんたみたいなボッチ、一生底辺のまま卒業ね」 ​学園の女王、高飛車な生徒会長、そして冷徹な美少女たち……。 天涯孤独でボッチな僕、佐藤(※苗字のみ使用)は、彼女たちからゴミを見るような目で見られ、虐げられる日々を送っていた。 ​だが、彼らには決して言えない秘密があった。 それは、僕が世界一の資産を誇る**『世界最強財閥』の唯一の跡継ぎであること。 そして、18歳になるまで一切の援助を受けずに生き抜く【庶民修行】**の最中であること。 ​そして運命の誕生日、午前0時。 修行終了を告げる通知がスマホに届いた瞬間、僕の世界は一変する。 ​「おめでとうございます、お坊ちゃま。これより『11人の専属秘書候補』による、真の主従関係を開始いたします」 ​昨日まで僕を蔑んでいた学園の美少女たちが、手のひらを返して膝をつく。 彼女たちの正体は、財閥が僕のために選りすぐった、愛が重すぎるエリート秘書たちだった――。 ​「ずっとおそばでお仕えしたかったんです……」 「昨日までの暴言は、修行を完遂させるための演技。今日からは全身全霊で甘やかさせていただきますね?」 ​24時間体制の過保護な奉仕、競い合うような求愛、そして財力による圧倒的なざまぁ。 ボッチだった僕の日常は、11人の美女たちに全肯定され、溺愛し尽くされる甘すぎる生活へと塗り替えられていく。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

無自覚に世界最強だった俺、追放後にチートがバレて全員ざまぁされる件

fuwamofu
ファンタジー
冒険者団から「役立たず」と追放された青年リオ。 実は彼のスキル《創造》は、世界の理を作り替える最強の能力だった。 追放後、孤独な旅に出るリオは、自身の無自覚な力で人々を救い、国を救い、やがて世界の中心に立つ。 そんな彼の元には、かつて彼を見下していた美少女たちが次々と跪いていく──。 これは、無自覚に世界を変えてしまう青年の、ざまぁと覇道の物語。

処理中です...