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悪役を演じて見せよ!

北の方、わろし?

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 ソラ達は鵺とお別れした後、1時間かけて、頂上のカフェまでたどり着いた。だが、着いてみるとまだルージュはたどり着いていなかった。うっかり2人分のカフェオレを注文してしまったソラはプリペイドカードで精算をした。鵺には悪いが時代は電子化の波真っただ中なのだ。

 ルージュを探して、ソラ達はロープウェイ乗り場へと向かってみると、掲示板に魔力電気系統トラブルによる遅延のお知らせが書かれていた。乗客は無事らしいので、ソラとアイランはカフェで待ってみることにした。

「そういえば、僕、南の方角が吉なのに、地図見たら北に向かってたよ。道理でついてないわけだ、あはははは」
 アイランは苦笑いで返した。

 ーロープウェイ内にてー
 ルージュはこの状況に感心していた。なぜなら、トラブルにより止まってしまったロープウェイ内には、彼女とエリヤの班員と女性3人しかいなかったからだ。偶然、エリヤと居合わせたていを装って、急接近できるチャンスができたのだ。今回の電気系統トラブルや居合わせはソラの担任の先生がかなり頑張った結果だったりする。彼女はロープウェイの魔物となって、男共を誘惑することにした。魔性の女が動き出す。
 車内放送によると、あと1時間ほど復旧に時間がかかるそうだ。

「エリヤ様、私、班の人たちと離れてしまって、他に知っている方もいなくてとても不安で…、おそばによってもよろしいでしょうか?」
 ゆっくりと話しながら、うるんだ瞳でそっとエリヤに近づく。

「控えなさい。殿下にこれ以上近づく場合は、状況が状況ですので、敵対行為とみなします」
 2年生男子が警告を発し、1年生男子が前方に手のひらをかざして、ルージュを制止する。エリヤの護衛要員の生徒だ。ため息をついて、エリヤが言葉を繋げる。
「悪いが、彼の言うように、控えてくれないか」

「ごめんなさい」
 手を組んで祈る姿をする。エリヤも彼の班員も態度が悪かったかもしれないとかなり罪悪感を抱いた。
「いや、気にしないでくれ」
 1年生の男子がルージュに手を差し出した。ルージュは彼の腕に抱きついて、フルフルと頭を振った。何となく健気に見える。1年生男子は胸のやわらかさにドキッとした。

 しかし、その時、3人組の女性がルージュのそんな態度をぶった切った。
「いやあね、マイ、あの子ぶりっこよ」
「いやあね、ミー、何か性格悪そう」
「いやあね、アイ、わっこっち睨んできた」
 ここに、女性同士の戦いの火ぶたが切って落とされた。
 こちらのアイ、マイ、ミー、実はかまいたちの妖怪でロングスカートの先からいたちの尻尾が見えている。かまいたちは連携して、攻撃をする。1匹目、人間をロープとかで転ばせる。2匹目、人間の手足に鎌で切りつける。3匹目、切った傷に対して薬を塗って発見を遅らせる。この3姉妹も連携して行動することが多い。

 余談だが、ロープウェイの順番待ちで立っている時に、むっつり王子のエリヤは彼女たちの尻尾が揺れるたびに見える足が気になってしかたなかった。むっつり王子はむっつりなだけにチラリズムに弱い。
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