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悪役を演じて見せよ!

ふっかーつしたけど…

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 アランがふと目を覚ますとそこは分厚いカーテンで閉ざされたベッドの上だった。手にはなぜか、お守りが握られている。
 近くには見知った友人がパイプ椅子に座って、うつらうつら舟をこいでいる。自分のお腹の上にはなぜか、友人の召喚獣の猫もいる。
「あれっ、どうしてこんなとこにいるんだ?」
 友人が眠ったままなので、呆けていると、ガラガラというドア横にスライドする音が聞こえた。

 シャーっとカーテンが開けられると、学級委員長メイシーが入ってきた。
「目が覚めたんだ。つか、ソラ起きろよ」
「ううっ、僕疲れてたのかな、よだれ垂れてる」
 こちらはずいぶんな寝起きである。ぐしぐし口元を服の袖で拭いている。

 近くにいた保険の先生がアランの様子を診るために、やってきた。どうやら、自分は保健室にいるようだとアランは気づく。
 先生は指を3本立てた。
「指何本に見える?」
「3本です」
 その後も懐中電灯をあてて瞳孔のチェックをしたり、口を開けてベロをチェックしてくれたりした。
「ひとまず、大丈夫そう。念のため、この後、病院で検査することになったから、ちょっと待ってて」
 そういうと、一旦、先生は引き上げた。

「申し訳ありませんでした! 僕が投げたお守りのせいで気絶させてしまったみたいで、まさかあんな威力があるなんて思わなくて」
 ソラからそういわれて、直前の記憶がアランに戻ってきた。同時にリリーにひどいことを言ったことも思い出した。ここのところ、頭がボワンボワンとしていたのが、ミントの匂いをかがされたみたいにすっきりしている。目の前ではソラが頭を下げている。

「あっいや、問題なさそうだから気にすんな。ところで…リリアーナはもう帰ったか?」
「本当、ごめん。他の皆はもう帰ったよ」
「今、8時だしな、親もそろそろ来ると思う」
「わー、委員長も遅くまでごめん! 後は僕が付き添うから」
「いいえ、そうね、君たち2人とも後は先生に任せて、2人のご両親も迎えの連絡したから」
 というわけで、次の日アランはお休みし、そのまま週末だったため、そのまま自宅療養となった。

 週末、ソラはお見舞いにアランの家を訪れた。アランのご両親から責められるかもと内心ドキドキしていたが、なぜか大歓迎された。
「ここのところ、この子本当、心ここにあらずでおかしかったんだけど、殴り合いの喧嘩をしたら目が覚めたんですって。だから、この子も悪かったんだし、気にしないでね」
 いつ僕ら殴り合いの喧嘩したっけソラはそう思ったが、敢えてツッコミはせずに許してもらえたことにほっとした。友達の親とも極力仲良くしたい。

「本当さ、最近、俺おかしかった気がする。リリアーナにもなんであんなこと言ったのか…。とにかく、学校開けたら謝ってみる、迷惑かけて悪かったよ」

 こっそり、ジュリアン室井の能力メディカルチェックで診てもらったところ、何か状態異常の魔法をかけられた形跡があったとのことだった。事情を説明して、そのままお守りは持っててもらうことになった。
「やや、にゃーってば人間もみえます、みえますにゃー、」
 ジュリアン室井が後ろ二足で立って前足をかざしている。この件でおじ様猫ジュリアン室井にお世話になった。人間も診られると妙な自信がついてしまったので、ソラは今後がちょっと不安になった。
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