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第十八章『光と影の決着』

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「なんだこのチビは!?  なぜオハコビ竜の子どもが、こんなところに――」


ガオルは当惑した様子で、小さなオハコビ竜を指さしていた。


「おぬしらが再び暴れ出す気配がないので、頃合いだと思ってのう」

小さなオハコビ竜が言った。


「こんなちっぽけな体では、

おぬしらの大格闘の巻きぞえを食えば、ひとたまりもあるまいて。

――お初にお目にかかるのう、黒影竜のガオルよ」


「フラップ、お前はそいつを知っているのか?  そいつは……何者だ?」


フラップが答えるよりも前に、

小さなオハコビ竜が小指で耳の穴をほじくりながら、面倒くさそうにこう言った。


「あー、わしは自己紹介に時間をかけぬ主義でのう。これを見れば十分じゃろ」


小さなオハコビ竜は、瞳を閉じて両手を前に広げた。

それはまるで念じるようなしぐさだった。


すると、両手の前に白く燃える人魂……いや、小さな光がぽっと現れ、

次の瞬間、それはガオルの黒い額の目がけてふわふわと飛んでいった。

ガオルは一瞬、それをふり払おうとしたが、

危険がないと認識したのか、すぐに手を下ろした。


光がガオルの額の中になじむように消えていくと、

ガオルは、急に一言もしゃべらなくなり、

ただ一点を見つめてパックリと口を開けていた。

まるで、瞬間的に多くの情報をインプットされたかのようだった。

やがて――。


「ふふっ、ははははは……っ!」


出しぬけに、ガオルが高笑いした。


「そうか、お前がかの有名な《小さき者》か。

どおりで、子どもたちがスズカを解放できたわけだ! 

だがしかし、本当に小さなやつだったとはな……」


「うむ……わしは、白竜の警告がなければ、ここへ参ることはなかった……

それに、あと少し到着が遅れれば、おぬしの思惑どおり、

取り返しのつかぬ事態に発展していたかもしれん」


「ですが、あなたはぼくらをお救いくださいました。

感謝してもしきれません」


フラップは胸に手を当てながら、熱っぽく言った。

その様子は、まるで小さな主に尊敬の念を示す変わり者のようだった。


「ふん」


ガオルが再び皮肉な笑みを浮かべていた。

まぶしい光景からそっと視線を背けるような態度で……。


「フラップ、俺の負けだ……あらゆる面においてな」

と、ガオルが言った。


「え?  なぜそんな言い方――」

フラップはキョトンとした顔で、ガオルを見た。


「……見ろ」


ガオルが、城の正面階段のほうを指さした。

階段の途中に、六人の子どもたちと、フレッド、

そしてクロワキ氏の一同が集まっていた。

みんなでこちらの様子をじっと見守っているのが分かる。


「たとえば、お前には友がいる。仲間がいる。

そしてここに、お前を見守り、手を差しのべてくれる大きな存在がいる。

お前が誤った行動を取ろうとすれば、声をかぎりによび止めてくれる者もいる。

お前にはすべてがそろっているのだ。

俺には……だれもいない。

俺が間違った思想を抱いても、道を正してくれる友人などひとりもいなかった」


「――ガオルよ」


小さなオハコビ竜が、厳格な目つきになってガオルの前に進み出た。


「負けを認めたのであれば、おぬしの身柄はフーゴ率いる警備部があずかる。

そしておぬしは、竜族界が誇る大監獄へと送られるじゃろう。

それで異論はあるまいな?」


「――ああ、もう覚悟はできている」

ガオルがはっきりとした声で答えた。


「戦う意欲も失せた。さっさと俺を拘束するがいい――」


その時だ。フラップのほうから「ピピピッ!」と着信音が鳴った。


「仲間からの通信のようじゃの。フラップよ、拡声モードにしてくれぬか」


フラップはすぐさま右手でゴーグルのボタンを数回押し、拡声モードを起動した。


『――サポーターを代表して、報告します!

オニ飛竜たちが撤退を開始しました!』


声の主はモニカさんだった。モニカさんの声は歓喜で興奮していた。


「おお、モニカ隊員!  それはまことか!」


『はい!  フーゴ総官が彼らの長を、

今度こそ完ぺきに打ち倒してくださいました。

オニ飛竜たちは長が敗れたとたん、蜘蛛の子を散らすように逃げ出しましたが、

何十頭かが警備部員たちによって拘束されています。


――それにしてもまさか、

あなたがここへいらっしゃるとは、思いもしませんでした。

わたしたちに助力してくださったのですね。どうお礼を申し上げれば……』


「よいよい。今回は重大な特例事項があったのじゃから」


小さなオハコビ竜は、にこやかに受け答えた。


「さて、これで万事解決じゃ。

そろそろわしも、子どもたちに正体を明かさねばなるまい」


古びた死の都ゲオルグから、戦いの音が消え去った。

乾いた風の音とともに、ガオルが引き起した青い炎の海が、

まもなく静かに鎮火しようとしていた。
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