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第17話 私の王子様は、ずっと隣にいた(妹視点)
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──「お兄ちゃん、お風呂先に入るね~」
そう言って、姫花はふわふわとした足取りで脱衣所に向かった。
その背中を見送りながら、どこか機嫌が良さそうに見えるのは気のせいじゃない。
脱衣所で服を脱ぎながら、彼女はぽつりと、誰にも聞こえない声で呟いた。
「……お兄ちゃんったら、褒めすぎだよ」
湯気がほんのり立ち込める空間に、小さな声が溶けて消えていく。
(──本当に、変わらないな)
彼女はふと、昔のことを思い出していた。
***
それは、姫花がまだ小学三年生だった頃のことだ。
当時の姫花は、今のように明るく人懐っこい性格ではなかった。どちらかと言えば無口で、教室の隅っこで静かに本を読んでいるような子だった。
「ねぇ姫花、また本読んでるの?」
「ふ~ん、変なの~」
そんな軽口すら、姫花にとっては煩わしかった。周りと関わるのが面倒で、本の中にだけ“安心できる世界”を見出していた。
自宅のリビングでも、ソファにちょこんと座っては本のページをめくる姫花の姿があった。
俺が元気よく玄関のドアを開けて帰宅する頃には、玄関中に足跡がついて母に怒られるのが日常だったが、そんな中でも姫花は本を閉じることなく、静かに過ごしていた。
その頃の姫花には、小さな夢があった。
──自分の名前、「姫花」。
まるで物語に出てくるお姫様みたいな名前。
いつか、この名前にふさわしい王子様が現れるんじゃないか。
幼いながら、そんな夢をほんの少しだけ、本気で信じていた。
だけど――現実は、物語のようにはいかなかった。
ある日、学校で転機が訪れた。
姫花の周囲の空気が、少しずつ変わり始めたのだ。
「姫花って、なにその名前~ぷぷっ」「絶対名前負けしてるよね」
最初は、軽いイジリだった。でも、それはすぐに“イジメ”になった。
授業中、名前が呼ばれるたびにクスクスと笑いが漏れる。給食の時間には、誰も隣に座ってくれない。
理由なんて、なかった。
ある日、勇気を振り絞って、私をイジメるクラスの中心にいた女子に尋ねた。
「どうして……私を、いじめるの?」
その子は、あっけらかんと笑って言った。
「んー、なんとなく? なんか面白いから」
その瞬間、姫花の中で何かが音を立てて崩れた。
(そんな理由で……)
自分ではどうにもならない理不尽に、心が折れた。ただ静かに、物語の世界にいたかっただけなのに。
それから「姫花」という名前が、呪いのように思えた。
以前は大好きだった自分の名前。
今では呼ばれるたびに、胸が締めつけられる。
人は、大勢から否定され続けると、たとえそれが不条理でも「自分が悪いのかもしれない」と錯覚する。
――小さな姫花は、そうして“自分”を失いかけていた。
それでも──
お兄ちゃんは、いつだって私の味方だった。
自宅に帰っても沈んだ顔を隠せない私を見て、彼はそっと問いかけてくれた。
「姫花、大丈夫か? 何かあったら、お兄ちゃんに言うんだぞ?」
その声は、あたたかくて優しくて、まるで昔読んだ物語の中に出てくる“本物の王子様”のようだった。
でも、あの時の私には、届かなかった。
傷ついた心には、優しさすら“脆い幻想”にしか映らなかった。
──そして、ある日。
状況は、さらに最悪な方向へと進んだ。
私をいじめていたクラスのリーダー格の女子が、ある男子に片想いしていたらしい。
だけどその男子……どうやら私のことが好きだったらしい。
私は何もしていない。ただ、無言で本を読んでいただけ。
それなのに、彼女の憎悪の視線を私に向け、吐き捨てるように言った。
「アンタのくせに……調子に乗ってんじゃないわよ」
……私は、何もしてないのに。
向こうが勝手に好意を寄せてきただけなのに。
それが引き金となり、いじめは“陰湿”から“執拗”へと変貌していった。
授業中に名前が呼ばれれば、全員が舌打ちする。
下駄箱にはゴミが詰められ、大切にしていたお気に入りの本は、ある日姿を消した。
「姫花ってさ、名前だけは可愛いよね~」
「中身、ぜんっぜん似合ってないけどw」
かつて仲良しだった子までもが、私をイジメる側に回っていた。
(人って、こんなに簡単に裏切るんだ……)
いつしか教室全体が敵に見えた。
私の名前が呼ばれるたびに、耳をふさぎたくなった。
──そして、事件は起こった。
いつものように、一人で下校していた帰り道。
細い路地に入ったところで、背後から足音が複数──。
振り向くと、そこにはクラスのリーダー格の女子と、取り巻きの男子数名。さらに見たことのない高学年の子たちまでがいた。
「……な、なに?」
声が震える。足もすくむ。
「ねぇ、姫花ちゃん。あんたさ、最近調子乗ってない?」
彼女たちはぐるりと私を囲み、笑いながら、けれどその目は一切笑っていなかった。
体がこわばる。動けない。心臓がバクバクと鳴って、涙が込み上げてきた。
(……助けて、王子様)
そんな、祈るような気持ちで心の中で叫んだ──その瞬間だった。
「……姫花」
その声が、空気を震わせた。
路地の先から、静かに、確かに歩いてくる誰か。
私の前に立ったその人物は、まぎれもなく――兄、裕一だった。
でも、その表情はいつもの柔らかい兄ではなかった。その瞳はまるで刃のように鋭く、怒りに燃えていた。
王子様というより、復讐に燃える騎士──あるいは、静かに怒れる獣。
「姫花、もう大丈夫だ。お兄ちゃんが来たからな」
その一言だけで、私の心にじわっとあたたかいものが広がった。
「……お前ら。なんで姫花にイジメるんだ?」
兄の低い声が響く。
女の子は口元を歪めて言った。
「……なんとなくよ」
「ウソをつくな。本当の理由を言えよ」
その瞬間、空気が変わった。何か“異質”な力が場を支配した。
──そして。
「……あいつが可愛いって、みんながチヤホヤするからよ!」
その女子は、思わず自分の口を手で塞いだ。
言いたくなかったはずの“本音”が、口からこぼれたように。
(……何これ)
あのとき、兄の目を見て――私は思った。
まるで、相手の“心の奥”をのぞき込んでいるかのような、そんな視線だった。
あの瞬間、いじめの主犯だった彼女は、自分でも気づいていなかったような本音を、まるで無意識に――ぽろっと、こぼした。
あれは偶然だったのか、それとも……。
ずっと一緒にいる私だからこそ、うっすらと気づいていたのかもしれない。
兄・神田裕一には、誰にも説明できない“何か特殊な能力”がある。
それが「力」なのか、それとも「鋭さ」なのかはわからない。
でも、あのとき彼は、確かに――
人の仮面を剥がし、心の奥の言葉を“引き出していた”。
「姫花を傷つけたこと、絶対許さねぇ……!」
そう言い放つと、兄は目の前の――
**「柔道で有名な、あの片倉」**に向かって一歩、踏み出した。
高学年で体も大きい彼らを前に、兄の方が圧倒的に不利だったはず。
「お前みたいなやつが、俺に勝てると思ってんのかよ?」
片倉が鼻で笑い、ドスンと床を蹴って飛びかかる――その瞬間。
怒りと、守りたいという想いだけで、兄は拳を振るい、片倉を一撃でねじ伏せた。
最後は、あの片倉が地面に倒れ、周りは恐れて「もう二度としません!」と口々に謝った。
「……お兄ちゃん、怖かったよ……」
涙を堪えながら私が言うと、兄はそっと頭を撫でてくれた。
「大丈夫。お兄ちゃんが、絶対"姫花"を守るから」
涙で滲んだ視界の中、兄の背中はとても大きく、そして頼もしかった。
あの背中が、これから先の人生でも、私の世界を守ってくれる。
そう信じられたことが、なによりも救いだった。
その時の兄の真っ直ぐな目を──私は、今でも忘れられない。
後日、この一件はすぐに学校中に広まり、兄は“喧嘩最強の狂犬”みたいな扱いを受けた。
周囲は彼を恐れ、気軽に話しかける者はいなくなった。
「お兄ちゃん……私のせいで、ごめんね」
申し訳なさそうに言った私に、兄は明るく笑った。
「心配すんな! お兄ちゃんはずっと、姫花の味方だぞ」
──私の兄は、私のために、学校生活すべてを捨ててくれた。
だから私は、もう“おとぎ話”の王子様を探すのをやめた。
だって、すぐ隣に――
ずっと昔から、世界で一番の“王子様”がいるんだから。
湯気の立ちこめる脱衣所、鏡の前で姫花はぽふっと頬を叩いた。
「いけないいけない……ちょっと湯あたりしちゃったかな?」
頬はほんのり赤く、髪からはしずくが落ちる。
自分の顔を見つめながら、小さくため息。
(……ふぅ。あんなふうに褒められたら、嬉しくて火照っちゃうじゃん)
そんなふうに乙女モードでぼんやりしていたそのとき――
ガチャッ。
「ん? あっ忘れてた」
「きゃっ!? バ、バカ兄っ!! 馬鹿ぁぁぁ!!」
タオルを巻いていた姫花は、あわててバシバシとタオルで兄を追い払う。
兄はパニック状態で扉を閉めながら土下座レベルの謝罪。
「ご、ごめん! ごめんってば! ていうかなんで鍵かけないの!?」
「かけようとしてたとこなのーっ!」
顔を真っ赤にしながら、姫花はむすっと膨れた。
でもそのあと――小さく、口の端が緩んでいた。
(……まったく、油断も隙もないなぁ)
鏡越しに、湯上がりの自分を見てぽつりと呟く。
「……ほんと、私の王子様は……ちょっとエッチで、バカなんだから」
頬に残る熱が、本当にお風呂のせいなのかは――本人にも、もうわからなかった。
そう言って、姫花はふわふわとした足取りで脱衣所に向かった。
その背中を見送りながら、どこか機嫌が良さそうに見えるのは気のせいじゃない。
脱衣所で服を脱ぎながら、彼女はぽつりと、誰にも聞こえない声で呟いた。
「……お兄ちゃんったら、褒めすぎだよ」
湯気がほんのり立ち込める空間に、小さな声が溶けて消えていく。
(──本当に、変わらないな)
彼女はふと、昔のことを思い出していた。
***
それは、姫花がまだ小学三年生だった頃のことだ。
当時の姫花は、今のように明るく人懐っこい性格ではなかった。どちらかと言えば無口で、教室の隅っこで静かに本を読んでいるような子だった。
「ねぇ姫花、また本読んでるの?」
「ふ~ん、変なの~」
そんな軽口すら、姫花にとっては煩わしかった。周りと関わるのが面倒で、本の中にだけ“安心できる世界”を見出していた。
自宅のリビングでも、ソファにちょこんと座っては本のページをめくる姫花の姿があった。
俺が元気よく玄関のドアを開けて帰宅する頃には、玄関中に足跡がついて母に怒られるのが日常だったが、そんな中でも姫花は本を閉じることなく、静かに過ごしていた。
その頃の姫花には、小さな夢があった。
──自分の名前、「姫花」。
まるで物語に出てくるお姫様みたいな名前。
いつか、この名前にふさわしい王子様が現れるんじゃないか。
幼いながら、そんな夢をほんの少しだけ、本気で信じていた。
だけど――現実は、物語のようにはいかなかった。
ある日、学校で転機が訪れた。
姫花の周囲の空気が、少しずつ変わり始めたのだ。
「姫花って、なにその名前~ぷぷっ」「絶対名前負けしてるよね」
最初は、軽いイジリだった。でも、それはすぐに“イジメ”になった。
授業中、名前が呼ばれるたびにクスクスと笑いが漏れる。給食の時間には、誰も隣に座ってくれない。
理由なんて、なかった。
ある日、勇気を振り絞って、私をイジメるクラスの中心にいた女子に尋ねた。
「どうして……私を、いじめるの?」
その子は、あっけらかんと笑って言った。
「んー、なんとなく? なんか面白いから」
その瞬間、姫花の中で何かが音を立てて崩れた。
(そんな理由で……)
自分ではどうにもならない理不尽に、心が折れた。ただ静かに、物語の世界にいたかっただけなのに。
それから「姫花」という名前が、呪いのように思えた。
以前は大好きだった自分の名前。
今では呼ばれるたびに、胸が締めつけられる。
人は、大勢から否定され続けると、たとえそれが不条理でも「自分が悪いのかもしれない」と錯覚する。
――小さな姫花は、そうして“自分”を失いかけていた。
それでも──
お兄ちゃんは、いつだって私の味方だった。
自宅に帰っても沈んだ顔を隠せない私を見て、彼はそっと問いかけてくれた。
「姫花、大丈夫か? 何かあったら、お兄ちゃんに言うんだぞ?」
その声は、あたたかくて優しくて、まるで昔読んだ物語の中に出てくる“本物の王子様”のようだった。
でも、あの時の私には、届かなかった。
傷ついた心には、優しさすら“脆い幻想”にしか映らなかった。
──そして、ある日。
状況は、さらに最悪な方向へと進んだ。
私をいじめていたクラスのリーダー格の女子が、ある男子に片想いしていたらしい。
だけどその男子……どうやら私のことが好きだったらしい。
私は何もしていない。ただ、無言で本を読んでいただけ。
それなのに、彼女の憎悪の視線を私に向け、吐き捨てるように言った。
「アンタのくせに……調子に乗ってんじゃないわよ」
……私は、何もしてないのに。
向こうが勝手に好意を寄せてきただけなのに。
それが引き金となり、いじめは“陰湿”から“執拗”へと変貌していった。
授業中に名前が呼ばれれば、全員が舌打ちする。
下駄箱にはゴミが詰められ、大切にしていたお気に入りの本は、ある日姿を消した。
「姫花ってさ、名前だけは可愛いよね~」
「中身、ぜんっぜん似合ってないけどw」
かつて仲良しだった子までもが、私をイジメる側に回っていた。
(人って、こんなに簡単に裏切るんだ……)
いつしか教室全体が敵に見えた。
私の名前が呼ばれるたびに、耳をふさぎたくなった。
──そして、事件は起こった。
いつものように、一人で下校していた帰り道。
細い路地に入ったところで、背後から足音が複数──。
振り向くと、そこにはクラスのリーダー格の女子と、取り巻きの男子数名。さらに見たことのない高学年の子たちまでがいた。
「……な、なに?」
声が震える。足もすくむ。
「ねぇ、姫花ちゃん。あんたさ、最近調子乗ってない?」
彼女たちはぐるりと私を囲み、笑いながら、けれどその目は一切笑っていなかった。
体がこわばる。動けない。心臓がバクバクと鳴って、涙が込み上げてきた。
(……助けて、王子様)
そんな、祈るような気持ちで心の中で叫んだ──その瞬間だった。
「……姫花」
その声が、空気を震わせた。
路地の先から、静かに、確かに歩いてくる誰か。
私の前に立ったその人物は、まぎれもなく――兄、裕一だった。
でも、その表情はいつもの柔らかい兄ではなかった。その瞳はまるで刃のように鋭く、怒りに燃えていた。
王子様というより、復讐に燃える騎士──あるいは、静かに怒れる獣。
「姫花、もう大丈夫だ。お兄ちゃんが来たからな」
その一言だけで、私の心にじわっとあたたかいものが広がった。
「……お前ら。なんで姫花にイジメるんだ?」
兄の低い声が響く。
女の子は口元を歪めて言った。
「……なんとなくよ」
「ウソをつくな。本当の理由を言えよ」
その瞬間、空気が変わった。何か“異質”な力が場を支配した。
──そして。
「……あいつが可愛いって、みんながチヤホヤするからよ!」
その女子は、思わず自分の口を手で塞いだ。
言いたくなかったはずの“本音”が、口からこぼれたように。
(……何これ)
あのとき、兄の目を見て――私は思った。
まるで、相手の“心の奥”をのぞき込んでいるかのような、そんな視線だった。
あの瞬間、いじめの主犯だった彼女は、自分でも気づいていなかったような本音を、まるで無意識に――ぽろっと、こぼした。
あれは偶然だったのか、それとも……。
ずっと一緒にいる私だからこそ、うっすらと気づいていたのかもしれない。
兄・神田裕一には、誰にも説明できない“何か特殊な能力”がある。
それが「力」なのか、それとも「鋭さ」なのかはわからない。
でも、あのとき彼は、確かに――
人の仮面を剥がし、心の奥の言葉を“引き出していた”。
「姫花を傷つけたこと、絶対許さねぇ……!」
そう言い放つと、兄は目の前の――
**「柔道で有名な、あの片倉」**に向かって一歩、踏み出した。
高学年で体も大きい彼らを前に、兄の方が圧倒的に不利だったはず。
「お前みたいなやつが、俺に勝てると思ってんのかよ?」
片倉が鼻で笑い、ドスンと床を蹴って飛びかかる――その瞬間。
怒りと、守りたいという想いだけで、兄は拳を振るい、片倉を一撃でねじ伏せた。
最後は、あの片倉が地面に倒れ、周りは恐れて「もう二度としません!」と口々に謝った。
「……お兄ちゃん、怖かったよ……」
涙を堪えながら私が言うと、兄はそっと頭を撫でてくれた。
「大丈夫。お兄ちゃんが、絶対"姫花"を守るから」
涙で滲んだ視界の中、兄の背中はとても大きく、そして頼もしかった。
あの背中が、これから先の人生でも、私の世界を守ってくれる。
そう信じられたことが、なによりも救いだった。
その時の兄の真っ直ぐな目を──私は、今でも忘れられない。
後日、この一件はすぐに学校中に広まり、兄は“喧嘩最強の狂犬”みたいな扱いを受けた。
周囲は彼を恐れ、気軽に話しかける者はいなくなった。
「お兄ちゃん……私のせいで、ごめんね」
申し訳なさそうに言った私に、兄は明るく笑った。
「心配すんな! お兄ちゃんはずっと、姫花の味方だぞ」
──私の兄は、私のために、学校生活すべてを捨ててくれた。
だから私は、もう“おとぎ話”の王子様を探すのをやめた。
だって、すぐ隣に――
ずっと昔から、世界で一番の“王子様”がいるんだから。
湯気の立ちこめる脱衣所、鏡の前で姫花はぽふっと頬を叩いた。
「いけないいけない……ちょっと湯あたりしちゃったかな?」
頬はほんのり赤く、髪からはしずくが落ちる。
自分の顔を見つめながら、小さくため息。
(……ふぅ。あんなふうに褒められたら、嬉しくて火照っちゃうじゃん)
そんなふうに乙女モードでぼんやりしていたそのとき――
ガチャッ。
「ん? あっ忘れてた」
「きゃっ!? バ、バカ兄っ!! 馬鹿ぁぁぁ!!」
タオルを巻いていた姫花は、あわててバシバシとタオルで兄を追い払う。
兄はパニック状態で扉を閉めながら土下座レベルの謝罪。
「ご、ごめん! ごめんってば! ていうかなんで鍵かけないの!?」
「かけようとしてたとこなのーっ!」
顔を真っ赤にしながら、姫花はむすっと膨れた。
でもそのあと――小さく、口の端が緩んでいた。
(……まったく、油断も隙もないなぁ)
鏡越しに、湯上がりの自分を見てぽつりと呟く。
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