隣の席のオッドアイギャルは俺の心の声が聞こえるらしい

夕凪けい

文字の大きさ
16 / 124

第16話 お兄ちゃん、それアウト【兄視点】

しおりを挟む
──夕焼けが街を包み、俺はようやく自宅に帰り着いた。

「ただいま~」

玄関を開けた瞬間、キッチンからバタバタと足音が聞こえてくる。

「お兄ちゃん~! おかえり!」

エプロン姿の妹、神田姫花が笑顔で駆け寄ってきた。ダークブラウンのボブヘアがふわっと揺れて、まるでCMみたいにキラキラしてる。

「ご飯ね、ちょうど今できたところだよ! それとも……」

一瞬の沈黙のあと、イタズラっぽく目を細めてこう続ける。

「ご飯にする? それとも……ひ・め・か?」

なんか昭和のテンプレが飛んできたけど、これが姫花の“あざと可愛さ”でもある。

「そうだな……姫花にするよ」

「……は?」

一瞬で室温が5℃下がった。
声のトーンが氷点下だった。

「……何言ってるの? バカなの?」

冷たい視線に射抜かれ、俺の心は見事に粉砕された。

「……ご飯にします」

素直に敗北を認めた俺は、しょんぼりしながら食卓へ。

ハンバーグにサラダ、味噌汁、そして――

「おっ、卵焼きじゃん!」

思わずテンションが上がった。

「うん、安城さんのを見様見真似で作ってみたんだ」

姫花が少し得意げに微笑む。

ひと口食べると、ふわっふわで優しい味。しかも、見た目もきれいにまとまってる。

「……うまっ! 姫花、天才かよ!」

(我ながら、さすが妹だ……)

「“さすが妹”って何その上から目線? 『さすが姫花』って言いなさいよね」

拗ねる妹もまた、最高にかわいい。

「お兄ちゃん、元気になってよかった。安城さんのおかげ?」

「そう、俺の“推し”なんだよ」

「え~なにそれ!」

そう言いつつも、姫花は嬉しそうだった。
昼休みにあった出来事を軽く話すと、姫花はぽつりと言った。

「……安城さんって、すごいね。今度、家に招待しないとね。ところで、お兄ちゃんはまたバスケやるの?」

「わかんねーけどな」

たわいもない会話を続けていたら、食事はいつの間にか完食していた。

「ごちそうさま~」

「お兄ちゃん、私お風呂入るからね!」

ドアの向こうからの声は、明らかに「間違っても入ってくるなよ」の圧が込められていた。

(……昔は“お兄ちゃん一緒に入ろ~”って言ってたのに。思春期ってやつは……)

などと感傷に浸っていたら、いつの間にかウトウトしていた。

目が覚めると、少し経っていた。

「やっべ、風呂入ってなかった……」

そのとき、数分前の妹からの警告はきれいさっぱり脳内から消えていた。

のそのそと廊下を歩き、風呂場のドアを――

「……っ!?」

バフッ!!

開けた瞬間、ものすごい勢いでタオルが飛んできた。

「今入ってるってばーっ!! 何してんの、バカ兄!!」

湯気と怒声とタオル。
これが三点セットで飛んでくるとは、思ってもみなかった。

「ご、ごめんっ!」

その声は、真冬の海よりも冷たかった。

それからしばらく――
神田姫花さんは、俺に目すら合わせてくれなかった。

(人間という生き物は、忘れる生き物である……)

今日も我が家は、世界でいちばんあたたかい場所だった――
(ただし風呂場を除く)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...