隣の席のオッドアイギャルは俺の心の声が聞こえるらしい

夕凪けい

文字の大きさ
95 / 124

第95話 天才発明家は、常識を脱ぎ捨てる

しおりを挟む
「え?…姉さんなんで?」

思わず立ち尽くした。まさか、あの銀髪の天才発明家が――安城恵梨香の姉だったなんて。

全校集会が終わり、ざわつく空気の中、俺は教室に戻る途中で、ふと“あの公園”で交わした言葉を思い出す。

「私は転校後、EES共鳴現象の発現者達を救う研究室を立ち上げたい。君には、それを手伝ってもらいたい」

あのときは――愛理と蓮也の裏切りを知った直後で、心はズタボロだった。
人を信じる気力すら残ってなかった。

けど今は違う。

安城に救われて、俺の中に灯った“誰かを救いたい”という想い。
それは、誰かに押し付けられたものじゃなくて、自分自身の意志でそう在りたいと願った気持ちだ。

そんなとき、あの銀髪の天才発明家――いや、安城星梨奈が言った言葉が蘇る。

「君を救うのは私の役目じゃない。彼女に任せるとするよ」

(まさか……最初からこうなるって分かってたのか?)

俺は自分の席に戻ると、隣に座る金髪のオッドアイギャル――安城に声をかけた。

「なあ、さっきの銀髪の転校生って……安城のお姉さんなのか? 全然雰囲気違うけど」

「……そうよ。姉さんは、天才なのよ。凡人の私とは、全然違うの」

そう言って、彼女は視線を落とした。
普段の強気な態度からは想像もつかない、どこか劣等感のにじむ表情。

(凡人?安城が? こんな世界一可愛くて、綺麗で、頭も良くて、料理もできて、剣道では“心眼の剣姫”と呼ばれた俺の最高の推しが?)

思わず、心の中で熱弁をふるってしまう。

(……いや、待て、落ち着け神田ゆういち。俺は察しのいい男だ。これってもしかして、遠回しに“真の凡人”である俺を煽ってる……? そういうことなのか!?)

当然ながら、その心の声は――例によって、彼女に筒抜けだった。

ふと横を見ると、安城は目を逸らしながらも、なぜか頬を赤らめていた。
そして、下唇をキュッと噛みしめ、感情を押し殺すようにしていた。

(……あんたって人はね……!)

そして、俺の心の声はさらに続いてしまう。

(いや、確かにお姉さんも綺麗だけど……俺は、恵梨香の方が断然かわいいと思うけどな)

ナチュラルに“恵梨香呼び”してしまったが、心の声なのでノーカウントということにしておこう。

……もちろん、そのノーカウントの心の声も、彼女には届いていた。

(……は? 私の方が、姉さんより可愛い……? バ、バカじゃないの? 目、腐ってるんじゃないの? てか、なんで下の名前呼び?)

恵梨香の頬が、ますます赤くなっていく。

(でも……あの公園で会った彼女――安城星梨奈は、もっと冷たくて、怖い感じだった。どっちが本当の彼女なんだろうな……)

その瞬間、安城がふいにこちらを向いた。

「あなた、姉さんと知り合いなの?なんか知ってるような雰囲気だけど?」

「知り合いというか、怖い思いをされたというか……」

思わず目を伏せる。
思い出してしまった、あの夕暮れの公園。
無機質で冷たい視線。本質だけを射抜いてくるようなあの目――
正直、怖かった。

「意外ね……」

ふと横を見ると、安城はどこか寂しげに笑った。

「姉さんはね、人に興味を持たないの。
愛想よく見えるのは、ただの演技。
人間関係の悩みなんて、あの人にとってくだらない悩みでしかないわ。」

その声音は、どこか諦めと……ほんの少しの嫉妬が混ざっていた。

(確かに……あの公園で、くだらないって言ってたもんな)

そんな空気の中、不意に背後から聞こえてきた陽気な声が、その場をぱっと明るくした。

「ゆういち!!元気になってよかったよ!!これも安城さんのおかげだねっ!」

振り返れば、聖が満面の笑みで駆け寄ってくる。
その笑顔は、まるで太陽みたいに眩しかった。

「安城と聖のおかげだよ。ありがとうな、親友」

そう言って、俺は自然と聖の肩をポンと抱いた。

「こいつめ~。これからも一緒にいてくれるんだよな?親友!俺が闇堕ちした時は頼むぜ!」

「えっ!?闇堕ち?何それ?て、てかゆ、ゆういち~っ……は、恥ずかしいよ~肩組むの……っ!」

聖の顔は耳まで真っ赤だった。
俺にとってはただの男同士の熱い友情のつもりだったけど――

(ち、ちかいよ!もうっ!ゆういちの匂いが……僕の大好きな、ゆういちの匂いがっ……)

――その聖の心の声は、きっちりと隣の金髪ギャルに届いていた。

「……そろそろ、離れたらどうかしら?」

殺気まじりの低音ボイス。
ギリギリで抑えられた怒りと、ほんのわずかな――独占欲。

「すっ、すいません……!」

(な、なんか怒ってる?安城)

俺は瞬時に聖の肩から手を引っ込めた。
今日からまたいつも通りの授業が始まる。

♢♢
そして――チャイムが鳴った。
授業が終わり、放課後のざわめきが校舎に広がっていく。
俺は荷物をまとめながら、ふと思い出す。

(私は転校後、EES共鳴現象の発現を救う研究室を立ち上げたい。君には、それを手伝ってもらいたい)

あの公園で、銀髪の天才――安城星梨奈が言った言葉。正直、あの時は何もかもが現実味を帯びてなかった。

でも今は違う。

(……俺のこの力が誰かを救うきっかけになるなら俺は……そいつらを救いたい)

そう呟くように決意して、俺は校舎の端――理科準備室のある棟へと向かう。

「えっと、科学準備室は確かこのへん……あれ?」

扉の前で、思わず足が止まった。
プレートが――変わっている。

前までは確かに「科学準備室」と書かれていたはず。
けど、今そこにあるのは、明らかにおかしな表示だった。

《安城星梨奈(宅)》

「……宅?」

「いや、住所かよ」

思わずツッコむ俺。
いやいやいや、校内に“宅”って何? 個人研究室ってレベルじゃねーぞ?
俺はドアを開く瞬間、以前の怖い印象の彼女を思い出した。

(やべ………ちょっと緊張するかも)

そして俺は覚悟を決めて、若干の不安を抱えつつ、俺はスライドドアを開けた――

「失礼しま――っっッ!!!!?????」

脳がバグった。

目の前に現れたのは、銀髪の天才発明家こと安城星梨奈――
その姿が……いや、装備が、どう見てもおかしい。

いや、してない。

何も、着てない。
いや、正確には――“白衣だけ”は着ている。つまり、すっぽんぽんに白衣一丁。
俺の予想を裏切る、別の恐怖がそこに展開されていた。
(……天才っていうかただの変態じゃねぇか……)
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。

ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。 真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。 引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。 偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。 ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。 優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。 大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。

清掃員と僕の密やかな情状

MisakiNonagase
恋愛
都心のオフィスビルで働く会社員の26歳・高城蓮(たかぎれん)。彼の無機質な日常に唯一の彩りを与えていたのは、夕方から現れる70歳の清掃員・山科和子だった。 青い作業服に身を包み、黙々と床を磨く彼女を、蓮は「気さくなおばあちゃん」だと思っていた。あの日、立ち飲み屋で私服姿の彼女と再会するまでは――。 肉じゃがの甘い湯気、溶けゆく氷の音、そして重ねた肌の温もり。 44歳の年齢差を超え、孤独を分かち合った二人が辿り着いた「愛の形」とは。これは、一人の青年が境界線の向こう側で教わった、残酷なまでに美しい人生の記録。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ちょっと大人な物語はこちらです

神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な短編物語集です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

処理中です...