5 / 71
第一章
ふれあいコーナー
しおりを挟む
小さな吊り橋の上を、ふわふわのしっぽがひょこひょこ揺れていた。
その姿があまりにも可愛くて、私たちは全員釘ずけで見る。
「わ、見て見て!
あのレッサーパンダ、手で顔こすってる!」
「マジか、あんなの反則だろ……可愛すぎる」
瑠夏が珍しくテンション上がってて、ちょっと笑ってしまう。
「もふもふしたい~!」
「ひなた、あれ抱っこできるやつじゃないからね?」
「わかってるよ~、でも見てるだけでも幸せ…!」
檻の向こうで、レッサーパンダが木の枝に登ってはバランスを崩して、
慌ててしっぽで支えてる。
隣の瑠夏が「ドジだな、あいつ」と笑ったけど、
その笑顔がどこか優しくて、なんか胸がくすぐったくなる。
蛍はというと、すでにスマホで連写中。
「はい、みんな笑ってー!
この角度いい感じ!」
ぱしゃぱしゃと音が響いて、
「ちょ、蛍!? 今の絶対変な顔してたって!」
「いいのいいの! 自然体がいちばん可愛いんだから!」
そう言って笑う蛍に、みんなもつられて笑った。
しばらくしてレッサーパンダゾーンを離れると、
ちょうどお昼どき。
通り沿いには焼きそば、フランクフルト、クレープの屋台。
漂ってくる香りに、お腹がきゅるると鳴った。
「……ひなた、今お腹鳴っただろ?」
「な、鳴ってないよ!」
「はは、可愛い音したよ?」
天音が穏やかに笑ってる。
うぅ、恥ずかしい……。
「何か買って食べようぜ。
どれにする?」
「うーん……クレープかなぁ。
あ、瑠夏、この前くれたやつ美味しかったよ!」
「……っ!
そ、そうかよ。
なら、また買ってやる」
「ほんと!?
ありがと!」
思わず嬉しくて笑顔になると、瑠夏が少しだけ顔を逸らした。
その耳がほんのり赤い気がして、なんだか胸がぽかぽかした。
「私はポテト!
悠理、半分こしようよ!」
「お、いいね。
じゃあ俺はドリンク係で」
「ナイス!」
蛍と悠理のテンポの良いやりとりが、
まるで仲良し兄妹みたいで見てて微笑ましい。
「あと焼きとうもろこしも欲しいな」
そう言って悠理は飲み物ととうもろこしを買いにそそくさと行ってしまった。
それを見て私たちも各々に買いに行って、後で野外に置いてあるテーブルに集合という形になった。
少しして、それぞれ手に食べ物を持って合流する。
クレープの包みを開いた瞬間、ふわっと甘い香りが広がった。
「……これ、めっちゃ美味しい!」
いちごと生クリームの組み合わせが最高で、思わず声が漏れた。
「ほらな、言っただろ」
「うん!
瑠夏のおすすめ当たりだったよ!」
嬉しくて笑うと、瑠夏が一瞬だけ目を丸くしてから、そっぽを向く。
「……そんな大げさに言うほどじゃねぇよ」
「…照れてる?」
「照れてねぇ!」
蛍と悠理が笑い出して、天音が「まあまあ」となだめながら微笑む。
「…悠理、それ焦げてるじゃん」
「これがいいんだよ。香ばしいのが旨いんだ」
「いや、それほぼ炭でしょ」
蛍が笑いながら悠理の焼きとうもろこしを取り上げる。
悠理は肩をすくめて、「味見」と言いながら蛍のポテトをひょいとつまんだ。
私たちはそんな二人を見ながら、のんびり食べ進めた。
周りではクラスメイトたちの笑い声やカメラのシャッター音が響いていて、
春の光がどこまでも明るくて、心が軽くなる。
「こういうの、いいね」
自然とそんな言葉がこぼれた。
すると隣の天音が穏やかに微笑む。
「うん。
みんなで笑っていられる時間って、貴重だからね」
「……だな」
瑠夏が短くそう言って、空を見上げる。
淡い雲がゆったりと流れていく。
――この瞬間が、ずっと続けばいいのにな。
そんなことを、ふと考えてしまった。
食べ終わった後向かった先は、ふれあいコーナー。
「ウサギ・モルモット・ヤギ・ひよこ」と書かれた看板の前で、思わず足が止まる。
「やば……めっちゃ可愛い……!」
ふわふわの白いウサギが、ぴょんと跳ねた瞬間、みんな同時に声を上げた。
「ひなた、抱っこしてみなよ」
「え、いいの?
……うわぁ、あったかい……」
そっと手を差し出すと、ウサギが小さな足で私の腕を踏んでくる。
その柔らかさに思わず顔がゆるんだ。
「おい、落とすなよ?」
「だ、大丈夫だよ~……ほら、瑠夏も触ってみて」
「え、いいのか?」
「うん。ふわふわだよ?」
差し出した手の先で、瑠夏が恐る恐る指先でウサギの背をなでる。
「……ほんとだ、あったけぇな」
その穏やかな表情を見て、胸の奥がじんわりとした。
――瑠夏、こういう顔もするんだ。
横で蛍が写真を撮りながら微笑んで、悠理がぼそっと呟く。
「……青春だな」
「なに勝手にまとめ入ってんの」
「いや、絵面がほのぼのしすぎてさ」
笑い声が重なって、
春の風がまた、そっと頬をくすぐった。
その姿があまりにも可愛くて、私たちは全員釘ずけで見る。
「わ、見て見て!
あのレッサーパンダ、手で顔こすってる!」
「マジか、あんなの反則だろ……可愛すぎる」
瑠夏が珍しくテンション上がってて、ちょっと笑ってしまう。
「もふもふしたい~!」
「ひなた、あれ抱っこできるやつじゃないからね?」
「わかってるよ~、でも見てるだけでも幸せ…!」
檻の向こうで、レッサーパンダが木の枝に登ってはバランスを崩して、
慌ててしっぽで支えてる。
隣の瑠夏が「ドジだな、あいつ」と笑ったけど、
その笑顔がどこか優しくて、なんか胸がくすぐったくなる。
蛍はというと、すでにスマホで連写中。
「はい、みんな笑ってー!
この角度いい感じ!」
ぱしゃぱしゃと音が響いて、
「ちょ、蛍!? 今の絶対変な顔してたって!」
「いいのいいの! 自然体がいちばん可愛いんだから!」
そう言って笑う蛍に、みんなもつられて笑った。
しばらくしてレッサーパンダゾーンを離れると、
ちょうどお昼どき。
通り沿いには焼きそば、フランクフルト、クレープの屋台。
漂ってくる香りに、お腹がきゅるると鳴った。
「……ひなた、今お腹鳴っただろ?」
「な、鳴ってないよ!」
「はは、可愛い音したよ?」
天音が穏やかに笑ってる。
うぅ、恥ずかしい……。
「何か買って食べようぜ。
どれにする?」
「うーん……クレープかなぁ。
あ、瑠夏、この前くれたやつ美味しかったよ!」
「……っ!
そ、そうかよ。
なら、また買ってやる」
「ほんと!?
ありがと!」
思わず嬉しくて笑顔になると、瑠夏が少しだけ顔を逸らした。
その耳がほんのり赤い気がして、なんだか胸がぽかぽかした。
「私はポテト!
悠理、半分こしようよ!」
「お、いいね。
じゃあ俺はドリンク係で」
「ナイス!」
蛍と悠理のテンポの良いやりとりが、
まるで仲良し兄妹みたいで見てて微笑ましい。
「あと焼きとうもろこしも欲しいな」
そう言って悠理は飲み物ととうもろこしを買いにそそくさと行ってしまった。
それを見て私たちも各々に買いに行って、後で野外に置いてあるテーブルに集合という形になった。
少しして、それぞれ手に食べ物を持って合流する。
クレープの包みを開いた瞬間、ふわっと甘い香りが広がった。
「……これ、めっちゃ美味しい!」
いちごと生クリームの組み合わせが最高で、思わず声が漏れた。
「ほらな、言っただろ」
「うん!
瑠夏のおすすめ当たりだったよ!」
嬉しくて笑うと、瑠夏が一瞬だけ目を丸くしてから、そっぽを向く。
「……そんな大げさに言うほどじゃねぇよ」
「…照れてる?」
「照れてねぇ!」
蛍と悠理が笑い出して、天音が「まあまあ」となだめながら微笑む。
「…悠理、それ焦げてるじゃん」
「これがいいんだよ。香ばしいのが旨いんだ」
「いや、それほぼ炭でしょ」
蛍が笑いながら悠理の焼きとうもろこしを取り上げる。
悠理は肩をすくめて、「味見」と言いながら蛍のポテトをひょいとつまんだ。
私たちはそんな二人を見ながら、のんびり食べ進めた。
周りではクラスメイトたちの笑い声やカメラのシャッター音が響いていて、
春の光がどこまでも明るくて、心が軽くなる。
「こういうの、いいね」
自然とそんな言葉がこぼれた。
すると隣の天音が穏やかに微笑む。
「うん。
みんなで笑っていられる時間って、貴重だからね」
「……だな」
瑠夏が短くそう言って、空を見上げる。
淡い雲がゆったりと流れていく。
――この瞬間が、ずっと続けばいいのにな。
そんなことを、ふと考えてしまった。
食べ終わった後向かった先は、ふれあいコーナー。
「ウサギ・モルモット・ヤギ・ひよこ」と書かれた看板の前で、思わず足が止まる。
「やば……めっちゃ可愛い……!」
ふわふわの白いウサギが、ぴょんと跳ねた瞬間、みんな同時に声を上げた。
「ひなた、抱っこしてみなよ」
「え、いいの?
……うわぁ、あったかい……」
そっと手を差し出すと、ウサギが小さな足で私の腕を踏んでくる。
その柔らかさに思わず顔がゆるんだ。
「おい、落とすなよ?」
「だ、大丈夫だよ~……ほら、瑠夏も触ってみて」
「え、いいのか?」
「うん。ふわふわだよ?」
差し出した手の先で、瑠夏が恐る恐る指先でウサギの背をなでる。
「……ほんとだ、あったけぇな」
その穏やかな表情を見て、胸の奥がじんわりとした。
――瑠夏、こういう顔もするんだ。
横で蛍が写真を撮りながら微笑んで、悠理がぼそっと呟く。
「……青春だな」
「なに勝手にまとめ入ってんの」
「いや、絵面がほのぼのしすぎてさ」
笑い声が重なって、
春の風がまた、そっと頬をくすぐった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
今日の授業は保健体育
にのみや朱乃
恋愛
(性的描写あり)
僕は家庭教師として、高校三年生のユキの家に行った。
その日はちょうどユキ以外には誰もいなかった。
ユキは勉強したくない、科目を変えようと言う。ユキが提案した科目とは。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる