俺の隣にいるのはキミがいい

空乃 ひかげ

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第二章

神社に集合

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勉強会から次の日。
夕暮れのオレンジが街をやわらかく染める頃。
昨日の夜蛍とチャットで、浴衣着ていこっかって話をしていたけど…。

さっきグループチャットの通知が鳴って、画面には「午後18時頃、全員浴衣で神社の鳥居前に集合!」って蛍からのメッセージが表示されてた。
みんなそれぞれ「了解」とか「わかった」って返してたけど、まさか全員浴衣で行くなんて…。

しかも当日に言われて普通に返事してるって事は、既に前もって蛍が他のメンバーに浴衣で行こうと誘っていたのかもしれない。
流石蛍、こういう所ホント抜け目ない。

…ま、まぁ私も浴衣着るんけどさ。
帯がちょっと苦しいんだよね…。

髪をゆるくまとめて、白地にピンクの花が散りばめられた浴衣に袖を通す。
鏡に映る自分を見て、思わず小さく息をのんだ。
「こんなもんかな……頑張ったかも」
1人で動画を見ながら着付けするのには一苦労だった。
少しハルくんに手伝ってもらったけど…。

一階でソファに座ってスマホをいじっていたハルくんが、降りて来た私に気づいてフッと笑う。
「ひな、似合ってんじゃん。
こりゃアイツらの反応が楽しみだな」
ククッと喉を鳴らしながら口元に手を添えて笑うハルくん。
そんなハルくんの元まで近づく。

「え?
私変じゃない?」
「変じゃない、可愛い可愛い」
「良かった!」
ホッと一安心する私に、ハルくんが立ち上がって髪に手を伸ばす。
「ほら、これ忘れてんぞ」
そっと右耳の上の方に花柄の髪飾りをつけてくれた。

「そうだった、ありがとうハルくん」
「どういたしまして」
「…そういえばハルくんは祭り行かないの?」
「俺は別にちょっと見れればいいからな。
後で誰かと行くさ」

そう言って再びソファに腰掛ける。
私は「ふーん」と軽く返事をしてキッチンに向かって行き、冷蔵庫からお茶を取り出す。
「ハルくんはさ、彼女とかいないの?」
コップにお茶を注ぎながら、なんとなく聞いてみた。

「彼女ー?
いないいない。
今仕事忙しいし、そんな余裕はないな」
「そうなんだ。
早く良い人できるといいね」
お茶を飲んでニッコリと笑いかける。

「…今はひな達見てる方が面白いからな」
「え?
なんか言った?」
ポツリと呟いたハルくんの言葉が上手く聞き取れなかった。
「いーや?
別に何でもねぇよ」
クスクスと笑いながらスマホを再びいじり始めるハルくんに、私は首を傾げた。

それから少し経って、私は出掛ける準備をしてハルくんと共に玄関に向かう。
「忘れもんねぇか?」
「うん、大丈夫。
貴重品は巾着袋の中に入れたし…」
「落として帰ってくんなよ?」
「そんな事しませんよーだ」
冗談交じりに言うハルくんに対して、私は少しムッとしながら言い返す。
「じゃあ行ってくるね」
「あぁ、気をつけてな」
小さくい笑ってハルくんに手を振りながら玄関を出る。

みんなと夏祭り…。
去年はハルくんと行ったから、みんなで行けるの凄く楽しみ。
ワクワクと胸を高鳴らせながら、お祭りを開いてる神社に向かった。


ーーーー


神社の鳥居前には、すでに4人の姿があった。
瑠夏は紺の浴衣で腕を組んで待っていて、天音は落ち着いた灰色の浴衣で静かにスマホを見ている。
そして悠理は黒に近い藍色の浴衣で、手をポケットに突っ込みながら鳥居にもたれつつ、水色の生地に白い花の模様が描かれてある浴衣を着た蛍と談笑していた。
蛍は私の姿が見えると、パッと手を振ってくれていた。

「ひなたー!」
「ごめん、お待たせ」
少し駆け足でみんなの元に向かう。
3人の視線が一斉に私に向けられる。

私が近づくと──
3人とも、一瞬ぴたりと動きを止めた。

「……」
「……あ」

ほんの数秒だけ、時間が止まったように感じた。
風鈴の音が遠くで鳴る。
私の浴衣の裾が風でふわりと揺れた。

先に口を開いたのは悠理だった。
「……へぇ、似合うな」
低いけど柔らかい声で、ふっと口元をゆるめる。

「ねっ!
ひなためっちゃ可愛い!」
横で蛍が抱き着いて来て笑う。
私は少し顔が熱くなるのを感じた。
「……ありがと、悠理、蛍」

その瞬間、瑠夏と天音の視線が同時に動く。
2人とも一拍遅れて顔を赤くして、慌てたように目を逸らした。

瑠夏は咳払いをして
「っ……あー…。
その…似合ってんじゃねーの?」
首の後ろをかきながらぶっきらぼうに言うし、
天音は天音で
「……あぁ。
とても綺麗だ」
微笑みかけて、落ち着いてるようで耳まで赤く染まっていた。

「二人もありがとう」
そう笑いかけると、妙な沈黙が流れる。
…え、なにこの空気。
もしかして…私のせい?
そう思い心配してる私の横では、蛍が肩を震わせながら「出遅れたね、2人とも」って小声で呟いていた。
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