48 / 70
第二章
神社に集合
しおりを挟む
勉強会から次の日。
夕暮れのオレンジが街をやわらかく染める頃。
昨日の夜蛍とチャットで、浴衣着ていこっかって話をしていたけど…。
さっきグループチャットの通知が鳴って、画面には「午後18時頃、全員浴衣で神社の鳥居前に集合!」って蛍からのメッセージが表示されてた。
みんなそれぞれ「了解」とか「わかった」って返してたけど、まさか全員浴衣で行くなんて…。
しかも当日に言われて普通に返事してるって事は、既に前もって蛍が他のメンバーに浴衣で行こうと誘っていたのかもしれない。
流石蛍、こういう所ホント抜け目ない。
…ま、まぁ私も浴衣着るんけどさ。
帯がちょっと苦しいんだよね…。
髪をゆるくまとめて、白地にピンクの花が散りばめられた浴衣に袖を通す。
鏡に映る自分を見て、思わず小さく息をのんだ。
「こんなもんかな……頑張ったかも」
1人で動画を見ながら着付けするのには一苦労だった。
少しハルくんに手伝ってもらったけど…。
一階でソファに座ってスマホをいじっていたハルくんが、降りて来た私に気づいてフッと笑う。
「ひな、似合ってんじゃん。
こりゃアイツらの反応が楽しみだな」
ククッと喉を鳴らしながら口元に手を添えて笑うハルくん。
そんなハルくんの元まで近づく。
「え?
私変じゃない?」
「変じゃない、可愛い可愛い」
「良かった!」
ホッと一安心する私に、ハルくんが立ち上がって髪に手を伸ばす。
「ほら、これ忘れてんぞ」
そっと右耳の上の方に花柄の髪飾りをつけてくれた。
「そうだった、ありがとうハルくん」
「どういたしまして」
「…そういえばハルくんは祭り行かないの?」
「俺は別にちょっと見れればいいからな。
後で誰かと行くさ」
そう言って再びソファに腰掛ける。
私は「ふーん」と軽く返事をしてキッチンに向かって行き、冷蔵庫からお茶を取り出す。
「ハルくんはさ、彼女とかいないの?」
コップにお茶を注ぎながら、なんとなく聞いてみた。
「彼女ー?
いないいない。
今仕事忙しいし、そんな余裕はないな」
「そうなんだ。
早く良い人できるといいね」
お茶を飲んでニッコリと笑いかける。
「…今はひな達見てる方が面白いからな」
「え?
なんか言った?」
ポツリと呟いたハルくんの言葉が上手く聞き取れなかった。
「いーや?
別に何でもねぇよ」
クスクスと笑いながらスマホを再びいじり始めるハルくんに、私は首を傾げた。
それから少し経って、私は出掛ける準備をしてハルくんと共に玄関に向かう。
「忘れもんねぇか?」
「うん、大丈夫。
貴重品は巾着袋の中に入れたし…」
「落として帰ってくんなよ?」
「そんな事しませんよーだ」
冗談交じりに言うハルくんに対して、私は少しムッとしながら言い返す。
「じゃあ行ってくるね」
「あぁ、気をつけてな」
小さくい笑ってハルくんに手を振りながら玄関を出る。
みんなと夏祭り…。
去年はハルくんと行ったから、みんなで行けるの凄く楽しみ。
ワクワクと胸を高鳴らせながら、お祭りを開いてる神社に向かった。
ーーーー
神社の鳥居前には、すでに4人の姿があった。
瑠夏は紺の浴衣で腕を組んで待っていて、天音は落ち着いた灰色の浴衣で静かにスマホを見ている。
そして悠理は黒に近い藍色の浴衣で、手をポケットに突っ込みながら鳥居にもたれつつ、水色の生地に白い花の模様が描かれてある浴衣を着た蛍と談笑していた。
蛍は私の姿が見えると、パッと手を振ってくれていた。
「ひなたー!」
「ごめん、お待たせ」
少し駆け足でみんなの元に向かう。
3人の視線が一斉に私に向けられる。
私が近づくと──
3人とも、一瞬ぴたりと動きを止めた。
「……」
「……あ」
ほんの数秒だけ、時間が止まったように感じた。
風鈴の音が遠くで鳴る。
私の浴衣の裾が風でふわりと揺れた。
先に口を開いたのは悠理だった。
「……へぇ、似合うな」
低いけど柔らかい声で、ふっと口元をゆるめる。
「ねっ!
ひなためっちゃ可愛い!」
横で蛍が抱き着いて来て笑う。
私は少し顔が熱くなるのを感じた。
「……ありがと、悠理、蛍」
その瞬間、瑠夏と天音の視線が同時に動く。
2人とも一拍遅れて顔を赤くして、慌てたように目を逸らした。
瑠夏は咳払いをして
「っ……あー…。
その…似合ってんじゃねーの?」
首の後ろをかきながらぶっきらぼうに言うし、
天音は天音で
「……あぁ。
とても綺麗だ」
微笑みかけて、落ち着いてるようで耳まで赤く染まっていた。
「二人もありがとう」
そう笑いかけると、妙な沈黙が流れる。
…え、なにこの空気。
もしかして…私のせい?
そう思い心配してる私の横では、蛍が肩を震わせながら「出遅れたね、2人とも」って小声で呟いていた。
夕暮れのオレンジが街をやわらかく染める頃。
昨日の夜蛍とチャットで、浴衣着ていこっかって話をしていたけど…。
さっきグループチャットの通知が鳴って、画面には「午後18時頃、全員浴衣で神社の鳥居前に集合!」って蛍からのメッセージが表示されてた。
みんなそれぞれ「了解」とか「わかった」って返してたけど、まさか全員浴衣で行くなんて…。
しかも当日に言われて普通に返事してるって事は、既に前もって蛍が他のメンバーに浴衣で行こうと誘っていたのかもしれない。
流石蛍、こういう所ホント抜け目ない。
…ま、まぁ私も浴衣着るんけどさ。
帯がちょっと苦しいんだよね…。
髪をゆるくまとめて、白地にピンクの花が散りばめられた浴衣に袖を通す。
鏡に映る自分を見て、思わず小さく息をのんだ。
「こんなもんかな……頑張ったかも」
1人で動画を見ながら着付けするのには一苦労だった。
少しハルくんに手伝ってもらったけど…。
一階でソファに座ってスマホをいじっていたハルくんが、降りて来た私に気づいてフッと笑う。
「ひな、似合ってんじゃん。
こりゃアイツらの反応が楽しみだな」
ククッと喉を鳴らしながら口元に手を添えて笑うハルくん。
そんなハルくんの元まで近づく。
「え?
私変じゃない?」
「変じゃない、可愛い可愛い」
「良かった!」
ホッと一安心する私に、ハルくんが立ち上がって髪に手を伸ばす。
「ほら、これ忘れてんぞ」
そっと右耳の上の方に花柄の髪飾りをつけてくれた。
「そうだった、ありがとうハルくん」
「どういたしまして」
「…そういえばハルくんは祭り行かないの?」
「俺は別にちょっと見れればいいからな。
後で誰かと行くさ」
そう言って再びソファに腰掛ける。
私は「ふーん」と軽く返事をしてキッチンに向かって行き、冷蔵庫からお茶を取り出す。
「ハルくんはさ、彼女とかいないの?」
コップにお茶を注ぎながら、なんとなく聞いてみた。
「彼女ー?
いないいない。
今仕事忙しいし、そんな余裕はないな」
「そうなんだ。
早く良い人できるといいね」
お茶を飲んでニッコリと笑いかける。
「…今はひな達見てる方が面白いからな」
「え?
なんか言った?」
ポツリと呟いたハルくんの言葉が上手く聞き取れなかった。
「いーや?
別に何でもねぇよ」
クスクスと笑いながらスマホを再びいじり始めるハルくんに、私は首を傾げた。
それから少し経って、私は出掛ける準備をしてハルくんと共に玄関に向かう。
「忘れもんねぇか?」
「うん、大丈夫。
貴重品は巾着袋の中に入れたし…」
「落として帰ってくんなよ?」
「そんな事しませんよーだ」
冗談交じりに言うハルくんに対して、私は少しムッとしながら言い返す。
「じゃあ行ってくるね」
「あぁ、気をつけてな」
小さくい笑ってハルくんに手を振りながら玄関を出る。
みんなと夏祭り…。
去年はハルくんと行ったから、みんなで行けるの凄く楽しみ。
ワクワクと胸を高鳴らせながら、お祭りを開いてる神社に向かった。
ーーーー
神社の鳥居前には、すでに4人の姿があった。
瑠夏は紺の浴衣で腕を組んで待っていて、天音は落ち着いた灰色の浴衣で静かにスマホを見ている。
そして悠理は黒に近い藍色の浴衣で、手をポケットに突っ込みながら鳥居にもたれつつ、水色の生地に白い花の模様が描かれてある浴衣を着た蛍と談笑していた。
蛍は私の姿が見えると、パッと手を振ってくれていた。
「ひなたー!」
「ごめん、お待たせ」
少し駆け足でみんなの元に向かう。
3人の視線が一斉に私に向けられる。
私が近づくと──
3人とも、一瞬ぴたりと動きを止めた。
「……」
「……あ」
ほんの数秒だけ、時間が止まったように感じた。
風鈴の音が遠くで鳴る。
私の浴衣の裾が風でふわりと揺れた。
先に口を開いたのは悠理だった。
「……へぇ、似合うな」
低いけど柔らかい声で、ふっと口元をゆるめる。
「ねっ!
ひなためっちゃ可愛い!」
横で蛍が抱き着いて来て笑う。
私は少し顔が熱くなるのを感じた。
「……ありがと、悠理、蛍」
その瞬間、瑠夏と天音の視線が同時に動く。
2人とも一拍遅れて顔を赤くして、慌てたように目を逸らした。
瑠夏は咳払いをして
「っ……あー…。
その…似合ってんじゃねーの?」
首の後ろをかきながらぶっきらぼうに言うし、
天音は天音で
「……あぁ。
とても綺麗だ」
微笑みかけて、落ち着いてるようで耳まで赤く染まっていた。
「二人もありがとう」
そう笑いかけると、妙な沈黙が流れる。
…え、なにこの空気。
もしかして…私のせい?
そう思い心配してる私の横では、蛍が肩を震わせながら「出遅れたね、2人とも」って小声で呟いていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる