俺の隣にいるのはキミがいい

空乃 ひかげ

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第二章

みんなと周る楽しいお祭り

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神社のお祭りには、沢山の屋台が並んでいた。
風鈴の音と、屋台の提灯の明かり。
浴衣姿の人たちが笑い合う中、私たち五人は並んで歩いた。

「わー!
見て見て、りんご飴!
絶対買う!」
蛍が目を輝かせながら屋台を指さす。
「女子ってりんご飴好きだよなー」
瑠夏が呆れたように言うけど、どこか楽しそう。

私はというと、ふわふわした綿あめに目が釘付けだった。
「ひなた、それ買うの?」
天音が隣で聞いてくれて、私は少し照れながら頷いた。
「うん。
甘い匂いで我慢できなくて」
「その気持ち、ちょっとわかるよ」
天音が小さく笑う。
少し柔らかいその笑顔に、胸が温かくなる。

綿あめを買って、天音に差し出す。
「天音、一緒に食べよ?」
「え?
でも…」
驚いた様子で私を見て口籠もる天音を見ながら、ニコッと笑う。
「大丈夫だよ。
私は天音と美味しい物共有したいんだけど、ダメ?」
「うっ…そう言われたら断れないな…」

少し顔を赤らめて照れながら微笑む天音は、綿あめを千切って口に入れる。
「…甘い」
「ふふっ、美味しいね」
2人で綿あめを分け合う。
何だか、凄く穏やかな時間が流れてる気がする。

そして少し離れた場所では、悠理が射的の銃を構えていた。
「よし……決めるぜ!」
狙いを定めて撃つと、パンッ!と軽い音。
次々に撃ち落として、5発中全部命中。
でも景品が落ちたのは3個程だった。

それでも凄いから、周りの子どもたちが「すげー!」って目を輝かせて拍手してる。
「ははっ、やっぱ上手いね悠理」
「まぁ、慣れってやつ?」
どこか得意げに笑うその顔が、提灯の灯りに照らされて眩しく感じた。

一方で、瑠夏は
「ひなた、輪投げ勝負するぞ」
「えっ、ちょっ…!」
突然言い出して、待ってと慌てる私の腕を引っ張って行く。
そしていきなり始まる勝負。
…まぁ、結局負けたのは私で、輪が全部変な方向に飛んでった。
「よっしゃ、俺の勝ちー!」
「ははっ!
瑠夏、小さい子みたい」
笑いながら悔しがる。
でも、こいうの小学生ぶりだから凄く楽しいな…。

隣の屋台では、蛍がヨーヨー釣りに挑戦してる天音を見て
「やっぱ天音って慎重派なんだね」
なんてからかっていた。

こんな感じでみんなであちこち回って、笑って、写真撮って。
いつの間にか空はすっかり暗くなり、夜風が少し涼しく吹き始めていた。

「そろそろ花火見る場所に移動しよっか」
蛍の提案で、みんなで人混みの中を歩き始める。
他の人たちも花火を見るために移動し出してる人が多かった。
逸れない様に、気をつけて歩いていたその途中。

私はふと、屋台の端に並んだ「お面屋さん」を見つけた。
赤い金魚、ヒーロー、キャラ物、動物系、そして──白い狐のお面。

「…悠理に似合いそう」

無意識に足が止まる。
みんなの後ろ姿が少しずつ遠ざかって行く事に気づかなかった。

「……うーん、買おうかな……」
財布を取り出しかけたけど、迷って手を止める。
突然これを渡して、悠理は困ったりしないかな?
変に思われたら恥ずかしいし…。

…いや、ここはもう買っちゃえ!
「おじさん、この白い狐のお面ください」
「はいよ、700円ね」
財布からお金を出して支払い、お面を受け取る。
勢いで買っちゃったけど、悠理付けてくれるかな…?

てか、悠理だけに渡すのって何か変…?
みんなの分買うお金がないし…本当に渡してもいいのかどうか…。

うーん、と悩みながら立ち止まっていると、気づけば私以外他のメンバーはいなくなっていた。

「……え?」

瑠夏も天音も、蛍も悠理も、いない。

「……もしかして逸れちゃった?」
声もかけず立ち止まってお面屋見てたからだ。
どうしようと焦ってスマホを取り出したけど──画面には、無情に“充電切れ”のマーク。

「なんで今!?」
思わず頭を抱える。

(……うう、どうしよう)
下手に動くと余計に迷うかもしれない。
私はお面屋の隣で、通り過ぎる人たちをじっと見つめながら立ち尽くした。

みんな、心配してるだろうな……。
迷惑、かけちゃったよね……。

申し訳なさに胸の奥がじんわり痛くて、思わず下を向く。
──その時。

「……ひなた!」

私の名を呼ぶ聞き慣れた声に、顔を上げた。
提灯の明かりの向こうに、浴衣姿の彼が走ってくるのが見えた。
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