俺の隣にいるのはキミがいい

第三章

やっと言えた想い

【瑠夏side】

家に着いて玄関の鍵を閉めた瞬間、張りつめていた心がふっと緩んだ。

「……はぁ……ついに言っちまったな」
誰に聞かせるでもなく、小さく息を吐いて独り呟く。
靴を脱ぎ、リビングにも行かず自室へ向かう。
そのままベッドに腰を落とし、後ろへ倒れ込むように寝転んだ。

天井を見上げて思いを馳せる。
観覧車から見た夕陽の色が、まだ瞳の奥に残っている様な気がした。

手のひらをそっと視界の前に持ち上げる。
ひなたの手の小ささ、やわらかさ、温もり……その全部をハッキリ覚えてる。

「……ひなた」

名前を呼ぶだけで、胸がじんわり熱くなる。
ずっと抑えてきた想いを、やっと言葉にできた。
天音に宣戦布告された日からずっと考えていた。

今このままじゃ、確実に俺はただの幼馴染で終わる。
ひなたに意識してもらわねぇと、何も始まらねぇ。
多分すぐには答えは出ない。
でも、それでも確実に俺の想いをひなたに伝えることで何かが変わるはずだ。

このまま指咥えて見てるだけ、待ってるだけなんて俺の性に合わねぇ。
自分で行動して行くって決めたんだ。
それがどんな結果になろうとも…後悔はしたくない。

グッと開いた手を握りしめて拳を作る。
今日からただの幼馴染の関係は終わりだ。

…別れ際のひなたの顔を思い出す。
リンゴみたいに真っ赤にしたあの顔。
少しでも俺の事、意識してくれてるって事だよな？
それだけで十分だった。

「返事は急がなくていい……か」
あの時言ったはいいけど、内心では早く欲しいに決まってる。
でもひなたが悩むなら、ちゃんと待つ。
急かしたっていい返事は出ないだろうし、アイツの困る顔を見ても嬉しくない。

拳作ったまま、腕を額の上に置く。
ふっと、小さく笑みが漏れた。

「……今日も可愛かったな、ひなた」

朝から元気で無邪気な姿。
昼食のソースがベッタリ着いた口元。
観覧車の中で夕陽に照らされた、優しい笑顔。
告った後の赤く染まった頬。
別れ際のリンゴみてぇに真っ赤になってんのに、膨れっ面をしたあの表情。

全部が愛しくて、たまらなかった。
「絶対、譲らねぇからな……」

小さく呟き、目を閉じる。
胸の奥で静かに熱がくすぶり続けていた。