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第三章
応援するけど、泣かせたら許さない
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【蛍 side】
私はベッドに寝転がりながら、天井を見つめてふっと笑う。
珍しく悠理からの電話。
内容はやっとひなたの事が好きだと自覚したという報告だった。
電話越しの悠理の声はいつになく落ち着いていて、それでいて揺るぎない熱を帯びていた。
ずっと隣で見てきたから分かる。
悠理がここまでハッキリと口にするのは、もう迷いが一切ない証拠だ。
会話を続けて、わざと明るくいつもの調子で囃し立ててみる。
悠理は呆れたように
『お前、本当に良い性格してるよな……』
なんて言っているけど、彼が私に電話をかけてきたのは単なる報告以上の意味があるはずだ。
同じ「見守る側」だった私への、彼なりのけじめ。
笑い声が少しずつ静まり、夜の静寂が通話の隙間に滑り込んでくる。
私は起き上がり、窓の外の暗闇をじっと見つめた。
ここからは面白がっているだけの観客でいてはいけない。
「……ねぇ、悠理」
私の声のトーンが、一段階低くなったのに気づいたんだろう。
電話の向こうで、悠理の呼吸が微かに止まったのがわかった。
『……何だよ』
「悠理が自覚してくれたこと、私は本当に良かったと思ってる。
瑠夏も天音も、そして悠理も……こんなに素敵な3人に想われるなんて、ひなたは世界一の幸せ者だと思う」
そこまで言って、私は言葉を強く一文字ずつ刻むように続けた。
「でもね、これだけは言わせて。
……ひなたを泣かせるようなことだけは、絶対に許さないから」
昨日の放課後、校舎裏でひなたが泣いていたこと。
それを悠理が支えたことは、ひなたから少しだけ聞いていた。
だけど、これから始まるのは1人の女の子の奪い合いだ。
男子たちの熱情は、時に無自覚にひなたの優しさを削り取ってしまうかもしれない。
「もし悠理が、自分の独占欲やエゴでひなたの笑顔を奪うような真似をしたら……その時は、私が全力で悠理を叱るから。
友達として、それから今まで一緒に見守ってきた仲間としてね」
空気が張り詰める。
でも、悠理は怯むどころか低く、力強い声で即答した。
『……分かってる。
そんなこと、させるわけねぇだろ』
その言葉には、昨日彼女の涙を直接拭った者だけが持つ重みがあった。
『あいつを泣かすような真似は、絶対にしない。
……ひなたが泣く時は、俺が全部受け止めて最後には必ず笑わせてやる。
そのために、俺は保護者兼傍観者を辞めたんだ』
「…………」
『安心しろ、蛍。
お前の大事な親友は、俺が死ぬ気で幸せにしてみせるから』
迷いのない、真っ直ぐな誓い。
その熱に私の胸の奥も少しだけ熱くなった。
「……ふーん。
今の言葉、録音しておけばよかった」
私はわざと意地悪く笑って、張り詰めた空気を溶かした。
「分かったよ。
そこまで言うなら、せいぜい頑張ってよね。
ついでにもし泣かせたら、私と陽翔くんがガチ切れするんだからね」
『ハッ、あの兄貴が出てくるのは恐ろしいわ』
通話の向こうで、想像したのかククッと笑う悠理。
「……あと、瑠夏と天音も相当手強いよ?
まぁ明日から楽しみにしてるから」
『あぁ。
……サンキュ、蛍』
電話を切った後、私はスマホを胸元に抱えた。
四角関係、修羅場。
きっと今まで以上に大変な毎日が始まる。
でも、あんなに真っ直ぐに「幸せにする」と言い切った悠理なら。
そして、それに負けないくらいひなたを想っている瑠夏と天音なら。
「……まったく。
贅沢な悩みね、ひなた」
私は独り言を呟いて、親友の幸せな笑顔を思い浮かべながらベッドに横たわりゆっくりと目を閉じた。
明日からの最高に騒がしくて愛おしい日々のために。
私はベッドに寝転がりながら、天井を見つめてふっと笑う。
珍しく悠理からの電話。
内容はやっとひなたの事が好きだと自覚したという報告だった。
電話越しの悠理の声はいつになく落ち着いていて、それでいて揺るぎない熱を帯びていた。
ずっと隣で見てきたから分かる。
悠理がここまでハッキリと口にするのは、もう迷いが一切ない証拠だ。
会話を続けて、わざと明るくいつもの調子で囃し立ててみる。
悠理は呆れたように
『お前、本当に良い性格してるよな……』
なんて言っているけど、彼が私に電話をかけてきたのは単なる報告以上の意味があるはずだ。
同じ「見守る側」だった私への、彼なりのけじめ。
笑い声が少しずつ静まり、夜の静寂が通話の隙間に滑り込んでくる。
私は起き上がり、窓の外の暗闇をじっと見つめた。
ここからは面白がっているだけの観客でいてはいけない。
「……ねぇ、悠理」
私の声のトーンが、一段階低くなったのに気づいたんだろう。
電話の向こうで、悠理の呼吸が微かに止まったのがわかった。
『……何だよ』
「悠理が自覚してくれたこと、私は本当に良かったと思ってる。
瑠夏も天音も、そして悠理も……こんなに素敵な3人に想われるなんて、ひなたは世界一の幸せ者だと思う」
そこまで言って、私は言葉を強く一文字ずつ刻むように続けた。
「でもね、これだけは言わせて。
……ひなたを泣かせるようなことだけは、絶対に許さないから」
昨日の放課後、校舎裏でひなたが泣いていたこと。
それを悠理が支えたことは、ひなたから少しだけ聞いていた。
だけど、これから始まるのは1人の女の子の奪い合いだ。
男子たちの熱情は、時に無自覚にひなたの優しさを削り取ってしまうかもしれない。
「もし悠理が、自分の独占欲やエゴでひなたの笑顔を奪うような真似をしたら……その時は、私が全力で悠理を叱るから。
友達として、それから今まで一緒に見守ってきた仲間としてね」
空気が張り詰める。
でも、悠理は怯むどころか低く、力強い声で即答した。
『……分かってる。
そんなこと、させるわけねぇだろ』
その言葉には、昨日彼女の涙を直接拭った者だけが持つ重みがあった。
『あいつを泣かすような真似は、絶対にしない。
……ひなたが泣く時は、俺が全部受け止めて最後には必ず笑わせてやる。
そのために、俺は保護者兼傍観者を辞めたんだ』
「…………」
『安心しろ、蛍。
お前の大事な親友は、俺が死ぬ気で幸せにしてみせるから』
迷いのない、真っ直ぐな誓い。
その熱に私の胸の奥も少しだけ熱くなった。
「……ふーん。
今の言葉、録音しておけばよかった」
私はわざと意地悪く笑って、張り詰めた空気を溶かした。
「分かったよ。
そこまで言うなら、せいぜい頑張ってよね。
ついでにもし泣かせたら、私と陽翔くんがガチ切れするんだからね」
『ハッ、あの兄貴が出てくるのは恐ろしいわ』
通話の向こうで、想像したのかククッと笑う悠理。
「……あと、瑠夏と天音も相当手強いよ?
まぁ明日から楽しみにしてるから」
『あぁ。
……サンキュ、蛍』
電話を切った後、私はスマホを胸元に抱えた。
四角関係、修羅場。
きっと今まで以上に大変な毎日が始まる。
でも、あんなに真っ直ぐに「幸せにする」と言い切った悠理なら。
そして、それに負けないくらいひなたを想っている瑠夏と天音なら。
「……まったく。
贅沢な悩みね、ひなた」
私は独り言を呟いて、親友の幸せな笑顔を思い浮かべながらベッドに横たわりゆっくりと目を閉じた。
明日からの最高に騒がしくて愛おしい日々のために。
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