俺の隣にいるのはキミがいい

空乃 ひかげ

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第三章

元保護者と現保護者

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【悠理 side】

夜の静明に包まれた自分の部屋。
机の引き出しにしまったお守りを一度だけ眺めてからベッドの上に座り、俺はスマホを手に取りある番号を呼び出した。

少しの呼び出し音の後、聞き慣れた明るい声が響く。

『……珍しいじゃん。
悠理から電話なんて、明日は雪でも降る?』

「……うっせぇ。
少し、話したいことがあってさ」

電話の向こうの蛍はすでに何かを察しているような、そんな含みのある笑い声を漏らした。
俺は一度、窓の外の夜空を仰いでから静かに言葉を紡いだ。

「俺……自覚したわ。
ひなたのこと、1人の女として好きだ」

一瞬の沈黙。
その後、蛍の「やっぱりねー!」という突き抜けた声が鼓膜を震わせた。

「お前、声がデカいって……。
それと、放課後に瑠夏と天音にも伝えてきた。
お前らの事、もう遠目から見てるだけじゃいられねぇからって」

そこまで言うと、俺は少しだけ申し訳ない気持ちになった。
今まで蛍と一緒に、あの3人…特に瑠夏と天音ののドタバタを「やれやれ」と見守ってきた立場だ。
俺が今度はそっち側に回るということは、蛍を1人保護者席に取り残すことになってしまう。

「……悪い、蛍。
四角関係とか、今まで以上にぐちゃぐちゃになる。
お前に一番、迷惑かけることになるかもな」

俺の謝罪を聞いて、蛍は一瞬の沈黙の後クスリと笑った。

『……何言ってんの。
謝ることじゃないでしょ』

その声は、驚くほど優しかった。

『むしろ、やっとかって感じ。
悠理が自分の気持ちに蓋をして、無理に大人ぶってるの見てる方がよっぽどハラハラしてたんだから。
おめでとう、悠理。
やっと自分の気持ちに素直になれたんだね』

「……おめでとう、かよ。
これから修羅場になるってのに」
『いいじゃん! 
楽しみで仕方ないよ。
あの瑠夏と天音、それに覚悟を決めた悠理……。
3人がひなたを巡ってバチバチにやり合うのを特等席で見守れるなんて、最高にエキサイティングじゃん!』

蛍のテンションはどんどん上がっていき、しまいには「応援するからね!」とすでに観戦モード全開だ。
俺は呆れて溜息をついた。

「お前、本当に良い性格してんな……」
『ふふっ、それは褒め言葉として受け取っておくね。
でもさ、悠理。
ひなたは本当に鈍感だし、これからはもっと大変になる。
けど悠理が本気になったなら、物語はもっと面白くなるよ』

蛍の明るい声を聞いているうちに、俺の肩の力も少しずつ抜けていった。
確かに、これから先は今まで以上に前途多難だろう。
瑠夏も天音も、手加減なんて一切してくれない。

でも、こうして面白がって背中を押してくれる蛍がいるからこそ、俺たちのこの歪で…でも愛おしい5人の関係は成立しているんだろうな、と改めて思った。

「……あぁ。
サンキュ、蛍。
これからも、あいつらの暴走を止めるの手伝ってくれよ?」
『もちろん。
でも、悠理が暴走した時は私が一番に突っ込んであげるから覚悟しててね!』

蛍の賑やかな笑い声を聞きながら、俺は通話を切った。

保護者はもう、引退だ。
明日からは俺も、あの熱い渦の中に飛び込む。

窓の外に広がる夜景を見つめながら、俺は確かな熱を帯びた自分の心臓の音を聴いていた。
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