シスコンの最強冒険者とブラコンの美少女姉妹は幸せにいきたいのです

kashizaki

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第2章〜クルムテント王立学園〜

第32話〜エルフの神〜

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「ホワイト、いや貴様一体何者だ?」

有無は言わせない。これは命令だ。と、全身から彼女の殺気が伝わってくる。流石、の一人ってか。ナビに言われた時は驚いたけど、この気迫は本物だな。

「特に俺が知っている理由は無い。ただ、彼女と俺がそういう仲だと言うだけだ。」

ソファが砕け散る。校長室には様々な切れ跡ができる。花瓶は割れ、本棚にあった本は突風が吹いたように落ち、僕の仮面にも頬の方に傷がつく。

「貴様とあの方が知り合いだと!?笑わせるな!!あの方は崇高なる存在。貴様のようなとあの方が友である筈がない!!!」

まるで神ホルトウィリアを心から崇拝してるようだ。美人の怒った顔は恐ろしいって言うけど、本当の事だったらしい。僕は彼女の怒っている理由が全く分からない。何故、彼女が彼女の事をそこまで尊敬しているのかも。

「知らなかった、それだけだ。だが、興味が沸いた。まだ話の途中だ。続けてもらっても良いか、オルホラ校長。」

「話はこれで最後だ。勇者と魔王を時空の彼方へと消し去った世界は、全てを飲み込もうとした。我らもそのまま飲み込まれる筈だった。だが、そこにこの世界の神、ホルトウィリア様が現れた。ホルトウィリア様は自身を媒介として、世界を再構築し、消えた。【神王の墓】とこの神の魔術が呼ばれている理由はそれだ。ホルトウィリア様は世界を新たに創り、そして死んだ。・・・それなのに貴様が何故、あの方の名を知っている!!」

彼女が死んだ?

僕は酷く頭に鈍器で殴られたような気持ちになった。だからこそ、何も考えられなくなった。思った言葉を話してしまった。

「死んだだと!?可笑しすぎる。彼女は俺が10歳もいかない頃に確かに生きていた。メッセージの交換も行った。俺が転生前には確実に生きていた。姿形全て覚えている!」

「メッセージ・・・?転生?貴様まさか、勇者なのか!?」

あ、やば・・・。

「・・・俺は勇者ではない。前世で死んでこの世界に転生しただけだ。何も特別な訳では無い。この力も自分の力だ。」

「だ、だが、ホルトウィリア様が生きている筈が・・・。」

何故だろう、違和感がする。彼女の態度の変化が。
見落としているところがある筈だ。明らかに何かが矛盾している。急な怒り、先程まで冷静だった彼女とはまるで別人のように。あっ!!

ナビ、校長先生に【状態回復】を。一旦落ち着かせてあげて。

『分かりました。』

混乱した状態の彼女の雰囲気がどこか少しだけ和らいだのを感じて、僕は問いかけた。

「落ち着いてくれ、オルホラ。それほどの大魔術を貴方は知っていながら、何故俺に任せようとしている?何故それを使えるような者が存在している?」

「【神王の墓】は本来創り、造り変える魔術だ。元の魔術の効果自体は使い方次第で強弱する。人間でもやり方さえ分かればそれを使える。今回のようでは、多大な犠牲を払うがな。」

犠牲?神が自身の命を媒介にして世界を創ったというのはその犠牲の事だったか。
そして、この魔術は創る物によって犠牲にするものが変わると。

「なら、今回のようなダンジョンを造り変える作業にはどれ程の対価を相手は支払ったと考える?」

少し彼女は考える。状態回復のおかげか先程までデットヒートしていた彼女の顔は冷静になっていた。

「そうだな。考えたくもないが、X級の魔物の魔石を使っただろう。本来、ダンジョンはそうやってできているからな。」

ダンジョンの主は恐らくその魔物。そう考えた方がいいか。

「そんな魔物他にもいるのか?同じX級の邪悪龍は帝国が持っていた。それを爆弾として使われたのだからな。」

「帝国がか!?貴様、邪悪龍の魔石を使った爆弾を一人で止めたというのか!」

「あぁ。帝国の勇者が持っていたよ。ネックレスだとは思わなかったが。」

顔が固まるのを感じた。彼女は様々な顔をするので面白いと少し思ったが、同時におかしいともう一度思った。僕が見たかったのはその顔じゃ・・・。

「・・・・・・邪悪龍の魔石がそんな小さな物なわけなかろう。本当にその魔石がそれなのだとしたら、ほんの一部に過ぎないはずだ。」

・・・少し予想はしていたけど、やっぱりか。ネックレス程度に収まる魔石がX級魔物の魔石だとは思いたく無かったしね。ゴブリンよりも小さいはずがない。

「それなら今回のはどうだ?本体の方を使われたと考えるべきか?」

「本体か・・・。となると最後の敵は、幾らか弱体化した邪悪龍と考えることになるな。」

あぁ。と、校長先生も了承した。

「・・・貴様は転生者。貴様を転生させたのはホルトウィリア様。死んだあの方が何故貴様と会うことができたのか・・・。それはまた後で考えるとしよう。」

いい感じの落とし場所が見つかったようなので、気になった話に戻ることにした。

「オルホラ校長。貴方は何故そこまで神ホルトウィリアを崇拝している?貴方の話だと、突然現れた存在が自身らを守り、そして死んだようにしか聞こえない。そんな存在を何故だ?」

「それは私がハイエルフだからだ。元々数千年前から神がいるという話はあった。それぞれの種族が考えていた神がな。故に星の数ほど神はいた。」

なるほどね。人間が信仰する神がいたなら当然、人間の姿になるし、獣人が信仰する神がいたなら獣人の姿になるだろう。

「神ホルトウィリア様のお姿は、あまりにも我らハイエルフの信仰していた神とそっくりだった。」

・・・あれがハイエルフの信仰していた神か。少しだけ彼女の姿を覚えてるけど、人間っぽい気がしたんだけどな。

「貴様は会った事があるのだろう?あの方は確かに我らに似ていない。だが、それは今は亡きハイエルフの長だった方が描いたものだ。ハイエルフの長だった方はあの方を見たと言っていた。」

それで人間のような姿にか・・・。そして、信仰していた存在が本当に現れ世界を救ったのならそうなるのも仕方ないか。


でも、これでやっと埋まった。あとは彼女を納得させる道具を得るだけ。
彼女は勘違いしている。やはり神は死んでいない。
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