2 / 18
第2話〜度重なる一致〜
しおりを挟む
死んだというのはこんなにも心地よいものなのだろうか。
空気が美味しい。
ほのかに暖かい地面。
フクロウのような鳥の落ち着く鳥の鳴き声と、肌を撫でる優しい風。
これはまるでグロレムの世界に初めて入った時のような満足感だ。
「死ぬって言うのは思った以上に天国じゃないか。」
俺の場合、両親が若い時に離婚して、残った母親が祖母の実家に俺を置いた後に失踪して、それからは友達と遊ぶよりゲームで遊ぶようになって。
やさぐれて、いつの間にか祖母も亡くなって。それからは遺産を使ってゲームを四六時中やって。
…高卒で就職も何もしないで、ゲームで稼げたのは良かったけど、家を除けば殆ど身なりが薄汚くて、性格がクソ野郎になった。
オマケにこんな俺に出来た嫁すら満足に幸せに出来ずこの世とおさらば。
「いっそ地獄に落としてくれれば良かったのによ。」
何なんだ。最近は泣いてばっかだ。公開してばっかだ。俺の人生いつもそうだった。
常に頼る側。俺は一生、まさに一生そうだった。
分かってんのに…。
「まいぃぃ…。」
かっこ悪ぃ。こんな俺なんて自分でも何も誇れねぇ。
これからだったのに。これからあいつを幸せに出来るって思ったのに。
「ああ!ここにいたロギンス!」
「ぇ?…もしかして天使様か?生憎俺はロギンスの方が有名だけど本名は…」
「何寝ぼけたこと言ってんのロギンス!」
「痛あぁぁ!!」
急な頭への鋭い痛みで思わず俺は目を開けた。
「あれ…あ、あん?」
「ありゃ打ちどころ悪かったかしら。ちょっと、ちゃんと見えてるロギンス?」
「あ、うん。見えてるよティアン。」
(あれ、ティアンって誰だ?それにこの高い声は…。)
目の前の女の子。見た事ないのに名前を知ってる。それに外国人のような髪型に目をしてるのに、全くもって違和感を感じない。
「大丈夫そうね。それじゃあ早く行きましょう!お母さんがご飯作って待ってるから。」
「わ、分かった。」
それに、この視界。俺の身長の高さだったら、この子ぐらいなら上から見下ろすくらいなはずなのに。
立たされた時に気が付いたが随分と低い。
まるで子供のような…。
「あ…?」
手…てててて、ててててぇ!!?
「ち、ちっちぇぇ!!!」
「ど、どうしたの急に叫んで!」
「はっ!」
(起きた時は女の子の顔や服装に夢中だったから分からなかったけど、周りが明らかにおかしい!俺は…僕はあの時明らかにこんな大自然の中になんていなかった。)
「覚えてる…。」
「ほ、本当にどうしたの?やっぱり強く叩きすぎたから」
(これはグロレムの世界にいながら寝落ちした時と同じだ!つまりここは…現実じゃない!!)
「起きろ!起きろぉぉ!!」
(もしかしたら、もしかしたら僕は夢を見ていたのかもしれない!なら、今までの事が全部夢だったのかも!?)
「ど、どうしたの!!」
僕が急に自分を力強く殴ったり、頭を引っ張る動作をやり始めたことで、ティアンは慌てて僕に近寄って腕を抑える。
「やめてお姉ちゃん!…お姉ちゃん!?いや、これは夢なんだ。僕は妻に会わないと!」
「アンタに妻なんていないでしょ!?まだ10歳なのよ!!いい加減に私を心配させないでぇー!!」
『あまり心配させないで。』
「えっ…」
麻衣?
「もうやだぁ。弟が壊れたぁぁ。」
ティアンが泣いて尻もちをついたことで僕は現実に引き戻される。
(そうだ。グロレムの世界だったらNPCはこんなに豊かな表情もしないし、それにプレイヤーに攻撃なんて絶対にしない。)
「お、お姉ちゃん戻ったよ。直った?から。大丈夫だよ。」
(じゃあ今までのことは本当に起こったこと。僕は死んで、今ここにいる。でも、おかしい。この子も一体、この世界は何なんだ。天国なのか?それだったら僕をロギンスと呼ぶ理由は…。それにロギンスでもこの姿は明らかに子供だ。何から何までおかしい。まるで、根本的から間違っているような。)
「…お姉ちゃん、この国はどこ?」
「えぇ?…この国って。バルトンのこと?」
「ば、バルトン!!?「壊れ」…あ、うん。バルトンだねぇ。うん。」
(そうか……そうだ。この、あまりにも覚えている世界の姿。俺が僕として知らない記憶を覚えている理由、それにあの一致。)
「まさか…。」
「まさか、何?」
「いや、何でもないよお姉ちゃん。」
そうして僕はティアンと共に家へ向かった。
家では母親と見られる女性、ミウと、父親のオーロが待っていた。
二人とも記憶が戻る前の僕が家出をしていた事からとても心配され、それと同時に叱られた。両親に叱られたことなんて無かった事や、子供の体だということもあって、その日はみっともないくらい泣いた。いや、前世でも泣いたし存在自体、みっともなかったけど。
その日から、僕はこの家族と普段と変わらない、何でもないような時間を過ごしていった。そして、現実に向き合うまでにとても長い時間がかかった。
記憶以前の僕。そして、前世の俺。二人分の人格を一つに形成するまで。
だけれど、それはただの言い訳だ。最初に、この世界で初めて目ざめた時には既に、俺は察していた。
俺があまりにも珍しい出来事に陥っているということに。この世界は、あの世界と完璧な同作。いや、ミラーワールドとでも言えようかと。
俺がロギンスと呼ばれたこと。
そして、バルトン王国の存在。
更には、この世界で見た道具や歴史。
あの時、目覚めた森。あそこは最南端に位置するこの帝国の、別名始まりの森と言われていた。
主にLvが1~5の魔物が潜んだ。ステータスが極弱の初期プレイヤーでもゲームオーバーする方が難しい程に弱い魔物しか住んでいない森。
そう、あのゲームと同じだ。何年もやってたおかげで忘れていた。確かにあのゲームもこの森から始まった。
……改めて確認して思う。同じだと。
これは僕にとって幸運と言うべきか。はたまたもう前世には戻れない、不幸と言うべきか。
つまり、僕は寄りにもよって、この世界、グロームレッドフォレムワールドに転生したんだ。
空気が美味しい。
ほのかに暖かい地面。
フクロウのような鳥の落ち着く鳥の鳴き声と、肌を撫でる優しい風。
これはまるでグロレムの世界に初めて入った時のような満足感だ。
「死ぬって言うのは思った以上に天国じゃないか。」
俺の場合、両親が若い時に離婚して、残った母親が祖母の実家に俺を置いた後に失踪して、それからは友達と遊ぶよりゲームで遊ぶようになって。
やさぐれて、いつの間にか祖母も亡くなって。それからは遺産を使ってゲームを四六時中やって。
…高卒で就職も何もしないで、ゲームで稼げたのは良かったけど、家を除けば殆ど身なりが薄汚くて、性格がクソ野郎になった。
オマケにこんな俺に出来た嫁すら満足に幸せに出来ずこの世とおさらば。
「いっそ地獄に落としてくれれば良かったのによ。」
何なんだ。最近は泣いてばっかだ。公開してばっかだ。俺の人生いつもそうだった。
常に頼る側。俺は一生、まさに一生そうだった。
分かってんのに…。
「まいぃぃ…。」
かっこ悪ぃ。こんな俺なんて自分でも何も誇れねぇ。
これからだったのに。これからあいつを幸せに出来るって思ったのに。
「ああ!ここにいたロギンス!」
「ぇ?…もしかして天使様か?生憎俺はロギンスの方が有名だけど本名は…」
「何寝ぼけたこと言ってんのロギンス!」
「痛あぁぁ!!」
急な頭への鋭い痛みで思わず俺は目を開けた。
「あれ…あ、あん?」
「ありゃ打ちどころ悪かったかしら。ちょっと、ちゃんと見えてるロギンス?」
「あ、うん。見えてるよティアン。」
(あれ、ティアンって誰だ?それにこの高い声は…。)
目の前の女の子。見た事ないのに名前を知ってる。それに外国人のような髪型に目をしてるのに、全くもって違和感を感じない。
「大丈夫そうね。それじゃあ早く行きましょう!お母さんがご飯作って待ってるから。」
「わ、分かった。」
それに、この視界。俺の身長の高さだったら、この子ぐらいなら上から見下ろすくらいなはずなのに。
立たされた時に気が付いたが随分と低い。
まるで子供のような…。
「あ…?」
手…てててて、ててててぇ!!?
「ち、ちっちぇぇ!!!」
「ど、どうしたの急に叫んで!」
「はっ!」
(起きた時は女の子の顔や服装に夢中だったから分からなかったけど、周りが明らかにおかしい!俺は…僕はあの時明らかにこんな大自然の中になんていなかった。)
「覚えてる…。」
「ほ、本当にどうしたの?やっぱり強く叩きすぎたから」
(これはグロレムの世界にいながら寝落ちした時と同じだ!つまりここは…現実じゃない!!)
「起きろ!起きろぉぉ!!」
(もしかしたら、もしかしたら僕は夢を見ていたのかもしれない!なら、今までの事が全部夢だったのかも!?)
「ど、どうしたの!!」
僕が急に自分を力強く殴ったり、頭を引っ張る動作をやり始めたことで、ティアンは慌てて僕に近寄って腕を抑える。
「やめてお姉ちゃん!…お姉ちゃん!?いや、これは夢なんだ。僕は妻に会わないと!」
「アンタに妻なんていないでしょ!?まだ10歳なのよ!!いい加減に私を心配させないでぇー!!」
『あまり心配させないで。』
「えっ…」
麻衣?
「もうやだぁ。弟が壊れたぁぁ。」
ティアンが泣いて尻もちをついたことで僕は現実に引き戻される。
(そうだ。グロレムの世界だったらNPCはこんなに豊かな表情もしないし、それにプレイヤーに攻撃なんて絶対にしない。)
「お、お姉ちゃん戻ったよ。直った?から。大丈夫だよ。」
(じゃあ今までのことは本当に起こったこと。僕は死んで、今ここにいる。でも、おかしい。この子も一体、この世界は何なんだ。天国なのか?それだったら僕をロギンスと呼ぶ理由は…。それにロギンスでもこの姿は明らかに子供だ。何から何までおかしい。まるで、根本的から間違っているような。)
「…お姉ちゃん、この国はどこ?」
「えぇ?…この国って。バルトンのこと?」
「ば、バルトン!!?「壊れ」…あ、うん。バルトンだねぇ。うん。」
(そうか……そうだ。この、あまりにも覚えている世界の姿。俺が僕として知らない記憶を覚えている理由、それにあの一致。)
「まさか…。」
「まさか、何?」
「いや、何でもないよお姉ちゃん。」
そうして僕はティアンと共に家へ向かった。
家では母親と見られる女性、ミウと、父親のオーロが待っていた。
二人とも記憶が戻る前の僕が家出をしていた事からとても心配され、それと同時に叱られた。両親に叱られたことなんて無かった事や、子供の体だということもあって、その日はみっともないくらい泣いた。いや、前世でも泣いたし存在自体、みっともなかったけど。
その日から、僕はこの家族と普段と変わらない、何でもないような時間を過ごしていった。そして、現実に向き合うまでにとても長い時間がかかった。
記憶以前の僕。そして、前世の俺。二人分の人格を一つに形成するまで。
だけれど、それはただの言い訳だ。最初に、この世界で初めて目ざめた時には既に、俺は察していた。
俺があまりにも珍しい出来事に陥っているということに。この世界は、あの世界と完璧な同作。いや、ミラーワールドとでも言えようかと。
俺がロギンスと呼ばれたこと。
そして、バルトン王国の存在。
更には、この世界で見た道具や歴史。
あの時、目覚めた森。あそこは最南端に位置するこの帝国の、別名始まりの森と言われていた。
主にLvが1~5の魔物が潜んだ。ステータスが極弱の初期プレイヤーでもゲームオーバーする方が難しい程に弱い魔物しか住んでいない森。
そう、あのゲームと同じだ。何年もやってたおかげで忘れていた。確かにあのゲームもこの森から始まった。
……改めて確認して思う。同じだと。
これは僕にとって幸運と言うべきか。はたまたもう前世には戻れない、不幸と言うべきか。
つまり、僕は寄りにもよって、この世界、グロームレッドフォレムワールドに転生したんだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる