ガチ勢転生

kashizaki

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第3話〜サービス詐欺?〜

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この世界がグロレムと分かった今、僕がする事はただ一つ。

「ホーム画面の確認だ。」

グロームレッドフォレムワールドは、様々な要素が取り入れられていて、なんと言っても分かりやすさというので一目置かれていた。

それは設定上、システムにあることは、プレイヤーが思った通りにやってくれるということ。
もちろん、他のゲームのように常に表示するボタンなんかがあればそれも楽だが、慣れれば明らかにこっちの方が明らかに有効になる。
まぁ言ってても意味わからないだろうから実践すると。

「よっし。ホーム!!……《ピロン!》
っわ!ビックリした。いや出来るのは確信があったけどさぁ。」

俺の視界の前に青白く光った板。いわゆるホーム画面が現れた。
こんな感じで、言葉に出したり、脳裏で求めると、それを察知してプレイヤーの気持ち通りに反映してくれる。AIってスゲー!
と、その慣れ親しんだ画面を久々に見て、小躍りしそうになったけど、いやなんて言うの…。

「似合わねぇー。」

考えて見て下さい。どこもかしこも中世と江戸時代が混ざったような住宅街。そして、周りはまだまだ未開拓の荒野やら森一色。夜はほのかに明かりが何軒か照らすけど、街灯も無ければ警備してるお巡りさんもほとんど居ない。そんな明らかに前世より遅れてる世界で、この『現代ホーム画面』。

「いや、マジで似合わねぇ。クローズ。」

そう言うと、ホーム画面は静かに閉じた。

「前世でゲームやってた時は全くもって気にしないし、何なら当たり前だとも思ってたけど、実際こうやって暮らしてみると違和感しか感じねぇんだな。」

魔法って思えばいいんだろうけど、これは慣れるまで時間がかかりそうだ。と、考えて俺は町に気分転換に出掛けた。





さて、気分転換は良いものの、正直前世の失敗もあった。極力無駄な時間は過ごしたくない。
「これだぁ!」
そう。俺が今日持ってきたものはお小遣いだ!それも50コイン!これだけで飴50個も買える!最早世界は俺のものだ!!
…まぁそれはさておき、俺がこれを使っていく場所はただ一つ。武器屋だ。

かつてこの世界の全ての知識を手に入れたグロレム王である俺は、もちろんこの町のことも当然熟知している。
「武器屋はここから左を歩いた先だ!さぁ行くぞ!冒険が俺を待っている!!」


ーー1時間後ーー

「ハァ、ンハァ、フハァ、ハァハァ。」
ま、まさかテレポーテーションで一瞬で飛べる筈の武器屋が子供の足ではここまで遠く感じるとは…。
それに、町が入り組んでて途中で階段もあった。これ、俺帰れるか…?
「た、頼もおぅ。ンオェ!」
うっぷ。気分が悪い。二日酔いした時みたいだ、

「おいおいどうしたあんちゃん。酷い顔だな。」
「す、すみません。ここが武器屋であってますか…。」
(あって無かったら今日帰って寝る!)
「おう合ってるぜ!ここがショートの町で一番の武器屋。バニサン武器店だ!」
「よ、良かった。ちょっと、お水貰えますか。」
僕もう死にそう。
「あぁ。ちょっと待ってな。あ!もしかしてあんちゃんここに来るの初めてだろ。」
「あ、そうです。」
前世では何度も行ったことあるけどね!
「それならそうなって当然だ。子供にはまだあの階段は辛いもんなぁ。…ほらよ水だ。」
「ありがとうございます!」
俺は渡されたコップ一杯の水を一気に飲み干す。
「いい飲みっぷりだ。」

(ったく、確かに前世でもあの階段覚えてるけど、プレイヤーだったし、アバターにスタミナとか無かったから分かんなかったよ!
やっぱりゲームと現実の違いはどうしてもあるか。だけどやっぱり根本的は同じだ。そして、俺も。)
俺は店主に目を向ける。店主も視線に気付いて俺を見ると、思わず感想を言ってしまう。

「現実味はあっても、顔も喋り方も基本的に一緒だ。」
「ん?何が一緒なんだ。」
「いや、何でも無いです。お水ありがとうございました。」

店主にコップを渡す。そこから、店内に飾ってある武器の数々を見ていった。ここに来た瞬間から明らかに目から離れなかった。

「なるほど。逆にこの世界が俺に違和感を見せてくる時もあるってことか。」

もう一度言うと、ここは始まりの森がある、つまりは初心者のプレイヤーが初めて訪れる町だ。
この町がいくら繁栄していても、どれだけ国が豊かでも、それはただのこの世界の背景だった。
グロレムはストーリー性もあって、こうして武器屋がそれぞれ旅するプレイヤーが訪れる町や村に必ずある。
そして武器屋には、そこからの攻略に必要なアイテムや、武器が充実しているのだ。
逆に言うと攻略が殆ど必要の無い最初の町の武器屋ほど、ろくな物は売ってないわけで。

店内の武器は俺の目からは全て『ボロの』という前書きが出ている。

「コソッ)何もこんな所まで似せなくても良かっただろ…。」

どれも体力上昇だったり筋力補正だったり、あまりにもバフとしては微々たるもので、さすが初期武器だと納得してしまう。
更には、俺はあまりにもの理不尽さに打ち震えていた。

「ボロの剣3000コイン。買取価格30コイン…。」
(どんな悪徳商法でも、今にも壊れそうな木で削った剣が父親の1ヶ月の給料の半分で、買取がその100分の1はねぇだろ…。)

「あんちゃんなんか気に入った武器でもあったか?裏で素振りして試してみるサービスもやってるぞ。」
「な!?い、いいです!きょ、今日は失礼します!!」
「お、おい!」

逃げるように俺は武器屋を出た。危ないところだった。危うく試してる間に武器壊れて弁償させられるところだった。

「詐欺だよ!あれ、完全に詐欺だって!」

俺はこの日、武器は自分で作ることを決意した。そして、武器屋の店主に少なからず恐怖した。
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