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第4話〜弓職最強説〜
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「ロギンス!何やってるの?」
「あぁお姉ちゃん。今木を削ってるんだ。」
俺が部屋で木を削っていると、音が聞こえたのか、ティアンが入ってきた。
「へぇ。何作るの?」
「剣。」
「そんな小さいので?」
「ダガーナイフだよ!あまり触れないで。」
武器屋から逃げ帰ったあの日。やはり色々考えて、自分から作るべきだと考えた俺は、帰りに50コイン分で原木を買ってきていた。
まぁティアンが言う通り50コイン分なので本当に元が小さく、ダガーナイフを作る予定だけど、大人になったら恐らく投げナイフに変わるくらい小さい。
「ダガーナイフって何?」
「(そこからかぁ!?)包丁みたいな物だよ。小さくてもとっても使えるし、壊れにくい。それにリーチが…先が短い分、近くの相手と戦う時はとても重宝する。」
「む。ちょっと言葉選んでるの生意気。私だってリーチくらい分かるもん!」
「じゃあ何て意味?」
「えっとぉ、お父さんたちがこの前下で集まって、お金を出して何かゲームしてた時に言ってた!」
(オヤジィィ!!なんてもんを11歳の女の子に教えてるんじゃ!)
「ティアン。それは絶対違うから!いや、違くないけど覚えちゃいけないから!」
「む。ティアンじゃなくてお姉ちゃんでしょ!」
「はいはいお姉ちゃん。」
「よろしい!で、そんなもの作って何するの?」
「……ひみつ。」
「えー気になる!ね、何するの!お願い誰にも言わないから!」
「それ結局言うやつじゃん!絶対言わない。それに教えても分かるものじゃないし。」
「生意気!やっぱあんた生意気よ!そんな子に私育てた覚えありませんよ!」
「母さんか!あぁもう!とにかく内緒だから用がないなら早く出てって!」
少しティアンの話で戸惑いはしたが、作業が止まっていた事に気付いて、ティアンにそう強く言う。
「もうそんなだとお婿に行けないよ!あぁ分かりました分かりました。お姉ちゃんはいなくなります!……あ、そうだ。お母さんが工作するならあまり部屋汚さないでよって!」
「分かってるよ。…ありがとう。」
「うん!それじゃあ私はもう行くね!」
ドアが閉められ静寂に満ち、暫くすると部屋の中は木を削る音が聞こえ始めた。
正直この世界に来て初めて、プレイヤーらしい事をする最初の一歩が武器の作成だとは思わなかった。
それにこの世界は現実味がある。前世のプレイヤーだった時のように、ものの数秒で素材を手に入れたり、加工したりなんて出来るはずも無かった。
一応昨日ぶりにホーム画面を見ても、今のところ現在の時刻が表示されているだけ。
「加工して!」とか、「作って!」とか言っても何の反応も無い。
「やっぱり非現実的なことは出来なくなっているのか。」
この世界に来て約数日。最初はグロレムと全く変わらないと思っていたが、プレイヤーの求める利便性で言うと、相当融通が効かなくなったと言えるだろう。
「まぁ確かに10歳の子供が急に素材があったとしても破壊変形不能のオリハルコン武器をボタン一つで作ったり、急に色々な場所から物を取り出すなんてこと出来たらおかしいもんな…。」
この世界に来て1番ガッカリしたこと。それはアイテムが補充出来なくなったことだ。プレイヤーの時は素材が落ちれば触れるだけで入手できて、出し入れ出来るように、ホームのアイテム欄に全て転送されていた。
先程も言った通りホーム画面はいまやただの時刻を知らせる時計。
武器作成はもちろんのこと、ゲームで当たり前の要素であるアイテム欄が無い。
「これ、この世界だと弓職最強なんじゃねぇか?」
前世では、弓職の対抗策は矢に反応し、素早くアイテム欄から大盾でも、取り敢えず何でも身を守れる物を取り出し、そして迫る矢を弾くのが主流だった。
そして、弓職はそうならないように、自身の使う矢にエンチャントをかけたり、自分自身の筋力や矢の速度を上げたり、はたまた敵が油断した時に放てる洞察力を磨いたりなど、様々な能力向上の道があった。
だが、どうだろう。この世界ではアイテムを取り出せない。つまり、弓職の攻撃を防ぐには、最初から盾職か、常に身を守る盾を持ち歩かなければいけない。
なら、盾職を目指せば良いが、最初から弓職を選ぶものには盾職だけでは絶対に勝てない。
どんなに防御力があっても、盾の隙間、鎧の隙間、そして背中は守れない。
弓職は『エルフアバター専用』の職なのだ。
「何かある筈だ。そんな簡単にあの神ゲーが詰んでたまるか。」
思いつく対抗策はあるし、俺だったらそれが出来る。だけどそれは万人向けじゃ確実に無い。
弓職との戦闘を頭でひたすらイメージしながら、俺はダガーナイフを作っていくのだった。
「出来た。」
あれから数時間。朝から削り続けた小さな原木は、今やっとその姿を刀身へと変えた。
思わず今までの苦労がどっと押し寄せる。
「意外と初めてにしてはよく出来た方じゃないか?」
前世の記憶にうろ覚えではあったが、なんとか作った木のダガー。
グロレムを始めた頃は、よく作ったものだと、その刀身を見ながらほっと息を吐く。
「今日からお前の名は桃木丸だ!」
理由は桃の木で作ったから!と、俺はダガーを自分の頬によせた。
削ったばかりの桃木丸は凄くジョリジョリしていて、木屑が頬にそのままくっつく。
そんなことも気にせず俺は、とにかくダガーを見続けた。
……そう見続けてしまった。
『《ピロン!》鑑定結果ボロのダガー。』
「んんんんん????!!!!」
まだまだしっかりとした武器の作成には程遠いらしい…。
「あぁお姉ちゃん。今木を削ってるんだ。」
俺が部屋で木を削っていると、音が聞こえたのか、ティアンが入ってきた。
「へぇ。何作るの?」
「剣。」
「そんな小さいので?」
「ダガーナイフだよ!あまり触れないで。」
武器屋から逃げ帰ったあの日。やはり色々考えて、自分から作るべきだと考えた俺は、帰りに50コイン分で原木を買ってきていた。
まぁティアンが言う通り50コイン分なので本当に元が小さく、ダガーナイフを作る予定だけど、大人になったら恐らく投げナイフに変わるくらい小さい。
「ダガーナイフって何?」
「(そこからかぁ!?)包丁みたいな物だよ。小さくてもとっても使えるし、壊れにくい。それにリーチが…先が短い分、近くの相手と戦う時はとても重宝する。」
「む。ちょっと言葉選んでるの生意気。私だってリーチくらい分かるもん!」
「じゃあ何て意味?」
「えっとぉ、お父さんたちがこの前下で集まって、お金を出して何かゲームしてた時に言ってた!」
(オヤジィィ!!なんてもんを11歳の女の子に教えてるんじゃ!)
「ティアン。それは絶対違うから!いや、違くないけど覚えちゃいけないから!」
「む。ティアンじゃなくてお姉ちゃんでしょ!」
「はいはいお姉ちゃん。」
「よろしい!で、そんなもの作って何するの?」
「……ひみつ。」
「えー気になる!ね、何するの!お願い誰にも言わないから!」
「それ結局言うやつじゃん!絶対言わない。それに教えても分かるものじゃないし。」
「生意気!やっぱあんた生意気よ!そんな子に私育てた覚えありませんよ!」
「母さんか!あぁもう!とにかく内緒だから用がないなら早く出てって!」
少しティアンの話で戸惑いはしたが、作業が止まっていた事に気付いて、ティアンにそう強く言う。
「もうそんなだとお婿に行けないよ!あぁ分かりました分かりました。お姉ちゃんはいなくなります!……あ、そうだ。お母さんが工作するならあまり部屋汚さないでよって!」
「分かってるよ。…ありがとう。」
「うん!それじゃあ私はもう行くね!」
ドアが閉められ静寂に満ち、暫くすると部屋の中は木を削る音が聞こえ始めた。
正直この世界に来て初めて、プレイヤーらしい事をする最初の一歩が武器の作成だとは思わなかった。
それにこの世界は現実味がある。前世のプレイヤーだった時のように、ものの数秒で素材を手に入れたり、加工したりなんて出来るはずも無かった。
一応昨日ぶりにホーム画面を見ても、今のところ現在の時刻が表示されているだけ。
「加工して!」とか、「作って!」とか言っても何の反応も無い。
「やっぱり非現実的なことは出来なくなっているのか。」
この世界に来て約数日。最初はグロレムと全く変わらないと思っていたが、プレイヤーの求める利便性で言うと、相当融通が効かなくなったと言えるだろう。
「まぁ確かに10歳の子供が急に素材があったとしても破壊変形不能のオリハルコン武器をボタン一つで作ったり、急に色々な場所から物を取り出すなんてこと出来たらおかしいもんな…。」
この世界に来て1番ガッカリしたこと。それはアイテムが補充出来なくなったことだ。プレイヤーの時は素材が落ちれば触れるだけで入手できて、出し入れ出来るように、ホームのアイテム欄に全て転送されていた。
先程も言った通りホーム画面はいまやただの時刻を知らせる時計。
武器作成はもちろんのこと、ゲームで当たり前の要素であるアイテム欄が無い。
「これ、この世界だと弓職最強なんじゃねぇか?」
前世では、弓職の対抗策は矢に反応し、素早くアイテム欄から大盾でも、取り敢えず何でも身を守れる物を取り出し、そして迫る矢を弾くのが主流だった。
そして、弓職はそうならないように、自身の使う矢にエンチャントをかけたり、自分自身の筋力や矢の速度を上げたり、はたまた敵が油断した時に放てる洞察力を磨いたりなど、様々な能力向上の道があった。
だが、どうだろう。この世界ではアイテムを取り出せない。つまり、弓職の攻撃を防ぐには、最初から盾職か、常に身を守る盾を持ち歩かなければいけない。
なら、盾職を目指せば良いが、最初から弓職を選ぶものには盾職だけでは絶対に勝てない。
どんなに防御力があっても、盾の隙間、鎧の隙間、そして背中は守れない。
弓職は『エルフアバター専用』の職なのだ。
「何かある筈だ。そんな簡単にあの神ゲーが詰んでたまるか。」
思いつく対抗策はあるし、俺だったらそれが出来る。だけどそれは万人向けじゃ確実に無い。
弓職との戦闘を頭でひたすらイメージしながら、俺はダガーナイフを作っていくのだった。
「出来た。」
あれから数時間。朝から削り続けた小さな原木は、今やっとその姿を刀身へと変えた。
思わず今までの苦労がどっと押し寄せる。
「意外と初めてにしてはよく出来た方じゃないか?」
前世の記憶にうろ覚えではあったが、なんとか作った木のダガー。
グロレムを始めた頃は、よく作ったものだと、その刀身を見ながらほっと息を吐く。
「今日からお前の名は桃木丸だ!」
理由は桃の木で作ったから!と、俺はダガーを自分の頬によせた。
削ったばかりの桃木丸は凄くジョリジョリしていて、木屑が頬にそのままくっつく。
そんなことも気にせず俺は、とにかくダガーを見続けた。
……そう見続けてしまった。
『《ピロン!》鑑定結果ボロのダガー。』
「んんんんん????!!!!」
まだまだしっかりとした武器の作成には程遠いらしい…。
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