ガチ勢転生

kashizaki

文字の大きさ
6 / 18

episode1〜あの子が変わった日〜

しおりを挟む
私はロギンスの母親のミウと言います。
実は私の子供、ロギンスは少しおかしいんです。

子供はすぐに成長すると言いますが、私は自分の子ほど、よく分からないような育ち方をする子を見た事がありません。

ロギンスが変わったのはあの子が家を泣いて抜け出した日でした。

その日はロギンスの誕生日で、私とお父さんは、あの子が欲しがっていた玩具をプレゼントしたんです。

ただここで問題が発生して、実はその玩具、二種類あって、あの子が欲しかったのとは私たちは違う方を買ってきてしまいました。

1番やってはいけないところを間違えてしまい、当然我が子の怒りを買いました。
更には怒ったロギンスは、そのまま走って家から出ていきました。その時のあの子の涙は一生忘れないでしょう。

夫は「そのうち帰ってくる。ロギンスも少しは気持ちの整理が必要だろ。」と私を励ましてくれましたが、それから数時間経ってもロギンスは帰ってきません。

遂に夫も事の重大さに気付いたのか、ティアンも連れてみんなで探し回りました。

だけど見つかりません。

そして、もうすっかり外が暗くなってきた頃、家のドアが開かれました。
そして、いたのはロギンスとティアン!
目で確かに確認した途端、いてもたってもいられず二人を抱きしめました。

「もうこんなに遅くまで。」「心配だったのよ。」と、大人にもなってみっともなく私は泣き、夫が後ろから軽く私を覆ってくれると、やっと安心して落ち着きました。

ですが、それからというもの私は不安です。
ロギンスが急に部屋で武器を作り始めたり、勝手に外に出ては夜頃に帰ってきたりと、それまで近所の動物達と戯れる事が大好きだった優しい男の子とは打って変わって、何だか一人の自立した大人を相手にしてるような雰囲気を出し始めたんです。

それに時々、私を少し強い目で見た途端、はっと顔をふって、自分から目を逸らしたりと、よく分からない行動も目立ち始めました。

「 オーロ。私には分からないの。ティアンにはそんなの無かったし。何か分からない?」
「それは男の性というやつだよミウ。成長している証拠だ。それにやはり俺の子。ミウはやはり気になるか…。」
「ど、どういうこと?」
「つまり君がとても可愛らしく最高の妻ということさ。夫として誇りに思うよ。」

ポッ!と、自分の顔から火が出るような熱さを感じます。夫はいつもそうです。私の心をこんなに揺れさせて…。

「わ、私もアナタのことを…最高にかっこいい夫だと思ってます。」
「ふふ。やっぱり可愛い。」
「ふぁへぇ!?」

結婚してからなれません!夫婦仲が良いとよくご近所さんから言われますが、オーロは、やりすぎですぅ!…はふぅ。

「ロギンスが夜に何をしているか知ってる。」
「え!?」
きゅ、急に話に戻りました…!
「あの子は毎日チューリアの森に行って狩りをしている。」
「ええ!!」

あ、あの子がそ、そそそ、そんなことを!?

「すぐに止めないと!」
「まぁまぁ。.........オーズさんから聞いてね。聞く話によると、毎日ゴブリンと戦っては負けて帰ってきてるそうだ。彼の見立てだと、そろそろゴブリンを倒せるらしい。」
「ゴブリンを!?それに倒すって…。」
「そう。あの子はおかしくなり始めたあの日から、たった3週間程で、魔物を倒せるレベルまで来ている。」
「そんな…あの子がそんなことしてたなんて。でも、あの子怪我なんて一度も」
「聞いた話によると怪我をすると迷惑をかけるから、する前に帰ってきてるそうなんだ。」
「…。」
「誰…とは聞かないよね。」

そんなの当たり前。私たちのことだ。私たちを心配させないために、あの子はしっかりと行動している。

「僕も最初は驚いた。子供がそんな危ないことしてるなんて、ってね。でも、あの子が僕達に迷惑をかけないように、そして強くなるために自分自身の未来を作り出そうとしてるのなら、親としては応援したいと思ったんだ。それに才能はあるようだし。」

当然です。ゴブリンは魔物の中で一番弱いモンスター。だけど、一般人は数体でかかられたら簡単に殺されてしまいます。
そんなゴブリンを10歳の子供が勝てないとしても無傷で帰ってくるなんて、あの子にその才能が無いと到底無理でしょう。
冒険者はあの子にもってこいの未来。

「だけど……私はどうしても怖い…。あの子が冒険者になって、私たちよりも先に死んでしまうのではないかって。」
「僕も怖いさ。だけど見守ろう。子が目指した道なんだ。親である僕達は障壁になってはいけない。」
「アナタ…。」
「ミウ。」

長い口付けのあと、静かに離された私は、もう決めていた。夫の目を見て、私も精一杯、あの子の母としてーーー。



△▽



「ティアン、誕生日!」
「「「おめでとう!!!」」」
 「みんなありがとう!」

今日はティアンの誕生日だ。俺が6月4日で、ティアンが7月15日。今日は俺も、この間にゴブリンを狩りまくって貯めたお金を使って買った物をプレゼントする。

「ティアンお姉ちゃんおめでとう。」
「ありがとうロギンス!これは?」
ティアンに渡したものは、青く煌びやかに光る貝殻を使ったアクセサリーだ。
これは町の市場にやってきた旅人が持っていたスターシェルという魔物のドロップアイテムを砕いて形を整えてアクセサリー用の紐で結びつけたものだ。

まぁつまりほぼ手作り。

「首にかけてみて。」
「うん。……どう?」

な!!?な、なななななな!!
「ど、どどどうしたの!?」
「どうしたんだロギンス!?」
「ロギンスどうしたの!?」
「ひぐっふぐっひぐぅ。」

俺は今、溢れ出る涙で顔がぐしゃぐしゃになっていた。そのせいでみんなに心配されてしまって申し訳ない気持ちになる。
でも、しょうがないじゃないか…だって
「も、もしかしてそんなに私が可愛かった?ふふ。照れちゃうなぁー。」
……だって!
「大丈夫かロギンス?」
………だって!!
「ロギンス!?」

『《ピロン!》鑑定結果、アクセサリー』

「普通だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
「「「はっ?」」」

(やった!!遂に、遂に遂に遂に!!ボロから脱却したぞーー!!)

この時の叫びは、一人の安心と、一人の困惑と、

「こ、この馬鹿ロギンスぅぅ!!!」

………一人の精神的大ダメージで幕を閉じた。 




「ねぇ。ロギンス。」
「どうしたの母さん。」
「お誕生日おめでとう。」
「え?」
「あの日、渡せなかったから。…あなたが欲しがってた方買ってきたわ。」
「……ありがとう。」
「…そう。…あの。」
「何?母さん。」
「応援してるね。」
「?…うん。」

おやすみ。と、母さんはそのまま父さんと一緒に寝室に入っていった。なんか、父さんが感涙深そうに母さんを寝室の前で抱いてたから何かあったのだろう。

.........それよりも、俺の前の人格、なんてモノを欲しがってたんだ。

「さすがにのぬいぐるみは無いよな…。」

そういえばティアンが俺に、今日は近所の動物と遊ばないの?ってよく言ってた。
もしかして遊びに行ってた理由は……いや、考えるのをやめよう。ろくなことないだろうし。

俺は、そっとその記憶を閉じるのだった。






※ミウの誕生日12月24日
   オーロの誕生日11月20日

ミウとオーロの出会いと設定

教会で働いていたミウにオーロが一目惚れ。一年間教会に通い続け、その内に恋仲に。
更に3ヶ月後結婚。1年後、長女ティアン出産
そして11ヶ月後にロギンス出産。幸せな家庭を過ごす。ご近所で有名なほど美男美女でラブラブ。
今現在まで喧嘩騒動無し。

ミウの設定
オドオドして可愛らしい容姿をしている。家族を愛し、特に夫をこよなく愛している。少し粘着気味。ロギンスが一瞬チラ見してしまうくらいには胸が大きい。メロンでは無い。それでも大きい部類。

何が?とは言わないが、4人は欲しいと思っている。

オーロの設定
とにかく家庭を守る強い意志があり、楽観的だと思われがちだが、ただ人に優しいだけ。
その性格と容姿はイケメン以上ということから、町ではかなり有名人。
ミウに一目惚れし、教会に通い詰めたことからも、彼女を一途に愛し、一度も他に女性がいる席ではお酒も飲まず、話も長くもなく短くもなく友好程度に済ませる。

何が?とは言わないが、そろそろ三人目が欲しいと思っている。


結婚17歳 (ミウ)、18歳 (オーロ)
長女出産18歳、19歳
ロギンス出産19歳、20歳

現在
ミウ30歳(見た目23歳くらい)
オーロ31歳(見た目26歳くらい)


※なお、この世界で結婚する年齢などに決まりは無い。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる

竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。 評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。 身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

処理中です...