ガチ勢転生

kashizaki

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第13話〜騙し合い〜

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「終わりだよ。少年。」
やけにゆっくりと、剣筋が俺の方へ落ちていく。これが走馬灯と言うのだろうか。
この体制、完全に俺が地面に着いて、不意をつかれた状態。盗賊たちを舐めていたとは言わないが、正直ここまでやるとは思っていなかった。

だけど、どうしてもこの現象が気がかりだ。
今、僕は走馬灯を見ている。
つまり、僕の目はもう死ぬと言っているのだ。

(許せない。これからだろう!)
「受け流し!」
「!!?」
短剣を両手で交差した双剣で打ち払う。
アリシはまさかカウンターをされるとは思っていなかったようで、腕に力があまり入っていなかったおかげで、短剣は空高く吹き飛んだ。

明らかな、アリシの身体に隙の光が見えた。
「はあぁ!!」
「うっそ!?」
太ももを切り裂く。勿論麻痺毒入り。深く切り裂いたおかげで、アリシはそのまま前に倒れ込んだ。

「何故…!?」
「ここまでが。」
「はは…予想通りか。」

それを最後にアリシは気を失った。戦略戦はロギンスの勝ちとなった。

「さて、後は作業だ。」
「糞がァ!!」
この後、俺はあっという間に残りの五人を捕縛し眠らせ、全員をまとめて木に縛り付けた。

森は?というと。
「おい、寝る前に水魔法で辺りの火を消せ。」
「誰がするか!お前も道ずれだ!!」
「なるほどな。だが、俺はこの程度の状況なんて直ぐに抜け出せる。俺はお前たちの為に言ってるんだ。まぁ俺のためも少しあるがな。死にたくないだろ?」
「.........お前の目的はなんだ。」
「小遣い稼ぎ♡」
「この悪魔がァ!!」







「あの人、どうなったんだろう。」
私は顔以外殆ど全く知らない男の子を待っていた。
あの子は一体なんて名前の子かは分からないけど、大人の盗賊を二人も簡単に倒していたし、物凄い強い子なんだろう。

「ねぇ。本当にそんな子がいたの?」
そう後ろから声が聞こえたので振り返ると、私と同じ境遇の子が、疑いの目で私に聞いてきた。

「本当だよ!怖かったけど、どうなってるのかなって外を見ようとしたら、急に私と同じくらいの男の子が現れて、大人の盗賊を二人も倒しちゃったんだ!」
私が外を見た理由は本当は違うけど、男の子が盗賊二人を倒したのは本当だ。

「あれだけうるさかった扉の先の話し声も全くしなくなったじゃん!」
「扉の先?あなた耳が良いわね。この荷馬車、防音なのに。」
「あ、ええ、ええっと!そ、そうだよ!耳が良いんだよ私!」
「ふーん。」

(あ、危なかったぁ。)
「(ぉーぃ、ぉーぃ。)」
「!?」
私の耳が物凄く小さいが、確かに聞こえる男の声に反応する。

「あの子だ!助けて!私、閉じ込められてるの!」
私の声に荷馬車内の子たちが顔を上げ始めた。中には私のように微かに聞こえた子もいたのか、扉の方を見ている。

「(この馬車には居ないか。他の所はどうかな?あーもう!戦闘に集中しすぎて場所忘れちゃったよもう!)」
荷馬車から遠ざかる音が聞こえる。
(待って。お願い。)
「行かないで!!」

「(もし居るなら少し扉から離れてね。)」
「え?」
「(ソードスキル『抜刀一文字』!)」
「み、みんな離れて!!」

「はあぁぁ!!」
《ズバァァン!!!》

分厚い鉄の壁が、十字に切り裂かれる。
微かにそこから光が漏れ、やがて崩れ落ちた。

太陽の光は私たちを照らし、何週間ぶりかの外を私の肌は感じた。
その壁を破ったのは、やはりあの時の、私の王子様運命の人

布一枚でだらしなく、毎日のように泣いた酷い顔でも、私はそんな人に思わず駆け込んだ。
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