ガチ勢転生

kashizaki

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第12話〜盗賊の連携〜

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「あいつ...急に黙り始めたな。あんだけ無防備だったら余裕で殺せるってのにくそっ!隙が全くねぇ!」
「落ち着いてロン。敵の思うつぼだよ。あれはただの子供じゃないのはもう分かるでしょ?」

「あぁ分かってるよカン!」
そう言いながらも、目の前に敵がいるのに待たされるというのが余っ程の苦痛なのか、ロンは頭を掻き毟る。

「てめぇはこっからどうするんだよアリシ?」
「ん?あぁこの間に俺達も作戦会議でもする?数的には6対1だ。こっちには後衛が三人いて、回復役もいる。前衛は俺とノードだ。あっちは見た所双剣職?だから、手数で上回れば勝てるかもよ?なぁノード?」
「.........いや、俺はそう言うの知らんから聞くな。」

能天気にロンに返すアリシに、思わずロンはアリシの胸ぐらを掴んだ。
「おい!なんで俺たちの方が負ける前提なんだよ!相手はたった一人の餓鬼だ!」
「餓鬼ね。」
「そうだ餓鬼だ!油断しなけりゃ直ぐに殺せる!」
「その餓鬼にここまでやられてんだろうが?」
「「「「!?」」」」

背筋も凍るような冷たい殺気がアリシの視線から流れる。ロンの腕の力が抜け解放されると、また能天気な表情で語った。
「よく周りを見な。仲間は20人以上いたのに、全部あの子にやられた。周りはロンの魔法の余波で火の海だ。こっちには時間制限がある。頭たちもこんな状況になっても帰ってこない。恐らくそっちもやられてる。さて、追い詰められてるのはどっちかな?」

「.........分かったよ。何か打開策はないか?」
「正直分からないね。勝てるかもって行ってみたけど、戦略戦は絶対にあっちが強そうだ。現に今の今までこっちだけが被害を受け続けてる。」

「それは俺たちが油断してたからで…!」
「油断させられたとしたら?」

「そんなこと…。」
「有り得るから怖いんだよ。まだあの子は何か隠し持ってる。そう予感してならない。更にあの時のまるで捕食者の目。全身を舐め回された感触がみんなもした筈だ。」

誰も否定しない。それほどまでに彼らが先程味わったものは異質のそれだった。
「俺がーーーになろう。」
「「「「「!!?」」」」」
「何とかなるさ。みんなが言うように、結局は子供だ。技術で負けるなら他で勝負すれば良い。」

「終わったか?」
その時、ロギンスが欠伸をするような声でそう投げかけた。
「このクソガ」
「あぁ。態々待ってくれたんだね。ありがとう。」

「(ニヤリ)あぁ。それじゃあやろうか。。」
「!…ふふ。思うところは同じか。それとも俺に合わせてくれたのかな?」
「さぁどうだろうな?まぁ一番面倒そうだなとは思ったよ。」

ゆっくりとお互いが近づいていく。最早、彼らがお互いの得物を振る時がこの最後の戦いの合図だった。
「あなた、アリシだっけ?絶対に盗賊に向いてないよ。」
「そうかな?結構面白いよ。毎日が変わり映えが激しい良い職業だ。」

「職業ね。以前は何を?」
「ん~熊とか魔物とかを間引きしたり倒す、まぁ村の傭兵だよ。」
(村の傭兵ね。)

「やっぱり俺、考え改めるべきだ。」
「?」

「いや、何でもないよ。ただ、人間は食事するし、経験するし、眠るし、それぞれの人生があって、そして設定っていうがあるんだな。って感じただけ。」
「ふん。やっぱり君は少しおかしいね。もう少し子供らしくした方が良いと思うよ。」

「忠告ありがとう。」
「それとね。」
「?」
「俺たちは盗賊だ。」

突然ロギンスの頭を狙って二方向から矢が飛んできた。それは完全にアリシの身体で視覚外。アリシは後ろに飛んで、それを示し合わせたかのように避ける。

「あっぶ!」
そして、ロギンスも、何とか身体を後ろに崩しながら避ける。だが、その僅かな隙が、初めて敵の好機を生んだ。

「『メテオボール』!!」
頭上から五つ。いや七つ。先程よりも数が多い火の玉メテオボールが、出現した。

「っち!ソードスキル『水龍登り』!」
後ろにほぼ90度。その状態となり、ロギンスも遂に倒れ込むように身体を回転させ、技でメテオボールを相殺した。
ロギンスは盗賊達の連携した怒涛の攻撃を全て受け切って見せた。
だが、倒れ込んだロギンスの目の先に、先程後ろへ飛んだアリシが迫っていた。

「終わりだよ。少年。」
ゆっくりと、ロギンスの胸へと短剣が落ちていった。
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