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第2章 希望—それぞれの強さ—

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第二章

あらすじ

人それぞれ違う“強さ”を知った少年たちの物語。
希・望,それぞれのパートで物語を描く。


登場人物

★中学生A  当時14歳
・中学生B  当時14歳

※アニメ 登場人物

・希(のぞみ)男  ?歳 ・少年N=希パートでは【望】声のみ
・望(のぞむ)男  ?歳 ・少年N=望パートでは【希】声のみ
・黒い傘を差した男 ??歳  イケメン



〇中学生Aの家・部屋(夜中)
中学生A(14歳)の部屋に泊まり、テレビを観ている中学生B(14歳)
中学生A「おっ今からアニメ始まるぞ」
中学生B「どんなアニメ」
中学生A「今、話題になってる作家の短編アニメらしい」
中学生B「へー」

○テレビ(アニメが始まる)


アニメ T 希 -のぞみの強さ-


※語り
ー 100年、続く雨の時代 ー
降り止まない雨は人々の心を蝕(むしば)んでいった。
生態系は崩れ
人間以外の生き物は半数以上が絶滅し、
そして……
ある者たちは耐え切れず自ら命を……
それでもある者たちは
“悲しいね”と口には出さず“苦しい顔”も見せず、笑いあっていた。

野らネコですら笑っていた。

野らネコ「ニャー」

○横断歩道・赤信号
差している傘を投げ捨て、空を見上げる希。
希「ア゛ァー……」
大きな口を開け叫ぶ、希。

○横断歩道・青信号へ変わる瞬間
希を横目に横断歩道を渡る少年N。
少年N「ダッサイ姿……」

○希の家・リビング
ソファに寝っ転がる希。

※語り
希はわからなかった。
すれ違うあの人の明るさが、
すれ違ったあの人の笑顔が、わからなかった。
いつも無理しているように見えていた。
いつも我慢しているように見えていた。
いつも本音を隠しているように見えていた。
だから、どうしてと両親に尋ねる希。

希「どうして?雨の影響で新しいウイルスが増殖し、みんなの体や心を蝕んで、朝か夜かもわからない、こんな時代でどうしてみんな笑っていられるの?」
母「それはね……」
父「それはな……」

○学校

※語り
どうしてと友達にも尋ねる希だった。

希「どうして……太陽が見てみたい。月や星を見てみたい。外でおもいっきり遊びたい。そんな希望をどうして皆、口にしないの?」
同級生「それは……」
母・父・同級生の3人の顔アップ
母・父・同級生「それは“強さ”なんだ」
希の納得のいかない顔アップ
希「やっぱ わかんないよ……」

○希の部屋
ギターを背負い自分の部屋から出る希。

※語り
自分を偽ることが、誤魔化すことが“強さ”なのかと……だったら、僕は違う。
そう感じた希は、自分の抱えている疑問を歌にして町で歌うことにした。
誰も聴いてはくれなかったけれど……。

○駅の広場
希「みんなだって、本当は……」
ギターを持ち、歌っている希。

□希の歌う歌の歌詞【IT′S】


※歌詞は
続・希望ー黒い傘を差した男ー
に掲載


※語り
歌の途中いつもエサをやっていた野らネコが、連れてきたひとりの少年Nが
希の歌を聴き涙した。
その光景を見た傍観者たちが寄ってくる。
そして希のまわりにはいつの間にか、たくさんの人たちで溢れていた。

○駅の広場
少年N「ほんとうは……僕だって……」
傍観者A「なんだっ、何やってんだ」
希「集まってくれたけど、雨が強くなってきたし今日はもう帰ります」
ギターを片付け帰ろうとする希。
少年Nが希に近寄る。
少年N「さっき歌ってた歌、最後に叫ぶところいいね。僕も一緒に叫びたくなっちゃった」
希「そう、じゃあ一緒に叫ぼうよ」
少年N「えっ……いや僕はいいや」
希「君も同じようなこと想ってたりするんでしょ……どうして我慢するの?想ったことを想ったままに吐き出せばいいじゃん」
少年N「うーん……」
希「辛い時には辛いって言えば、そう伝えればいいじゃん」
少年N「僕にはできないよ」
希「簡単じゃん……」
少年N「そんなこと言ったら父さんや母さんが心配する……それだけは嫌だ」
希「……(返す言葉がない表情)」

※語り
そこへ黒い傘を差した、ひとりのおじさんが希に近寄り言ったのだった。

おじさん「自分の想いを貫き自分の弱さを、さらけだせる……」
太くて低い声でいうおじさん。
おじさん「君の“強さ”が欲しい……」

※語り
その時はじめて、希は自分の持つ“強さ”を知ったのだった。

希「えっ……」






アニメ T 望‐のぞむの強さ‐


※語り
―100年、続く雨の時代―
降り止まない雨は人々の心を蝕(むしば)んでいった。
生態系は崩れ
人間以外の生き物は半数以上が絶滅し、
そして……
ある者たちは耐え切れず自ら命を……
それでもある者たちは
“悲しいね”と口には出さず“苦しい顔”も見せず、笑いあっていた。

野らネコですら笑っていた。

野らネコ「ニャー」

○横断歩道 (赤信号)
差している傘を投げ捨て、空を見上げる少年N。
少年N「ア゛ァー……」叫び声

○横断歩道・青信号へ変わる瞬間
少年Nを横目に横断歩道を渡る望。
望「ダッサイ姿……」

○望の家・リビング
ソファに寝っ転がる望。

※語り
望はわからなかった。
弱音を吐くその人の性格が、惨めな姿を見せるその人の姿が、わからなかった。
いつも情けなく見えていた。
いつもくだらなく見えていた。
はやく受け入れてしまえばいいのにと
思っていた。
だから、どうしてと両親に尋ねる望。

望「どうして?もう雨は止むことはないってわかってて、どうして止むことを期待してるの?こんな環境でもはやく受け入れて楽しもうとしないの?」
母「それはね……」
父「それはな……」

○学校

※語り
どうしてと友達にも尋ねる望だった。

望「どうして……太陽が見てみたい。月や星を見てみたい。外でおもいっきり遊びたい。
そんな叶わない 希望をもっちゃうの?」
同級生「それは……」
母・父・同級生の3人の顔アップ
母・父・同級生「それは“強さ”なんだ」
望の納得のいかない顔アップ
望「やっぱり わからないよ……」

○望の部屋
上着を持って部屋から出ていく望。

○道端
望が歩く前を野らネコが歩いてる。

※語り
自分を偽らないことが、誤魔化さないことが、“強さ”なのかと……だったら、僕は違う。
そう感じた望は、混乱する頭を冷やすため散歩に出かけた。
野らネコの後をずっとついていく……

○駅・広場
ギターを持ち、歌っている少年N。
望「なんか聴こえる……どこからだろ」

□少年Nの歌う歌の歌詞【IT′S】


※歌詞は
続・希望ー黒い傘を差した男ー
に掲載


※語り
野らネコについてきた望は少年Nの歌う歌に耳を奪われた。
いつの間にかふたつの瞳から
涙がこぼれていた。
その光景を見た傍観者たちが寄ってくる。
そして少年Nの歌うまわりにはいつの間にか、たくさんの人たちで溢れていた。

望「ほんとうは……僕だって……」
傍観者A「なんだっ、何やってんだ」
少年N「集まってくれたけど、雨が強くなってきたし今日はもう帰ります」
ギターを片付け帰ろうとする少年N。

○駅の広場
望は少年Nに近寄る。
望「さっき歌ってた歌、最後に叫ぶところいいね。僕も一緒に叫びたくなっちゃった」
少年N「そう、じゃあ一緒に叫ぼうよ」
望「えっ……いや僕はいいや」
少年N「君も同じようなこと想ってたりするんでしょ……どうして我慢するの?想ったことを想ったままに吐き出せばいいじゃん」
望「うーん……」
少年N「辛い時には辛いって言えば、そう伝えればいいじゃん」
望「僕にはできないよ」
少年N「簡単じゃん……」
望「そんなこと言ったら父さんや母さんが心配する……それだけは嫌だ」
少年N「……(返す言葉がない表情)」

※語り
そして黒い傘を差した、ひとりのおじさんが望の方へ振り向き言ったのだった。

おじさん「心配させないために自分を、偽れ、誤魔化せる……」
太くて低い声でいうおじさん。
おじさん「君の“強さ”は素晴らしい」

※語り
その時はじめて、望は自分の持つ“強さ”を知ったのだった。

望「えっ……」

○テレビ(アニメのエンディングが流れる)
□アニメ・エンディングの歌詞
【真夏の帰り道】





真夏の帰り道。


突然の雨
数時間前まで あんなに晴れてたのに

あなたならどうする

この雨音で歌を歌いますか?
それとも 悲劇のヒロインのように
悲しみを演じますか?

いつまでも続くわけじゃないから
運の悪さをすこし笑って、また話そう

水槽の町
数時間後には こんなに気持ちよくて

あなたならどうする

この風景を紙に描きますか?
それとも 誰かのヒーローのように
英雄を演じますか?

いつまでも続くわけじゃないから
運の悪さをすこし笑って、また歩こう

よくある話の きょうを 大切に

この雨音で歌を歌いますか?
それとも 悲劇のヒロインのように
悲しみを演じますか?

いつまでも続くわけじゃないから
運の悪さをすこし笑って、また話そう





〇中学生Aの部屋(夜中)
中学生B「なぁなぁ」
テレビを消しタオルケットを掛けながら話す中学生B。
中学生A「なに?」
中学生B「誰かに自分の弱さを涙を見せられる人間か?それとも誰にも弱さを見せず笑って我慢する人間か?どっちの人間に近い?」
中学生A「うーーん……俺はたぶん自分の弱さを涙を見せられる人間に近いかな」
中学生B「へー」
中学生A「お前は?」
中学生B「……」
タオルケットに包まり寝る中学生B。
中学生A「お、おい……寝たのかよ……」




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