アストロノーツ

bisin

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第2章 辺境の地ローランドル

ありふれた死

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明かりをつけると気づかれてしまうので、元男の時の能力を引き継いでいるのか、夜目が効くのはありがたく、光がほとんどなくても空間の把握ができた。

洞窟自体は縦横2mくらいで、ゴブリンが掘った後なのかゴツゴツした岩が至る所から飛び出ていて危なっかしい。

少女はシミターをインベントリにしまい、ドワーフからもらった短刀を腰に下げていた。狭い空間では刃渡り80センチあるシミターでは引っかかって不利になる為だ。刃渡り30センチほどの短刀の方が良い。

洞窟はさほど深くなく、50mくらいいけば広い空間に出た。素早く手前の岩陰に隠れて辺りを確認する。

松明の明かりが見え、何かが蠢いているのがわかった。炎がゆらめいた時に一瞬光が広がる。

ゴブリンが6体とほぼ裸同然の女性が2人。1人は動かず、1人はゴブリンがに跨がれていた。仕切りに頭を動かしている。

ピチャピチャと水音がし、何をしているのか理解すると少女は短刀を握る手に力が入った。

────6体……行けるか?

スルスルと岩陰から岩陰に移動して近づいて行き飛びかかろうとした時、不意に激しい光がクラウディを襲った。

「?!」

間一髪短刀で弾くが衝撃で武器が何処かへ飛んでいく。

飛んできた洞窟入り口上を見ると岩棚があり、杖を持った人がぶつぶつと呟いているのが確認出来た。杖の光に照らされてフードを被ったゴブリンだとわかる。

ゴブリンは杖を振り再び光を打ち出した。

予期していたクラウディは岩陰に隠れて防いだが
、他のゴブリンに気づかれており一斉に襲いかかってきた。

シミターを取り出す暇がなく足に仕込んだナイフを手に取り短刀とナイフで次々と襲いくる攻撃を捌く。

そんな中に上のゴブリンが魔法を放つ。少女は避けたがゴブリンが2匹巻き添えになり真っ黒に焦げた。

少女は、文句を言うように口論を始めた下のゴブリンから距離を取り、短刀を上の敵に投げた。

短刀は顔面に突き刺さりそのままゴブリンごと下に落ちる。

続けて武器を取り出そうとインベントリ内を探ったが焦って取り出せず、他のゴブリンが突進してきてしまい片方のナイフで応戦する。

1匹は首元に突き立てて倒したが、2匹目のこめかみにナイフを突き立てたのが悪手だった。

ナイフは深々と根元まで刺さって命を奪うが、すぐには抜けず次の敵の棍棒が少女の脇腹を殴打した。

「ぐぅっ……」

クラウディは片膝を付くも敵のボロボロの衣服を掴んで壁に叩きつけた。

しかし後ろの最後の1匹に体当たりされて壁に激突した。

頭を打ちグラグラと視界が揺れる。身体が上手く動かず息をするのがやっとだった。

ゴブリンが動かない少女の手からナイフをもぎ取ると髪を掴んで首に突き立てようとした。

が、ふと何を思ったか少女の匂いを嗅ぎ出しニタニタと笑った。

────ああ、またか

ゴブリンがしようとしていることを察して目を閉じた。

諦めたわけじゃない。

クラウディはあの時とは違うと、胸にある生命石に意識を集中した。

────吹き飛ばしてやる!

だが魔法を放とうとした時、ゴブリンが白目を剥いた。口の奥からゴボゴボと血が吹き出すと少女の足に倒れ込んだ。

────なにが……

霞んだ視界の先にはクラウディの短刀を持った女性が立っており、敵の背中を刺した事がわかった。

捕まっていた女性はゴブリンを少女から退けるとひざまづいて抱きついた。恐怖からか解放感からか、あるいは両方なのか、そのままかなりの時間啜り泣いていた。






クラウディは泣き疲れて眠ってしまった女性を身じろぎしてズラさせ、インベントリからポーションを取り出して服用した。

品質が低級であるからか細かい傷は治って幾分痛みは和らいだが、脇腹の痛みは継続していた。

────ヒビか、最悪折れてるなこれ

少女は痛みを堪えて女性をそうっと横たえ、もう1人を見に行った。

もう1人の女性はすでに事切れており、目は恐怖に見開いたままだった。

彼女らのものだろう荷物が散乱し、その中にギルドカードを見つけた。

2人ともEランク冒険者でそれぞれ剣士のミコッテ、僧侶のレイリンという名前からだった。

それらを回収し、目が覚めたが、虚な女性に毛布を被せてなんとか肩をかして歩かせると痛みに呻きながら外に出た。短刀も女性から回収したものの、ナイフは見当たらなかったので諦めるしかなかった。

外に出ると夕暮れになっていた。

「……て……して」

僅かに女性が少し意識を取り戻し身じろぎした。

少女が声をかけて肩の位置を直そうとした時、首筋に生暖かいものが流れた。

何かと思って飛び退いて触るとぬめりとする赤い液体だった。

────血

肩をかしていた女性は急に脱力し、地面に倒れ込んだ。

彼女は拾ったナイフを隠し持っており、自分で自分の首を刺して自害したのだ。

突然のことに呆気に取られるクラウディ。

彼女はしばらく立ち尽くしたが、痛みに我に帰ると全てをそのままにしてゆっくりと帰路に着いた。
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