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第2章 辺境の地ローランドル
ホブゴブリン
しおりを挟むそれからいくらかクエストをこなして所持金が30万ユーン程になった。
────そろそろ自分の世界に帰る為に情報を集めないとな
フロレンスが言うには元男はこの世界の住人ではない為、空間や次元を移動する方法を調べてみるといいと助言を受けた。
「情報屋?」
クラウディはクエストを受けに行った際に受け付け嬢に聞いた。
「んーここら辺は辺境だからねぇ。たまに来るんだけど今はいないだろうし……もっと都会に行ってみないと、レイボストンとか」
「レイボストン?」
「そう、霧の街レイボストン」
ルビアは軽く説明をする。
終始街が霧に覆われ陽を浴びることがないという。暗い街だが人の往来はかなり多いと言う。ただそこの自警団では見つからなければ何をしても良いという風潮のため、犯罪が絶えないと言う。
「もし行くなら気をつけなよ。奴隷商もいるし捕まらないようにね」
「ああ、感謝する」
で、今日もクエスト受けてく?とルビアはウインクした。
────霧の街レイボストンか……行ってみるか
クラウディはギルドの依頼書を見ながら考えた。
ギルドクエスト────
ホブゴブリン1体の討伐
場所 ローランドル東の採掘場
適切ランク E
推奨ランク E~D
報酬 1万ユーン
────
聞くところによるとホブゴブリンは普通のゴブリンよりも二回り大きく力も強いと言う。ローランドルの採掘場にて何度か見かけたため住人が報告しギルドで対応することになったのだそうだ。
────もしかして
いつか出会ったゴブリンの1体がそんな感じだった為、今回も子分を引き連れている可能性が高い。
依頼書に再度目を通し、採掘場の地図と実際の風景を照らし合わせながら現地へと向かって行く。
採掘場はいくらか点在しており、件の場所は一時的に封鎖されていた。
最初の採掘場入り口にはかなりの労働者がいたが、今歩いている道の見える範囲には人っこ1人いない。
────ここか
林を抜けると小高い崖が現れた。下の方が採掘されてえぐれており洞窟のようになっている。
情報では洞窟までにはなってなかったはずで、クラウディは近くの林の影に身を隠した。
いつかの敗北もあり数を確認した上で確実に仕留めなければならない。
陽が暮れる頃に変化があった。あの汚らしい声が聞こえゴブリンが中から姿を現した。予想通りでゴブリンは1体でなく見える範囲で5匹。しかし肝心のホブゴブリンはいない。
少女はおそらく中だろうと考え、近づいてきたらすぐに応戦できるよう剣を抜いた。
何か喚きながらゾロゾロと近場を通り過ぎた時、彼女は背後から1匹ずつ、音もなく仕留めた。
最後の1匹は何かに気づいて振り向いたがその瞬間には首が胴体から離れ、事切れていた。
少女は気配を消し今度は洞窟の入り口まで行く。
中は暗くて見えない。
入ろうかどうか迷っていると中から一際大きいゴブリンが出てきた。
以前みたゴブリンより少し大きく、手には斧を持ち上半身に鎧を装着していた。
幸いまだ気づかれておらず、少女は背後から露出している喉を掻き斬った。
────浅い!
血飛沫が舞って血管は斬ったらしいが皮膚が硬く致命症には至っていない。
元男の筋力なら確実に殺れてたのにと悪態をついて踵を返して突進する。
ホブゴブリンは必死に斧を振るが屈んで躱わす少女には当たらず。
少女は喉にシミターを突き刺してそのまま地面に押し倒した。
そして敵の口から泡立った血が出てきて動かなくなった。
「ふぅ……」
クラウディはシミターを抜き取って立ち上がり、敵の腰布で血を拭った。
────これで、依頼達成
彼女が証明素材を剥ぎ取ろうとした時だ。洞窟の奥から何かが聞こえた。
「────っ」
少女はその場に身じろぎせず固まった。
「────か、……すけて」
────誰か……いる
声質からして女性だろうか。僅かだが助けを呼ぶ声が聞こえた。
クエストの説明から察するに、ここ数日でこの洞窟が出来たことになる。果たしてあの数のゴブリンだけで坑道を掘り進めて洞窟に出来るだろうか。
少女は嫌な予感がし、気持ちを落ち着かせる為に腰に下げたシミターに触れた。元男の時にはこうしていれば不安なときは落ち着くことができたはずだが、何かが足りず一層心がざわつく。
────一旦もどろう。俺の依頼はこれで終わりだ。声も……気のせいだろ
そもそもすでにEランクには荷が重い事態なのだ。生きて帰って報告するだけでも大金星だ。
元男は洞窟に背を向けて立ち去ろうとした。
「だれ、か……たすけ……て……」
今度はハッキリと聞こえた。助けを呼ぶ女の声が。
────だめだ、行くな
少女の足が止まる。
────今は男の時の力はないんだ
そう言い聞かせるが足が前に進まない。もしかしたら、時間が違えば奥にいる人間は自分だったかもしれない。そう思うと少女の胸の奥がどうしようもなくざわついた。
クラウディは深呼吸し、洞窟の奥に目を向け、音を、気配を消して進んだ。
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