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第3章 精霊の森
森を抜けて
しおりを挟む『精霊の森』は少しの間探したが初めからなかったかのように、痕跡すらなかった。
クラウディは方向感覚を失っていた為せめて方角でも教えて貰えばよかったなとため息をついた。
森の霧は晴れていたが、あたり一面道のない場所だった。
ただ漠然と進んでいくと運良く街道らしき道へと出た。取り敢えずどちらかに進んでいけば、知らない所に出ればそれでいいし、見たことあるところがあれば引き返せばいいと気楽に適当に進んだ。
その日は特に何もなく、日が暮れると早めに野営を始め、木の上で眠った。
それから数日歩き続けると小川を見つけた。約2m幅の川で足首ぐらいの深さだった。
流れが早く、魚などの生き物は見えない。
クラウディは小休止する事にし、干し肉やパンを食べた。干し肉は『精霊の森』を出てからすぐに食べた時は久しぶりだったのでかなり美味く感じたが、今はもう飽きてしまい無心で噛んで飲み込んだ。
精霊の出す食事も健康的であったがやはり肉には勝てない。本当ならラビラビでも捕まえて食べたかったが残念ながらシャドウレインが影響していたのかモンスターと一度も遭遇していない。
少女はインベントリから筒状の銀の容器を取り出した。
────モンスターはこいつだけか
彼女は筒をゆっくりと回した。透明なガラス越しにスライムは容器一杯に入っており、緑の半透明な液体は向こう側が透けて見えた。所々気泡が混じりそれが移動したり消えたりしているので生きてはいるのだろう。
少女は出来るだけ平らな岩を河原から探しその上を軽く綺麗にした。
そして岩の上にスライムをドロリと出した。液体なので岩からこぼれ落ちると思ったが、意外にも餅のように広がるくらいで落はしなかった。
しばらく観察するが特に動きはなかった。しかし戻そうとして少女は焦る。
────げ、どうやって戻せばいいんだ?
容器を近づけるがドロドロとなるスライムは端から溢れるため、袋か何かに入れて移すしかない。
少しの間悪戦苦闘し、ある事に気がつく。少しずつ動いており、それは少女の手の動きに反応しているようだった。
スライムを押せばそちらの方向に、持ち上げれば上に向かって行こうとするのだ。
どうやらかなり簡単な指示なら伝わるみたいで、少女は人差し指をスライムに当て、方向を示してゆっくりと動かした。するとスライムが細くなり、すんなりと筒に入り込んだ。
「うっ」
ピッタリ収まって蓋を閉めたはいいが岩の上にあった細かい砂などが混じり汚くなっていた。
少女は綺麗にするのは無理だと思いインベントリにしまった。
しかし次の日、森を進む中で再びスライムを見てみると綺麗になっていた。
────自浄作用みたいなのがあるのか?
少女は地面にスライムを落とした。ボトリとスライムは落ちやや膨らんでゆらめいた。
彼女は試しに石やら草やらをスライムの上に落とした。飲み込むように沈んでいき、白い煙がだったと思えば徐々に中に入れたものは消えていった。
それからいくらか同じようなことを繰り返すうち何でも溶かす事がわかった。ものによって溶かすのにかかる時間も違う。
ただお陰で一回り大きくなってしまい、入れ物には入らなくなってしまう。
「しまったな……もう少し縮まれないかこいつ」
呟くと微かにスライムは光り、縮んだ。それを見た少女は自分の顎を指で叩き、少し考えた。命令したら動くのではと。
案の定、離れて方向指示をするとその方向へ動いた。容器の出入りも理解しているようで、再び中に入るとクラウディは蓋を閉めた。
どうやら『プリムスライム』は学習が出来るスライムのようだった。
さらに2日ほど歩くと森を抜け、大きな橋が目に入った。その先にまた森があり霧がかかっているのが見える。おそらくレイボストンだろう。
クラウディは引き返さなくてよかったと安堵した。
橋は石造りであり、歩くとコツコツと靴が足音を立てた。ローランドルのようにレイボストンには塀はなく、森の中に街があるという感じだ。
森の入り口にはアーチがあり、木で出来たアーチ門には『霧の街レイボストン』という書かれた看板が上にあ貼り付けてあった。少女はその下を通った。
辺りは徐々に霧がかって薄暗くなり、時折街灯が見える。そして検問所が見えた。新たに出入りする人間はクラウディだけだった。
検問所まで来ると門番が行手を阻むよう槍を交差させた。
「身分証はあるか?」
少女は胸ポケットを探り、ギルドカードを渡した。
「冒険者か……まあいい。1500ユーンだ」
────ちょっと高いな
そう思いながらも、前回金貨を払ったことを思えば安いもんと銀貨を15枚渡す。
門番は槍を下ろし無言で道を開けた。
少女は『霧の街レイボストン』へと入っていった。
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