アストロノーツ

bisin

文字の大きさ
30 / 57
第3章 精霊の森

精霊の森①

しおりを挟む




クラウディは自身が電撃で死ぬ姿を見て飛び起きた。衝撃で柔らかい地面に叩きつけられて激しい痛みが頭を襲う。

少しその場でもがいていたが、ふと木の葉がたくさん重ねられた床が目に入った。

荒い息を整え、自分が生きているのに気づく。

「はぁ……はぁ……?」

再び激しい頭痛が襲い、意識が遠のいた。なんとか意識を保とうと四つん這いになっていると何かが頭を撫でるのを感じ、そのまま眠りに落ちた。






────鳥の声が聞こえる

少女はゆっくりと目を覚ました。身体を起こすと周囲を見渡す。

直径2mくらいの空間におり、床にはたくさんの葉が散りばめられている。少女はどうやら大きな木のうろに横たわっていたらしい。

大きな穴から外を見ると小川とその周囲、この木を含めた大きな森にぽっかりと穴が開いたような空間が広がっていた。

────フロレンスの所と少し似てる

老婆が住んでいたところも、森に人為的に作ったような開けた空間が広がっていた。

少女は下に降りて自身の状態を調べた。外傷はなし。服は薄い白いネグリジェみたいなものを着せられていた。下着も女性ものだ。着心地の悪さに自身の肩を抱いた。

「ここはどこだ?」

「ここは『精霊の森』と呼ばれています」

不意に横から声がし、驚いた少女は飛び退いて腰に手をやった。丸腰なので手は何も掴むことはできなかった。

────気配を全く感じなかった……

それを見てか、目の前の人物が手を振ると何もない空に少女の武器と荷物が現れた。

それはふわふわと浮かんで目の前まで来ると少女の手におさまる。

少女は訝しみの目を目の前の人物に向けた。

話しかけてきた人物はスラリと背の高い大人の女性。透き通るような肌に美しい顔つき。長い耳に緑の長い髪を背中まで流していた。髪には髪飾りなのか草花で出来た冠を被っている。服装はクラウディとは色違いの────薄くはないが────ヒラヒラした緑色のワンピースのような服を着ていた。

目の前の女性には敵意は感じられず、ただじぃっと少女を見つめている。

「助けてくれたのか?」

「倒れたあなたをここに運んで、傷は癒やしました」

────なんか回りくどいな

「助かった。感謝する」

本気で死ぬと思っていたので助けてくれたのには何者であろうと感謝するしか無い。

少女は辺りを見渡した。ぽっかりと空いた空間のすぐ外は森になっていた。結界があるのだろうか。

「なぜ助けた?」

女性には不思議な何かを感じるが、シャドウレインを倒せるようには見えなかった。そもそも争いさえ好まないのではないのだろうか。それに助けた理由も見当もつかなかった。見ず知らずのものを助けるメリットがない。

女性はそれには答えず微笑んだだけだった。

「ここは……『精霊の森』はレイボストンから近いのか?」

じっと見るが相手は見つめ返してくるだけで何も言わない。

待っても答えが返ってこないのでまた別の質問をしようとしたら女性は口を開いた。

「人間が住む街とは近いとも言えるし、遠いとも言えます」

「??」

言っている意味がわからずクラウディは首を傾げた。

「おま……あなたは?」

助けてくれた人に『お前』というのは違うかと言い直す少女。

「私はここの主とも言えるしそうでないとも言えます」

「???」

────なにを言ってるんだこいつは

「いや言ってる意味が────」

「あなたは……この世界の人ではありませんね」

少女の言葉を遮り不意に言う女性。クラウディの心臓がドキリと跳ねた。

「なぜ、それを……?」

「あなたに漂っていた気配がこの世界のどれにも当てはまりませんので」

「漂っていた?」

「今は落ち着いての中に入ったようです」

女性はクラウディが握っているシミターを指差した。少女は剣を見つめたが特に何も感じないことに首を傾げた。

女性は不意にどこかに歩き出した。何度か少女の方を振り返る。

────ついてこいってことか?

クラウディは荷物を抱え、慌てて女性の後をついていくと大きな切り株の上に横たえられたシャドウレインが目に入った。

身構えたが、大丈夫ですと言われて警戒を解く。

モンスターは既に事切れているようで、脇腹に2カ所の刺し傷と傷周りに焦げた跡があった。

「あなたが倒してくれたのです。改めて感謝を」

女性はモンスターの皮膚を撫でると突然感謝を述べた。

「俺が?」

少女の記憶は生命石のマナが切れたところで無くなっていた。そこからは全く記憶がない。

「この子が『精霊の森』の周りを荒らしていて困っていたのです。そこにあなたが……」

女性は微笑むとシャドウレインの額に口付けした。

『哀れなこの子に魂の祝福を』

そういうとシャドウレインは光に包まれて姿が崩れだす。光が去るとそこには青白い宝石のような玉が転がっていた。それがふわふわと浮き、女性の手のひらに収まった。

「お前は一体……」

その光景を見ていた少女は呟いた。それに応えるように女性は口を開く。

『私はフィレンツェレナ。この森の精霊です』
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…

美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。 ※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。 ※イラストはAI生成です

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活

昼寝部
ファンタジー
 この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。  しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。  そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。  しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。  そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。  これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...