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第三話 放浪者組合
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トラベラーギルドと呼ばれる場所を探すべく、ベラルカを散策している。
すると、路地裏の方から複数の男達の声に紛れて
「たす…け、て……」
っとか弱く小さな声が聞こえてきた。
元々聴覚などは一般より良い方だったが、この世界に来てからはさらに鋭くなっているような気がする。
聴覚を頼りに、声が聞こえて来た方へ足を運んだ。
○
複雑な裏道を通った私は行き止まりになっている場所にて、頭から犬のような耳が生え見窄らしい服装をした少女を、男女達が笑いながら虐めている光景を目撃する。
「貴様ら、何をしている?」
見過ごせないと思った私は、男女達が逃げれないように逃げ道に立ち塞がった。
「何って、この気色悪い獣人に自分の立場を教えてやってんだよ。此奴しょーもねー理由で人のように物を買ってたんだぜ?」
おかしなことは1つもないのに、男女はケタケタと笑いながら獣人と呼ばれた少女のことを話した。
「…なるほど、よく分かった…」
情けは不要と判断した私は、腰に帯刀してあった大和を外した。
「お兄さんも加わるのか?」
「ああ、根性が腐り切っている者達に教えよう」
「へへっ、そいつは楽しみっ!!」
鞘に収めたままの大和で、私は近場にいた男の顔を力一杯叩いた。
「て、テメェ!!」
私が叩いた男が、鼻血を出しながら地面に倒れ込んだのを見て、別の男が刃物を片手に襲ってくる。
男の攻撃を軽々と避け、足払いで地面にひれ伏させた。
「炎よ、我が敵を撃ち貫け!火炎弾丸!」
「っ!?」
離れた場所に居た女子が、何かを呟くとその言葉と共に火の玉が私の方へ向かってくる。
この世界では妖術のような類いが使えるようだ。
咄嗟に外套で身を守ろうと試みる。
本来ならば、衣服は火に弱いはずなのだが、外套は火の玉が直撃したのにも関わらず、燃えるどころか焦げてすらなかった。
「う、嘘…高等な火炎耐性が付与された衣服…?」
外套が燃えなかったのを見た女子の顔が一気に青ざめる。
そう言えば、この衣服はあの女子が用意した物だったな…
衣服にも細工を施したのか、と呆れていると、
「炎がダメでも、岩ならどうかしら!大地よ、我が敵を撃ち貫け!岩石弾丸!」
今度は岩の塊が私に向かってくる。
飛んでくる岩の塊を私は大和を構え、そして一刀両断に斬り裂いた。
「はっ?」
私が岩を一刀両断にしたのを見て、妖術使いの女子は力なく地面に座り込んだ。
「ば、化け物ーーー!!!」
「逃げろーーー!!!」
獣人と呼ばれる女子を虐めていた男女は、気絶している者や気が確かでは無い者を連れ、脱兎の如く去っていった。
「大事は無いか?」
「…っ!」
大和を鞘に収め腰に帯刀した後、虐められていた女子に手を差し伸べた。
すると、女子は涙を流しながら私に抱きついて来た。
女子に抱きつかれた私は、ふと妹の鶴の姿を女子に重ね、頭を撫で始めた。
女子が落ち着くまで、私は頭を撫で続けることにした。
暫く頭を撫でていると、女子は私から離れた。
「あっ、あの…助けてくださり、ありがとうございます…」
女子は頭を下げ私に礼を伝えた。
「何かお礼をさせてください!」
「…いや、お礼は良い」
頭にある耳を動かしながら、女子はお礼をしたいと言ってきたが、怪我をしている上に着ている服が貧相なことに気付いた私は、女子の頼みを断った。
「恩を返したいのであれば、また別の機会にしてくれ…私はこれから予定があるのでな」
女子の頭を軽く叩いた後、軽い嘘をついて私は女子をその場に置いて去った。
〇
「ふむ、ここか…」
少々道草を食ってしまったが、無事トラベラーギルドと呼ばれる場所に辿り着いた私は、建物の中に入って見ることにした。
中は西洋風の内装になっており、多くの人で賑わっていた。
軍靴を鳴らしながら、受付らしき場所へと向かった。
「失礼。登録をしたいのだが…」
「えっ、あっはい…!登録ですね、少々お待ちください」
受付嬢は少々驚いた顔した後、奥の方へと向かって行った。
「おい、あの軍服男、帝国人じゃないのか…?」
「いやぁ…帝国の軍服と違うところがあるから、多分違うんじゃないか?」
何やら私の姿を見て、周りから気になる言葉が聞こえてくる。
帝国か…これもあとで調べることにするか。
そう考えていると、奥から屈強な身体付きをした大男が出て来た。
「失礼、貴方…帝国軍人じゃないですよね?」
私の目の前に立ちふさがった大男は、私を睨みつけながら質問をした。
「…確かに軍服を着てはいるが、私は貴方方が知っている帝国人ではない。もし、帝国人ならば、軍服を着て堂々と来ると思うか?」
「なるほど、納得の理由だ…疑って悪かったな、我々放浪者組合は帝国と仲が悪くてな…スパイかと思ったんだよ」
私が大男達が帝国人ではないと知った大男は安心したようだ。
「それじゃあ改めて…放浪者組合に入るためには、組合員との模擬戦、薬草や果実などの採取、周辺の魔物の討伐…この三つ内、一つクリアしたら組合証明書が発行されるが、どうする?手っ取り早いのは模擬戦だな」
「ふむ…」
前提条件を出され、私は少し考えた。
まず薬草や果実の採取はこの世界の知識に乏しい私にはほぼ無理な話だ。魔物の討伐は薬草採取と同じように知識が乏しいため、やめとく方が良いだろう。と、なると…
「…模擬戦で頼む。早めに金銭が欲しい物でね」
私の回答を聞いた大男は、ニヤリと笑みを浮かべた。
「そのいきだ!準備を始めるから少し待っとけ!」
大男は嬉しそうに笑いながら、部屋の奥へと消えて行った。
すると、路地裏の方から複数の男達の声に紛れて
「たす…け、て……」
っとか弱く小さな声が聞こえてきた。
元々聴覚などは一般より良い方だったが、この世界に来てからはさらに鋭くなっているような気がする。
聴覚を頼りに、声が聞こえて来た方へ足を運んだ。
○
複雑な裏道を通った私は行き止まりになっている場所にて、頭から犬のような耳が生え見窄らしい服装をした少女を、男女達が笑いながら虐めている光景を目撃する。
「貴様ら、何をしている?」
見過ごせないと思った私は、男女達が逃げれないように逃げ道に立ち塞がった。
「何って、この気色悪い獣人に自分の立場を教えてやってんだよ。此奴しょーもねー理由で人のように物を買ってたんだぜ?」
おかしなことは1つもないのに、男女はケタケタと笑いながら獣人と呼ばれた少女のことを話した。
「…なるほど、よく分かった…」
情けは不要と判断した私は、腰に帯刀してあった大和を外した。
「お兄さんも加わるのか?」
「ああ、根性が腐り切っている者達に教えよう」
「へへっ、そいつは楽しみっ!!」
鞘に収めたままの大和で、私は近場にいた男の顔を力一杯叩いた。
「て、テメェ!!」
私が叩いた男が、鼻血を出しながら地面に倒れ込んだのを見て、別の男が刃物を片手に襲ってくる。
男の攻撃を軽々と避け、足払いで地面にひれ伏させた。
「炎よ、我が敵を撃ち貫け!火炎弾丸!」
「っ!?」
離れた場所に居た女子が、何かを呟くとその言葉と共に火の玉が私の方へ向かってくる。
この世界では妖術のような類いが使えるようだ。
咄嗟に外套で身を守ろうと試みる。
本来ならば、衣服は火に弱いはずなのだが、外套は火の玉が直撃したのにも関わらず、燃えるどころか焦げてすらなかった。
「う、嘘…高等な火炎耐性が付与された衣服…?」
外套が燃えなかったのを見た女子の顔が一気に青ざめる。
そう言えば、この衣服はあの女子が用意した物だったな…
衣服にも細工を施したのか、と呆れていると、
「炎がダメでも、岩ならどうかしら!大地よ、我が敵を撃ち貫け!岩石弾丸!」
今度は岩の塊が私に向かってくる。
飛んでくる岩の塊を私は大和を構え、そして一刀両断に斬り裂いた。
「はっ?」
私が岩を一刀両断にしたのを見て、妖術使いの女子は力なく地面に座り込んだ。
「ば、化け物ーーー!!!」
「逃げろーーー!!!」
獣人と呼ばれる女子を虐めていた男女は、気絶している者や気が確かでは無い者を連れ、脱兎の如く去っていった。
「大事は無いか?」
「…っ!」
大和を鞘に収め腰に帯刀した後、虐められていた女子に手を差し伸べた。
すると、女子は涙を流しながら私に抱きついて来た。
女子に抱きつかれた私は、ふと妹の鶴の姿を女子に重ね、頭を撫で始めた。
女子が落ち着くまで、私は頭を撫で続けることにした。
暫く頭を撫でていると、女子は私から離れた。
「あっ、あの…助けてくださり、ありがとうございます…」
女子は頭を下げ私に礼を伝えた。
「何かお礼をさせてください!」
「…いや、お礼は良い」
頭にある耳を動かしながら、女子はお礼をしたいと言ってきたが、怪我をしている上に着ている服が貧相なことに気付いた私は、女子の頼みを断った。
「恩を返したいのであれば、また別の機会にしてくれ…私はこれから予定があるのでな」
女子の頭を軽く叩いた後、軽い嘘をついて私は女子をその場に置いて去った。
〇
「ふむ、ここか…」
少々道草を食ってしまったが、無事トラベラーギルドと呼ばれる場所に辿り着いた私は、建物の中に入って見ることにした。
中は西洋風の内装になっており、多くの人で賑わっていた。
軍靴を鳴らしながら、受付らしき場所へと向かった。
「失礼。登録をしたいのだが…」
「えっ、あっはい…!登録ですね、少々お待ちください」
受付嬢は少々驚いた顔した後、奥の方へと向かって行った。
「おい、あの軍服男、帝国人じゃないのか…?」
「いやぁ…帝国の軍服と違うところがあるから、多分違うんじゃないか?」
何やら私の姿を見て、周りから気になる言葉が聞こえてくる。
帝国か…これもあとで調べることにするか。
そう考えていると、奥から屈強な身体付きをした大男が出て来た。
「失礼、貴方…帝国軍人じゃないですよね?」
私の目の前に立ちふさがった大男は、私を睨みつけながら質問をした。
「…確かに軍服を着てはいるが、私は貴方方が知っている帝国人ではない。もし、帝国人ならば、軍服を着て堂々と来ると思うか?」
「なるほど、納得の理由だ…疑って悪かったな、我々放浪者組合は帝国と仲が悪くてな…スパイかと思ったんだよ」
私が大男達が帝国人ではないと知った大男は安心したようだ。
「それじゃあ改めて…放浪者組合に入るためには、組合員との模擬戦、薬草や果実などの採取、周辺の魔物の討伐…この三つ内、一つクリアしたら組合証明書が発行されるが、どうする?手っ取り早いのは模擬戦だな」
「ふむ…」
前提条件を出され、私は少し考えた。
まず薬草や果実の採取はこの世界の知識に乏しい私にはほぼ無理な話だ。魔物の討伐は薬草採取と同じように知識が乏しいため、やめとく方が良いだろう。と、なると…
「…模擬戦で頼む。早めに金銭が欲しい物でね」
私の回答を聞いた大男は、ニヤリと笑みを浮かべた。
「そのいきだ!準備を始めるから少し待っとけ!」
大男は嬉しそうに笑いながら、部屋の奥へと消えて行った。
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