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5.アボット男爵家①
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僕は普段は寮住まいだけど、大抵休みの日は家に帰る。
他の生徒たちは友達と街に遊びに行ったりしてるみたいだけど、生憎僕にはそんなお金も暇もない。
僕の実家は、王都から馬車で一時間半のところにある。
特別な産業は特になし、基本農地ばかりのザ、田舎って感じ。それなのに王都からはそこまで遠くないとあって、税だけは割高だ。
昔、戦で功績を立てたご先祖様がここを領地として賜ったらしいけど、こんなとこ誰も欲しがらないから、お金の代わりに押し付けられたんじゃないのって感じ。
実際、当時はここも戦禍でめっちゃ焼かれてて、ただの荒れ地だったらしいしさ。他の貴族への褒賞や見舞金で国庫も困窮してたって話だし、割と当たってると思う。
だったら、異世界チートで新しい産業を!って思うけど、そう簡単にできないのが弱小貧乏貴族の辛いところだよ。
どんなものでも大抵のものには既存の利権がある。要するに大手メーカーってやつ。で、大手メーカーには大抵ケツ持ちの貴族がついてる。うちのお抱えの○○が、巷で流行ってるんですのよ、オホホってやるわけ。
そこに、超革新的で売れる商品なんか出してみなよ。たちまち大人気になるけど、たちまち既存の商品が売れなくなって、お偉いさんの顔を潰すことになる。
そうなったら、碌なことにならないのは大体想像つくでしょ?
だから、昔は後ろ盾になってくれる貴族の伝手を探して、アイデアを持ち込んだりしてみたこともあったけど、大抵は門前払いかアイデア盗まれるか、最初は優しくても身体を要求されるかのどれかに落ち着く。
正直不作の年でほんっっとうに領地が困窮してた時なんかは、もう僕の体ぐらいで何とかなるんなら死ぬほどヤだけどやっちゃおうかと思ったこともあったけど、アーネストのルートのことを希望にして我慢した。
純潔を失ったら王太子妃には絶対になれないからね。
「ただいまーぁ」
実家に帰ると、家はもう既に地獄だった。割れた花瓶、泥だらけの床、埃の積もった窓枠。二週間で何故。
うちの家は貴族の領主館のはずなのに、全然手を入れてないからめちゃくちゃボロい。ちょっと大手の商人の方が多分ずっといい家に住んでる。
広さはまぁ何とかそれなりだけど、そのかわり掃除がめちゃくちゃ大変で、開かずの間にしちゃってる部屋もある。メイド?……聞かないで。
「あ、にーちゃんおかえりぃ」
「おみやげは?ねーおみやげ~」
すかさずロバートとコニーが寄ってきて、お土産を強請る。
「ないよ、そんなの」
「え~!お兄ちゃんのケチ!」
「しょーがないよコニー、にーちゃん渋ちんだもん」
「なんか言った!?」
生意気にも陰口を叩く弟妹を一喝すると、二人はピューッと走ってどこかに行ってしまった、全くもう!
「あ、兄貴帰ってんじゃん」
「待ってた!宿題わかんね」
「それよりコレなんとかしてくんない?」
かわりに全く同じ顔した三つ子が階段から降りてきて、繕いものやら宿題やらを持ってくる。
「そんなことより!コレなに!?なんで花瓶割れてるの!?」
「あー、それ親父だよ。相変わらずトロくさいからさぁ。出がけに引っかけて割ったらかーちゃん大激怒して、『帰ったら自分で片付けるから~!!』って叫んで出てった」
「母さん……」
脳裏にものすごくおっとりしてる父さんと、それよりはちょっとだけしっかりしてる母さんの顔が浮かぶ。
気持ちはわかるけど、割れ物は放置しちゃダメでしょ。
「しょーがねーよ兄ちゃん。かーちゃん許してやれよ。親父が何か割るの、今週これで4度目だからさぁ」
「そーだよ。昨日なんてかーちゃんのお気に入りのカップ割っちゃって、もうやりませんって泣いて謝ってたんだぜ。それで今朝これだもん」
ああ……母さんのお気に入りのアレを割っちゃったのか。それは……しかたない。あれ、僕が母さんの誕生日に買ってあげたやつで、結構高かったもん。そりゃ怒る。
僕はため息を吐きながら、箒と塵取りを持ってきて花瓶を片付けた。ついでにエントランスを全部掃いて、箒を戻すついでに廊下にモップを掛けて、モップを返したついでにバケツに水を入れて雑巾で窓を拭いて、バケツの水を捨てたついでに洗濯を……。
「あああああああああああああああああ~~~!!!!!僕、何やってるのさ~~!!!!!」
他の生徒たちは友達と街に遊びに行ったりしてるみたいだけど、生憎僕にはそんなお金も暇もない。
僕の実家は、王都から馬車で一時間半のところにある。
特別な産業は特になし、基本農地ばかりのザ、田舎って感じ。それなのに王都からはそこまで遠くないとあって、税だけは割高だ。
昔、戦で功績を立てたご先祖様がここを領地として賜ったらしいけど、こんなとこ誰も欲しがらないから、お金の代わりに押し付けられたんじゃないのって感じ。
実際、当時はここも戦禍でめっちゃ焼かれてて、ただの荒れ地だったらしいしさ。他の貴族への褒賞や見舞金で国庫も困窮してたって話だし、割と当たってると思う。
だったら、異世界チートで新しい産業を!って思うけど、そう簡単にできないのが弱小貧乏貴族の辛いところだよ。
どんなものでも大抵のものには既存の利権がある。要するに大手メーカーってやつ。で、大手メーカーには大抵ケツ持ちの貴族がついてる。うちのお抱えの○○が、巷で流行ってるんですのよ、オホホってやるわけ。
そこに、超革新的で売れる商品なんか出してみなよ。たちまち大人気になるけど、たちまち既存の商品が売れなくなって、お偉いさんの顔を潰すことになる。
そうなったら、碌なことにならないのは大体想像つくでしょ?
だから、昔は後ろ盾になってくれる貴族の伝手を探して、アイデアを持ち込んだりしてみたこともあったけど、大抵は門前払いかアイデア盗まれるか、最初は優しくても身体を要求されるかのどれかに落ち着く。
正直不作の年でほんっっとうに領地が困窮してた時なんかは、もう僕の体ぐらいで何とかなるんなら死ぬほどヤだけどやっちゃおうかと思ったこともあったけど、アーネストのルートのことを希望にして我慢した。
純潔を失ったら王太子妃には絶対になれないからね。
「ただいまーぁ」
実家に帰ると、家はもう既に地獄だった。割れた花瓶、泥だらけの床、埃の積もった窓枠。二週間で何故。
うちの家は貴族の領主館のはずなのに、全然手を入れてないからめちゃくちゃボロい。ちょっと大手の商人の方が多分ずっといい家に住んでる。
広さはまぁ何とかそれなりだけど、そのかわり掃除がめちゃくちゃ大変で、開かずの間にしちゃってる部屋もある。メイド?……聞かないで。
「あ、にーちゃんおかえりぃ」
「おみやげは?ねーおみやげ~」
すかさずロバートとコニーが寄ってきて、お土産を強請る。
「ないよ、そんなの」
「え~!お兄ちゃんのケチ!」
「しょーがないよコニー、にーちゃん渋ちんだもん」
「なんか言った!?」
生意気にも陰口を叩く弟妹を一喝すると、二人はピューッと走ってどこかに行ってしまった、全くもう!
「あ、兄貴帰ってんじゃん」
「待ってた!宿題わかんね」
「それよりコレなんとかしてくんない?」
かわりに全く同じ顔した三つ子が階段から降りてきて、繕いものやら宿題やらを持ってくる。
「そんなことより!コレなに!?なんで花瓶割れてるの!?」
「あー、それ親父だよ。相変わらずトロくさいからさぁ。出がけに引っかけて割ったらかーちゃん大激怒して、『帰ったら自分で片付けるから~!!』って叫んで出てった」
「母さん……」
脳裏にものすごくおっとりしてる父さんと、それよりはちょっとだけしっかりしてる母さんの顔が浮かぶ。
気持ちはわかるけど、割れ物は放置しちゃダメでしょ。
「しょーがねーよ兄ちゃん。かーちゃん許してやれよ。親父が何か割るの、今週これで4度目だからさぁ」
「そーだよ。昨日なんてかーちゃんのお気に入りのカップ割っちゃって、もうやりませんって泣いて謝ってたんだぜ。それで今朝これだもん」
ああ……母さんのお気に入りのアレを割っちゃったのか。それは……しかたない。あれ、僕が母さんの誕生日に買ってあげたやつで、結構高かったもん。そりゃ怒る。
僕はため息を吐きながら、箒と塵取りを持ってきて花瓶を片付けた。ついでにエントランスを全部掃いて、箒を戻すついでに廊下にモップを掛けて、モップを返したついでにバケツに水を入れて雑巾で窓を拭いて、バケツの水を捨てたついでに洗濯を……。
「あああああああああああああああああ~~~!!!!!僕、何やってるのさ~~!!!!!」
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