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51.男爵令息は花嫁候補【Side:ウィルフレッド】
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「あの子、一体何者なの?」
滞在5日目にして、己の母親から掛けられた言葉に、私は苦笑した。
母があの子と言うのは、怪我を理由に我が家に逗留させているマリクのことだ。
何事にも動じることのない母に、僅か5日でこんな質問をさせるとは、一体あの子は何をやらかしたことやら。
「マリクなら、アボット男爵領の嫡男で間違いないが」
「そんなことはわかってます!そうじゃなくて、私はあの子の規格外な有能さはどこで培われたのかって聞いているの」
規格外、か。確かに、あらゆる意味で彼はそう称されるに相応しい。
私は言い得て妙だと思いながら、肩を竦めて見せるよりなかった。なぜなら、そんなことは私も知らないからだ。知らないことは、説明のしようがない。
いずれは彼の口から秘密を打ち明けて貰えたらいいとは思うけれど、今はまだ難しいだろうことはわかる。
思いがけない幸運でせっかく腕の中に収まってくれたのに、下手に藪をつついてまた逃げられてしまっては困る。
今朝などは、寝ぼけて私の胸に収まり、うとうとしながら私の胸に頭を預けているところなどが大変可愛らしく、突然豹変したアーネスト様に感謝したものだ。
あの後、レニオール様はどうなったのだろうか。わからないが、あれだけアーネスト様を一途に慕い、努力なさってきた方なのだ。きっと喜んでいらっしゃることだろう。
私はというと、傷心のマリクを最速で囲い込むため、怪我を理由に私の屋敷に招いたわけだが、家族は概ね好意的だった。
というのも、以前私に連れられて屋敷にやってきたマリクを、母は興味津々で構い倒し、その音楽の才能もいたく気に入って、家族の前で時折話題に出されていたからだ。
『あの浮ついた話のひとつもない朴念仁が、初めて屋敷に連れてきたコ』と、私本人としては不本意な言われようではあったが、家族の認識は悲しいかな共通であったらしく、『どんな子だが見てみたい』と事あるごとに言われていた。
そのため、今回屋敷に逗留させたいと打診した時も、皆が面白がって賛成した。
うちの家族は、私以外何故か一様に好奇心が強く、面白いものが好きと言って憚らない。ずっと理解しがたいと思っていたが、マリクに落ちてしまった私も、やはり根幹はこの家族の一員だったということなのかもしれなかった。
初日こそ顔合わせの晩餐で和やかに食事をしただけだったものの、翌日は朝食と晩餐、サロンでの食後のお茶と少しずつ接触の機会が増え、3日目には庭園で絵をかいたり、母と刺繍をしたりもしている。
その全ての機会において、マリクはうちの家族の意表を突くような行動ばかり起こしていた。本人は全く普通に振る舞っているつもりだろうし、家族も貴族らしくあからさまに表に出すようなことはしないが、すっかりその規格外さは露見してしまっているようだった。
音楽の才能はさることながら、会話の端々にもマリクは特異で独創的な思想と知的さを滲ませる。父が晩餐で宰相が書類の山に囲まれ魘されているという話を冗談交じりにしたら、少し考えて現状についていくつか質問し、その上で申請書の仕様を統一し、書類の内容の似通ったものを纏めたり分類したりする人間を作って効率化する方法や、組織体系のあり方についての持論、汚職を防ぐための管理体制の提案など、現在の通例を覆すような斬新なアイデアをまるで雑談のように事も無げに語り、父に請われれば手慰みの如くスラスラと申請書のひな形を書いて見せた。要望ごとに大まかに選択肢を設け、記入者に丸をつけさせることで分類を容易にし、要件の段階を数回に分けて枠を設定することで、記入時に内容を簡潔に吟味させ、意図を読み取りやすくする効果が見込めることなどが一目でわかる洗練された内容だった。とても即興で書いたとは思えない。
他にも、水害対策の工事についてや、戦地での効率的な補給の方法なども水を向けられるままに語り、そのどれもが非常に有用で、すぐに手をつけられそうなものばかり。
だというのに、本人はそれを大した事とは受け止めておらず、ニコニコと出された料理を味わうことに意識を向けていた。
とどめが、『お世話になっているから』と差し出された自作のペンだ。
インクを内側に入れておくことによって、効率的な書類仕事を可能にするらしい『万年筆』と名付けられたペンに、父はいたく感激し、宰相に見せびらかして足元に縋り付かれたという。
宰相に泣きつかれた父に是非数本買い取らせてほしいと請われると、マリクはその場であっさりと設計図を描いて見せ、伯爵家お抱えの商会で量産すればいいと権利を丸ごと放り出した。
どうせ自分では現状商品化する資金力はないし、滞在費がわりにでもなればと平然としていたが、そこは何とか説得して、売り上げの数割を受け取らせることで落ち着き、事なきを得た。
あの様子だと、他にも色々なアイデアを抱えていそうだ。全く、あの発明家じみた発想はどこから来るのか。
絵画の色遣いや物の特徴を掴んだ抽象的な技法は斬新で美しかったし、刺繍は針金を使用して見たことのない立体的な花を縫い上げ、母やメイリーナに似合いそうと手慰みにドレスをデザインした。
デザインされたドレスは斬新でありながら洗練されていて、メイリーナは絶対にそのドレスを作って次のパーティーで着ていくと息巻いている。それに気を良くして、衣裳に合うアクセサリーまでデザインして見せるから、手におえない。
今や、我が家のサロンはマリクの独壇場だった。最高のアーティストであり、デザイナーであり、流行の産み出し手とも呼べる彼は、社交界という戦場で鎬を削っている女性たちの強い味方と化している。
今はまだ母とメイリーナしかいないが、彼が余所のサロンに顔を出せば、一躍人気者になることは間違いない。
そして、群がる人間は女性だけではなく、それ以上に男が多いだろうことも容易に想像がつく。
マリクは、小柄で愛らしい顔をしていて、稀有な黒髪の持ち主だ。おまけに、博識で頭もいいのにどこか貴族世界の常識に疎く、無防備な面もある。それでいて幾らでも金を産み出す才能の持ち主なのだから、無理やりにでも自分のものにしようとする輩が現れるであろうことは明白だった。
「とにかく、あの子を絶対に逃がさないこと。いいわね?」
「言われずともそのつもりです」
「それならいいの。あの子が何の後ろ盾もなく社交界に出るなんて、自殺行為ですからね。早急にプロポーズして婚約に漕ぎ付けるのよ。あの子が社交界デビューする時は、最低でもあなたの婚約者としてでないと。うちの嫁と言えればもっといいのだけど」
母の提案により、マリクは客室から私の隣室へ部屋を移されることとなった。本来であれば次期当主の婚約者が宛がわれる部屋であり、備え付けの本棚には伯爵家に嫁ぐ者の心得を身に付けるための本や古い資料が置かれている。
最初は恐縮していたマリクも、客室を改装するためと理由を付ければ、あっさりと納得したようだった。
どこへ行くにも抱き上げて移動したがる私の負担も減るだろうしと的外れなことを言いながら頷いている。
メイドにさりげなくテーブルに用意された伯爵家年鑑を暇つぶしと言いながら楽しそうに読んでいるのだから、母の思う壺だ。
父は父で、さりげなく「お嫁さんが来るなら君のように可愛くて純粋に息子を好いてくれる子が望ましい」と勧誘した挙句、適当に生返事したのをいいことに、マリクのご実家に婚約の打診をしていることを、俺は知っている。
男爵はマリクの意思も確認するとは言いつつも八割方乗り気で、外堀は着々と埋められつつあった。知らぬはマリク本人ばかりなり、というところだ。
とはいえ、マリクは可愛くも頑固な男なのである。こうと決めたら頑として考えを曲げない姿勢を見せるマリクに首を縦に振らせるため、私も努力しなくてはいけない。
私は連日、マリクを撫でくりまわして甘やかして可愛がった。これを努力と言うか、私の楽しみと言うかは微妙なところだが、とにかく四六時中マリクを抱き上げ、ベタベタしている。
最初は家族や使用人たちの目を気にしていたマリクも、次第に感覚が麻痺してきたのか、大人しくこの腕におさまったまま過ごしてくれるようになった。
昨夜などは、サロンから部屋に戻りたいとマリクの方から「ウィル」と呼びながら手を伸ばして抱っこをせがんでくれて、その上目遣いの可愛らしさに内心悶え転がってしまう。すぐにハッと我に返って恥ずかしがっていたマリクだったが、非常にいい傾向だ。
「おはよう、マリク」
いつものようにベッドまで起こしに行った私に、マリクはむにゃむにゃ言いながらも眠たげな眼をこすり、もぞもぞとベッドから身を起こした。
「朝からおしがとうとい……」
「そうか。よしよし」
まだ半分夢の中にいるマリクは、ぼうっとしていて幸せそうに意味不明な言葉を呟いている。
私は内容はあえて追求せず、着替えと洗顔を促した。いまいち眠気が抜けきっていないマリクの寝間着のボタンを外して手早く脱がせ、メイドが用意しておいた服を着せてやる。
この瞬間、私はいつも心を無にすることを心掛けた。深く考えると、不埒な考えに体が反応してしまいそうだからだ。マリクの肌は白くてきめ細かく、体のパーツはどこもかしこも細くしなやかで美しいのだから。
私とて健全な男子学生、好きな相手の完璧な裸体を見て興奮しないわけがない。あわよくば少し先に進みたいという願望もあるが、怪我人であるマリクに対して欲望を曝け出すつもりにはなれなかった。
やはり、そういうことはきちんと万全な状態で、お互い合意の上で行わなくては。
恐らくマリクは初めてだろうし、碌に拒んだり逃げたりできない今の状況で関係を進展させようとするのは望ましくない。
さすがに結婚して初夜まで清い関係を貫くべきなどとは考えていないが、節度は大切にしたい。
そんな風に焦らずゆっくりと考えていた私だったが、一通の手紙にそれは覆されることになった。
王家からの手紙にはアーネスト様が、当家に滞在するマリクと面会を希望しているという旨が書かれていて、父や母も困惑する。なにせ、日程が明日という早さだ。
そんなに急いで、一体マリクに何の用があるというのだろう。怪我をして他家で療養中だというのに、その療養先にわざわざやって来るなど。
もし見舞いであるならば、マリクの状態を確認してから来る手順ぐらいあってもいい筈だ。こんなにも性急かつ一方的に推し掛けること自体、マリクが尊重されているようには思えない。
私は両親と対策について話し合った。
マリクとアーネスト様のことは、二人も知っている。その上で歓迎してくれていたのだが、もしアーネスト様がマリクを返すよう要求したら、逆らうことは難しい。
諦めろと言われることもと覚悟していたが、マリクの有能さを目の当たりにした二人は、真剣な顔で私に言った。
「今夜中に決めろ」
「は?」
「は?じゃないわよ。まさかやり方がわからないわけではないでしょうね」
母が胡乱げな目で私を見ながらそう言った。まさか。
「如何にアーネスト様と言えど、既に他の男と情を交わした相手を望むことは出来ん。あれだけのことをして手酷く扱ったのだ、傷心のあまりお前と関係を持っていたとしても一方的に責められることはない」
「調べたところ、アーネスト様はレニオール様を手離すご様子はなく、むしろご執心の様子。むしろ、関係の清算を迫られて口止めに理不尽な要求をされる可能性もあるわ」
「側室として手元に戻す心積もりかもしれんがな。あれだけの有能さだ、手放すことを惜しんでも不思議はない」
どちらにせよ、マリクと私がきちんとした恋人として既成事実を作っていた方が、当家としては介入しやすいと両親は主張した。我が親ながら、思い切りが良すぎる。
「どうせお前のことだから、怪我が完治してから同意の上でなどと甘っちょろいことを考えているのだろうが、夢見がちな乙女のような考えは捨てろ」
「マリクちゃんが貴方を好いていることは間違いないんだから、煮え切らない態度に愛想を尽かされる前に、とっとと男を見せるのよ。好きな相手からであれば、少しぐらい強引に迫られても嬉しいもの。悠長なことを言っていられる状況ではなくなったのだから、肚を括りなさい」
いいわね、と扇子をビシッと眼前に突きつけて、母上は去って行った。
まさかこの年になって母親にあんな発破をかけられるとは溜息を吐くと、父に肩を叩かれる。
「気持ちはわかるが、好いた相手と添い遂げさせてやりたいという親心だ。あれは有用さを除いてもマリクのことを気に入っているのだよ。まだ婚約もきちんと取り付けていない状態では、アーネスト様とマリクの交渉に口を挟むどころか、同席することも出来ない。あの子を守ってやりたいと思うなら、介入する権利を主張する材料が必要だ」
「それは、そうかもしれませんが……」
「なに、マリクが嫌がると決まった訳でもあるまい。私が見たところ、マリクもそれを待っていると思うがね。今日は皆で外に出よう。お前たちは部屋で食事を摂れるよう手配しておくから、雰囲気を作ってしっかりやるんだぞ」
部屋に戻ると、ベッド脇のチェストには潤滑油など性交に必要と思われるものがしっかりと用意されていた。
一体、誰がこんなものを用意したのか……。私は痛み始めた頭を押さえて、溜息を吐く。
二人の言っていることは至極尤もだし、今の切羽詰った状況ではそれ以外に取れる手段がないこともわかる。
だが、そのためにマリクに無体な真似をしていいものか。
そもそも、アーネスト様は一体どういうつもりでマリクとの面会を望んでいるのだろう。
あこまで無残にマリクを放り出したのだから、今更未練があるとも思えないが、はっきりと別れを告げられたわけでもない。マリクの才能は王家にとっても魅力的だろうし、レニオール様を王妃にして、マリクを側室にと望んでも不思議はない。
マリクを側室にするなど、とても容認できるものではない。
捨てられて泣いていたマリクのことを思いだすと、心が痛んだ。
もし王家に入ったとして、マリクにとっては茨の道だ。側室とはいえ、男爵令息のマリクにはやっかみと嫌がらせが降りかかるのは想像に難くない。その上、アーネスト様が庇う気もないとすれば、その生活は地獄に等しい。
可愛いマリクを渡すだけでも耐え難いのに、そんな扱いを受けるなど絶対に許せなかった。
しかし、もしアーネスト様が復縁を望んだら、マリクは喜ぶかもしれない……。
そう思った瞬間、激しい嫉妬が湧き上がる。
私は、なんて身勝手な男なのだろうか。本来ならきちんと明日アーネスト様が会いに来ることを告げて、マリクと話し合うべきだと思うのに、マリクがアーネスト様を選んだらと思うと隠しておきたくなる。
私は一体、どうするべきなのか……。
同じころ隣室でマリクが隠れてラブグッズを並べて気合いを入れていることも知らず、私は一人思い悩んでいたのだった。
滞在5日目にして、己の母親から掛けられた言葉に、私は苦笑した。
母があの子と言うのは、怪我を理由に我が家に逗留させているマリクのことだ。
何事にも動じることのない母に、僅か5日でこんな質問をさせるとは、一体あの子は何をやらかしたことやら。
「マリクなら、アボット男爵領の嫡男で間違いないが」
「そんなことはわかってます!そうじゃなくて、私はあの子の規格外な有能さはどこで培われたのかって聞いているの」
規格外、か。確かに、あらゆる意味で彼はそう称されるに相応しい。
私は言い得て妙だと思いながら、肩を竦めて見せるよりなかった。なぜなら、そんなことは私も知らないからだ。知らないことは、説明のしようがない。
いずれは彼の口から秘密を打ち明けて貰えたらいいとは思うけれど、今はまだ難しいだろうことはわかる。
思いがけない幸運でせっかく腕の中に収まってくれたのに、下手に藪をつついてまた逃げられてしまっては困る。
今朝などは、寝ぼけて私の胸に収まり、うとうとしながら私の胸に頭を預けているところなどが大変可愛らしく、突然豹変したアーネスト様に感謝したものだ。
あの後、レニオール様はどうなったのだろうか。わからないが、あれだけアーネスト様を一途に慕い、努力なさってきた方なのだ。きっと喜んでいらっしゃることだろう。
私はというと、傷心のマリクを最速で囲い込むため、怪我を理由に私の屋敷に招いたわけだが、家族は概ね好意的だった。
というのも、以前私に連れられて屋敷にやってきたマリクを、母は興味津々で構い倒し、その音楽の才能もいたく気に入って、家族の前で時折話題に出されていたからだ。
『あの浮ついた話のひとつもない朴念仁が、初めて屋敷に連れてきたコ』と、私本人としては不本意な言われようではあったが、家族の認識は悲しいかな共通であったらしく、『どんな子だが見てみたい』と事あるごとに言われていた。
そのため、今回屋敷に逗留させたいと打診した時も、皆が面白がって賛成した。
うちの家族は、私以外何故か一様に好奇心が強く、面白いものが好きと言って憚らない。ずっと理解しがたいと思っていたが、マリクに落ちてしまった私も、やはり根幹はこの家族の一員だったということなのかもしれなかった。
初日こそ顔合わせの晩餐で和やかに食事をしただけだったものの、翌日は朝食と晩餐、サロンでの食後のお茶と少しずつ接触の機会が増え、3日目には庭園で絵をかいたり、母と刺繍をしたりもしている。
その全ての機会において、マリクはうちの家族の意表を突くような行動ばかり起こしていた。本人は全く普通に振る舞っているつもりだろうし、家族も貴族らしくあからさまに表に出すようなことはしないが、すっかりその規格外さは露見してしまっているようだった。
音楽の才能はさることながら、会話の端々にもマリクは特異で独創的な思想と知的さを滲ませる。父が晩餐で宰相が書類の山に囲まれ魘されているという話を冗談交じりにしたら、少し考えて現状についていくつか質問し、その上で申請書の仕様を統一し、書類の内容の似通ったものを纏めたり分類したりする人間を作って効率化する方法や、組織体系のあり方についての持論、汚職を防ぐための管理体制の提案など、現在の通例を覆すような斬新なアイデアをまるで雑談のように事も無げに語り、父に請われれば手慰みの如くスラスラと申請書のひな形を書いて見せた。要望ごとに大まかに選択肢を設け、記入者に丸をつけさせることで分類を容易にし、要件の段階を数回に分けて枠を設定することで、記入時に内容を簡潔に吟味させ、意図を読み取りやすくする効果が見込めることなどが一目でわかる洗練された内容だった。とても即興で書いたとは思えない。
他にも、水害対策の工事についてや、戦地での効率的な補給の方法なども水を向けられるままに語り、そのどれもが非常に有用で、すぐに手をつけられそうなものばかり。
だというのに、本人はそれを大した事とは受け止めておらず、ニコニコと出された料理を味わうことに意識を向けていた。
とどめが、『お世話になっているから』と差し出された自作のペンだ。
インクを内側に入れておくことによって、効率的な書類仕事を可能にするらしい『万年筆』と名付けられたペンに、父はいたく感激し、宰相に見せびらかして足元に縋り付かれたという。
宰相に泣きつかれた父に是非数本買い取らせてほしいと請われると、マリクはその場であっさりと設計図を描いて見せ、伯爵家お抱えの商会で量産すればいいと権利を丸ごと放り出した。
どうせ自分では現状商品化する資金力はないし、滞在費がわりにでもなればと平然としていたが、そこは何とか説得して、売り上げの数割を受け取らせることで落ち着き、事なきを得た。
あの様子だと、他にも色々なアイデアを抱えていそうだ。全く、あの発明家じみた発想はどこから来るのか。
絵画の色遣いや物の特徴を掴んだ抽象的な技法は斬新で美しかったし、刺繍は針金を使用して見たことのない立体的な花を縫い上げ、母やメイリーナに似合いそうと手慰みにドレスをデザインした。
デザインされたドレスは斬新でありながら洗練されていて、メイリーナは絶対にそのドレスを作って次のパーティーで着ていくと息巻いている。それに気を良くして、衣裳に合うアクセサリーまでデザインして見せるから、手におえない。
今や、我が家のサロンはマリクの独壇場だった。最高のアーティストであり、デザイナーであり、流行の産み出し手とも呼べる彼は、社交界という戦場で鎬を削っている女性たちの強い味方と化している。
今はまだ母とメイリーナしかいないが、彼が余所のサロンに顔を出せば、一躍人気者になることは間違いない。
そして、群がる人間は女性だけではなく、それ以上に男が多いだろうことも容易に想像がつく。
マリクは、小柄で愛らしい顔をしていて、稀有な黒髪の持ち主だ。おまけに、博識で頭もいいのにどこか貴族世界の常識に疎く、無防備な面もある。それでいて幾らでも金を産み出す才能の持ち主なのだから、無理やりにでも自分のものにしようとする輩が現れるであろうことは明白だった。
「とにかく、あの子を絶対に逃がさないこと。いいわね?」
「言われずともそのつもりです」
「それならいいの。あの子が何の後ろ盾もなく社交界に出るなんて、自殺行為ですからね。早急にプロポーズして婚約に漕ぎ付けるのよ。あの子が社交界デビューする時は、最低でもあなたの婚約者としてでないと。うちの嫁と言えればもっといいのだけど」
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最初は恐縮していたマリクも、客室を改装するためと理由を付ければ、あっさりと納得したようだった。
どこへ行くにも抱き上げて移動したがる私の負担も減るだろうしと的外れなことを言いながら頷いている。
メイドにさりげなくテーブルに用意された伯爵家年鑑を暇つぶしと言いながら楽しそうに読んでいるのだから、母の思う壺だ。
父は父で、さりげなく「お嫁さんが来るなら君のように可愛くて純粋に息子を好いてくれる子が望ましい」と勧誘した挙句、適当に生返事したのをいいことに、マリクのご実家に婚約の打診をしていることを、俺は知っている。
男爵はマリクの意思も確認するとは言いつつも八割方乗り気で、外堀は着々と埋められつつあった。知らぬはマリク本人ばかりなり、というところだ。
とはいえ、マリクは可愛くも頑固な男なのである。こうと決めたら頑として考えを曲げない姿勢を見せるマリクに首を縦に振らせるため、私も努力しなくてはいけない。
私は連日、マリクを撫でくりまわして甘やかして可愛がった。これを努力と言うか、私の楽しみと言うかは微妙なところだが、とにかく四六時中マリクを抱き上げ、ベタベタしている。
最初は家族や使用人たちの目を気にしていたマリクも、次第に感覚が麻痺してきたのか、大人しくこの腕におさまったまま過ごしてくれるようになった。
昨夜などは、サロンから部屋に戻りたいとマリクの方から「ウィル」と呼びながら手を伸ばして抱っこをせがんでくれて、その上目遣いの可愛らしさに内心悶え転がってしまう。すぐにハッと我に返って恥ずかしがっていたマリクだったが、非常にいい傾向だ。
「おはよう、マリク」
いつものようにベッドまで起こしに行った私に、マリクはむにゃむにゃ言いながらも眠たげな眼をこすり、もぞもぞとベッドから身を起こした。
「朝からおしがとうとい……」
「そうか。よしよし」
まだ半分夢の中にいるマリクは、ぼうっとしていて幸せそうに意味不明な言葉を呟いている。
私は内容はあえて追求せず、着替えと洗顔を促した。いまいち眠気が抜けきっていないマリクの寝間着のボタンを外して手早く脱がせ、メイドが用意しておいた服を着せてやる。
この瞬間、私はいつも心を無にすることを心掛けた。深く考えると、不埒な考えに体が反応してしまいそうだからだ。マリクの肌は白くてきめ細かく、体のパーツはどこもかしこも細くしなやかで美しいのだから。
私とて健全な男子学生、好きな相手の完璧な裸体を見て興奮しないわけがない。あわよくば少し先に進みたいという願望もあるが、怪我人であるマリクに対して欲望を曝け出すつもりにはなれなかった。
やはり、そういうことはきちんと万全な状態で、お互い合意の上で行わなくては。
恐らくマリクは初めてだろうし、碌に拒んだり逃げたりできない今の状況で関係を進展させようとするのは望ましくない。
さすがに結婚して初夜まで清い関係を貫くべきなどとは考えていないが、節度は大切にしたい。
そんな風に焦らずゆっくりと考えていた私だったが、一通の手紙にそれは覆されることになった。
王家からの手紙にはアーネスト様が、当家に滞在するマリクと面会を希望しているという旨が書かれていて、父や母も困惑する。なにせ、日程が明日という早さだ。
そんなに急いで、一体マリクに何の用があるというのだろう。怪我をして他家で療養中だというのに、その療養先にわざわざやって来るなど。
もし見舞いであるならば、マリクの状態を確認してから来る手順ぐらいあってもいい筈だ。こんなにも性急かつ一方的に推し掛けること自体、マリクが尊重されているようには思えない。
私は両親と対策について話し合った。
マリクとアーネスト様のことは、二人も知っている。その上で歓迎してくれていたのだが、もしアーネスト様がマリクを返すよう要求したら、逆らうことは難しい。
諦めろと言われることもと覚悟していたが、マリクの有能さを目の当たりにした二人は、真剣な顔で私に言った。
「今夜中に決めろ」
「は?」
「は?じゃないわよ。まさかやり方がわからないわけではないでしょうね」
母が胡乱げな目で私を見ながらそう言った。まさか。
「如何にアーネスト様と言えど、既に他の男と情を交わした相手を望むことは出来ん。あれだけのことをして手酷く扱ったのだ、傷心のあまりお前と関係を持っていたとしても一方的に責められることはない」
「調べたところ、アーネスト様はレニオール様を手離すご様子はなく、むしろご執心の様子。むしろ、関係の清算を迫られて口止めに理不尽な要求をされる可能性もあるわ」
「側室として手元に戻す心積もりかもしれんがな。あれだけの有能さだ、手放すことを惜しんでも不思議はない」
どちらにせよ、マリクと私がきちんとした恋人として既成事実を作っていた方が、当家としては介入しやすいと両親は主張した。我が親ながら、思い切りが良すぎる。
「どうせお前のことだから、怪我が完治してから同意の上でなどと甘っちょろいことを考えているのだろうが、夢見がちな乙女のような考えは捨てろ」
「マリクちゃんが貴方を好いていることは間違いないんだから、煮え切らない態度に愛想を尽かされる前に、とっとと男を見せるのよ。好きな相手からであれば、少しぐらい強引に迫られても嬉しいもの。悠長なことを言っていられる状況ではなくなったのだから、肚を括りなさい」
いいわね、と扇子をビシッと眼前に突きつけて、母上は去って行った。
まさかこの年になって母親にあんな発破をかけられるとは溜息を吐くと、父に肩を叩かれる。
「気持ちはわかるが、好いた相手と添い遂げさせてやりたいという親心だ。あれは有用さを除いてもマリクのことを気に入っているのだよ。まだ婚約もきちんと取り付けていない状態では、アーネスト様とマリクの交渉に口を挟むどころか、同席することも出来ない。あの子を守ってやりたいと思うなら、介入する権利を主張する材料が必要だ」
「それは、そうかもしれませんが……」
「なに、マリクが嫌がると決まった訳でもあるまい。私が見たところ、マリクもそれを待っていると思うがね。今日は皆で外に出よう。お前たちは部屋で食事を摂れるよう手配しておくから、雰囲気を作ってしっかりやるんだぞ」
部屋に戻ると、ベッド脇のチェストには潤滑油など性交に必要と思われるものがしっかりと用意されていた。
一体、誰がこんなものを用意したのか……。私は痛み始めた頭を押さえて、溜息を吐く。
二人の言っていることは至極尤もだし、今の切羽詰った状況ではそれ以外に取れる手段がないこともわかる。
だが、そのためにマリクに無体な真似をしていいものか。
そもそも、アーネスト様は一体どういうつもりでマリクとの面会を望んでいるのだろう。
あこまで無残にマリクを放り出したのだから、今更未練があるとも思えないが、はっきりと別れを告げられたわけでもない。マリクの才能は王家にとっても魅力的だろうし、レニオール様を王妃にして、マリクを側室にと望んでも不思議はない。
マリクを側室にするなど、とても容認できるものではない。
捨てられて泣いていたマリクのことを思いだすと、心が痛んだ。
もし王家に入ったとして、マリクにとっては茨の道だ。側室とはいえ、男爵令息のマリクにはやっかみと嫌がらせが降りかかるのは想像に難くない。その上、アーネスト様が庇う気もないとすれば、その生活は地獄に等しい。
可愛いマリクを渡すだけでも耐え難いのに、そんな扱いを受けるなど絶対に許せなかった。
しかし、もしアーネスト様が復縁を望んだら、マリクは喜ぶかもしれない……。
そう思った瞬間、激しい嫉妬が湧き上がる。
私は、なんて身勝手な男なのだろうか。本来ならきちんと明日アーネスト様が会いに来ることを告げて、マリクと話し合うべきだと思うのに、マリクがアーネスト様を選んだらと思うと隠しておきたくなる。
私は一体、どうするべきなのか……。
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「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】婚約者の王子様に愛人がいるらしいが、ペットを探すのに忙しいので放っておいてくれ。
フジミサヤ
BL
「君を愛することはできない」
可愛らしい平民の愛人を膝の上に抱え上げたこの国の第二王子サミュエルに宣言され、王子の婚約者だった公爵令息ノア・オルコットは、傷心のあまり学園を飛び出してしまった……というのが学園の生徒たちの認識である。
だがノアの本当の目的は、行方不明の自分のペット(魔王の側近だったらしい)の捜索だった。通りすがりの魔族に道を尋ねて目的地へ向かう途中、ノアは完璧な変装をしていたにも関わらず、何故かノアを追ってきたらしい王子サミュエルに捕まってしまう。
◇拙作「僕が勇者に殺された件。」に出てきたノアの話ですが、一応単体でも読めます。
◇テキトー設定。細かいツッコミはご容赦ください。見切り発車なので不定期更新となります。
転生令息は冒険者を目指す!?
葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。
救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。
再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。
異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!
とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
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