30 / 42
1章
1章 28話「寝不足」
しおりを挟む
――――
――
「ゼオ、顔色悪いよ?」
「……ちょっと寝不足で」
翌朝、いつも通り自分の席に座って隣にいるグリーゼオに挨拶をしようとしたノアールだったが、目の下にあるクマに驚いてしまった。
珍しく掃除をしたおかげか良い具合に疲れて熟睡をしたノアールに対し、グリーゼオは父の部屋でずっと辞書を片手に様々な文献を読んでいたせいで、あまり寝ていない。気付いたら寝落ちしていたので、睡眠時間は一時間あったかどうかだ。
「お前は、大丈夫か?」
「私は平気だよ。ゼオのおかげで部屋も綺麗になって、昨日はぐっすり寝れた」
「そうか。なるべくあの状態を維持できるようにしろよ」
「ぜ、善処します」
「つか、部屋に溜めこむんじゃなくて毎回書斎で読めばいいんじゃねーの?」
「いや、私も最初はそうしてたんだけど……寝る前とかに読んだりするのに部屋に持っていくようになってから……あんな感じになって……ミリエリに怒られたから、もう夜更かしはしないようにしてるんだけど」
「なるほどな。じゃあ今度からまた書斎でだけ読むようにしたらどうだ」
「ええーベッドでゴロゴロしながら読むの楽なんだもん」
ノアールは机に突っ伏して唇を尖らせた。これも行儀が悪いとミリエリだけでなく母にも注意されたが、楽な体制で読むのが好きでやめられないでいる。
一度だけそのまま寝落ちして本に涎を垂らしてしまったことがあり、今も机の引き出しの中に隠していて誰にも言わず内緒にしている。
「うつ伏せで読んでんの?」
「そうだよ」
「腰痛くならん?」
「んー、まぁ少しだけ?」
「おれは体痛くなるから出来ないな。ソファとか壁に寄り掛かって読むほうが楽」
「それだとお尻痛くならない?」
「……なるほど。お前はそっち派なのか」
「うん。長時間座ってると痛くなって集中できない」
クッションなどを使って緩和させるが、それでも体の痛みが気になって集中力が途切れてしまうことがある。ノアールには知られていないことだが、姿勢や椅子などの環境を良くすれば改善されるが、カイラスがあえてそれをさせないでいた。あまり環境を良くし過ぎるとノアールがずっと調べ物をし続けて止めないからである。
「そういえば……お前、この前おれんちに来たときさ、なんか気になる本とかそういうのあったりした?」
「気になるもの?」
「ああ。おれも家にあるもの調べてみようと思ったんだけどさ、なに書いてあるのか分からないものが多いから時間かかっちゃって……なんか古い魔法のこととか、そういうの書かれているものに絞って調べれば効率良いかなって」
「……もしかして、私のため?」
「父さんが帰ってくるの待ってたら、いつになるか分からないし、ちょっとでも手がかり見つけたいしさ」
「ゼオ……」
寝不足になった原因が自分のために調べ物をしていたからだったことに申し訳なさを感じつつも、嬉しくなった。何より、それを秘密にするのではなく、自分一人で背負おうとせずにこうして自分にも相談してくれたことがありがたい。
「じゃあ、またゼオの家に行きたいな」
「いいよ。ちゃんと家の人に許可貰ってからな」
「うん!」
――
「ゼオ、顔色悪いよ?」
「……ちょっと寝不足で」
翌朝、いつも通り自分の席に座って隣にいるグリーゼオに挨拶をしようとしたノアールだったが、目の下にあるクマに驚いてしまった。
珍しく掃除をしたおかげか良い具合に疲れて熟睡をしたノアールに対し、グリーゼオは父の部屋でずっと辞書を片手に様々な文献を読んでいたせいで、あまり寝ていない。気付いたら寝落ちしていたので、睡眠時間は一時間あったかどうかだ。
「お前は、大丈夫か?」
「私は平気だよ。ゼオのおかげで部屋も綺麗になって、昨日はぐっすり寝れた」
「そうか。なるべくあの状態を維持できるようにしろよ」
「ぜ、善処します」
「つか、部屋に溜めこむんじゃなくて毎回書斎で読めばいいんじゃねーの?」
「いや、私も最初はそうしてたんだけど……寝る前とかに読んだりするのに部屋に持っていくようになってから……あんな感じになって……ミリエリに怒られたから、もう夜更かしはしないようにしてるんだけど」
「なるほどな。じゃあ今度からまた書斎でだけ読むようにしたらどうだ」
「ええーベッドでゴロゴロしながら読むの楽なんだもん」
ノアールは机に突っ伏して唇を尖らせた。これも行儀が悪いとミリエリだけでなく母にも注意されたが、楽な体制で読むのが好きでやめられないでいる。
一度だけそのまま寝落ちして本に涎を垂らしてしまったことがあり、今も机の引き出しの中に隠していて誰にも言わず内緒にしている。
「うつ伏せで読んでんの?」
「そうだよ」
「腰痛くならん?」
「んー、まぁ少しだけ?」
「おれは体痛くなるから出来ないな。ソファとか壁に寄り掛かって読むほうが楽」
「それだとお尻痛くならない?」
「……なるほど。お前はそっち派なのか」
「うん。長時間座ってると痛くなって集中できない」
クッションなどを使って緩和させるが、それでも体の痛みが気になって集中力が途切れてしまうことがある。ノアールには知られていないことだが、姿勢や椅子などの環境を良くすれば改善されるが、カイラスがあえてそれをさせないでいた。あまり環境を良くし過ぎるとノアールがずっと調べ物をし続けて止めないからである。
「そういえば……お前、この前おれんちに来たときさ、なんか気になる本とかそういうのあったりした?」
「気になるもの?」
「ああ。おれも家にあるもの調べてみようと思ったんだけどさ、なに書いてあるのか分からないものが多いから時間かかっちゃって……なんか古い魔法のこととか、そういうの書かれているものに絞って調べれば効率良いかなって」
「……もしかして、私のため?」
「父さんが帰ってくるの待ってたら、いつになるか分からないし、ちょっとでも手がかり見つけたいしさ」
「ゼオ……」
寝不足になった原因が自分のために調べ物をしていたからだったことに申し訳なさを感じつつも、嬉しくなった。何より、それを秘密にするのではなく、自分一人で背負おうとせずにこうして自分にも相談してくれたことがありがたい。
「じゃあ、またゼオの家に行きたいな」
「いいよ。ちゃんと家の人に許可貰ってからな」
「うん!」
0
あなたにおすすめの小説
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
無能妃候補は辞退したい
水綴(ミツヅリ)
ファンタジー
貴族の嗜み・教養がとにかく身に付かず、社交会にも出してもらえない無能侯爵令嬢メイヴィス・ラングラーは、死んだ姉の代わりに15歳で王太子妃候補として王宮へ迎え入れられる。
しかし王太子サイラスには周囲から正妃最有力候補と囁かれる公爵令嬢クリスタがおり、王太子妃候補とは名ばかりの茶番レース。
帰る場所のないメイヴィスは、サイラスとクリスタが正式に婚約を発表する3年後までひっそりと王宮で過ごすことに。
誰もが不出来な自分を見下す中、誰とも関わりたくないメイヴィスはサイラスとも他の王太子妃候補たちとも距離を取るが……。
果たしてメイヴィスは王宮を出られるのか?
誰にも愛されないひとりぼっちの無気力令嬢が愛を得るまでの話。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載しています。
【完結】物置小屋の魔法使いの娘~父の再婚相手と義妹に家を追い出され、婚約者には捨てられた。でも、私は……
buchi
恋愛
大公爵家の父が再婚して新しくやって来たのは、義母と義妹。当たり前のようにダーナの部屋を取り上げ、義妹のマチルダのものに。そして社交界への出入りを禁止し、館の隣の物置小屋に移動するよう命じた。ダーナは亡くなった母の血を受け継いで魔法が使えた。これまでは使う必要がなかった。だけど、汚い小屋に閉じ込められた時は、使用人がいるので自粛していた魔法力を存分に使った。魔法力のことは、母と母と同じ国から嫁いできた王妃様だけが知る秘密だった。
みすぼらしい物置小屋はパラダイスに。だけど、ある晩、王太子殿下のフィルがダーナを心配になってやって来て……
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
[完結] 邪魔をするなら潰すわよ?
シマ
ファンタジー
私はギルドが運営する治療院で働く治療師の一人、名前はルーシー。
クエストで大怪我したハンター達の治療に毎日、忙しい。そんなある日、騎士の格好をした一人の男が運び込まれた。
貴族のお偉いさんを魔物から護った騎士団の団長さんらしいけど、その場に置いていかれたの?でも、この傷は魔物にヤられたモノじゃないわよ?
魔法のある世界で亡くなった両親の代わりに兄妹を育てるルーシー。彼女は兄妹と静かに暮らしたいけど何やら回りが放ってくれない。
ルーシーが気になる団長さんに振り回されたり振り回したり。
私の生活を邪魔をするなら潰すわよ?
1月5日 誤字脱字修正 54話
★━戦闘シーンや猟奇的発言あり
流血シーンあり。
魔法・魔物あり。
ざぁま薄め。
恋愛要素あり。
公爵令嬢は結婚式当日に死んだ
白雲八鈴
恋愛
今日はとある公爵令嬢の結婚式だ。幸せいっぱいの公爵令嬢の前に婚約者のレイモンドが現れる。
「今日の結婚式は俺と番であるナタリーの結婚式に変更だ!そのドレスをナタリーに渡せ!」
突然のことに公爵令嬢は何を言われたのか理解できなかった。いや、したくなかった。
婚約者のレイモンドは番という運命に出逢ってしまったという。
そして、真っ白な花嫁衣装を脱がされ、そのドレスは番だという女性に着させられる。周りの者達はめでたいと大喜びだ。
その場所に居ることが出来ず公爵令嬢は外に飛び出し……
生まれ変わった令嬢は復讐を誓ったのだった。
婚約者とその番という女性に
『一発ぐらい思いっきり殴ってもいいですわね?』
そして、つがいという者に囚われた者の存在が現れる。
*タグ注意
*不快であれば閉じてください。
ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~
ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。
絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。
彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。
営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。
「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」
転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。
だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。
ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。
周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。
「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」
戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。
現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。
「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」
これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。
没落領地の転生令嬢ですが、領地を立て直していたら序列一位の騎士に婿入りされました
藤原遊
ファンタジー
魔力不足、財政難、人手不足。
逃げ場のない没落領地を託された転生令嬢は、
“立て直す”以外の選択肢を持たなかった。
領地経営、改革、そして予想外の縁。
没落から始まる再建の先で、彼女が選ぶ未来とは──。
※完結まで予約投稿しました。安心してお読みください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる