追憶のリコリス

のがみさんちのはろさん

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1章

1章 31話「父親」

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 一時間半ほど経ち、迎えが来たので本に夢中になって動かないノアールを無理やり引きずって帰宅させた。
 短い時間ではあったが、良い話し合いが出来たとグリーゼオは満足していた。

「さてと、おれはもう少し調べてみるか」

 一人になり、静まり返った家の中にほんの少し寂しさを感じながら、グリーゼオは父の部屋へと戻っていった。


――――
――


「ただ今戻りました!」

 屋敷に戻り、着替えを済ませて食堂へ行くと家族みんながすでに揃っていた。
 ノアールが自分の席に着くと、嬉しそうにしている妹にカイラスがふふっと笑みを零しながら話しかけた。

「良いことあった?」
「あのね、お兄様! 今日ゼオの家でまた色々と本を読ませてもらったんだけど、古代魔法についてたくさん調べたの!」
「古代魔法? 歴史の授業で少し習ったことがあるけど、またどうして?」
「ゼオがね、私がまた魔法を使えるようにってたくさん調べてくれてね」

 今日会ったことをノアールが話すと、兄だけでなく両親も顔を見合わせて笑みを浮かべた。
 言ってしまえば他人である彼が、こんなにもノアールのことを大切に思ってくれていて、ノアールのために出来ることを必死に探してくれている。これを家族が喜ばない理由はない。
 両親も仕事の合間を見つけては解決策を探している。教会に毎日通い、前世のことや魔法のこと、様々な分野に精通している人を探しては話を聞きに行き、小さな手がかりを見つけようと必死だ。
 その苦労を知っているからこそ、まだ幼いグリーゼオが家族と同じように行動してくれていることがどれほど嬉しいことか。

「そうか。古代魔法……じゃあ父さんもその分野に詳しい人を探してみるよ」
「本当?」
「ああ。グリーゼオ君にも伝えておいてくれ。きっと彼も会いたがるだろうから」
「うん!」
「それから……今度、彼をうちに招待しなさい。色々と世話になりっぱなしだし、きちんとお礼をしないとな」
「私もゼオにはたくさんお礼したい。お泊りとか誘ったんだけど、断られちゃったの。どうにか呼べる方法はないかなぁ」

 ノアールが残念そうにそう言うと、ルーフスの笑顔がピシッと強張った。
 グリーゼオのことは十分に十分に信頼しているが、それとこれとは別問題だ。カイラスがいるとはいえ、可愛い娘のいる家に同い年の男の子を泊めるのは早すぎる。
 わなわなと震えるルーフスに、ヴィオラはクスっと微笑んだ。

「ノアール、グリーゼオ君が断ったのなら無理強いはしたら駄目よ?」
「わかってるけど……ゼオの家、ご両親が家を空けることが多いみたいだから寂しくないかなーって……」
「まぁ、それは少し心配ね。でも、家庭にはそれぞれの事情があるのだから、ね?」
「はぁい」

 返事をしたノアールだが、まだ諦めきれてない。
 いつも助けてくれる友達に、自分も何かしてあげたい。グリーゼオがどうしたら喜ぶのか、何をしてあげたらお礼になるのか、夕食の間ずっと考えていた。


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