追憶のリコリス

のがみさんちのはろさん

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1章

1章 33話「勉強」

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 数日が経ち、特に問題もなく平穏と呼べる日が続いていた。
 ノアールの魔法は使えないままだが、先生とも相談して詠唱による魔法について勉強を始めた。
 残された資料が古いため、言葉の解釈も人によって異なるものが多く、実践にはまだ時間を要する。
 ノアールは早く使ってみたいという気持ちもあるが、まだ魔法への恐怖心がある。調べ物をしている間は夢中になって文献を読みあさっているのでそういったことを忘れていられるが、読み終わって、その魔法を自分が使うところを想像すると、体が震えてしまう。

「……私、大丈夫かな」
「どうした?」

 今日は魔法学の授業の日。二人は自習室で先生たちが持ってきてくれた古代魔法の本を調べていた。

「このまま魔法が使えなかったら、どうしようって……」
「そんなに深く考えるなよ。ツラいかもしれないけど、そう急ぐな。お前の今の目標は前世の自分を見つけることなんだろ。それは魔法が絶対に必要不可欠って訳でもないんだし、気楽に考えろよ」
「……そういえば、そうだね。なんか変に焦ってたかも。魔法がないと旅が出来ないわけじゃないし」
「まぁ、魔物と出会ったとき対処できないと大変だから、その辺は考えないとだけどな」
「そっか。さすがゼオだね、なんか少し気持ちが楽になった気がする」

 ふにゃっと笑うノアールに、グリーゼオはつられて笑顔になる。
 とはいえ、あの黒い炎に関しては早く手がかりを見つけないといけない。またいつ暴発してノアールの身に何か遭ったら、今度は髪や目の色が変化する程度で終わらないかもしれない。命に関わる可能性だってゼロではない。

「……てゆうか、そうか。そうだよな」
「うん?」
「お前の魔法が使える使えないとか関係なく、その度におれも一緒に行けばいい話だな」
「え!?」
「そうすればノアが無茶しようとしたとき止められるし、お前が帰ってくるまで心配で胃を痛めることもないだろ」
「ま、待って。さすがにそれは駄目だよ。だって、すぐに帰れるかも分からないんだよ? ゼオとなら安心だけど……」
「さっさと帰れるように、おれが手伝うんだろ」
「で、でも……」
「まぁ先の話だし、おれらもどうなってるか分からないけどさ……今のおれは、そう思ってるってこと」

 パンッと音を立てて、グリーゼオは本を閉じた。
 ノアールが前世の自分を探す旅に出られるのは、早くても高等部を卒業してから。
 十年も経てば、人の気持ちも関係も変化してくる。

「……十年後、か。私たちはどうなってるかな」
「さぁな。おれとしては、変わらず友達でいるんじゃないかと思ってる、いや思いたいな」
「それは私もだよ、ゼオとずっーと友達でいたい」
「……おう」

 自分で言ったことだが、グリーゼオは少しだけ心がザワついたのを感じた。
 その意味をグリーゼオが知るのは、ずっと先の話だ。


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