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番外編
「彼が魔王と呼ばれるまでの話」⑥
しおりを挟む「これから、どうしますか?」
「……この場所を、拠点にしたいと思ってる」
クラッドは地に片膝を付け、悲しげな表情を浮かべた。
そのまま放置していたら、また人間がこの上に街を築くかもしれない。それではここに眠る彼の同胞たちが安心できないだろう。だからその案には賛成だ。
「しかし、どうやって? かろうじて残ってる建物を修復しますか?」
殆どの家がクラッドの魔法で壊れてしまっている。
堕天したとはいえ、私も天使だった身。多少の修復魔法ならまだ使える。
「……いや。ここに、城を築く」
「城、ですか?」
「そうだ。僕は、もう逃げも隠れもしない。あんな人間達に負けるのはもう嫌だ。あんな奴らに脅えて暮らすのも嫌だ。魔物が人間より劣っていると思われるのも嫌だ」
クラッドが立ち上がり、天を仰ぐ。
長く伸びた黒い髪が風になびく。
もう、小さくて泣き虫な子供じゃないんですね。
「魔物が悪として滅ぼされるのなら、そもそもなぜ生まれてきた。何故この世に存在する。この世界に生まれてくる意味があったから、我々はいるんだ。だからこそ、我らの存在を主張しなければいけない。この世界に存在することを許されたのだと」
クラッドは歩き始めた。私もその後ろに付いていく。
町の中心で立ち止まり、彼は私の方へと向いた。
「リド」
「はい」
「僕は、魔王を名乗る」
「……はい」
「理不尽に殺されていく仲間を救う。人間と立ち向かい、無益な争いを止める」
「はい」
「だけど、僕一人では無理だ。君の力を貸してほしい」
「もちろんですよ、クラッド。いえ、我が王よ」
私は彼の前に跪いた。
我らの王、魔王に忠誠を誓う。
「……ありがとう。リドがいてくれて良かった。君がいてくれたから、僕は今こうして生きてる」
「私はただ自分の望みのために貴方のそばにいただけです。でも、私の願いはもう叶いました」
「リドの願い?」
「ええ。私は天使でありながら、天使としての生き方に疑問を持っていました。貴方のそばにいれば、その疑問が晴れるだろうと、そう思っていた」
私は立ち上がり、彼の頬に触れた。
もう背伸びをしないと届かない。
だけど大きくなっても変わらない、真っ赤な瞳。
私を惹き付けて離さない、その眼差し。
「私は、貴方に会うために生まれてきた。貴方こそが、私の生きる意味なんです」
「リド……」
「貴方の願いが、私の願い。どこまでも付いていきます」
「ああ……きっと叶えてみせる。我々の願い。魔物が安心して暮らせる世界を築いてみせる……」
クラッドが足元に巨大な魔法陣を展開した。
町一帯に広がる魔法陣が、その地を切り離していく。
なんて魔力だ。あっという間に周囲の大地は空へと浮き上がり、雲の上まで登っていった。
そして町の残骸を一つに集め、作り変えていく。
段々と形を成していくそれは、禍々しい雰囲気の漂う立派な城になっていった。
「……クラッド。いつの間にこんな魔法を」
「ほぼ思い付きだけど、上手くいった。少しだけリドの魔力も借りたよ」
「いつの間に……」
「僕の魔力は破壊の力が強いから、リドの魔力で城を創造させた」
元々の素質があったとはいえ、これほどの力を秘めていたとは。
彼は、王になるべくしてなったのかもしれない。
「この城に魔物を呼ぼう。そしてここを拠点にして、人間と戦う」
「はい。では、私はそのサポートをさせていただきます」
「ああ。今日からここは、魔王城だ」
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