【BL】勇者推しの俺が何故か敵対する魔王に転生してました。

のがみさんちのはろさん

文字の大きさ
57 / 80
番外編

「彼が魔王と呼ばれるまでの話」⑥

しおりを挟む


「これから、どうしますか?」
「……この場所を、拠点にしたいと思ってる」

 クラッドは地に片膝を付け、悲しげな表情を浮かべた。
 そのまま放置していたら、また人間がこの上に街を築くかもしれない。それではここに眠る彼の同胞たちが安心できないだろう。だからその案には賛成だ。

「しかし、どうやって? かろうじて残ってる建物を修復しますか?」

 殆どの家がクラッドの魔法で壊れてしまっている。
 堕天したとはいえ、私も天使だった身。多少の修復魔法ならまだ使える。

「……いや。ここに、城を築く」
「城、ですか?」
「そうだ。僕は、もう逃げも隠れもしない。あんな人間達に負けるのはもう嫌だ。あんな奴らに脅えて暮らすのも嫌だ。魔物が人間より劣っていると思われるのも嫌だ」

 クラッドが立ち上がり、天を仰ぐ。
 長く伸びた黒い髪が風になびく。
 もう、小さくて泣き虫な子供じゃないんですね。

「魔物が悪として滅ぼされるのなら、そもそもなぜ生まれてきた。何故この世に存在する。この世界に生まれてくる意味があったから、我々はいるんだ。だからこそ、我らの存在を主張しなければいけない。この世界に存在することを許されたのだと」

 クラッドは歩き始めた。私もその後ろに付いていく。
 町の中心で立ち止まり、彼は私の方へと向いた。

「リド」
「はい」
「僕は、魔王を名乗る」
「……はい」
「理不尽に殺されていく仲間を救う。人間と立ち向かい、無益な争いを止める」
「はい」
「だけど、僕一人では無理だ。君の力を貸してほしい」
「もちろんですよ、クラッド。いえ、我が王よ」

 私は彼の前に跪いた。
 我らの王、魔王に忠誠を誓う。

「……ありがとう。リドがいてくれて良かった。君がいてくれたから、僕は今こうして生きてる」
「私はただ自分の望みのために貴方のそばにいただけです。でも、私の願いはもう叶いました」
「リドの願い?」
「ええ。私は天使でありながら、天使としての生き方に疑問を持っていました。貴方のそばにいれば、その疑問が晴れるだろうと、そう思っていた」

 私は立ち上がり、彼の頬に触れた。
 もう背伸びをしないと届かない。
 だけど大きくなっても変わらない、真っ赤な瞳。
 私を惹き付けて離さない、その眼差し。

「私は、貴方に会うために生まれてきた。貴方こそが、私の生きる意味なんです」
「リド……」
「貴方の願いが、私の願い。どこまでも付いていきます」
「ああ……きっと叶えてみせる。我々の願い。魔物が安心して暮らせる世界を築いてみせる……」

 クラッドが足元に巨大な魔法陣を展開した。
 町一帯に広がる魔法陣が、その地を切り離していく。
 なんて魔力だ。あっという間に周囲の大地は空へと浮き上がり、雲の上まで登っていった。
 そして町の残骸を一つに集め、作り変えていく。
 段々と形を成していくそれは、禍々しい雰囲気の漂う立派な城になっていった。

「……クラッド。いつの間にこんな魔法を」
「ほぼ思い付きだけど、上手くいった。少しだけリドの魔力も借りたよ」
「いつの間に……」
「僕の魔力は破壊の力が強いから、リドの魔力で城を創造させた」

 元々の素質があったとはいえ、これほどの力を秘めていたとは。
 彼は、王になるべくしてなったのかもしれない。

「この城に魔物を呼ぼう。そしてここを拠点にして、人間と戦う」
「はい。では、私はそのサポートをさせていただきます」
「ああ。今日からここは、魔王城だ」


しおりを挟む
感想 30

あなたにおすすめの小説

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました

陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。 しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。 それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。 ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。 小説家になろうにも掲載中です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました

ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載

悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。 原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。 「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」 破滅フラグを回避するため、俺は決意した。 主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。 しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。 「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」 いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!? 全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ! 小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...