68 / 80
第二部
第7話 【人喰い龍討伐クエスト1】
しおりを挟む大きな通りを進んでいくと、酒場の看板を見つけた。クエストの受付も兼ねてるからか結構大きな店だ。
「ねぇ、伊織。クエストの掲示板、なんで酒場なのかな」
「子供が入らないように、じゃないのか。クエストを受けられるのに年齢制限があるのかもしれない」
「なるほど。納得した」
そうなると、余計に魔王の姿じゃなくて良かったかもな。あのままだと完全に子供にしか見えないし。
とはいえ魔物だと人間みたいに見た目で年齢が分からないから関係ないのかもしれないけど。
酒場のドアを開けて中に入ると、様々な種族の人達で賑わっていた。
これは壮観だな。数人で集まってる人達は恐らくパーティを組んでるんだろうな。大きなボードの前で皆があれこれ話してる。
「クエストって勝手に受けても大丈夫かな……もうこの世界のシステムなんて分からないからどうしたらいいのか」
「うーん。みんなあの掲示板から紙を剥がしてるみたいだけど」
「仕方ない。誰かに聞くか」
初心者丸出しで舐められそうだけど仕方ない。旅の恥はかき捨てだ。
俺は掲示板から紙を剥がしてる人達に話を聞いた。
この掲示板に貼られてる依頼書は誰でも自由に取って大丈夫らしい。その依頼書に依頼人や報酬のことも全て書かれているから、この紙を持って依頼人に会いに行けばいいそうだ。
特に資格とかそういうのは必要ないみたいで助かった。これなら俺らでも簡単に出来そうだ。
「じゃあ、報酬が良さそうなやつ選ぼうぜ。蓮、何か良いのあったら教えてくれ」
「うん。でも報酬高いのは危険生物を倒して得られる素材を持ってくること、みたいなのだね」
「モンスター退治は今でもなくなってないんだな。まぁこればかりは仕方ないか……野放しにして人間にも魔物にも危険が及ぶのであれば対処しないとな」
「じゃあ、これにする? 人喰い龍の角を取ってくるやつ。報酬は一千万メイト」
「メイト……この国の通貨か。他のやつの報酬を見た感じ、それが一番の高額っぽいな」
「日本円でいくらくらい?」
「えー……まだこの国の物価がどんなものかも分からないから何とも言えないけど……そのまま一千万円って思っておけばいいんじゃないか?」
「ヤバいね、それ」
蓮が軽く引いてる。確かに最初に受けるクエストがSSランクのものだからな。
普通のゲームなら最低ランクから始めるだろうけど、俺達はある意味で強くてニューゲーム状態だ。そんな回りくどいことする必要は無い。
俺がその依頼書を剥がすと、周りがザワついたけど気にしない。
「えーっと、依頼人は……この街の領主か。舐められないように少しだけ魔力調節するか……」
「さすがゲームやり慣れてるだけあるね、伊織は」
「やっぱ効率良くいかないとな。敵の動きが分からない以上ノンビリもしていられないし」
「そうだね。そういえば、報酬にお金以外にも何かあったよね」
「あー、ミズドの宝玉って書いてあったな。何に使えるのか聞いてみるか」
もし装備の鍛錬に使えるなら、蓮の武器作りに役立つかもしれない。SSランクの報酬なんだから、相当良いやつだと思うし。
俺達は依頼書の裏に書かれた地図を頼りに領主の屋敷に向かった。
街の中心にある大きな屋敷。分かりやすい金持ちの家だな。道中、領主の話も聞いてみたけど悪い人ではないみたいだ。ありがちな悪い領主とかならどうしようかと思ったけど、大丈夫かな。
屋敷に着き、使用人に話をして応接室に通された。
可愛いメイドさんにお茶を出され、少し待ってると恰幅のいい男の人が部屋に入ってきた。この人がこの街の領主、ドドーリーさん。皺だらけの顔で優しく微笑みかけてくれた。
「初めまして、ドドーリー・クランガンです。お二人が今回の依頼をお受けしてくださるのですか?」
「はい。俺は……イオリ。こっちがレンです。この人喰い龍っていうのは?」
「実は、数日前から人里に降りて襲ってくるようになりまして……最初は王都の騎士団が討伐隊を派遣してくれたんですが、誰も帰ってこず……」
そんなにヤバい龍なのか。昔はそんなやついなかったぞ。
もしかしたら例の奴のせいかもしれないな。
「あの、ドドーリーさんは魔王の噂をご存知ですか?」
「魔王……? 隣の大陸に現れた魔物のことでしょうか」
「その話、詳しく教えていただいても?」
「ええ。私も噂を聞いた程度なのですが、ひと月前に現れたその魔物は南のモードノッズ大陸を占拠しているとか……その者のせいで今は南行きの船は全て欠航。誰も立ち入らないことから暗黒大陸と呼ぶ者もいるそうです」
なるほど。間違いなく転生者はそこにいるんだろうな。
モードノッズ大陸は昔からあった。このアイゼンヴァッハには6つの大陸があって、その中で1番面積の小さな大陸だったはず。
当時はほぼ未開拓で人口も少なかった。今でもそんなに変わらないのであれば、乗っとるのに1番楽な場所だったんだろうな。
「……そうですか、ありがとうございます。すみません、関係ない話をして」
「いえ、大丈夫ですよ。それで、依頼の方ですが……」
「ええ。俺たち2人で引き受けます。それと、この報酬の宝玉って何ですか?」
「おや、存じませんか? ミズドは大精霊より加護を受けた聖なる宝石です。それで作られた武器はかつて勇者が持っていた神剣に匹敵すると言われているんですよ。まぁ、勇者がいたのは千年以上昔のことなので、もう比べようもないのですが……」
「そうですね。でもそれはとても興味あります。では依頼成立ということで、俺達はもう行きますね」
俺らは立ち上がり、ドドーリーさんに見送られて屋敷を出た。
大精霊なんて昔は人と関わりを持たなかったのにな。これも世界が変わった影響なのだろうか。
「これで蓮の武器もどうにかなりそうだな」
「うん。でも鍛冶師のこと聞き忘れてたね」
「あー、そうだったな。まぁそれは報酬貰った時でいいか」
敵の情報を聞けたのが嬉しくてすっかり忘れてた。
それにしても暗黒大陸か。随分と露骨なネーミングセンスだな。分かりやすくて助かるけど。
それにしても人喰い龍か。殺さずとも多少痛めつければ大人しくなるだろ。
「蓮、手加減してやれよ」
「俺、そういうのも全部ガグンラーズに任せてたんだけど……」
「……勇者怖いな……」
10
あなたにおすすめの小説
魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました
タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。
クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。
死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。
「ここは天国ではなく魔界です」
天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。
「至上様、私に接吻を」
「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」
何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?
異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました
陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。
しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。
それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。
ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。
小説家になろうにも掲載中です。
悪役令息ですが破滅回避で主人公を無視したら、高潔な態度だと勘違いされて聖人認定。なぜか溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
BL小説『銀の瞳の聖者』の悪役令息ルシアンに転生してしまった俺。
原作通りなら、主人公ノエルをいじめ抜き、最後は断罪されて野垂れ死ぬ運命だ。
「そんなの絶対にお断りだ! 俺は平和に長生きしたい!」
破滅フラグを回避するため、俺は決意した。
主人公ノエルを徹底的に避け、関わらず、空気のように生きることを。
しかし、俺の「無視」や「無関心」は、なぜかノエルにポジティブに変換されていく。
「他の人のように欲望の目で見ないなんて、なんて高潔な方なんだ……!」
いじめっ子を視線だけで追い払えば「影から守ってくれた」、雨の日に「臭いから近寄るな」と上着を投げつければ「不器用な優しさ」!?
全力で嫌われようとすればするほど、主人公からの好感度が爆上がりして、聖人認定されてしまう勘違いラブコメディ!
小心者の悪役令息×健気なポジティブ主人公の、すれ違い溺愛ファンタジー、ここに開幕!
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
異世界転移して美形になったら危険な男とハジメテしちゃいました
ノルジャン
BL
俺はおっさん神に異世界に転移させてもらった。異世界で「イケメンでモテて勝ち組の人生」が送りたい!という願いを叶えてもらったはずなのだけれど……。これってちゃんと叶えて貰えてるのか?美形になったけど男にしかモテないし、勝ち組人生って結局どんなん?めちゃくちゃ危険な香りのする男にバーでナンパされて、ついていっちゃってころっと惚れちゃう俺の話。危険な男×美形(元平凡)※ムーンライトノベルズにも掲載
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる