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第45話
しおりを挟むそれからまた数日。リカリット国のパーティーは明後日。前日の朝までにリカリットに入っていなきゃいけないので、今日出発する必要がある。
準備は万端。パーティー用のドレスも用意した。あとはレベッカを迎えに行くだけ。
私がレベッカもノヴァに乗っていくか聞いたら、拳を握り締めて戦場にでも行くような形相で「お姉様に付いていきます!」って言っていたわ。そんな無理することはないんだけど、まぁ馬車を使うより早いからいいか。
「それじゃあノヴァ、今日はよろしくね」
「がう!」
レベッカとは外で待ち合わせしてる。門番から見えない場所で待っててねって伝えてあるから、どこか塀の陰で待機してくれているはず。
「ノヴァ。今日は荷物もあるけど大丈夫なの?」
「がう」
「さっすが聖獣。頼もしいわ」
「がうがう!」
「ええ。いつでも頼りにしてるわよ」
まだまだ余裕だというノヴァの頭を撫でて、チェアドーラ国へと向かった。
―――
――
「お姉様!」
「お待たせ、レベッカ。待った?」
「いいえ。先ほど外に出たばかりですから」
「そう? じゃあ、後ろに乗って」
私は手を差し出し、レベッカを引き上げた。
あれ。そういえばレベッカは小さい鞄一つしか持っていないけど、荷物はどうしたのかしら。
「レベッカ、荷物はそれだけ?」
「ええ。魔法具に仕舞ってますから」
「魔法具? それって、確か特殊技能を持った人が作れるとかいう……?」
「そうです。他者の魔法を道具に宿すことで、自分以外の魔法特性を扱えるものです。旅行用の鞄などには縮小《スモール》の魔法をかけられているものが多いのですよ。特殊技師の人数はそれほど多くないので、魔法具の値段は張るのですが……一つあれば便利ですわよ」
「でもそれって、こちらの魔力も結構持っていかれるのよね」
「そうですね。なので、私は一日一度が限界です。なので、この鞄も昨日のうちに縮小してます。そして明日、魔法を解除すれば問題ありません」
「なるほどねぇ」
魔法具の存在は知ってはいたけど、他者の魔法を使うというのはそんな簡単なものではない。レベッカが今言ったように、一日に何度も使えるものじゃない。使用者の魔力を大量に消費してしまう。
魔法具が出回り始めた頃、軍事利用できないかと研究されていたけど、今の理由からその計画は廃棄された。いちいち魔力を消費していたら戦いにならない。今では魔法具の武器としての利用は禁じられている。
まぁ使いたがる人もいないけどね。だって一回使っただけで自分が動けなくなっちゃうようなもの、一発で相手を倒せるほどの強力な魔法でない限りはこっちが不利になる。
「でも、お姉様なら魔力値が高いですし、これくらいの魔法具なら一日に数回は使えるのでは?」
「そうであったとしても使う場面がないわよ。でも、鞄は良いわね」
「がうがう!」
「知らなかったんだからしょうがないでしょ。また今度ね」
「お姉様。ノヴァはなんて?」
「え? ああ。それがあればもっと軽くなったのにって。私の鞄が重いって文句言ってるのよ」
「私が前もって伝えておけば良かったですね。ごめんなさい、ノヴァ」
「がう!」
「あ。今のは私分かったかもしれません! 私のせいじゃないって言ってました?」
「正解。レベッカもノヴァの言うこと分かるようになってきたわね」
レベッカは嬉しそうな笑顔を浮かべて、私の腰にギュッと抱きついた。
行きましょうとノヴァに声を掛けて、私は魔法を発動させる。
最初はちょっと体が強張っていたレベッカだけど、段々とノヴァの移動速度に慣れてきたのか雑談を交えるようになってきた。
さすがに移動時間も長いし、お喋りしながら行きたいものね。
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