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第60話「独占欲」
しおりを挟む寮の部屋に戻り、玄関のドアが閉まるのと当時にフローガはアンジュのネックレスを外して、背中から腰を引き寄せるように抱きしめた。
急なことにアンジュは驚き、顔を真っ赤にした。
「フ、フローガさん!?」
「…………アイツら、少し操られていた」
「え、さっきの人たちですか?」
アンジュは顔だけ後ろに向けてフローガのことを見る。
嫌な人たちだと思った程度で、アンジュはそこまで気付くことは出来なかった。自分でも操られているのかそうでないのか判断できるようにした方がいいのかもしれないと少し真面目に考える。
「で、でも大丈夫なんですか? フローガさんが直接私のことを庇って……」
「別に目的があって人前に出なかったわけじゃない。そもそも学校で習うようなことは全て履修済みだし、ガキと仲良くつるむ気もないし……アイツを見つけて始末できれば、ここに用もないしな……」
「そう、なんですか……」
「…………というか、アイツがお前に触ろうとしたのを見て……気付いたら、ああしてた」
肩口に顔を埋めて、拗ねたような口調で言うフローガに、アンジュは恥ずかしいのと嬉しい気持ちが一気に押し寄せた。
なんだかずっと懐かなくて威嚇ばかりしてた猫が急に甘えてくるようになったような、そんな気分だ。
「正直、失敗したと思う……俺が出たら、アイツらが言ってたことを肯定しているようなものだ……」
「あ、ああ……私がオメガだって……」
「あのまま放っておいて、俺は無関係を貫いた方が良かったんだろうけど……我慢できなかった……」
「フローガさん……」
「俺……自分の中にこんな独占欲があるとは思わなかった……」
きっと今後の行動に関わることで危機感を抱くべきなのだろうが、アンジュはとにかくフローガが可愛くて仕方なかった。
アンジュの腰を抱く両手にほんの少しだけ力が入り、肩にグリグリと額をこすり付けるように甘えてくるフローガに可愛い以外の言葉がない。
お互いに自分の気持ちに我慢する必要がなくなったせいか、口調も今までと違って、どこか甘さを含んでいる。
「フローガさん……私は、その……嬉しかったですよ」
「アンジュ……」
「私のことは、どうせバレているのでしょう? だったらそこまで気にすることはないですよ。あの人たちも操られていただけなら、正気に戻ればきっと気になんかしてませんよ。一応、クルクスさんのおかげで私はベータってことになってますし、イクさんも気付いてませんでしたから」
「……イク……一緒にいた男か」
「はい。この学園で初めて出来たお友達です」
「……まぁ、アイツは確かに無害だが……」
この学園に入学したとき、フローガは全生徒のことを既に調べている。全員がちゃんと身元もハッキリしていて、イディックが一般生徒で性格的にもアンジュと行動を共にして問題ないと今までは放置していたが、番になったことで二人の関係が気になるようになってしまった。
アンジュと気持ちが通じ合ったことに関しては嬉しいことだが、この気持ちが今後の動きに影響を及ぼすのではないかという不安もある。だからと言って、今更この気持ちを忘れることも出来ない。
「……すまない。俺がお前の足を引っ張ってしまって……」
「そんなことないですよ、大丈夫です。それに、こうして甘えてくれるフローガさんも大好きです」
「……お前なぁ」
アンジュはクスクスと笑みを零しながら、フローガの頭を撫でた。
初めて出逢ったときは、こんな風に触れ合う日が来るなんて思いもしなかった。怖いとしか思えなかった彼が、こんなに愛おしいと思う日が来るなんて、夢にも思わなかった。
「フローガさん」
その声に応えようとした瞬間、頭に軽くキスをされた。
フローガがチラッと顔を横に向けてアンジュを見ると、まるで聖母のような笑みでこちらを見ている。何でも許されてしまいそうな気さえしてしまう微笑みに、自分の子供みたいな嫉妬が恥ずかしくなる。
それと同時に、何だか子供扱いをされているような感覚にもなる。正直、面白くはない。
「……はぁ、なんか、お前はズルいな……」
「え? ……きゃあ!」
フローガは勢いよく顔を上げて彼女の足を持ち上げて横に抱き上げた。
アンジュは反射的にフローガの首に腕を回してしがみつく。そのまま黙ってベッドまで連れられ、放り投げるように下ろされる。
「甘える俺が好きなんだろ」
「え」
「じゃあ、思いっきり甘やかしもらおうか」
「え、待って……あっ」
何が彼のスイッチになったのか分からないまま、アンジュは制服を脱がされていく。
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