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悪夢は巡り、決して終わらぬものだと誰かが言った。
私はずっとそれは少し極論だろうと、気にも留めていなかったが、今は……もしかするとそうなのかもしれないと思い始めている。なぜなら現在、私の目の前に終わりの見えない悪夢の光景が広がっているからだ。
目の前で白濁液の濁流がうねりながら人々に襲い掛かっている。人も、車も、バイクも、何もかもが濁流に飲み込まれていく。
私は襲いくる濁流から逃れるため、車の陰に身を隠していた。
普通ならそんなところに身を隠したところで濁流から逃れることなど出来ないが、この濁流はどういうわけか、ねらった対象に集中敵に流れていく性質がある。今も目の前でかの濁流に狙われた人がその中に飲み込まれ、苦悶の表情を浮かべていた。
ああなってしまっては、どうすることも出来ない。
私にできることはただ自分を狙う濁流から逃げ続ける事だけだった。
「なんでこんな事になっちゃったの……」
どうしてこんな事になったのか、それは今日の朝に遡る。
◆◆◆◆◆
朝、私はバスに乗り込んだ。
今日は社員旅行の帰り。久々に来た箱根はありきたりだが案外楽しく、同期とはしゃいだ私は幾許かのだるさを全身に感じていた。
「帰りのバスはいっぱい寝る、むりぃ……」
「いや、ゆみ流石に疲れすぎでしょ! 帰りもはしゃがなきゃ損だよ!!」
「むりぃ・・・・・・ほっといてくれぇ・・・・・・」
元気すぎる同期に若干の鬱陶しさを覚えながらバスに乗り込む。
程なく、バスは箱根を出発した。新宿までは約二時間三十分程度かかる。
私は直ぐに寝ようと思ったけれど、周りではしゃぐ同期の声が気になり、なかなか眠ることができなかった。
ふと、外をみると、透き通る様な青い空を太陽がまばゆく照らしている。
それはまるで一つの絵画の様に思えて、
「気持ち悪いくらい空、綺麗だな」
そのとき、視界に妙なものが入った気がした。
いや、これは、
「あれは……缶?」
気のせいじゃなかった。缶だ。大きな缶が逆さの状態で空に浮いている。
まるでポカリ〇エットのような柄をしているその缶はプクプクと散歩でもするように空を踊っていた。
「なんで缶が浮いてるんだろう……?」
私はぼんやりとまとまらない思考の中、その風景をただ眺めている。
すると、缶に動きがあった。プルタブが開いたのだ。
プシュッという音ともに開いた缶の中から濁流のごとく白濁した液体が流れ出した。
「え、なにあれ……どういうこと? というか、ちょっとまずいんじゃ……」
そう思ったのもつかの間、缶から濁流の如くあふれ出したその白濁とした液は蛇のようにうねりながらこちらへと迫ってきた。
「え、ちょ、うそ……なに、なにっーーーきゃあっ」
ガタンッ!!
揺れとともにバスが止まる。
何が起こっているのかと外を見ると、バスを締め付ける蛇のように缶からあふれ出た白濁液がバスに絡みつき、車体を締め上げていた。
「何よ、何なのよこれっ!!」
他の乗客もそれに気づいたらしい。
バスの中は一瞬でパニック状態に陥り、前の方に座っていた人たちが我先にと前方のドアに殺到する。中には運転手に詰め寄って怒鳴りつけている人もいた。
だが、見る限り運転手にどうにか出来る状況とは思えない。恐らくここで前に詰め寄ってもこのバスからの脱出は叶わないだろう。とはいえ、このままではバスごとこの何かに締めつぶされてしまうかも知れない。
「そうだ、窓だ……」
私は窓に手をかけると、他の乗客に気づかれないようにドアを開けると、何とか窓から外に飛び出す。
白濁液に絡め取られないかが唯一心配だったが、運良く無事に脱出することができた。
「荷物は諦めるしかないか、しょうがない。命には代えられないよね」
私は呟くと道を先に歩き出す。
するとその直後、限界を迎えたバスがひしゃげて道を転がり落ちていく。
恐らく、助かったのは私だけだろう。
「ひどい、なんでこんな……」
みんないい人だった、うるさい人たちも多かったけど、皆優しかった。
それが……みんな、死んだ。
もしかしたら平坦な道であれば助かる人もいるかも知れないが、ここは箱根の山道であり、道を外れればそれはもう奈落だ。とてもではないが助かるとは思えない。
だが、悲しんでいる暇はなかった。
辺りを見回すと、他の車からも次々と人が降りてきている。
どうすればいいのかはわからない。だが、このままここにいてはいけないことだけは分かった。
「……行こう、行くしかない」
私はどこを目指せばいいのかも分からぬまま人々の逃げる流れに沿って走り始めた。
◆◆◆◆◆
あれから三十分以上移動を続けているが、道から逃れることは出来ていない。というのも、大胆な移動がなかなか出来ないのだ。
白濁の濁流は積極的に動く人を優先的に狙っているように見える。
既に私の目の前で何人もの人が濁流の餌食になっていた。
物陰に隠れながら、ここまで少しずつ移動してきたものの、このままでは私が同じ運命をたどるのも時間の問題だった。
「何か…何かここから逃げる方法を考えないと……」
改めて周囲を見渡す。
すると、ふと近くに停車している車が目に入った。
運転手は慌てて車から降りたのだろう、ドアが開きっぱなしで鍵がそのまま残っているのが見える。
加えて道路上は濁流が多くの車を押し流した結果、ある程度スペースが出来ていた。
「これならいけるかも、でも運転なんてろくにしたことも無いのに本当に出来るの……? やっぱり無理かな、別の方法を考えるしかないか」
そう思った時だった。
「ねぇ、君。今向こうの車を見てたよね。僕が運転をするから、一か八か、一緒に行かないか?」
声をかけてきたのは見た目三十過ぎ程度の男性だった。彼はどうやら私が車での脱出を考えていたことに気づいたらしく、声をかけてくれたようだった。
このままここで手をこまねいていてもあの濁流の餌食になるだけだ。それならば、賭けてみる価値はある。そう思った。
「わかりました。おねがいします」
「おーけー、そしたら、ゆっくり車まで行こう。音を立てないように気をつけて」
「わかりました」
私と彼は車までなんとかたどり着くと、音を立てないように気をつけて乗り込む。
そして、彼が鍵に手をかけた。
「いくよ、準備はいい?」
「……・任せます」
直後、彼はぐいっと鍵を捻る。
ブルルルッ!
エンジンが唸りを上げる。濁流が一斉にこちらをロックオンしたのが分かった。
「くそっやっぱりこうなるか!!つかまって!!」
叫ぶと同時、彼は流れるようにギアをドライブにあわせると、アクセルを踏み抜き、車を急発進させる。
間一髪背後から迫る濁流を避けると、鮮やかなハンドル捌きで障害物とまばらに逃げる人々を避け、道を走り抜けていく。
その間も、濁流がこの車を死とめんとばかりに襲いかかってくるが、彼はそれを神業と呼んでも差し支えない技量をもってして避けてみせた。
これなら、いけるかもしれない。
私がそう思い始めた時、それは起こった。
―――ビリッ!!
閃光が走った。
何かが車の正面を走ったのだ。
まるで稲光のようなそれは僅かに車をそれて近くの道路を焼き焦がした。
「何っ!? 何が起こったの!?」
「わからない!!だが、おそらく今のは何らかの電磁波だろう!!
あの奇妙な缶が濁流で補足できないと知って攻撃方法を変えてきやがったんだ!!
今のはたまたま外れたが、次は危ないぞ!!」
「そんな……あっ、でもあれっ!! あそこまで行けば!!」
視線の先には幽かに建物のようなものがいくつか見えた。遠目には町のようにも見える。あそこまでいけば、状況がまたなにか変えられるかもしれなかった。
「でも、箱根から東京の間にあんな町あったっけ……?」
「今はそんなことを言っている場合じゃない!! 一気に突っ込むよ!!」
車が更に音をあげて加速し、町との距離を積めていく。
だが、その間も謎の電磁波は容赦なく私達の乗る車を狙ってきた。
「よしっ、後少しで―――」
彼がそう言った直後、視界が白色に染め上げられる。
浮遊感が全身を襲った。
「きゃぁあああああああああ」
「くっそぉおおおおおお」
電磁波の衝撃に跳ね上げられた車は道を外れ、ごろごろと転がり落ちていった。
◆◆◆◆◆
―――私はまだ生きていた。
目が覚めた時には木々の中に投げ出されており、車も、車を運転していた彼も周囲には見あたらなかった。どうやら私はまた一人になってしまったらしい。
そこから宛もなくさまようこと数十分、私は遂に人気のない陰鬱とした森を抜け町に出た。
町では先ほどまでの出来事がまるで嘘であったかのように平和な時間が流れており、通りにも多くの人が歩いていた。
「ここはどこなんだろう?」
思い、見渡す。
しかし、周囲には場所を特定出来るような文言は見あたらず、お金もバスとともに濁流に飲み込まれてしまったので手元には無い。
町には着いたものの、宛のない状況は全く変わっていなかった。
「あれ、なんだろう。なにか……」
これからどうするのか、それを考えながら何となく町を歩いていると、先程までは日常と変わらないように見えていた風景もよく見ると少し常とは違っている事に気づく。
通りを歩いている人の中にまばらではあるが、私と同じようにやけに汚れた姿であったり、周囲をキョロキョロと見回したりしながら歩いてる人がいるのだ。
「もしかして、さっきの騒動に巻き込まれた人たちなのかな?」
そう思いながら目に付く人達を遠めに観察し、様子を伺っているともう一つあることに気づいた。
「なんか、みんな……怯えてる?」
いや、確かに無理も無いのかも知れない。私だってまだ動揺は収まらず、誰にも声をかけないまま人を観察しているような様なのだ。だが、それにしてもここまで多くの人が私と同じように建物にも入らず、目に映るだれにも声をかけずに注意深く様子を伺うだろうか?
そもそもあれほどのことがあったのだ。誰かがしかるべき所に話を伝え、騒ぎになっていてもおかしくない。だと言うのに待ちゆく人はおろか、テレビからもそうしたニュースが流れている様子がない。
「なにか、なにかおかしいよ。やっぱりまだ何かが起き続けてるんじゃ……」
私がそんな疑いを持ったその時だった。
「―――いやぁあぁあああ゛あ゛!! 離して!! 離してよ!! 離せぇぇぇえええええ!!」
悲鳴が通りに轟いた。女性の悲鳴だ。
声がした方向を見ると、黒スーツにサングラスを身につけた体格のいい男が髪の長い女性の髪をつかみ、通りを引きずって歩いていた。
「え、なに、あれ……」
動揺のあまり動く事が出来ない。
黒スーツの男は女性を引きずりながら堂々と大通りを歩いていく。
しかし、周りの人にはそれを止める様な様子もない。いや、それどころかまるでそんな出来事には気づいていないかのように通り過ぎていくのだ。
それはとても異様な光景。
その中で私はただそれを見ていることしか出来なかった。
―――いや、見てしまった。
ぐりんっ、と黒スーツの男の顔がこちらを向いた。
(あ……これは、まずい)
気づいたときには既に遅かった。
男は引きずっていた女性をどこからともなく現れた別の同じ格好をした男に預けると、こちらに向かってものすごい速度で向かってきたのだ。
「うそ、うそうそうそ……ッ!!」
私は反転し、走り出す。
だが、男の速度は尋常ではない。しかも逃げる宛も無いのだ。
(いったい、私は何を希望に走ればいいの!?)
思いながらも、それを言葉にする余裕もない。
とにかく駆ける。
人混みを縫うように走り、建物の角を幾度も曲がることで障害物を最大限利用し、極力直線的な競争に持ち込まないことで、なんとかまだ逃げることが出来ているが、それでも男を振り切れた訳ではない。いや、それどころか彼我の間にあった距離はかなり縮まって来ている。このままでは捕まるのは時間の問題だった。
「なんで、なんで私がこんな目にあわなきゃいけないの!?
私何も悪いことしてないのにっ!!
お願いだから、お願いだからだれか助けてよッ!!」
叫びながら、走っていると、気づいた。
すれ違う人間の中に、私の状況を認識している人がいる。
遠巻きに怯えたようにこちらを伺う人たち、これは恐らく私と同じ被害者だろう。
しかしそれ以外にも、こちらを見ながら、笑みを浮かべている奴がいるのだ。
それはまるで、この状況を楽しげに観察しているかのようだった。
(観察してる……? どういうこと、こんな状況を楽しそうに観察してるなんて普通じゃないよね。
私はいったい何に巻き込まれてる……?)
考えながらも必死に逃げ続ける。
だが、黒スーツの男と私の速度差は歴然であり、いくら脇道や周囲の物を使って小細工をしたところで、確実に距離はつまっていく。
そして、私は捕まった。
「いや!! やだ、離して!! 何なの? 私をどこに連れて行く気なの!? んっ―――」
黒スーツの男が暴れる私の口を塞ぐ。
呼吸が出来ない。
酸素が取り入れられず、徐々に意識が薄れていく。
闇に落ちていく意識の中で「ゲームオーバー」と、そう誰かに言われたような、そんな気がした。
そんな思いを最後に、私の意識は途絶えた。
◆◆◆◆◆
目が覚めると、私は妙な機械に体を固定されていた。
「んっんんん゛っ!!(な、なに!? どういうこと!? 私どうなってるの!?)」
口がテープのようなもので塞がれており、声を出すことが出来ない。
頭に、違和感がある。どうやら頭に何かを被されており、電極パッドの様な物もいくつか貼り付けられ、私を固定する機械に繋がれているようだった。
唯一自由な目で辺りを見渡す。
私の繋がれている機械はこの部屋の中央にある柱の様な形をした巨大な機械から伸びているみたいだ。
また、辺りには同じような機械が複数あって、それらには私と同じように人が固定されていた。
(ここはどこ? 何かの研究室? 私いったいどうなったの? あのとき黒スーツの男に捕まってから……だめ、なにも手がかりがないじゃん)
そこまで考えて気づいた。中央の柱型の機械の前に白衣を着た男が二人おり、何かを話しているのだ。
なんでもいい、情報が欲しい。
そう思った私は白衣の男A・Bの会話に聞き耳を立てた。
「まぁ今回は結構がんばったんじゃないか?」
「いや、対していつもとかわらんだろ。とはいえ評判は上々だ。
次も頑張ってもらいたいところだな」
そう言うと白衣の男Aは柱型の機械から伸びているレバーに手をかけ、ガシャリと下げる。
すると、柱型の機械に表示されていた文字と数値がグルリと回転し、『少年 9999』という謎の表示に変わった。
私が起きたことに気づき、白衣の男A・Bがこちらに向かってくる。
「お、お目覚めみたいだぞ?」
「ほっとけ、どうせまた直ぐ眠るさ」
「んん゛ん゛っ!!(なに、なにを言ってるの!?)」
彼らはもがく私を歯牙にもかけず、私の機械に取り付けられているボタンに手をかけた。どうやらあれがこの機械の起動スイッチらしい。
あのスイッチを入れさせちゃだめだ!! 直感的に私はそう思った。
「んん゛!! ん゛んん゛!! ん゛んっ!!」
「ははは、抵抗しても無駄さ、諦めたまえ。所詮君はモルモットあるいは人を楽しませる道化と大差ないのだからね」
「せいぜい私達、いや、彼らを楽しませてくれよ」
そう言って白衣の男Aの手がゆっくりと起動スイッチへと伸びていく。
ダメだ。あれはダメなのだ。何故かはわからない。
だが、あれを起動されてしまったが最後、また地獄を味わうことになるという妙な確信があった。
「ん゛ん゛!! んんんんんん!! ん゛ん゛ん゛ーーーッ!!」
私の抵抗はしかし、何ら効果を生み出さない。
彼の手はゆっくりとボタンへと伸びていく。
―――10cm
―――8cm
―――5cm
―――3cm
―――1cm
(ああ、もうダメッ!!)
私は観念して、目をぎゅっと閉じた。
◆◆◆◆◆
「はッ!! はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
私は思わず布団から飛び起きた。
……私の部屋だ。
見慣れた天井、愛用の布団、買って間もないくすのき坂のCD。
身に覚えのあるそれらが浮遊した私の心を接地させてくれる。
どうやら、私は夢を見ていたらしい。
悪夢だ。とんでもない悪夢だった。しかも内容が支離滅裂で意味不明。
絶対に現実ではあり得ないような話。だがあれには、妙な現実感があった。
「とんでもない夢見ちゃったな。でも、もしあのスイッチ押されてたらどうなってたんだろう・・・・・・?
いや、やめた。顔でも洗って気持ち切り換えよう。それがいい」
気分転換が必要だ。そう思い、私は慎重に梯子へと足をかける。
私の家はロフトが寝室と化しており、起き抜けにはいきなり転げ落ちないように梯子を降りるという億劫な行動をしなければならない。
段を踏み外さないように足の裏で感触を確かめながらゆっくりと降りていく。悪夢で披露したからだろうか? いつもより長く感じる梯子を降りると、リビングを出て洗面所へと向かう。
そして、洗面所の鏡で自分の姿を見た瞬間、思わず固まった。
「・・・・・・え?」
―――私は少年になっていた。
私はずっとそれは少し極論だろうと、気にも留めていなかったが、今は……もしかするとそうなのかもしれないと思い始めている。なぜなら現在、私の目の前に終わりの見えない悪夢の光景が広がっているからだ。
目の前で白濁液の濁流がうねりながら人々に襲い掛かっている。人も、車も、バイクも、何もかもが濁流に飲み込まれていく。
私は襲いくる濁流から逃れるため、車の陰に身を隠していた。
普通ならそんなところに身を隠したところで濁流から逃れることなど出来ないが、この濁流はどういうわけか、ねらった対象に集中敵に流れていく性質がある。今も目の前でかの濁流に狙われた人がその中に飲み込まれ、苦悶の表情を浮かべていた。
ああなってしまっては、どうすることも出来ない。
私にできることはただ自分を狙う濁流から逃げ続ける事だけだった。
「なんでこんな事になっちゃったの……」
どうしてこんな事になったのか、それは今日の朝に遡る。
◆◆◆◆◆
朝、私はバスに乗り込んだ。
今日は社員旅行の帰り。久々に来た箱根はありきたりだが案外楽しく、同期とはしゃいだ私は幾許かのだるさを全身に感じていた。
「帰りのバスはいっぱい寝る、むりぃ……」
「いや、ゆみ流石に疲れすぎでしょ! 帰りもはしゃがなきゃ損だよ!!」
「むりぃ・・・・・・ほっといてくれぇ・・・・・・」
元気すぎる同期に若干の鬱陶しさを覚えながらバスに乗り込む。
程なく、バスは箱根を出発した。新宿までは約二時間三十分程度かかる。
私は直ぐに寝ようと思ったけれど、周りではしゃぐ同期の声が気になり、なかなか眠ることができなかった。
ふと、外をみると、透き通る様な青い空を太陽がまばゆく照らしている。
それはまるで一つの絵画の様に思えて、
「気持ち悪いくらい空、綺麗だな」
そのとき、視界に妙なものが入った気がした。
いや、これは、
「あれは……缶?」
気のせいじゃなかった。缶だ。大きな缶が逆さの状態で空に浮いている。
まるでポカリ〇エットのような柄をしているその缶はプクプクと散歩でもするように空を踊っていた。
「なんで缶が浮いてるんだろう……?」
私はぼんやりとまとまらない思考の中、その風景をただ眺めている。
すると、缶に動きがあった。プルタブが開いたのだ。
プシュッという音ともに開いた缶の中から濁流のごとく白濁した液体が流れ出した。
「え、なにあれ……どういうこと? というか、ちょっとまずいんじゃ……」
そう思ったのもつかの間、缶から濁流の如くあふれ出したその白濁とした液は蛇のようにうねりながらこちらへと迫ってきた。
「え、ちょ、うそ……なに、なにっーーーきゃあっ」
ガタンッ!!
揺れとともにバスが止まる。
何が起こっているのかと外を見ると、バスを締め付ける蛇のように缶からあふれ出た白濁液がバスに絡みつき、車体を締め上げていた。
「何よ、何なのよこれっ!!」
他の乗客もそれに気づいたらしい。
バスの中は一瞬でパニック状態に陥り、前の方に座っていた人たちが我先にと前方のドアに殺到する。中には運転手に詰め寄って怒鳴りつけている人もいた。
だが、見る限り運転手にどうにか出来る状況とは思えない。恐らくここで前に詰め寄ってもこのバスからの脱出は叶わないだろう。とはいえ、このままではバスごとこの何かに締めつぶされてしまうかも知れない。
「そうだ、窓だ……」
私は窓に手をかけると、他の乗客に気づかれないようにドアを開けると、何とか窓から外に飛び出す。
白濁液に絡め取られないかが唯一心配だったが、運良く無事に脱出することができた。
「荷物は諦めるしかないか、しょうがない。命には代えられないよね」
私は呟くと道を先に歩き出す。
するとその直後、限界を迎えたバスがひしゃげて道を転がり落ちていく。
恐らく、助かったのは私だけだろう。
「ひどい、なんでこんな……」
みんないい人だった、うるさい人たちも多かったけど、皆優しかった。
それが……みんな、死んだ。
もしかしたら平坦な道であれば助かる人もいるかも知れないが、ここは箱根の山道であり、道を外れればそれはもう奈落だ。とてもではないが助かるとは思えない。
だが、悲しんでいる暇はなかった。
辺りを見回すと、他の車からも次々と人が降りてきている。
どうすればいいのかはわからない。だが、このままここにいてはいけないことだけは分かった。
「……行こう、行くしかない」
私はどこを目指せばいいのかも分からぬまま人々の逃げる流れに沿って走り始めた。
◆◆◆◆◆
あれから三十分以上移動を続けているが、道から逃れることは出来ていない。というのも、大胆な移動がなかなか出来ないのだ。
白濁の濁流は積極的に動く人を優先的に狙っているように見える。
既に私の目の前で何人もの人が濁流の餌食になっていた。
物陰に隠れながら、ここまで少しずつ移動してきたものの、このままでは私が同じ運命をたどるのも時間の問題だった。
「何か…何かここから逃げる方法を考えないと……」
改めて周囲を見渡す。
すると、ふと近くに停車している車が目に入った。
運転手は慌てて車から降りたのだろう、ドアが開きっぱなしで鍵がそのまま残っているのが見える。
加えて道路上は濁流が多くの車を押し流した結果、ある程度スペースが出来ていた。
「これならいけるかも、でも運転なんてろくにしたことも無いのに本当に出来るの……? やっぱり無理かな、別の方法を考えるしかないか」
そう思った時だった。
「ねぇ、君。今向こうの車を見てたよね。僕が運転をするから、一か八か、一緒に行かないか?」
声をかけてきたのは見た目三十過ぎ程度の男性だった。彼はどうやら私が車での脱出を考えていたことに気づいたらしく、声をかけてくれたようだった。
このままここで手をこまねいていてもあの濁流の餌食になるだけだ。それならば、賭けてみる価値はある。そう思った。
「わかりました。おねがいします」
「おーけー、そしたら、ゆっくり車まで行こう。音を立てないように気をつけて」
「わかりました」
私と彼は車までなんとかたどり着くと、音を立てないように気をつけて乗り込む。
そして、彼が鍵に手をかけた。
「いくよ、準備はいい?」
「……・任せます」
直後、彼はぐいっと鍵を捻る。
ブルルルッ!
エンジンが唸りを上げる。濁流が一斉にこちらをロックオンしたのが分かった。
「くそっやっぱりこうなるか!!つかまって!!」
叫ぶと同時、彼は流れるようにギアをドライブにあわせると、アクセルを踏み抜き、車を急発進させる。
間一髪背後から迫る濁流を避けると、鮮やかなハンドル捌きで障害物とまばらに逃げる人々を避け、道を走り抜けていく。
その間も、濁流がこの車を死とめんとばかりに襲いかかってくるが、彼はそれを神業と呼んでも差し支えない技量をもってして避けてみせた。
これなら、いけるかもしれない。
私がそう思い始めた時、それは起こった。
―――ビリッ!!
閃光が走った。
何かが車の正面を走ったのだ。
まるで稲光のようなそれは僅かに車をそれて近くの道路を焼き焦がした。
「何っ!? 何が起こったの!?」
「わからない!!だが、おそらく今のは何らかの電磁波だろう!!
あの奇妙な缶が濁流で補足できないと知って攻撃方法を変えてきやがったんだ!!
今のはたまたま外れたが、次は危ないぞ!!」
「そんな……あっ、でもあれっ!! あそこまで行けば!!」
視線の先には幽かに建物のようなものがいくつか見えた。遠目には町のようにも見える。あそこまでいけば、状況がまたなにか変えられるかもしれなかった。
「でも、箱根から東京の間にあんな町あったっけ……?」
「今はそんなことを言っている場合じゃない!! 一気に突っ込むよ!!」
車が更に音をあげて加速し、町との距離を積めていく。
だが、その間も謎の電磁波は容赦なく私達の乗る車を狙ってきた。
「よしっ、後少しで―――」
彼がそう言った直後、視界が白色に染め上げられる。
浮遊感が全身を襲った。
「きゃぁあああああああああ」
「くっそぉおおおおおお」
電磁波の衝撃に跳ね上げられた車は道を外れ、ごろごろと転がり落ちていった。
◆◆◆◆◆
―――私はまだ生きていた。
目が覚めた時には木々の中に投げ出されており、車も、車を運転していた彼も周囲には見あたらなかった。どうやら私はまた一人になってしまったらしい。
そこから宛もなくさまようこと数十分、私は遂に人気のない陰鬱とした森を抜け町に出た。
町では先ほどまでの出来事がまるで嘘であったかのように平和な時間が流れており、通りにも多くの人が歩いていた。
「ここはどこなんだろう?」
思い、見渡す。
しかし、周囲には場所を特定出来るような文言は見あたらず、お金もバスとともに濁流に飲み込まれてしまったので手元には無い。
町には着いたものの、宛のない状況は全く変わっていなかった。
「あれ、なんだろう。なにか……」
これからどうするのか、それを考えながら何となく町を歩いていると、先程までは日常と変わらないように見えていた風景もよく見ると少し常とは違っている事に気づく。
通りを歩いている人の中にまばらではあるが、私と同じようにやけに汚れた姿であったり、周囲をキョロキョロと見回したりしながら歩いてる人がいるのだ。
「もしかして、さっきの騒動に巻き込まれた人たちなのかな?」
そう思いながら目に付く人達を遠めに観察し、様子を伺っているともう一つあることに気づいた。
「なんか、みんな……怯えてる?」
いや、確かに無理も無いのかも知れない。私だってまだ動揺は収まらず、誰にも声をかけないまま人を観察しているような様なのだ。だが、それにしてもここまで多くの人が私と同じように建物にも入らず、目に映るだれにも声をかけずに注意深く様子を伺うだろうか?
そもそもあれほどのことがあったのだ。誰かがしかるべき所に話を伝え、騒ぎになっていてもおかしくない。だと言うのに待ちゆく人はおろか、テレビからもそうしたニュースが流れている様子がない。
「なにか、なにかおかしいよ。やっぱりまだ何かが起き続けてるんじゃ……」
私がそんな疑いを持ったその時だった。
「―――いやぁあぁあああ゛あ゛!! 離して!! 離してよ!! 離せぇぇぇえええええ!!」
悲鳴が通りに轟いた。女性の悲鳴だ。
声がした方向を見ると、黒スーツにサングラスを身につけた体格のいい男が髪の長い女性の髪をつかみ、通りを引きずって歩いていた。
「え、なに、あれ……」
動揺のあまり動く事が出来ない。
黒スーツの男は女性を引きずりながら堂々と大通りを歩いていく。
しかし、周りの人にはそれを止める様な様子もない。いや、それどころかまるでそんな出来事には気づいていないかのように通り過ぎていくのだ。
それはとても異様な光景。
その中で私はただそれを見ていることしか出来なかった。
―――いや、見てしまった。
ぐりんっ、と黒スーツの男の顔がこちらを向いた。
(あ……これは、まずい)
気づいたときには既に遅かった。
男は引きずっていた女性をどこからともなく現れた別の同じ格好をした男に預けると、こちらに向かってものすごい速度で向かってきたのだ。
「うそ、うそうそうそ……ッ!!」
私は反転し、走り出す。
だが、男の速度は尋常ではない。しかも逃げる宛も無いのだ。
(いったい、私は何を希望に走ればいいの!?)
思いながらも、それを言葉にする余裕もない。
とにかく駆ける。
人混みを縫うように走り、建物の角を幾度も曲がることで障害物を最大限利用し、極力直線的な競争に持ち込まないことで、なんとかまだ逃げることが出来ているが、それでも男を振り切れた訳ではない。いや、それどころか彼我の間にあった距離はかなり縮まって来ている。このままでは捕まるのは時間の問題だった。
「なんで、なんで私がこんな目にあわなきゃいけないの!?
私何も悪いことしてないのにっ!!
お願いだから、お願いだからだれか助けてよッ!!」
叫びながら、走っていると、気づいた。
すれ違う人間の中に、私の状況を認識している人がいる。
遠巻きに怯えたようにこちらを伺う人たち、これは恐らく私と同じ被害者だろう。
しかしそれ以外にも、こちらを見ながら、笑みを浮かべている奴がいるのだ。
それはまるで、この状況を楽しげに観察しているかのようだった。
(観察してる……? どういうこと、こんな状況を楽しそうに観察してるなんて普通じゃないよね。
私はいったい何に巻き込まれてる……?)
考えながらも必死に逃げ続ける。
だが、黒スーツの男と私の速度差は歴然であり、いくら脇道や周囲の物を使って小細工をしたところで、確実に距離はつまっていく。
そして、私は捕まった。
「いや!! やだ、離して!! 何なの? 私をどこに連れて行く気なの!? んっ―――」
黒スーツの男が暴れる私の口を塞ぐ。
呼吸が出来ない。
酸素が取り入れられず、徐々に意識が薄れていく。
闇に落ちていく意識の中で「ゲームオーバー」と、そう誰かに言われたような、そんな気がした。
そんな思いを最後に、私の意識は途絶えた。
◆◆◆◆◆
目が覚めると、私は妙な機械に体を固定されていた。
「んっんんん゛っ!!(な、なに!? どういうこと!? 私どうなってるの!?)」
口がテープのようなもので塞がれており、声を出すことが出来ない。
頭に、違和感がある。どうやら頭に何かを被されており、電極パッドの様な物もいくつか貼り付けられ、私を固定する機械に繋がれているようだった。
唯一自由な目で辺りを見渡す。
私の繋がれている機械はこの部屋の中央にある柱の様な形をした巨大な機械から伸びているみたいだ。
また、辺りには同じような機械が複数あって、それらには私と同じように人が固定されていた。
(ここはどこ? 何かの研究室? 私いったいどうなったの? あのとき黒スーツの男に捕まってから……だめ、なにも手がかりがないじゃん)
そこまで考えて気づいた。中央の柱型の機械の前に白衣を着た男が二人おり、何かを話しているのだ。
なんでもいい、情報が欲しい。
そう思った私は白衣の男A・Bの会話に聞き耳を立てた。
「まぁ今回は結構がんばったんじゃないか?」
「いや、対していつもとかわらんだろ。とはいえ評判は上々だ。
次も頑張ってもらいたいところだな」
そう言うと白衣の男Aは柱型の機械から伸びているレバーに手をかけ、ガシャリと下げる。
すると、柱型の機械に表示されていた文字と数値がグルリと回転し、『少年 9999』という謎の表示に変わった。
私が起きたことに気づき、白衣の男A・Bがこちらに向かってくる。
「お、お目覚めみたいだぞ?」
「ほっとけ、どうせまた直ぐ眠るさ」
「んん゛ん゛っ!!(なに、なにを言ってるの!?)」
彼らはもがく私を歯牙にもかけず、私の機械に取り付けられているボタンに手をかけた。どうやらあれがこの機械の起動スイッチらしい。
あのスイッチを入れさせちゃだめだ!! 直感的に私はそう思った。
「んん゛!! ん゛んん゛!! ん゛んっ!!」
「ははは、抵抗しても無駄さ、諦めたまえ。所詮君はモルモットあるいは人を楽しませる道化と大差ないのだからね」
「せいぜい私達、いや、彼らを楽しませてくれよ」
そう言って白衣の男Aの手がゆっくりと起動スイッチへと伸びていく。
ダメだ。あれはダメなのだ。何故かはわからない。
だが、あれを起動されてしまったが最後、また地獄を味わうことになるという妙な確信があった。
「ん゛ん゛!! んんんんんん!! ん゛ん゛ん゛ーーーッ!!」
私の抵抗はしかし、何ら効果を生み出さない。
彼の手はゆっくりとボタンへと伸びていく。
―――10cm
―――8cm
―――5cm
―――3cm
―――1cm
(ああ、もうダメッ!!)
私は観念して、目をぎゅっと閉じた。
◆◆◆◆◆
「はッ!! はぁ・・・・・・はぁ・・・・・・」
私は思わず布団から飛び起きた。
……私の部屋だ。
見慣れた天井、愛用の布団、買って間もないくすのき坂のCD。
身に覚えのあるそれらが浮遊した私の心を接地させてくれる。
どうやら、私は夢を見ていたらしい。
悪夢だ。とんでもない悪夢だった。しかも内容が支離滅裂で意味不明。
絶対に現実ではあり得ないような話。だがあれには、妙な現実感があった。
「とんでもない夢見ちゃったな。でも、もしあのスイッチ押されてたらどうなってたんだろう・・・・・・?
いや、やめた。顔でも洗って気持ち切り換えよう。それがいい」
気分転換が必要だ。そう思い、私は慎重に梯子へと足をかける。
私の家はロフトが寝室と化しており、起き抜けにはいきなり転げ落ちないように梯子を降りるという億劫な行動をしなければならない。
段を踏み外さないように足の裏で感触を確かめながらゆっくりと降りていく。悪夢で披露したからだろうか? いつもより長く感じる梯子を降りると、リビングを出て洗面所へと向かう。
そして、洗面所の鏡で自分の姿を見た瞬間、思わず固まった。
「・・・・・・え?」
―――私は少年になっていた。
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