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7歳の冬
のんびりしたかった
結局、侯爵邸からの救助要請が無かったのを言い訳に、バイコーンだった存在に関することはラミタ村村長の胸の内のみで止めることにした。
勿論、雪深い中瘴気の対策だけはしっかりとして。
ウィル達の仮説が正しいのであればニールも、そして恐らくアムルも破壊の神の愛し子だ。
しかしエフィスカリオ家の状態を見るに、加護が掛かったままなのかどうかが分からない。
ニールもアムルも苦難の道を強いられていたから、尚更破壊の神の加護でこの村が守られるか不明だったのだ。
面倒臭そうなクロスと、意気揚々としているが若干空回り気味な猫妖精にも手伝ってもらって、1日がかりで。
村長で話を止める以上、他の村人達に悟られる訳にはいかない。
負担を掛けて申し訳ないが子供達の相手はアムルに任せて、セドリックとファフナーも一緒になって必死に対策をした。
とはいえ、一番頑張ったのは瘴気をある程度抑えてくれる魔道具をアーサーの指示のもと造ったクィル神官だが。
時刻はすっかり深夜になってしまったが、冷えてしまった身体は湯浴みで温めて凝りも取って就寝してしまえば、後はもう今まで通りの平和な時間が戻って来る。
精々、2~3日の間はホワイトスライムとブルースライムとハームンドの3赤ちゃんが1日中お父さんが不在だったという事実にギャン泣き(多分)だった位の変化だ。
侯爵邸がどうなったのか。
それは侯爵領のはみ出し者となっているラミタ村は、隣街を治めている市長から聞かないと分からない。
一応領民なのでいずれ話は聞かされるだろうが、それまではまったりしよう。
雪も深いし。
そう思いながらのんびりと過ごそうとした1週間………雪はあの日以降大きく降ることはなく、結局2日もすれば雪かきが出来る程になってしまったのでそうそうのんびりはしていられなかった。
「やあ、リース。」
「げぇ。モリス市長。」
しかも漸く雪かきが終わった翌日。
豪華な馬車でまだ雪が残る道を悠々と現れたのは、先代村長から何かとお世話になっている隣街を治める市長だ。
お世話になっていると言っても、どこか掴みどころのない言動が苦手だったりはする。
子供達と平和に戯れて連日の疲れを癒そうとしていた時にそんな苦手な人物が現れたものだから、思わず態度に出したのは許して欲しい。
「エフィスカリオ侯爵は、瘴気で正気を失ったらしい。」
「え?そのダジャレ要ります?」
「残念ながら、ダジャレだけじゃないんだなぁ。」
取り敢えずと案内した村役場で、市長はソファに座るよりも先にそう言った。
だけじゃないということは、ダジャレも言いたかったんだろうなぁとリースは呆れて溜息を吐いてお茶を淹れる準備をした。
役場には基本的にリースしか居ないので、お茶を淹れたりもてなしをするのもリースの仕事だ。
「急に侯爵邸が瘴気まみれになって、すっかり侵されてしまったらしい。血の泡を噴いているところを、王都に居る聖騎士団が発見したそうだ。」
「聖騎士団?誰が呼んだんです?」
聖騎士は、神殿が持つ自警団のような存在だ。
瘴気に対する耐性があり、王都に居る聖騎士は特にエリートで瘴気を祓うことも出来るらしい。
ただクィル神官曰く【お高く留まってる集団】なので、よほどのことが無い限り派遣されることは無いらしいが………。
「侯爵家次男のマルクス様だ。なんでも彼の部屋は奇跡的に無事だったとか。」
「そんな奇跡、あります?」
「ありえないからこそ奇跡なのだよ、リース。」
リースの言葉に市長はそう言って笑ったが、目の奥が全く笑っていなかった。
恐らく、彼が一番疑っているのだろう。
しかしその状況を見た訳でもないので、何も言えない。
「リース、君のお友達を呼びなさい。」
「はい?」
「君達に関係のあることだよ。否、今からお友達の家に行こうじゃないか。家はどこだったか。」
「いやいやいや!待ってください!」
結局一度もソファに座ることなく、市長は先程の冷たい表情から打って変わって心底楽しそうな表情をして役場から出ようとした。
一体何をどう思いついたのかが分からず、混乱するリースは慌てて止めようとした。
「そもそも、誰のことを言ってるんです!?」
「決まっている。無職の稼ぎ頭君と、無職の首無し君だよ。」
勿論、雪深い中瘴気の対策だけはしっかりとして。
ウィル達の仮説が正しいのであればニールも、そして恐らくアムルも破壊の神の愛し子だ。
しかしエフィスカリオ家の状態を見るに、加護が掛かったままなのかどうかが分からない。
ニールもアムルも苦難の道を強いられていたから、尚更破壊の神の加護でこの村が守られるか不明だったのだ。
面倒臭そうなクロスと、意気揚々としているが若干空回り気味な猫妖精にも手伝ってもらって、1日がかりで。
村長で話を止める以上、他の村人達に悟られる訳にはいかない。
負担を掛けて申し訳ないが子供達の相手はアムルに任せて、セドリックとファフナーも一緒になって必死に対策をした。
とはいえ、一番頑張ったのは瘴気をある程度抑えてくれる魔道具をアーサーの指示のもと造ったクィル神官だが。
時刻はすっかり深夜になってしまったが、冷えてしまった身体は湯浴みで温めて凝りも取って就寝してしまえば、後はもう今まで通りの平和な時間が戻って来る。
精々、2~3日の間はホワイトスライムとブルースライムとハームンドの3赤ちゃんが1日中お父さんが不在だったという事実にギャン泣き(多分)だった位の変化だ。
侯爵邸がどうなったのか。
それは侯爵領のはみ出し者となっているラミタ村は、隣街を治めている市長から聞かないと分からない。
一応領民なのでいずれ話は聞かされるだろうが、それまではまったりしよう。
雪も深いし。
そう思いながらのんびりと過ごそうとした1週間………雪はあの日以降大きく降ることはなく、結局2日もすれば雪かきが出来る程になってしまったのでそうそうのんびりはしていられなかった。
「やあ、リース。」
「げぇ。モリス市長。」
しかも漸く雪かきが終わった翌日。
豪華な馬車でまだ雪が残る道を悠々と現れたのは、先代村長から何かとお世話になっている隣街を治める市長だ。
お世話になっていると言っても、どこか掴みどころのない言動が苦手だったりはする。
子供達と平和に戯れて連日の疲れを癒そうとしていた時にそんな苦手な人物が現れたものだから、思わず態度に出したのは許して欲しい。
「エフィスカリオ侯爵は、瘴気で正気を失ったらしい。」
「え?そのダジャレ要ります?」
「残念ながら、ダジャレだけじゃないんだなぁ。」
取り敢えずと案内した村役場で、市長はソファに座るよりも先にそう言った。
だけじゃないということは、ダジャレも言いたかったんだろうなぁとリースは呆れて溜息を吐いてお茶を淹れる準備をした。
役場には基本的にリースしか居ないので、お茶を淹れたりもてなしをするのもリースの仕事だ。
「急に侯爵邸が瘴気まみれになって、すっかり侵されてしまったらしい。血の泡を噴いているところを、王都に居る聖騎士団が発見したそうだ。」
「聖騎士団?誰が呼んだんです?」
聖騎士は、神殿が持つ自警団のような存在だ。
瘴気に対する耐性があり、王都に居る聖騎士は特にエリートで瘴気を祓うことも出来るらしい。
ただクィル神官曰く【お高く留まってる集団】なので、よほどのことが無い限り派遣されることは無いらしいが………。
「侯爵家次男のマルクス様だ。なんでも彼の部屋は奇跡的に無事だったとか。」
「そんな奇跡、あります?」
「ありえないからこそ奇跡なのだよ、リース。」
リースの言葉に市長はそう言って笑ったが、目の奥が全く笑っていなかった。
恐らく、彼が一番疑っているのだろう。
しかしその状況を見た訳でもないので、何も言えない。
「リース、君のお友達を呼びなさい。」
「はい?」
「君達に関係のあることだよ。否、今からお友達の家に行こうじゃないか。家はどこだったか。」
「いやいやいや!待ってください!」
結局一度もソファに座ることなく、市長は先程の冷たい表情から打って変わって心底楽しそうな表情をして役場から出ようとした。
一体何をどう思いついたのかが分からず、混乱するリースは慌てて止めようとした。
「そもそも、誰のことを言ってるんです!?」
「決まっている。無職の稼ぎ頭君と、無職の首無し君だよ。」
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