うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!

かかし

文字の大きさ
8 / 370
10歳の春

グレイスライム

しおりを挟む
それからの一人と一匹は、何をするにもいつも一緒だった。
ミルコがシグルドスライムを連れて歩くことに使用人達は眉根を寄せたが、それだけだ。
どうせ両親も兄弟も来ない。
ミルコが別棟に移されてから一日たりとも、見たことなんてなかった。

朝から隠し通路を使い森の入口に行き、小腹が空いたらシグルドがどこからともなく取って来てくれた果実を摘まみ、そうして日が暮れるまで遊んだ。
夜は与えられた固いパンと野菜くずの入ったスープを分け合って食べた。
風呂代わりに小さな水桶で軽く水を浴びれば、シグルドが優しくミルコの身体を包んでくれる。
どうやら身体中に付着した垢や汚れ、雑菌を食べてくれてるらしい。
自分でするよりも、ずっとずっと清潔でキレイになった。
そうして今にも壊れてしまいそうなベッドではなく、シグルドの上に寝転んで襤褸ボロだけど一人と一匹を包むのに十分な大きさをした毛布に身を包んだ。
そうしたら、まるで寄り添って眠っているように感じたから。

ある日、ミルコは隠し通路のある部屋で一冊の本を見付けた。
それは図鑑で、誰にも祝われず五歳の誕生日を迎えたばかりのミルコには難しい字がいっぱい書いてあった。
けれどスライムのページは簡素で、ミルコでも分かる表現しか書かれていなかったから読むことが出来た。

「つうろでいっしょによもう!」

図鑑は重たかったけど、ミルコはしっかり抱えて歩いた。
とはいえ途中でバテてしまったので、結局シグルドが持ってくれたのだけど。
森は薄暗かったけど、陽が昇っているうちは本を読むには十分な明るさだった。

「ぐ………ぐれ、ぐれい、すらいむ………グレイスライム!」

ぴったりと身体をくっ付け合い、シグルドと同種のスライムを探す。
他のモンスターと違って数頁しか描かれていなかったから、拍子抜けするくらい簡単に見付かった。
そこには大型で珍しいスライムであることが書かれていたが、それだけ。
それでもミルコには、シグルドのことを少し知れたような気がして嬉しかった。

「スライムって、いっぱいいるんだね。」

とはいえグレイスライムの項目は見終わってしまったので、ミルコは他のスライムの項目も読むことにした。
思えばミルコは、シグルド以外のスライムを見たことがなかった。
森の中なのに、図鑑でも【よく目撃される】と書かれている通常のスライムも、グリーンスライムもミルコは見たことがなかった。
もう少し中に入って行ったら見れるのだろうか。
ミルコはそう思いながら、隣に居るシグルドを見た。

シグルドは一緒に分かち合うパンやスープだけじゃなく、ここで遊ぶ時に現れるモンスターも捕食している。
だからだろうか。
初めて会った時は縦も横も同じだった筈のシグルドは、今じゃミルコよりも大きくなっている。
普段の高さはミルコに合わせているものの、例えばベッド状態になる時はミルコよりも長くなっているし横幅もちゃんとある。
それにこの間なんて、狼型のモンスターだって捕食していた。

―――そんなシグルドが一緒ならば、どこへでも行ける気がする。

けれどミルコはそれを口に出す事はしなかった。
契約しているモンスターであるけれど、ミルコにとってシグルドは友人、否、唯一の家族だった。
家族を危険な目に遭わせたい訳ではないし、そもそも弱くて痩せっぽちなミルコは足手纏いだ。
家族の負担になりたい訳でもなかった。
しおりを挟む
感想 59

あなたにおすすめの小説

スライム牧場番外編

かかし
BL
「うるせぇ!僕はスライム牧場を作るんで邪魔すんな!!」の番外編です。 思いついたネタを、思いつくままに。 完全不定期更新なのでご容赦ください。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦

雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、 隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。 しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです… オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が なかたのでした。 本当の花嫁じゃない。 だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、 だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という お話です。よろしくお願いします<(_ _)>

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

声なき王子は素性不明の猟師に恋をする

石月煤子
BL
第一王子である腹違いの兄から命を狙われた、妾の子である庶子のロスティア。 毒薬によって声を失った彼は城から逃げ延び、雪原に倒れていたところを、猟師と狼によって助けられた。 「王冠はあんたに相応しい。王子」 貴方のそばで生きられたら。 それ以上の幸福なんて、きっと、ない。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

処理中です...